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第二十八話 委員長はコミュ障です
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「いやー、それにしても最近強いプレイヤーがいないからつまんないな」
私は部屋でパソコンでゲームをしながらそうつぶやく。日菜は自室にあるテレビでアニメを見ている。
「実ちゃんがゲーム廃人なだけでしょ。普通はそんなに強い人はいないんだよ?」
「お前の口からゲーム廃人という言葉が出てくるとはな・・・・・・。どこで覚えたんだそんな言葉」
自分が強すぎるとしても、相手が弱すぎて面白くないんだもん。たまに相手が10人くらいでチーム作って対戦してくるけど、全部返り討ちにしてやってるさ。
「お前が怪獣のように怪力なのと同じだ。弱いプレイヤーは戦ってて面白くないんだよ」
「仮にも私は年頃の乙女なんだけどなぁ」
「自分の過去の体力テストとか見てみろ。・・・・・・って何かめっちゃ強い人いる!?」
「実ちゃんなら余裕でしょ」
「いや、こいつ強すぎる。多分負ける」
私の銃撃を軽々とかわし、超高速で私に攻撃を仕掛けてくる。もはやチートを疑うレベルだ。
「・・・・・・負けた」
「え!? 嘘でしょ!? 実ちゃんが負けたの!?」
このゲームを始めて以来、無敗を築きあげてきた私だったが・・・・・・。とうとうその伝説は終わってしまった。
「私が・・・・・・、負けるなんて」
「実ちゃん、ドンマイ!」
日菜はにっこりと笑いながら、親指を立てる。地味に腹立つ。
「この人、何者なんだよ・・・・・・」
次の日
「実ちゃん元気ないね?」
二人で並んで登校していた。
「当たり前だろ・・・・・・。私の無敗伝説が昨日で幕を閉じたんだぞ・・・・・・。あいつ絶対に許さん」
私はがっくりと肩を落とす。怒りと悲しみが同時に来たので、もう私の心情が訳の分からないことになっている。
「そんなに気にしなくてもいいんじゃない? ゲームならいつでも出来るし」
「ゲーマーの世界はそんなに甘いもんじゃないんだよ」
いつでも能天気なこいつには分からないだろうけどな。
「結局スマホゲームで気を紛らわすのかい」
入室し、席に付いた瞬間に私はスマホでゲームを始めた。ちなみにジャンルはリズムゲームだ。可愛い女子高生たちに癒されないとやってられないんだよ!
「あっクソ! ミスった・・・・・・」
「とりあえず実ちゃんがとても怒っているのは伝わったよ」
やはり精神状態がよろしくない状態でやってもうまくいくはずもなく、結果、惨敗。
「ヤベェ、昨日と今日は本気で絶不調だ」
もうあまりにも腹が立つので壁に蹴りを入れてやろうかと席を立った。
「はい、ホームルームはじめるから席着いてね」
「あーあ、センセイ来ちゃった」
「前から思ってたんだけど、実ちゃんの「先生」の言い方ものすごく悪意あるよね?」
「・・・・・・そうですが何か?」
堂々と開き直った。
「あと今日は、「会計・経費委員長」から連絡があるそうです。入ってきて」
「は、はい・・・・・・」
おどおどと入ってきたのは、黒髪長髪の少女だった。
「あれ? あの人前に見た覚えがあるんだが」
「あの時生徒会室でゲームやってた方だよ」
詳しくは第十五話参照。
「ど、どうも・・・・・・「会計・経費委員長」の星宮咲です・・・・・・」
すごいビクビクしてるな。比喩じゃなくてね。あんたそれでも委員長かよ。
「き、き、今日は・・・・・・大事な連絡があります・・・・・・。・・・・・・ヒィィ!」
おぉ、びっくりした。
「咲ちゃん! どうしたの!?」
咲は突然部屋の隅に逃げだし、そのままうずくまってしまった。
「こ、怖いです・・・・・・」
「怖い?」
センセイが首を傾げる。
「はい・・・・・・。人が・・・・・・私を見てる・・・・・・。幾多の目が・・・・・・私を」
咲はまた悲鳴を上げながら震えてしまった。
「じゃあ私が読むから原稿もらえるかな?」
「はい、ど、どうぞ・・・・・・」
このセンセイ本当にいつもお疲れ様です。ショウグンの時とか。
「結局どうでもいい話じゃないか」
私たちに伝えられたのは、ただの購買部などの売り上げだった。これ私たちに伝える必要あった?
「あんな人が委員長で大丈夫かよ・・・・・・。この学校にはまともな委員長はいないのか?」
「まぁ、冥華ちゃんはともかく、水星様とかは真面目だし。みんなそこがそれぞれの特技と個性を最大限発揮できるところなんだよ」
「そんなものかねぇ」
放課後
「さてと。帰るぞ、日菜」
「うん!」
結局何事もなく一日が終わってしまった。久々だな、こんなに何も事件が起こらない日は。
「ん? 実ちゃん、倉庫の隅に誰かいるよ?」
「ほんとだ」
倉庫の隅に、黒い布をかぶりながらもぞもぞしている生徒がいた。
「何やってんだ?」
急いで駆け寄ってみると、「ふへへ・・・・・・」と謎の笑い声がした。
「え? 怖・・・・・・」
「もしもーし」
日菜が生徒に向かって呼びかける。
「ひぃぃぃ!」
あ、犯人確定だ。絶対に朝の委員長だろ。
「布被りながらゲームしてると目ぇ悪くすんぞ」
「実ちゃんの喋り方が悪い人みたいだね・・・・・・」
「・・・・・・」
黙ってばかりで何も話さないので、被っている布をむりやりはがした。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「おぉっ!? 急に叫ぶなよ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・・」
委員長は頭に手を当ててガクガクと震えてだしてしまった。パニックホラーの映画かよ。
「とりあえず落ち着け」
そう声をかけても、委員長は壊れたロボットのように「ごめんなさい」を連呼し続ける。何かだんだん怖くなってきた。
すると、突然日菜が委員長に抱きついた。
「おい! 何やってんだよ!」
「大丈夫ですよ。怖くないですよ」
「あ、あ、あぁ・・・・・・」
委員長も日菜を抱え、少しは落ち着いてきた。
だが、その代わり私には嫉妬という感情が生まれてしまった。
「ふぅ・・・・・・。ど、どうしたんですか? 帰宅部は下校時間ですよ・・・・・・?」
「倉庫の隅でうずくまっている女子高生見て放っておく人がどこにいるってんだよ」
「すみません・・・・・・。私はゲームをしていただけです。・・・・・・あなたたち、どこかで見たような・・・・・・?」
「あの時生徒会室に来た人たちだ。覚えてくれたんだな」
「あぁ、あの時の・・・・・・」
「あと日菜をぬいぐるみみたいに抱きかかえるのやめてくれないか?」
あー、だんだん腹立ってきたわ。一発殴ってやろうかな。何でこいつが日菜のこと軽々しく抱きかかえてんの?
「えへへ・・・・・・咲様暖かい」
「・・・・・・チッ」
「実ちゃん今思いっきり舌打ちしなかった?」
「わ、私も聞こえました・・・・・・」
「え? 舌打ちなんてしてないよ?」
私は昔から嘘が大得意なのだ。
「で、委員長は何のゲームやってたんだ?」
「あ、これは、最近流行のガンシューティングゲームです。面白いので是非やってみてください」
私はゲーム機の画面を覗き込む。
「あ、これ私もやってるゲームだ。奇遇だな」
「そ、そうなんですか? 同志がいてくれて嬉しいです。今度一緒にやりましょう」
「そうだな。・・・・・・ってあんためっちゃ上手いな!?」
「私、ゲームは得意なんです。昔からゲームばっかりやってたので」
いや上手いで片付くレベルじゃないだろ。まるで「昨日私がやられたみたい」に。
「ん? 委員長、ちょっとプレイヤー名見せてくれないか?」
「? いいですけど・・・・・・」
私は委員長のプレイヤー名を確認する。
「・・・・・・あんた、『minori』ってプレイヤーに覚えはないか?」
「『minori』・・・・・・。あ、昨日私と対戦した人です。ものすごく強かったです。またお手合わせ願いたいです。その人がどうかしたんですか?」
「それ、私なんだけど」
「え?」
「運がいいなぁ。こんな身近に、リベンジできる奴がいるとはな! おい、もう一回対戦しろ」
そう言いながら私は予備としてスマホにダウンロードしておいた、同じゲームを起動する。
「実ちゃん、それ別に咲様関係ないんじゃ・・・・・・」
「私はこいつのせいで無敗伝説終わらせられたんだよ! 今度こそ絶対に勝つ」
分かってはいる。こんなことをしても無敗伝説は戻ってこないと。だがな、私にも廃人ゲーマーとしての意地ってもんがあんだよ!
「・・・・・・しゃーねーな。泣いて帰るんじゃないぞ?」
「は?」
委員長は突然人が変わったような喋り方をした。あとなんだか声も低くなっている。
「ほら、とっととフィールド選びなよ。お前の好きなところでいいぞ」
「え・・・・・・? もしかして委員長二重人格?」
だが今更後には引けないので、せめてものハンデとして自分の大得意なフィールドを選択した。このフィールドは私の庭同然だ。
「ふーん。このフィールドは私には分が悪いな」
よし、勝ったな。
「・・・・・・負けた」
「何で、実ちゃんがこんなにも負けるの・・・・・・」
また惨敗してしまった。私の大得意なフィールドだというのにだ。
「・・・・・・あ、す、すみません! また勝ってしまって・・・・・・」
「元に戻ったね」
もう委員長絶対に二重人格だろ。
「わ、私は昔からゲームをすると性格が変わるらしくて・・・・・・。周りから指摘されて始めて気付いたんですけど・・・・・・」
「怖いわ。そしてまた布を被るな」
「私は今日は生徒会の見回り当番なので、深夜まで残らないといけないんです」
「深夜の学校かぁ。響きいいなぁ」
日菜がそわそわしだした。度胸あるなこいつ。
「言っておきますけど、この学校は深夜には警備ロボットが巡回してますよ?」
「あのロボットか・・・・・・ (十四話・二十六話参照)」
「や、やっぱりやめようかな~」
日菜もあのロボットの恐怖は身をもって味わったからな。少しは懲りたんだろ。
「じゃあ私たちはそろそろ帰るんで。日菜帰るぞ」
「そうだね。咲様、そろそろ離していただいてもよろしいでしょうか」
「・・・・・・もうちょっとだけ抱きつきたいです」
委員長は逃がさないと言わんばかりに日菜を強く抱きしめた。
「・・・・・・とりあえずこの委員長ぶん殴ってから帰るか」
私は拳を振り上げて委員長に襲い掛かった。
「? 実ちゃんストップ! ストーップ!」
「オラァァァ!」
その後、私はセンセイに止められて説教を喰らったのだった。
私は部屋でパソコンでゲームをしながらそうつぶやく。日菜は自室にあるテレビでアニメを見ている。
「実ちゃんがゲーム廃人なだけでしょ。普通はそんなに強い人はいないんだよ?」
「お前の口からゲーム廃人という言葉が出てくるとはな・・・・・・。どこで覚えたんだそんな言葉」
自分が強すぎるとしても、相手が弱すぎて面白くないんだもん。たまに相手が10人くらいでチーム作って対戦してくるけど、全部返り討ちにしてやってるさ。
「お前が怪獣のように怪力なのと同じだ。弱いプレイヤーは戦ってて面白くないんだよ」
「仮にも私は年頃の乙女なんだけどなぁ」
「自分の過去の体力テストとか見てみろ。・・・・・・って何かめっちゃ強い人いる!?」
「実ちゃんなら余裕でしょ」
「いや、こいつ強すぎる。多分負ける」
私の銃撃を軽々とかわし、超高速で私に攻撃を仕掛けてくる。もはやチートを疑うレベルだ。
「・・・・・・負けた」
「え!? 嘘でしょ!? 実ちゃんが負けたの!?」
このゲームを始めて以来、無敗を築きあげてきた私だったが・・・・・・。とうとうその伝説は終わってしまった。
「私が・・・・・・、負けるなんて」
「実ちゃん、ドンマイ!」
日菜はにっこりと笑いながら、親指を立てる。地味に腹立つ。
「この人、何者なんだよ・・・・・・」
次の日
「実ちゃん元気ないね?」
二人で並んで登校していた。
「当たり前だろ・・・・・・。私の無敗伝説が昨日で幕を閉じたんだぞ・・・・・・。あいつ絶対に許さん」
私はがっくりと肩を落とす。怒りと悲しみが同時に来たので、もう私の心情が訳の分からないことになっている。
「そんなに気にしなくてもいいんじゃない? ゲームならいつでも出来るし」
「ゲーマーの世界はそんなに甘いもんじゃないんだよ」
いつでも能天気なこいつには分からないだろうけどな。
「結局スマホゲームで気を紛らわすのかい」
入室し、席に付いた瞬間に私はスマホでゲームを始めた。ちなみにジャンルはリズムゲームだ。可愛い女子高生たちに癒されないとやってられないんだよ!
「あっクソ! ミスった・・・・・・」
「とりあえず実ちゃんがとても怒っているのは伝わったよ」
やはり精神状態がよろしくない状態でやってもうまくいくはずもなく、結果、惨敗。
「ヤベェ、昨日と今日は本気で絶不調だ」
もうあまりにも腹が立つので壁に蹴りを入れてやろうかと席を立った。
「はい、ホームルームはじめるから席着いてね」
「あーあ、センセイ来ちゃった」
「前から思ってたんだけど、実ちゃんの「先生」の言い方ものすごく悪意あるよね?」
「・・・・・・そうですが何か?」
堂々と開き直った。
「あと今日は、「会計・経費委員長」から連絡があるそうです。入ってきて」
「は、はい・・・・・・」
おどおどと入ってきたのは、黒髪長髪の少女だった。
「あれ? あの人前に見た覚えがあるんだが」
「あの時生徒会室でゲームやってた方だよ」
詳しくは第十五話参照。
「ど、どうも・・・・・・「会計・経費委員長」の星宮咲です・・・・・・」
すごいビクビクしてるな。比喩じゃなくてね。あんたそれでも委員長かよ。
「き、き、今日は・・・・・・大事な連絡があります・・・・・・。・・・・・・ヒィィ!」
おぉ、びっくりした。
「咲ちゃん! どうしたの!?」
咲は突然部屋の隅に逃げだし、そのままうずくまってしまった。
「こ、怖いです・・・・・・」
「怖い?」
センセイが首を傾げる。
「はい・・・・・・。人が・・・・・・私を見てる・・・・・・。幾多の目が・・・・・・私を」
咲はまた悲鳴を上げながら震えてしまった。
「じゃあ私が読むから原稿もらえるかな?」
「はい、ど、どうぞ・・・・・・」
このセンセイ本当にいつもお疲れ様です。ショウグンの時とか。
「結局どうでもいい話じゃないか」
私たちに伝えられたのは、ただの購買部などの売り上げだった。これ私たちに伝える必要あった?
「あんな人が委員長で大丈夫かよ・・・・・・。この学校にはまともな委員長はいないのか?」
「まぁ、冥華ちゃんはともかく、水星様とかは真面目だし。みんなそこがそれぞれの特技と個性を最大限発揮できるところなんだよ」
「そんなものかねぇ」
放課後
「さてと。帰るぞ、日菜」
「うん!」
結局何事もなく一日が終わってしまった。久々だな、こんなに何も事件が起こらない日は。
「ん? 実ちゃん、倉庫の隅に誰かいるよ?」
「ほんとだ」
倉庫の隅に、黒い布をかぶりながらもぞもぞしている生徒がいた。
「何やってんだ?」
急いで駆け寄ってみると、「ふへへ・・・・・・」と謎の笑い声がした。
「え? 怖・・・・・・」
「もしもーし」
日菜が生徒に向かって呼びかける。
「ひぃぃぃ!」
あ、犯人確定だ。絶対に朝の委員長だろ。
「布被りながらゲームしてると目ぇ悪くすんぞ」
「実ちゃんの喋り方が悪い人みたいだね・・・・・・」
「・・・・・・」
黙ってばかりで何も話さないので、被っている布をむりやりはがした。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「おぉっ!? 急に叫ぶなよ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・・」
委員長は頭に手を当ててガクガクと震えてだしてしまった。パニックホラーの映画かよ。
「とりあえず落ち着け」
そう声をかけても、委員長は壊れたロボットのように「ごめんなさい」を連呼し続ける。何かだんだん怖くなってきた。
すると、突然日菜が委員長に抱きついた。
「おい! 何やってんだよ!」
「大丈夫ですよ。怖くないですよ」
「あ、あ、あぁ・・・・・・」
委員長も日菜を抱え、少しは落ち着いてきた。
だが、その代わり私には嫉妬という感情が生まれてしまった。
「ふぅ・・・・・・。ど、どうしたんですか? 帰宅部は下校時間ですよ・・・・・・?」
「倉庫の隅でうずくまっている女子高生見て放っておく人がどこにいるってんだよ」
「すみません・・・・・・。私はゲームをしていただけです。・・・・・・あなたたち、どこかで見たような・・・・・・?」
「あの時生徒会室に来た人たちだ。覚えてくれたんだな」
「あぁ、あの時の・・・・・・」
「あと日菜をぬいぐるみみたいに抱きかかえるのやめてくれないか?」
あー、だんだん腹立ってきたわ。一発殴ってやろうかな。何でこいつが日菜のこと軽々しく抱きかかえてんの?
「えへへ・・・・・・咲様暖かい」
「・・・・・・チッ」
「実ちゃん今思いっきり舌打ちしなかった?」
「わ、私も聞こえました・・・・・・」
「え? 舌打ちなんてしてないよ?」
私は昔から嘘が大得意なのだ。
「で、委員長は何のゲームやってたんだ?」
「あ、これは、最近流行のガンシューティングゲームです。面白いので是非やってみてください」
私はゲーム機の画面を覗き込む。
「あ、これ私もやってるゲームだ。奇遇だな」
「そ、そうなんですか? 同志がいてくれて嬉しいです。今度一緒にやりましょう」
「そうだな。・・・・・・ってあんためっちゃ上手いな!?」
「私、ゲームは得意なんです。昔からゲームばっかりやってたので」
いや上手いで片付くレベルじゃないだろ。まるで「昨日私がやられたみたい」に。
「ん? 委員長、ちょっとプレイヤー名見せてくれないか?」
「? いいですけど・・・・・・」
私は委員長のプレイヤー名を確認する。
「・・・・・・あんた、『minori』ってプレイヤーに覚えはないか?」
「『minori』・・・・・・。あ、昨日私と対戦した人です。ものすごく強かったです。またお手合わせ願いたいです。その人がどうかしたんですか?」
「それ、私なんだけど」
「え?」
「運がいいなぁ。こんな身近に、リベンジできる奴がいるとはな! おい、もう一回対戦しろ」
そう言いながら私は予備としてスマホにダウンロードしておいた、同じゲームを起動する。
「実ちゃん、それ別に咲様関係ないんじゃ・・・・・・」
「私はこいつのせいで無敗伝説終わらせられたんだよ! 今度こそ絶対に勝つ」
分かってはいる。こんなことをしても無敗伝説は戻ってこないと。だがな、私にも廃人ゲーマーとしての意地ってもんがあんだよ!
「・・・・・・しゃーねーな。泣いて帰るんじゃないぞ?」
「は?」
委員長は突然人が変わったような喋り方をした。あとなんだか声も低くなっている。
「ほら、とっととフィールド選びなよ。お前の好きなところでいいぞ」
「え・・・・・・? もしかして委員長二重人格?」
だが今更後には引けないので、せめてものハンデとして自分の大得意なフィールドを選択した。このフィールドは私の庭同然だ。
「ふーん。このフィールドは私には分が悪いな」
よし、勝ったな。
「・・・・・・負けた」
「何で、実ちゃんがこんなにも負けるの・・・・・・」
また惨敗してしまった。私の大得意なフィールドだというのにだ。
「・・・・・・あ、す、すみません! また勝ってしまって・・・・・・」
「元に戻ったね」
もう委員長絶対に二重人格だろ。
「わ、私は昔からゲームをすると性格が変わるらしくて・・・・・・。周りから指摘されて始めて気付いたんですけど・・・・・・」
「怖いわ。そしてまた布を被るな」
「私は今日は生徒会の見回り当番なので、深夜まで残らないといけないんです」
「深夜の学校かぁ。響きいいなぁ」
日菜がそわそわしだした。度胸あるなこいつ。
「言っておきますけど、この学校は深夜には警備ロボットが巡回してますよ?」
「あのロボットか・・・・・・ (十四話・二十六話参照)」
「や、やっぱりやめようかな~」
日菜もあのロボットの恐怖は身をもって味わったからな。少しは懲りたんだろ。
「じゃあ私たちはそろそろ帰るんで。日菜帰るぞ」
「そうだね。咲様、そろそろ離していただいてもよろしいでしょうか」
「・・・・・・もうちょっとだけ抱きつきたいです」
委員長は逃がさないと言わんばかりに日菜を強く抱きしめた。
「・・・・・・とりあえずこの委員長ぶん殴ってから帰るか」
私は拳を振り上げて委員長に襲い掛かった。
「? 実ちゃんストップ! ストーップ!」
「オラァァァ!」
その後、私はセンセイに止められて説教を喰らったのだった。
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