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第三十四話 逃げられない戦い
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「実ちゃん、来週はテストあるって!」
「ふーん。じゃあ勉強しろ。あと机から降りろ」
放課後、私が帰宅の準備をしていると、日菜が私の席にやってきた。やって来たと言っても席隣だけど。
先程、帰りのホームルームでセンセイから告げられたテスト宣告。ある生徒は嘆き、ある生徒は泣き出していた。
・・・・・・大げさすぎるだろ。
「ちなみに赤点ってどのくらいだっけ」
「えーっと、確か70点ぐらいだったよ」
「結構高めだな」
日菜なら赤点確定だな。
「実ちゃん。大事な話があります」
「な、何だよ急にかしこまって」
日菜は急に真面目な顔をして言った。
「私に勉強を教えてください!」
「・・・・・・は?」
日菜が真面目に勉強するだなんて・・・・・・。何があったんだ?
「いやー、実は次のテストで赤点取ったら学費免除が打ち切られちゃうんだよね。私『運動技術試験』に合格して入学しているから。それ試験でいい成績だったから学費免除してもらってるんだ。でも入学してからずっと赤点続きだったから、いい加減痺れを切らしたのか先生から言われちゃったの」
「『だよね』じゃないよ。大問題じゃねぇか」
ニコニコするな。少しは深刻な顔をしろ。
「・・・・・・仕方ない。今回だけだぞ」
「・・・・・・何でボクの部屋でやってるのさ」
月の部屋の机には大量に勉強道具が敷き詰められている。
「仕方ないだろ、私の部屋じゃこんな大人数一緒に勉強できないからな」
「だからってこんなに大人数で来なくても良いよね!?」
人員確保として、優香・冥華・咲・綾目・姫子を連れてきた。
冥華は日菜と同じく赤点候補。他の4人は先程言ったように人員確保のためだ。私一人じゃ手に負えない。
「じゃあ始めましょうか。日菜さん、分からないところがあったら何でも聞いてくださいね」
姫子が日菜に話しかける。流石学級委員長だ。
「冥華様は私と咲様に任せておいて」
綾目が私に向けてガッツポーズをする。いざというときは頼りになるな。
「なぁ私は?」
優香が私に質問してくる。
「お前は私を手伝え。お前も多少は勉強できるだろ」
「私は機械専門なんだよ。ロボット工学とかプログラミングなら教えられるぞ。あとハッキングとか」
・・・・・・あれ? 不安になってきた。
「まずは英語だな。日菜、分からないところあるか?」
「私が分からないとこってどこ?」
「だめだこりゃ」
机をひっくり返したい衝動に駆られる。
「しょうがない。私が教えてやるよ」
「優香。確かにプログラミングも英語が出来なきゃ駄目だからな」
優香は留年はしているものの、頭がいいのは確かだ。留年したのもただのサボりすぎだし。
「まずは簡単な英単語を覚えるぞ。『dummy』これ分かるか?」
「・・・・・・分からない!」
「だめだこりゃ」
さっき私が言った気がするのだが?
「じ、じゃあ『ser』は?」
「せら?」
「実、こいつ一回殴っていいか?」
優香が腕を縦に高速で回転させている。殴る気満々だな。
「構わん」
「ひどいよ優香ちゃん・・・・・・」
日菜の頭にはギャグ漫画のような瘤が出来ている。
「お前はまず中等部の勉強会に参加して来い!」
優香の言っていることはごもっともだ。
「冥華の方は大丈夫か?」
私は冥華の相手をしている側が心配になってくる。冥華は日菜よりも頭が悪いからな。日菜のことは優香に任せて私はあっちを手伝うか。
「め、冥華さん! 落ち着いて!」
「何やってんだ・・・・・・ってうおっ!」
目の前から飛んできたボールペンを間一髪でかわした。いや怖いって。
「勉強嫌だ~! 全然分からないよ~!」
「冥華様! 駄々こねないでください! 私たちが分かるようになるまで教えますから!」
綾目が冥華の腕を掴み何とか静止しようと試みる。
「そ、そうですよ! 幹部である、わ、私が付いていますから! 一緒に頑張りましょう? ね?」
咲も冥華をなだめる。幹部って言うと怖い。
そして冥華は地面に寝転がりながら手と足をバタバタさせている。この人本当に幹部か?
「よし分かった。私たちがそれぞれ得意な教科を教えていこう。綾目は理科、咲は国語と社会。優香が英語、そして私は数学を教える。これならそれぞれの特技を生かして最大限に教えられるだろ」
我ながらいいアイディアだ。実際、中等部・高等部のセンセイ達もこうやって教えてるからな。これなら大丈夫だろ。
綾目の場合
「それじゃあまずは、理科を楽しむことを教えようか」
「「よろしくお願いします!」」
「うん。礼儀正しい子達だ」
最初は綾目の番だ。こうやって時間を区切って順番に回していくことにした。
「簡単なものから始めよう。まずこの試験管の中に薬品が入っているね」
綾目は白衣のポケットの中から透明な液体が入っている試験管を取り出した。というか目で確認しないで全部の試験管の中身の薬品を把握してるんだな。
「そしてビーカーの中に全部いれまーす」
机の上に置いてあるビーカーに薬品を注ぎ込んだ。
「そしてもう一つ、魔法の道具があるんだよ~」
「え? なにそれ!」
日菜が身を乗り出して質問した。
綾目は再びポケットの中を漁り、今度は濃い緑色の薬品が入った試験管を取り出した。
「これをこのビーカーの中に入れます」
試験管の栓、コルクを開け中にピペットを入れる。ピペットで吸い上げた薬品をビーカーの中に垂らした。
「わっ! 色が変わった!」
ビーカーの中に入っていた薬品が黄色に変化した。
「そしてさらに別の薬品を入れると・・・・・・」
「青色になった!」
あー・・・・・・、これ知ってる。酸性とアルカリ性の薬品で中和する実験でしょ。透明の薬品が『塩酸』で、濃い緑色の薬品が『BTB溶液』なんだろ。
「このように、科学の力を使えばこんなに楽しいことが出来るんだ。そう考えると楽しくなってこないかい?」
「「うん!」」
素直な子達だな。
「やる気になってくれて私も嬉しいよ。それでは本題に入ろうか」
綾目は後ろにあるホワイトボードに化学式を書き込んでいく。
咲の場合
「そ、それでは、私の授業を始めます。・・・・・・私なんかが教える授業でですみません」
大丈夫か・・・・・・?
「咲ちゃんは何するのかな~」
冥華がハードルを上げる。少しは察しろ。
「で、では、まず文学に親しむことから、は、始めましょうか。図書室から、沢山本を借りてきましたので、二人にも面白いと思う本がきっと見つかると思います・・・・・・」
そう言うと、咲の部下らしき人物が大量に本が乗せられた手押しの荷台を室内に運んできた。小説のみならず、図鑑・参考書まである。ついでにライトノベルまで揃えられていた。
「咲に部下なんていたんだな・・・・・・」
私が思わずつぶやく。こんなリーダーシップない人に部下なんて付くのか?
「一応幹部の方々には最低でも二人の専属の部下が付くからな。部下は他の委員会の奴よりも立場は一つ上だ」
優香がそう話す。
「そ、それでは、20分間、二人で好きな本を読んでください。何の本でも構いませんよ」
なるほど。いきなり勉強を始めるのではなく、まずはその分野に興味を持たせることが大事なのか。勉強になった。今後参考にさせてもらおう。
20分後
「さて、ふ、二人とも好きな本は見つかりましたか?」
「この本面白かったよ!」
優香が咲に見せたのは、まさかの『羅生門』だった。意外すぎる。
「私はこれが面白かったです」
日菜が見せたのは、星座の図鑑だった。
「ひ、日菜さんは、星とか星座が好きなんですか?」
「はい! この前実ちゃんと一緒に星座観測をしました!」
「バッ・・・・・・!」
星座観測の話は十一話を参照。
「実ちゃん? 何で顔赤くしてるの?」
「そ、それは・・・・・・」
お前と二人っきりで星見てたのにぺらぺら話すからだよ! このことは私と日菜の二人での思い出にしたかったのに!
「で、ではまず冥華さんが言っていた『羅生門』ですね。これは『芥川龍之介』という作家が書いた小説です。こ、この人以外にも、沢山の有名な作家がいますよ」
「おもしろそう! 教えて!」
「では、一人ずつ説明していきましょう」
こうして咲の授業は進んでいった。
ちなみにその後はちゃんと社会 (日本史)の勉強をしました。
私 (実)の場合
「数学はとにかく繰り返すことが大事だ。最終的には問題を見て5秒以内に数式を組み立て始められるようになれ」
多少スパルタな授業だが、これぐらいやらないとこの二人に数学を教えるのは無理だ。私は心を鬼にする。
「まずはウォーミングアップだ。私の出した問題を解いてみろ」
「分かった! 解いてみせる!」
「協力的で結構。始めるぞ」
私はホワイトボードに、無数に数式を書き込んでいく
「・・・・・・おい、何だこのざまは」
二人の答えが書かれたノートを見て、今すぐ焼却炉に放り込みたくなる。
「いやー、失敗失敗」
「何か言ったか?」
ドスの効いた声を出し、冥華を睨む。
「いえ! 何も言ってないであります!」
「よろしい。どうやらお前たちには本気で叩き込まなければいけないらしいな」
少しは優しくしてやろうと思ったものの、この答えを見て思う。こいつらに手加減は必要ないと。
「お前たち、ここから一週間眠れないと思え」
「「ぎ、ぎゃぁぁぁ~!」」
月の部屋に二人の少女の叫び声が響く。
一週間後
「テスト終わったよ」
テストも無事終わり、後は放課後のテスト返却を待つだけだ。
「今回はどうだ? いい点取れそうか?」
「うん! 何だかすらすら解けちゃった! これも皆のおかげだね!」
「まぁ、最終的にはテストの点数で全て分かる。そして机から降りろ」
私は日菜を机から物理的に引き摺り下ろす。
「神楽日菜さーん」
ついに日菜のテストが返された。
「日菜、どうだった?」
日菜はにっこりしながらテストの用紙を見せた。
「オール70点だよ!」
「逆にすげぇ!?」
「よかった~! これで学費免除の打ち切りは免れたよ」
「よかったな。これからもその点数を維持しろよ」
「うん! 頑張る! あ、そういえば実ちゃんは?」
「あ? 全部満点だよ」
その後泣き出した日菜をなだめるために、ご褒美として特大パフェを奢ってやった。
「ふーん。じゃあ勉強しろ。あと机から降りろ」
放課後、私が帰宅の準備をしていると、日菜が私の席にやってきた。やって来たと言っても席隣だけど。
先程、帰りのホームルームでセンセイから告げられたテスト宣告。ある生徒は嘆き、ある生徒は泣き出していた。
・・・・・・大げさすぎるだろ。
「ちなみに赤点ってどのくらいだっけ」
「えーっと、確か70点ぐらいだったよ」
「結構高めだな」
日菜なら赤点確定だな。
「実ちゃん。大事な話があります」
「な、何だよ急にかしこまって」
日菜は急に真面目な顔をして言った。
「私に勉強を教えてください!」
「・・・・・・は?」
日菜が真面目に勉強するだなんて・・・・・・。何があったんだ?
「いやー、実は次のテストで赤点取ったら学費免除が打ち切られちゃうんだよね。私『運動技術試験』に合格して入学しているから。それ試験でいい成績だったから学費免除してもらってるんだ。でも入学してからずっと赤点続きだったから、いい加減痺れを切らしたのか先生から言われちゃったの」
「『だよね』じゃないよ。大問題じゃねぇか」
ニコニコするな。少しは深刻な顔をしろ。
「・・・・・・仕方ない。今回だけだぞ」
「・・・・・・何でボクの部屋でやってるのさ」
月の部屋の机には大量に勉強道具が敷き詰められている。
「仕方ないだろ、私の部屋じゃこんな大人数一緒に勉強できないからな」
「だからってこんなに大人数で来なくても良いよね!?」
人員確保として、優香・冥華・咲・綾目・姫子を連れてきた。
冥華は日菜と同じく赤点候補。他の4人は先程言ったように人員確保のためだ。私一人じゃ手に負えない。
「じゃあ始めましょうか。日菜さん、分からないところがあったら何でも聞いてくださいね」
姫子が日菜に話しかける。流石学級委員長だ。
「冥華様は私と咲様に任せておいて」
綾目が私に向けてガッツポーズをする。いざというときは頼りになるな。
「なぁ私は?」
優香が私に質問してくる。
「お前は私を手伝え。お前も多少は勉強できるだろ」
「私は機械専門なんだよ。ロボット工学とかプログラミングなら教えられるぞ。あとハッキングとか」
・・・・・・あれ? 不安になってきた。
「まずは英語だな。日菜、分からないところあるか?」
「私が分からないとこってどこ?」
「だめだこりゃ」
机をひっくり返したい衝動に駆られる。
「しょうがない。私が教えてやるよ」
「優香。確かにプログラミングも英語が出来なきゃ駄目だからな」
優香は留年はしているものの、頭がいいのは確かだ。留年したのもただのサボりすぎだし。
「まずは簡単な英単語を覚えるぞ。『dummy』これ分かるか?」
「・・・・・・分からない!」
「だめだこりゃ」
さっき私が言った気がするのだが?
「じ、じゃあ『ser』は?」
「せら?」
「実、こいつ一回殴っていいか?」
優香が腕を縦に高速で回転させている。殴る気満々だな。
「構わん」
「ひどいよ優香ちゃん・・・・・・」
日菜の頭にはギャグ漫画のような瘤が出来ている。
「お前はまず中等部の勉強会に参加して来い!」
優香の言っていることはごもっともだ。
「冥華の方は大丈夫か?」
私は冥華の相手をしている側が心配になってくる。冥華は日菜よりも頭が悪いからな。日菜のことは優香に任せて私はあっちを手伝うか。
「め、冥華さん! 落ち着いて!」
「何やってんだ・・・・・・ってうおっ!」
目の前から飛んできたボールペンを間一髪でかわした。いや怖いって。
「勉強嫌だ~! 全然分からないよ~!」
「冥華様! 駄々こねないでください! 私たちが分かるようになるまで教えますから!」
綾目が冥華の腕を掴み何とか静止しようと試みる。
「そ、そうですよ! 幹部である、わ、私が付いていますから! 一緒に頑張りましょう? ね?」
咲も冥華をなだめる。幹部って言うと怖い。
そして冥華は地面に寝転がりながら手と足をバタバタさせている。この人本当に幹部か?
「よし分かった。私たちがそれぞれ得意な教科を教えていこう。綾目は理科、咲は国語と社会。優香が英語、そして私は数学を教える。これならそれぞれの特技を生かして最大限に教えられるだろ」
我ながらいいアイディアだ。実際、中等部・高等部のセンセイ達もこうやって教えてるからな。これなら大丈夫だろ。
綾目の場合
「それじゃあまずは、理科を楽しむことを教えようか」
「「よろしくお願いします!」」
「うん。礼儀正しい子達だ」
最初は綾目の番だ。こうやって時間を区切って順番に回していくことにした。
「簡単なものから始めよう。まずこの試験管の中に薬品が入っているね」
綾目は白衣のポケットの中から透明な液体が入っている試験管を取り出した。というか目で確認しないで全部の試験管の中身の薬品を把握してるんだな。
「そしてビーカーの中に全部いれまーす」
机の上に置いてあるビーカーに薬品を注ぎ込んだ。
「そしてもう一つ、魔法の道具があるんだよ~」
「え? なにそれ!」
日菜が身を乗り出して質問した。
綾目は再びポケットの中を漁り、今度は濃い緑色の薬品が入った試験管を取り出した。
「これをこのビーカーの中に入れます」
試験管の栓、コルクを開け中にピペットを入れる。ピペットで吸い上げた薬品をビーカーの中に垂らした。
「わっ! 色が変わった!」
ビーカーの中に入っていた薬品が黄色に変化した。
「そしてさらに別の薬品を入れると・・・・・・」
「青色になった!」
あー・・・・・・、これ知ってる。酸性とアルカリ性の薬品で中和する実験でしょ。透明の薬品が『塩酸』で、濃い緑色の薬品が『BTB溶液』なんだろ。
「このように、科学の力を使えばこんなに楽しいことが出来るんだ。そう考えると楽しくなってこないかい?」
「「うん!」」
素直な子達だな。
「やる気になってくれて私も嬉しいよ。それでは本題に入ろうか」
綾目は後ろにあるホワイトボードに化学式を書き込んでいく。
咲の場合
「そ、それでは、私の授業を始めます。・・・・・・私なんかが教える授業でですみません」
大丈夫か・・・・・・?
「咲ちゃんは何するのかな~」
冥華がハードルを上げる。少しは察しろ。
「で、では、まず文学に親しむことから、は、始めましょうか。図書室から、沢山本を借りてきましたので、二人にも面白いと思う本がきっと見つかると思います・・・・・・」
そう言うと、咲の部下らしき人物が大量に本が乗せられた手押しの荷台を室内に運んできた。小説のみならず、図鑑・参考書まである。ついでにライトノベルまで揃えられていた。
「咲に部下なんていたんだな・・・・・・」
私が思わずつぶやく。こんなリーダーシップない人に部下なんて付くのか?
「一応幹部の方々には最低でも二人の専属の部下が付くからな。部下は他の委員会の奴よりも立場は一つ上だ」
優香がそう話す。
「そ、それでは、20分間、二人で好きな本を読んでください。何の本でも構いませんよ」
なるほど。いきなり勉強を始めるのではなく、まずはその分野に興味を持たせることが大事なのか。勉強になった。今後参考にさせてもらおう。
20分後
「さて、ふ、二人とも好きな本は見つかりましたか?」
「この本面白かったよ!」
優香が咲に見せたのは、まさかの『羅生門』だった。意外すぎる。
「私はこれが面白かったです」
日菜が見せたのは、星座の図鑑だった。
「ひ、日菜さんは、星とか星座が好きなんですか?」
「はい! この前実ちゃんと一緒に星座観測をしました!」
「バッ・・・・・・!」
星座観測の話は十一話を参照。
「実ちゃん? 何で顔赤くしてるの?」
「そ、それは・・・・・・」
お前と二人っきりで星見てたのにぺらぺら話すからだよ! このことは私と日菜の二人での思い出にしたかったのに!
「で、ではまず冥華さんが言っていた『羅生門』ですね。これは『芥川龍之介』という作家が書いた小説です。こ、この人以外にも、沢山の有名な作家がいますよ」
「おもしろそう! 教えて!」
「では、一人ずつ説明していきましょう」
こうして咲の授業は進んでいった。
ちなみにその後はちゃんと社会 (日本史)の勉強をしました。
私 (実)の場合
「数学はとにかく繰り返すことが大事だ。最終的には問題を見て5秒以内に数式を組み立て始められるようになれ」
多少スパルタな授業だが、これぐらいやらないとこの二人に数学を教えるのは無理だ。私は心を鬼にする。
「まずはウォーミングアップだ。私の出した問題を解いてみろ」
「分かった! 解いてみせる!」
「協力的で結構。始めるぞ」
私はホワイトボードに、無数に数式を書き込んでいく
「・・・・・・おい、何だこのざまは」
二人の答えが書かれたノートを見て、今すぐ焼却炉に放り込みたくなる。
「いやー、失敗失敗」
「何か言ったか?」
ドスの効いた声を出し、冥華を睨む。
「いえ! 何も言ってないであります!」
「よろしい。どうやらお前たちには本気で叩き込まなければいけないらしいな」
少しは優しくしてやろうと思ったものの、この答えを見て思う。こいつらに手加減は必要ないと。
「お前たち、ここから一週間眠れないと思え」
「「ぎ、ぎゃぁぁぁ~!」」
月の部屋に二人の少女の叫び声が響く。
一週間後
「テスト終わったよ」
テストも無事終わり、後は放課後のテスト返却を待つだけだ。
「今回はどうだ? いい点取れそうか?」
「うん! 何だかすらすら解けちゃった! これも皆のおかげだね!」
「まぁ、最終的にはテストの点数で全て分かる。そして机から降りろ」
私は日菜を机から物理的に引き摺り下ろす。
「神楽日菜さーん」
ついに日菜のテストが返された。
「日菜、どうだった?」
日菜はにっこりしながらテストの用紙を見せた。
「オール70点だよ!」
「逆にすげぇ!?」
「よかった~! これで学費免除の打ち切りは免れたよ」
「よかったな。これからもその点数を維持しろよ」
「うん! 頑張る! あ、そういえば実ちゃんは?」
「あ? 全部満点だよ」
その後泣き出した日菜をなだめるために、ご褒美として特大パフェを奢ってやった。
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