いつか愛される時が来るかも

YUKI

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ハズレくじと未熟な想い

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教室に帰って来た春香は、机の中にあった携帯と鞄を掴み教室を出る。帰りに少し買い物して、夕飯を作って、今日は何処に逃げよう、何処に隠れよう・・・。思考は逃げる事、そればかりを考えていた。

ボンヤリとした感覚で動いていたのか、自分がした事が曖昧な映像の中の出来事の様に感じられる。
ここは、何処の公園だろう?いつもの公園とは違う様な、電車に乗った様な、まぁ良いか、何処の公園だろうが、夜になれば灯りに群がる虫は何処にでもいるのだから。ただ待っていればいい。

春香という灯りに虫が彷徨い寄せられて来た。

「君、今晩は空いてるかな。幾らだい?」
ほらね・・・。
「フェラで3000円、お触り付いて5000円、ホテルに入るんだったらホテル代はそちら持ち」
「わかった、公園のトイレに行こう。フェラでお願いするよ。」

春香の肩を抱き歩き出す。
暗いトイレだな、外灯が切れてるのか。中の電気も何だか薄暗い。個室に入り、男が後ろ手に鍵を閉める。
カチャっと、やけに今日は鍵の音が大きく聞こえる。本能が怖いと感じてしまう、早く終わらせて場所を移すか?それとも逃げる?
逃げるのは無理なのが考えなくてもわかってしまう。春香の中で一番楽な考え、諦めるという考えに、プログラム通り動くロボットになり、作り笑顔を貼り付ける行動へとそして、笑みを貼り付けた顔でいつも通り唇に言葉を乗せ、いつも通り客として扱う行動をする。
「ベルト外すね。」
蓋の閉まった便器に腰を掛け、前に立つ男のズボンに手をかける。

「可愛い顔が腫れてるね。痛い事が好きなのかな?」
男は、自分でズボンの前を寛げ、春香の髪を鷲掴み上を向かせる。
「口を開けなさい。」

怖い、ハズレくじを引いたと、改めて諦める行動を取る。

男に逆らわず口を開き咥えた。男のペースで進められる行為、乱暴な扱いをされ、飲み込む事を強いられる。吐きそうになるが耐え、終わったからお金を貰うだけだ。
でも、男がとった行動は、春香をうつ伏せにして無理やりアナルを蹂躙する事だった。
抵抗する春香を何度も殴りグッタリとした体を愉しんで、満足すればそのまま放置して消えた。
お金?そんなもの男が払う訳無いよ、笑っちゃうね。ホントにハズレくじ、大ハズレくじだったよ。

ボロボロの汚い身体を、汚いトイレから救い出した自分自身に乾杯!チカチカと瞬きする街灯の元、ベンチに身体を沈める事が出来た時点で春香の意識は途切れた。

🔳▪️ 🔳▪️ 🔳▪️ 🔳▪️ 🔳▪️ 🔳▪️



塾で居残りなんてありえないだろうに、講師に篤が一人暮らしだと知られた時点で運が尽きたのだ。
講師のいい様に使われて、次回の授業に使う資料作成を手伝わされてしまう有様だ。

遅い時間になってしまったからだと、あまり通りたくないが近道だからと言い訳を並べたて、暗く、危ない人達がいると噂の公園を篤は、誰にも会いません様にと今日だけ我慢するのだと溜息を溢しながらも早足で通り抜けようとしていた。
薄暗いチカチカ点滅する街灯に照らされたベンチに横たわる人、いつもならそのまま通り過ぎるのに、何だか不思議と気になって声をかけてしまった。

「こんなところで寝てると風邪ひきますよ。」

肩に手をかけ顔が見えた佐野の体は固まってしまった。
何故、こんな所に篠河がいるんだ?
何故、こんなに篠河はボロボロなんだ?

「おい!篠河、起きろ!」

ゆすっても起きない篠河、暗い街灯の下でもわかるぐらい赤く腫れた顔、切れた唇、触れた体の熱さ、意識の無いぐったりとした体、そして独特な匂い、それだけでもマズイ状態なのだと解る。
病院?警察?どちらもダメだ。篠河を晒し者になんて出来ない。
ひとまずは場所を変えなくては、篠河の家は電車に乗らないといけないし、どんなに考えを巡らしても俺の家に運ぶのが最良だという考えに行き着く。

篠河と俺の荷物を背負い、そっと抱き上げた篠河の身体は羽でも生えてるのかと思うほど軽く熱かった。
顔が見えない様に抱え込み、何とか誰にも会う事もなく部屋まで辿り着け、玄関のドアがバタンと閉まる音に篤は力尽き、篠河を抱えたまま玄関に座り込んでしまった。

熱い篠河の身体を抱きしめ、落ち着いてきた篤は、このまま寝かすには躊躇われる匂いに、綺麗にしてやりたいと立ち上がりバスルームの床にそっと篠河を下ろす。
湯を張り、下着一枚になった篤は、傷に触らないように篠河の服を脱がしていく。
篤の目に映る篠河の痣だらけの身体に、気がつくと涙が頬を伝っていた。
篠河を抱き上げ膝の上に乗せ、シャワーで肩から湯を流し身体を温め、濡れた手で優しく顔を撫ぜ、固まってしまった血を落とす。
動いたからか篠河を抱えた俺の膝に血混じりの白いものが流れてくる。
何も出来ない自分にも、こんな事をした人間にも怒りが込み上げてどうしようもなく篠河を支える腕に力が入る。
血が混じっていたのを思い出し、無理やりな行為で傷ついているだろう場所に躊躇いながらもシャワーを当て、ゆっくり指を入れ中に残っている物を掻き出すように洗っていく。
無意識に溢れる篠河の喘ぎ声、熱い吐息が俺の肩に、駄目だと不謹慎だとわかっているのに高まる身体、必死で他の事を考えるのに収まらない。今はまだ自己主張をし続けているがそのうち治るだろうと、冷えた篠河の身体を温める為、湯船に浸かる。
実際見てないから何があったかはわからないが、状況的に強姦されたのだという事ぐらいは想像出来る。だが、痣だらけの身体は今回だけで出来たものではない。昼間見た篠河の背中も酷くて目を背けたくなった。
先ずは篠河を早く休めさせないといけない。
風呂から上がった篠河を手早く拭き自分のパジャマを着せベッドに寝かせた。
この後、どうしよう。
傷ついてる場所には、傷薬を塗るぐらいしか篤には出来ない。熱を下げないといけないけど、最近風邪もひかない篤の部屋には解熱剤が無い。
誰か、誰か、相談出来る人……。
千秋兄さんなら、もしかしたら相談に乗ってくれるかもしれない。
千秋兄さんの番号を押しながら思う、何年振りだろう、この番号を押すのは…。
何度も繰り返される呼び出し音、出てくれ、お願いだよと祈る思いで機械音を聞く。
『もしもし、篤?篤なのか?』
「千秋兄さん、助けて!」
『えっ!どうしたんだ?』
「友達が熱が酷くて、どうしたらいいかわからない。病院に連れていけない事情があって、ごめん、助けて。」
『わかった、そっちに行くから、解熱剤だけか?薬は飲めそうなのか?』
「無理だと思う、ずっと意識がないから。」

直ぐに向かうから、その間タオルで頭冷やすとか、氷枕とか出来る事をしなさいと言われ、部屋の中をバタバタと動き回った。
腫れ上がった顔を濡れたタオルで冷やしながら、まだ湿った髪を指で梳く。指の間をすり抜けていく髪、熱い吐息を吐く傷ついた唇、腫れて紫色に変色した頬、腫れが引いてなかった目元がより一層腫れてしまってる。どれだけ殴られてんだよ。
痛々しい頬に手を添え、切れた唇にも触れてみたくなり、そっと触れてみる。
指に吐息がかかり、それだけで篤の下半身がドクリとまた、反応する。
ダメだと解っているのに、篤はあの熱い吐息を吐く唇を舌でなぞり、唇で触れたい感情に負けた。一度触れた唇、篤は浮かされた様にもっとと顎に手を触れ、薄っすらと開いた唇に舌を入れ歯列をなぞり上顎にも。
こんな事してはいけないのに、意識のない篠河に俺は何をしているんだと思うのにやめられない。
俺は篠河の事が好きなのか?篠河の事が気になって仕方なかった。触れたい、抱きしめたい、それって、好きだからなのか?
ふわふわとした感覚で濃厚なキスをやめられないでいた。
ピンポンと来客を知らせる音。
ハッと正気に戻った篤は、慌てて玄関に走った。
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