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第三十一話 本能寺が変
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今日は珍しく月から呼び出しがあった。
「何だろうね~。月ちゃんが私たちを呼ぶなんて」
廊下を歩きながら日菜が話す。
「いい加減私たちの行動に堪忍袋の緒が切れたんじゃないか? ここ最近本当にやらかしてきたからな」
「え? 私たち何かやったかな」
「お前の罪を数えろ」
「私は何もやってないよ!?」
どの口がそんなこと言ってんだよ。
「とにかく、月に言われたらすぐに謝るんだぞ。お前は土下座だ」
「何で!?」
「で、私たちを呼び出して何の用だ」
月の部屋に来た私は、そう質問する。私だって暇じゃないんだよ。日菜は知らんが。
「ついに・・・・・・、ついに完成したんだよ」
「だから何がだ。早く言え」
無駄に溜められるとイライラしてくるんだが。
「それはね・・・・・・!」
てんてんてんてんてんてんてんてん・・・・・・(ドラ○もんの道具出すときのBGM)
テッテレー!
「『時空転送携帯電話』~!」
「二話連続で時間系の道具かよ!」
「この道具はね、自分の行きたい場所、年月と曜日を携帯に入力すれば、その時代に行くことが出来るんだ! ちなみにちゃんとネットもゲームも出来るし、電話機能つきだよ」
「ていうかこれ携帯電話じゃなくてスマホだよな?」
「携帯電話のほうがクールでしょ。全部漢字だし」
昭和の不良かよ。何でもかんでも全部漢字にして『夜露死苦』とか服に書く人たち。
「じゃあ早速行ってみようか」
「良いのか? 前回みたいに面倒なことにならなければいいんだが・・・・・・」
「この装置にはマスター携帯があるからね。各自で好きなところに行けるけど、私の持つマスターで全ての携帯を管理できるからね」
「なるほど。日菜対策ってことか」
「これ以上この子に好き勝手させられないんだよ」
「・・・・・・心中お察しします」
「おい、何でこんなところにいるんだよ」
「優香? 何でここにいるんだよ」
「今日一緒に出かける約束してただろ。それなのに急に居なくなるから探したんだぞ」
「・・・・・・優香、何でここが分かったんだ? 怒らないから正直に言ってごらん?」
「私たちのスマホは、友達同士だから位置情報確認できるようになってるんだよ。この前一緒にやっただろ?」
「あー・・・・・・。思い出した」
確かあの時 (二十話参照)次誘拐されても場所が分かるようにって、優香たちと位置情報の登録したんだったな
日菜は機種が違うから出来なかったけど。
「私もスマホ買い換えようかな・・・・・・」
「やめとけ」
「あ、そうだ。優香ちゃんも一緒に行こうよ!」
「どこにだ」
質問する優香を無視し、日菜はさっきの携帯 (スマホ)を手渡す。
「何だこれ」
「それは使ってからのお楽しみだよ!」
「じゃあ、そろそろ出発しようか。皆どこに行きたい?」
「私は大正時代だな」
大正ロマンを見てみたいんだよな~。温泉街とか。
「私は西部開拓時代だ。ガンマンを見てみたいんだ」
「えっとね、私は・・・・・・、何か女の人が可愛い服いっぱい着てる時代に行きたい!」
多分日菜が言ってるの平安時代だな。そして服いっぱい着てるのって『十二単』のことだろ。
「それじゃあ・・・・・・へっくし!」
急に月がくしゃみをした。
「風邪引いたか?」
優香が心配する。
「違うよ、もう春だから花粉が多いんだよ。主に植物園から出てくる花粉とか」
「あんな大量の花とかあったらそりゃ花粉も来るわな」
「大丈夫だよ。それじゃあ気を取り直して・・・・・・へっくしょん!」
その瞬間、私たちがこの空間から消えた。
その後、私たちは謎の穴から放り出された。
「うえっ! 痛ぇ・・・・・・」
その上に優香が落ちてくる。
「何だよここ・・・・・・」
「今携帯で時代確認するから待っててね」
日菜がスマホで時代を検索する。
「まず優香は降りろ」
「『1582年 6月1日』だって。随分昔まで来たんだね」
「1582年6月1日・・・・・・。何かあった気がするんだが・・・・・・。優香知らないか?」
何か大きな出来事があった気がするんだが・・・・・・。思い出せないな。
「悪いが私は歴史はさっぱり分からん」
使えない奴だ。
「そういえば月ちゃんは?」
「あ、確かに居ない。どこに居るんだ?」
日菜と会話していると、スマホが鳴った。
「月から? もしもし」
『あ、皆そっちに居るの?』
「そうだが、お前はどこに居るんだ?」
『ごめん・・・・・・。私だけ行けなかった。そしてさっきのくしゃみでうっかり年月と曜日、場所も設定してしまったみたいなんだ』
「お前どうやって現代から電話してるんだ?」
「この携帯はネットのある時代を探して自動的にネットに接続してくれるんだ。不要かと思ったけど搭載しておいてよかった」
「備えあれば憂いなしって本当なんだな・・・・・・」
こんな状況でどうでもいいことを一つ学んでしまう優香なのであった。
「でも、せっかく行ったんだしその時代を楽しんできたら? お金は後で渡すよ」
「どうやって。うおっ!」
空から謎の袋が落ちてきた。ものすごく痛い。
「・・・・・・銭貨?」
「その時代のお金だよ。現代の価値で大体20万円ぐらいあるかな。よく考えて使ってね」
「どこから手に入れたんだよ・・・・・・」
「で、城下町に来たわけだが・・・・・・」
「何か皆私たちのこと見てくるな」
優香が不安そうに言う。
「まぁ、そりゃこんな格好だもんな・・・・・・。安土桃山時代に学校の制服着てる人がどこに居るってんだよ」
「でもこれしかないからね。気にしないでおこうか」
「いやー、まさかこの時代の三色団子が食べられるとはな!」
私は団子を食べながら話す。
まず私たちは、この時代の三色団子を食べることにした。
「まさにこの時代ならではの味だね!」
私たちが仲良く団子を食べていると。
「おいお主ら、怪しい格好をしているな」
「は?」
何人もの武士が刀を構え、取り囲んできた。
「うわー・・・・・・、めんどくさい事になった・・・・・・」
「この時代で問題ごとを起こしたくはなかったが、やむを得ん」
私は残っていた串刺し団子を咥え一気に横にスライドする。
「ごっそさん。おばちゃん、危ないから下がっときな。これはお代だ」
「う、うん!」
お金を受け取った店員たちは駆け足で店内に逃げていった。
「未来人を舐めないでもらいたいもんだね」
「いざ、参る!」
武士たちが一気に襲ってきた。
「ふぅ。こんなものかな」
道に大量に倒れた武士たちを見て優香は言う。
「エヴァに見せてやりたかったな」
「じゃあ、観光の続きをしようか!」
「わぁ・・・・・・、きれいなお寺」
日菜が寺を見上げる。何かこの時代の寺だとご利益がありそうだな。
「日菜、面倒ごとになる前に立ち去るぞ・・・・・・」
「おっ邪魔しまーす!」
「「たわけぇーーーーー!!」」
私と優香は大声で叫ぶ。
「おい、どうすんだよ! あいつ一人で行っちまったぞ!」
「とにかく後を追うぞ!」
「お、お前たち何奴だ!」
早速武士に見つかった。
「今日は最悪だよ・・・・・・」
「武士と素手で戦えって、一体どういう運命なのだか」
「ふぅ。ここまで連戦やると疲れるな・・・・・・。・・・・・・優香!」
後ろを向くと、優香が地面に押し倒され、刀を素手で押さえていた。手からは血がぼたぼたと垂れている。
「優香に手を出すな!」
「動くな」
私は武士に刀を向けられた。流石の私でも武士に刀を向けられたときの対処法は分からない。
「ここまで頑張ってきた努力は見事だった。だがここで終わりだ・・・・・・っ!」
「?」
武士が私に刀を振り下ろした瞬間、武士が倒れこんだ。
「まったく君たちには世話が焼けるねぇ」
目の前に立っていたのは白衣を着た少女。
「綾目!」
「先輩の頼みで君たちを守るように言われていてね。やっぱり来て正解だったよ」
「た、助かったぜ。綾目後ろ!」
会話中の隙をつかれ、綾目が武士に一刀両断された。綾目はその場に倒れこむ。
「・・・・・・はっはっは! まさか刀で斬られて死ぬ実験が出来るなんてね! いい体験になったよ!」
綾目はゾンビのように起き上がり、綾目を切った武士と優香を襲っている武士に試験管を投げつける。そのまま武士たちは倒れこんだ。
「ありがとうございます・・・・・・」
「礼には及ばないさ。さぁ、日菜ちゃんを探そう」
「にしてもどんだけ大きいんだよこの寺・・・・・・」
「ふむ。この寺の柱の一部を持ち帰って実験材料にしたいものだね」
「やめろ研究依存症。お前のことここで浄化してもらうぞ」
私たちが廊下を走りながら日菜を探していると。
「出たなくせ者!」
「どんだけいるんだよ! いい加減うんざりするわ!」
「こんなに大量の相手と戦うのは無理だね。いったん逃げようか」
私たちは回れ右して走り出した。
「だめだ・・・・・・、私もう無理だ・・・・・・」
「優香しっかりしろ! ここで止まったら死ぬぞ!」
「仕方ない。ひとまずこの部屋に避難しよう!」
「ここに怪しい者が入りませんでしたか?」
「・・・・・・いや、見ておらん」
「そうですか。すみませんでした」
武士たちの声が遠ざかっていく。
「すみません、助けてもらって」
私たちはふすまから出る。
「・・・・・・気にするな。お前たちからは、なにやら特別な感じがしたものでな」
「あ、実ちゃん! どうしてここにいるの?」
「日菜!」
日菜は助けてくれた男の人と将棋をしていた。
「うーん、負けた! おじさん、もう一回!」
「ははは、良いだろう。何度でも相手になってやろう!」
・・・・・・ちょっと待て。
「対局の最中に申し訳ないのですが、お名前を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「わしの名は、『織田信長』だ」
やっぱりー!
「お、おい日菜! お前この方がどんな方であるか分かってるのか!?」
「え? 刀を持ったカッコいいおじさんでしょ? おじさん刀見せて?」
「いいぞ! わしの刀、好きなだけ見るといい!」
信長は腰の刀を抜いた。
「ギャー! 斬られる!」
「いや別に、何も悪くない者を斬ったりはせんが・・・・・・」
信長はしょんぼりとした顔をする。
「・・・・・・なぁ優香」
「分かってる。この年月と曜日。そしてこの寺」
「信長さん。この寺はなんというのですか?」
「何だそんなことも知らんのか。『本能寺』だ」
私と優香は一気に血の気が引く。
「『1582年6月2日』・『織田信長』・『本能寺』」
「『本能寺の変』の日じゃねぇかよー!」
私は急いでスマホで時計を確認する。今の時刻は6月2日の午前1時だ。
「まずい、もう時間がない!」
ここにいたら私たちも光秀に殺されてしまう。
「日菜、早く帰るぞ!」
「え? どうして?」
「ここにいたら私たちまで殺されるんだよ!」
「お主達、どういうことだ?」
信長が私に問いかける。そりゃあ、あと数時間もたたないうちに自分が死ぬなんて思いもしないだろうからね。
「・・・・・・実はですね」
私は信長に全てを説明した。『本能寺の変』のこと、『明智光秀の裏切り』のこと。知っていることを全て話した。
「・・・・・・そうか」
「すみません、こんなこと知りたくなかったですよね」
「いや、分かっていた。わしも光秀に厳しく当たりすぎたからな。光秀がわしに恨みを抱くのも当然のことだ」
信長は少しもおびえる様子もなく。静かに話した。これが幾多の合戦を勝ち抜いてきたものの心の強さか。
「信長さん、早く逃げましょう。今ならまだ間に合います」
「・・・・・・いや、わしは残る」
「どうしてですか!? ここにいたら貴方が死んでしまうのですよ!」
「・・・・・・お前たちは未来の童(わらべ)なのだろう」
「知ってたんですね」
「いや当たり前じゃろ。未来の者でなければどうやってわしが死ぬことが分かったんじゃ・・・・・・」
信長さん意外とツッコミ向いてそうだな。
「・・・・・・ならば、最期にわしに未来のこの国のことを教えてくれぬか?」
「・・・・・・はい」
私はゆっくりとうなずいた。
「未来のこの国も大変なのじゃな」
「いえいえ、この時代のほうがもっと大変ですよ」
だって平気で刀持ち歩いてるんだもん。
「・・・・・・実ちゃん、体が透けてるよ!」
「お前もだぞ! 優香も、綾目も!」
おそらくこの時代にいられる時間の限界なのだろう。
「お主達ともこれで別れか。しばしの間であったが、楽しかったぞ」
信長は弓を持った。
「信長さん!」
「未来の童たちよ。これから先、お主達は様々な苦労をする。困難にぶつかり、理不尽なこともあるだろう」
「おじさん・・・・・・」
信長は私たちの方を向く。
「だが、戦いぬけ。どれだけ倒されようと、どれだけ斬られようと、意地でも立ち上がって抗いぬけ。その先に、お前たちの望む誰も見たことのない世界が広がっているのだ」
「・・・・・・はい!」
「そして、日菜」
「なんですか?」
「お主との対局、存分に楽しめたぞ。また生まれ変わったら、一緒に対局してくれるか?」
「・・・・・・やるよ! いっぱいいっぱい練習して、次こそはおじさんに勝つからね!」
「そうか」
信長は日菜の頭をなでる。
「それではさらばだ、未来の童たちよ。この国の未来、お主達に任せたぞ」
私たちは再び粒子となって、部屋から消えた。
「あれ・・・・・・? 帰ってきたのかな」
「ここは・・・・・・」
周りを見渡すと、書類などが散らかった部屋が見える。
「あ、お帰り。無事だったんだね」
「どこが無事に見えるんだよ」
優香なんて思いっきり手のひら斬られてたぞ。
「実ちゃん。あのおじさん、いい人だったね」
日菜が話しかけてきた。
「・・・・・・そうだな」
今日は、帰る前に図書室に寄って信長の本でも読もうかな。
「何だろうね~。月ちゃんが私たちを呼ぶなんて」
廊下を歩きながら日菜が話す。
「いい加減私たちの行動に堪忍袋の緒が切れたんじゃないか? ここ最近本当にやらかしてきたからな」
「え? 私たち何かやったかな」
「お前の罪を数えろ」
「私は何もやってないよ!?」
どの口がそんなこと言ってんだよ。
「とにかく、月に言われたらすぐに謝るんだぞ。お前は土下座だ」
「何で!?」
「で、私たちを呼び出して何の用だ」
月の部屋に来た私は、そう質問する。私だって暇じゃないんだよ。日菜は知らんが。
「ついに・・・・・・、ついに完成したんだよ」
「だから何がだ。早く言え」
無駄に溜められるとイライラしてくるんだが。
「それはね・・・・・・!」
てんてんてんてんてんてんてんてん・・・・・・(ドラ○もんの道具出すときのBGM)
テッテレー!
「『時空転送携帯電話』~!」
「二話連続で時間系の道具かよ!」
「この道具はね、自分の行きたい場所、年月と曜日を携帯に入力すれば、その時代に行くことが出来るんだ! ちなみにちゃんとネットもゲームも出来るし、電話機能つきだよ」
「ていうかこれ携帯電話じゃなくてスマホだよな?」
「携帯電話のほうがクールでしょ。全部漢字だし」
昭和の不良かよ。何でもかんでも全部漢字にして『夜露死苦』とか服に書く人たち。
「じゃあ早速行ってみようか」
「良いのか? 前回みたいに面倒なことにならなければいいんだが・・・・・・」
「この装置にはマスター携帯があるからね。各自で好きなところに行けるけど、私の持つマスターで全ての携帯を管理できるからね」
「なるほど。日菜対策ってことか」
「これ以上この子に好き勝手させられないんだよ」
「・・・・・・心中お察しします」
「おい、何でこんなところにいるんだよ」
「優香? 何でここにいるんだよ」
「今日一緒に出かける約束してただろ。それなのに急に居なくなるから探したんだぞ」
「・・・・・・優香、何でここが分かったんだ? 怒らないから正直に言ってごらん?」
「私たちのスマホは、友達同士だから位置情報確認できるようになってるんだよ。この前一緒にやっただろ?」
「あー・・・・・・。思い出した」
確かあの時 (二十話参照)次誘拐されても場所が分かるようにって、優香たちと位置情報の登録したんだったな
日菜は機種が違うから出来なかったけど。
「私もスマホ買い換えようかな・・・・・・」
「やめとけ」
「あ、そうだ。優香ちゃんも一緒に行こうよ!」
「どこにだ」
質問する優香を無視し、日菜はさっきの携帯 (スマホ)を手渡す。
「何だこれ」
「それは使ってからのお楽しみだよ!」
「じゃあ、そろそろ出発しようか。皆どこに行きたい?」
「私は大正時代だな」
大正ロマンを見てみたいんだよな~。温泉街とか。
「私は西部開拓時代だ。ガンマンを見てみたいんだ」
「えっとね、私は・・・・・・、何か女の人が可愛い服いっぱい着てる時代に行きたい!」
多分日菜が言ってるの平安時代だな。そして服いっぱい着てるのって『十二単』のことだろ。
「それじゃあ・・・・・・へっくし!」
急に月がくしゃみをした。
「風邪引いたか?」
優香が心配する。
「違うよ、もう春だから花粉が多いんだよ。主に植物園から出てくる花粉とか」
「あんな大量の花とかあったらそりゃ花粉も来るわな」
「大丈夫だよ。それじゃあ気を取り直して・・・・・・へっくしょん!」
その瞬間、私たちがこの空間から消えた。
その後、私たちは謎の穴から放り出された。
「うえっ! 痛ぇ・・・・・・」
その上に優香が落ちてくる。
「何だよここ・・・・・・」
「今携帯で時代確認するから待っててね」
日菜がスマホで時代を検索する。
「まず優香は降りろ」
「『1582年 6月1日』だって。随分昔まで来たんだね」
「1582年6月1日・・・・・・。何かあった気がするんだが・・・・・・。優香知らないか?」
何か大きな出来事があった気がするんだが・・・・・・。思い出せないな。
「悪いが私は歴史はさっぱり分からん」
使えない奴だ。
「そういえば月ちゃんは?」
「あ、確かに居ない。どこに居るんだ?」
日菜と会話していると、スマホが鳴った。
「月から? もしもし」
『あ、皆そっちに居るの?』
「そうだが、お前はどこに居るんだ?」
『ごめん・・・・・・。私だけ行けなかった。そしてさっきのくしゃみでうっかり年月と曜日、場所も設定してしまったみたいなんだ』
「お前どうやって現代から電話してるんだ?」
「この携帯はネットのある時代を探して自動的にネットに接続してくれるんだ。不要かと思ったけど搭載しておいてよかった」
「備えあれば憂いなしって本当なんだな・・・・・・」
こんな状況でどうでもいいことを一つ学んでしまう優香なのであった。
「でも、せっかく行ったんだしその時代を楽しんできたら? お金は後で渡すよ」
「どうやって。うおっ!」
空から謎の袋が落ちてきた。ものすごく痛い。
「・・・・・・銭貨?」
「その時代のお金だよ。現代の価値で大体20万円ぐらいあるかな。よく考えて使ってね」
「どこから手に入れたんだよ・・・・・・」
「で、城下町に来たわけだが・・・・・・」
「何か皆私たちのこと見てくるな」
優香が不安そうに言う。
「まぁ、そりゃこんな格好だもんな・・・・・・。安土桃山時代に学校の制服着てる人がどこに居るってんだよ」
「でもこれしかないからね。気にしないでおこうか」
「いやー、まさかこの時代の三色団子が食べられるとはな!」
私は団子を食べながら話す。
まず私たちは、この時代の三色団子を食べることにした。
「まさにこの時代ならではの味だね!」
私たちが仲良く団子を食べていると。
「おいお主ら、怪しい格好をしているな」
「は?」
何人もの武士が刀を構え、取り囲んできた。
「うわー・・・・・・、めんどくさい事になった・・・・・・」
「この時代で問題ごとを起こしたくはなかったが、やむを得ん」
私は残っていた串刺し団子を咥え一気に横にスライドする。
「ごっそさん。おばちゃん、危ないから下がっときな。これはお代だ」
「う、うん!」
お金を受け取った店員たちは駆け足で店内に逃げていった。
「未来人を舐めないでもらいたいもんだね」
「いざ、参る!」
武士たちが一気に襲ってきた。
「ふぅ。こんなものかな」
道に大量に倒れた武士たちを見て優香は言う。
「エヴァに見せてやりたかったな」
「じゃあ、観光の続きをしようか!」
「わぁ・・・・・・、きれいなお寺」
日菜が寺を見上げる。何かこの時代の寺だとご利益がありそうだな。
「日菜、面倒ごとになる前に立ち去るぞ・・・・・・」
「おっ邪魔しまーす!」
「「たわけぇーーーーー!!」」
私と優香は大声で叫ぶ。
「おい、どうすんだよ! あいつ一人で行っちまったぞ!」
「とにかく後を追うぞ!」
「お、お前たち何奴だ!」
早速武士に見つかった。
「今日は最悪だよ・・・・・・」
「武士と素手で戦えって、一体どういう運命なのだか」
「ふぅ。ここまで連戦やると疲れるな・・・・・・。・・・・・・優香!」
後ろを向くと、優香が地面に押し倒され、刀を素手で押さえていた。手からは血がぼたぼたと垂れている。
「優香に手を出すな!」
「動くな」
私は武士に刀を向けられた。流石の私でも武士に刀を向けられたときの対処法は分からない。
「ここまで頑張ってきた努力は見事だった。だがここで終わりだ・・・・・・っ!」
「?」
武士が私に刀を振り下ろした瞬間、武士が倒れこんだ。
「まったく君たちには世話が焼けるねぇ」
目の前に立っていたのは白衣を着た少女。
「綾目!」
「先輩の頼みで君たちを守るように言われていてね。やっぱり来て正解だったよ」
「た、助かったぜ。綾目後ろ!」
会話中の隙をつかれ、綾目が武士に一刀両断された。綾目はその場に倒れこむ。
「・・・・・・はっはっは! まさか刀で斬られて死ぬ実験が出来るなんてね! いい体験になったよ!」
綾目はゾンビのように起き上がり、綾目を切った武士と優香を襲っている武士に試験管を投げつける。そのまま武士たちは倒れこんだ。
「ありがとうございます・・・・・・」
「礼には及ばないさ。さぁ、日菜ちゃんを探そう」
「にしてもどんだけ大きいんだよこの寺・・・・・・」
「ふむ。この寺の柱の一部を持ち帰って実験材料にしたいものだね」
「やめろ研究依存症。お前のことここで浄化してもらうぞ」
私たちが廊下を走りながら日菜を探していると。
「出たなくせ者!」
「どんだけいるんだよ! いい加減うんざりするわ!」
「こんなに大量の相手と戦うのは無理だね。いったん逃げようか」
私たちは回れ右して走り出した。
「だめだ・・・・・・、私もう無理だ・・・・・・」
「優香しっかりしろ! ここで止まったら死ぬぞ!」
「仕方ない。ひとまずこの部屋に避難しよう!」
「ここに怪しい者が入りませんでしたか?」
「・・・・・・いや、見ておらん」
「そうですか。すみませんでした」
武士たちの声が遠ざかっていく。
「すみません、助けてもらって」
私たちはふすまから出る。
「・・・・・・気にするな。お前たちからは、なにやら特別な感じがしたものでな」
「あ、実ちゃん! どうしてここにいるの?」
「日菜!」
日菜は助けてくれた男の人と将棋をしていた。
「うーん、負けた! おじさん、もう一回!」
「ははは、良いだろう。何度でも相手になってやろう!」
・・・・・・ちょっと待て。
「対局の最中に申し訳ないのですが、お名前を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」
「わしの名は、『織田信長』だ」
やっぱりー!
「お、おい日菜! お前この方がどんな方であるか分かってるのか!?」
「え? 刀を持ったカッコいいおじさんでしょ? おじさん刀見せて?」
「いいぞ! わしの刀、好きなだけ見るといい!」
信長は腰の刀を抜いた。
「ギャー! 斬られる!」
「いや別に、何も悪くない者を斬ったりはせんが・・・・・・」
信長はしょんぼりとした顔をする。
「・・・・・・なぁ優香」
「分かってる。この年月と曜日。そしてこの寺」
「信長さん。この寺はなんというのですか?」
「何だそんなことも知らんのか。『本能寺』だ」
私と優香は一気に血の気が引く。
「『1582年6月2日』・『織田信長』・『本能寺』」
「『本能寺の変』の日じゃねぇかよー!」
私は急いでスマホで時計を確認する。今の時刻は6月2日の午前1時だ。
「まずい、もう時間がない!」
ここにいたら私たちも光秀に殺されてしまう。
「日菜、早く帰るぞ!」
「え? どうして?」
「ここにいたら私たちまで殺されるんだよ!」
「お主達、どういうことだ?」
信長が私に問いかける。そりゃあ、あと数時間もたたないうちに自分が死ぬなんて思いもしないだろうからね。
「・・・・・・実はですね」
私は信長に全てを説明した。『本能寺の変』のこと、『明智光秀の裏切り』のこと。知っていることを全て話した。
「・・・・・・そうか」
「すみません、こんなこと知りたくなかったですよね」
「いや、分かっていた。わしも光秀に厳しく当たりすぎたからな。光秀がわしに恨みを抱くのも当然のことだ」
信長は少しもおびえる様子もなく。静かに話した。これが幾多の合戦を勝ち抜いてきたものの心の強さか。
「信長さん、早く逃げましょう。今ならまだ間に合います」
「・・・・・・いや、わしは残る」
「どうしてですか!? ここにいたら貴方が死んでしまうのですよ!」
「・・・・・・お前たちは未来の童(わらべ)なのだろう」
「知ってたんですね」
「いや当たり前じゃろ。未来の者でなければどうやってわしが死ぬことが分かったんじゃ・・・・・・」
信長さん意外とツッコミ向いてそうだな。
「・・・・・・ならば、最期にわしに未来のこの国のことを教えてくれぬか?」
「・・・・・・はい」
私はゆっくりとうなずいた。
「未来のこの国も大変なのじゃな」
「いえいえ、この時代のほうがもっと大変ですよ」
だって平気で刀持ち歩いてるんだもん。
「・・・・・・実ちゃん、体が透けてるよ!」
「お前もだぞ! 優香も、綾目も!」
おそらくこの時代にいられる時間の限界なのだろう。
「お主達ともこれで別れか。しばしの間であったが、楽しかったぞ」
信長は弓を持った。
「信長さん!」
「未来の童たちよ。これから先、お主達は様々な苦労をする。困難にぶつかり、理不尽なこともあるだろう」
「おじさん・・・・・・」
信長は私たちの方を向く。
「だが、戦いぬけ。どれだけ倒されようと、どれだけ斬られようと、意地でも立ち上がって抗いぬけ。その先に、お前たちの望む誰も見たことのない世界が広がっているのだ」
「・・・・・・はい!」
「そして、日菜」
「なんですか?」
「お主との対局、存分に楽しめたぞ。また生まれ変わったら、一緒に対局してくれるか?」
「・・・・・・やるよ! いっぱいいっぱい練習して、次こそはおじさんに勝つからね!」
「そうか」
信長は日菜の頭をなでる。
「それではさらばだ、未来の童たちよ。この国の未来、お主達に任せたぞ」
私たちは再び粒子となって、部屋から消えた。
「あれ・・・・・・? 帰ってきたのかな」
「ここは・・・・・・」
周りを見渡すと、書類などが散らかった部屋が見える。
「あ、お帰り。無事だったんだね」
「どこが無事に見えるんだよ」
優香なんて思いっきり手のひら斬られてたぞ。
「実ちゃん。あのおじさん、いい人だったね」
日菜が話しかけてきた。
「・・・・・・そうだな」
今日は、帰る前に図書室に寄って信長の本でも読もうかな。
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スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
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普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
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※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
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