私の悠々自適な引きこもり生活は、可愛い女の子によって終わりを迎えてしまいました。

神楽咲久來

文字の大きさ
上 下
20 / 35

第二十話 青春・オン・ステージ

しおりを挟む
「じゃあ今日から二週間修学旅行となりまーす! たくさん学んでたくさん楽しんできてね!」
唐突だが、私たちは今日から修学旅行である。
私たちの目の前に聳え立つのは、どこかの国の国王でも乗せるのかと思うぐらいのバスだった。
「そもそもどうしてこんな真冬に修学旅行やるんだ? 普通は秋とかにやるもんじゃないのか?」
「ウチの学校は三年間、春夏秋冬毎回修学旅行に行くんだよ。社会勉強のためとしてね」
「それだったら学園内だけで良いんじゃ・・・・・・」
だってウチの学園、ほぼ国家じゃん。

「バスって暇だな・・・・・・」
修学旅行あるある1。バス移動中がとても暇。
うん。ゲームしよう。本来スマホゲームはこういう隙間時間を埋めるために作られたものだからな。使わないでどうする!(実個人の意見です)
そう思い、制服のポケットからスマホを取り出そうとする。
「スマホを取り出して何をするおつもりで?」
紫髪の女子生徒からにらみつけられた。
「え? ふ、風紀委員長!?」
「私もいるよ~♪」
「冥華ちゃん! 何で二人ともここに!?」
冥華がこっちを向きながら手を振っていた。
「今さらですか? 私たちは「教育係」として生徒会代表で付き添いで来ているのです。大体、体育委員長。何故貴方と一緒に・・・・・・。生徒会長様も一体何を考えていらしてるのやら」
「そんなこと言わないでよ~。せっかく一緒にお仕事するんだからもっと楽しもうよ!」
「貴方と一緒に仕事をしていいことなんて一度も無かったのです! 貴方のせいで一体どれだけ風紀を乱されたと思っているのですか!?」
「おーい、二人とも。ここで喧嘩するのやめてくれない?」
バスの中で騒ぐほうが私は問題だと思うのだけどな~・・・・・・
「ていうか何であんたたちなんだ? 警備委員長とか他にもいただろ?」
「警備委員長が学園を離れたら、学園の防衛は裸同然です」
「他の方々はいらっしゃらないのですか?」
「確か、会計・経費委員長はゲームでサボりでしょ~? で、衛生委員長はこれまでの行動から自宅謹慎処分だよ。西行ちゃん直々にね」
「さ、西行ちゃん・・・・・・!? 貴方、親愛なる生徒会長様に対してそのような呼び方を・・・・・・。やはり貴方は虫が好きません。今この場で、風紀委員長として貴方に裁きを下します」
そう言い、風紀委員長は腰につけていた手錠を一つ取り出し冥華にかける。
「おっ? やるか~? 面白そう!」
冥華はその手錠を軽々と引きちぎる。
「委員長同士、手加減は無しですよ」

「はぁ、はぁ・・・・・・」
「何でバスの中で戦いを始めるんだよ・・・・・・」
あの後、日菜と私が必死に二人を押さえつけて喧嘩は収まった。
「この戦いはまた後日と致しましょう」
「そうだね! いつでも待ってるよ!」
と、このように仲良く会話をしているように見える二人。だが彼女たちの心の中では、「絶対に負けない」という意地のマグマが煮えたぎっていたのだ。
「でも着いたよ。やっと少しは休めるね・・・・・・」
「とりあえず降りるか」

「ふぅ、タバコが美味い」
「ちょっと! 貴方何故タバコなんて吸っているのですか!?」
優香はバスを降りるなり、タバコを吸い始めた。
ちなみに優香は私たちと同じ班である。
「ここならいい音楽が作れそうね」
「貴方も何故ヘッドフォンを着けているのですか!?」
「こいつは仕方ないんだよ」
さゆりも同じ班である。
「あれ? 今日は如月先輩一緒じゃないの?」
「あなたたちの先輩じゃないわよ。小町は既にここで待機してるわ。ほら、あそこにいるわよ」
「さゆり~。遅かったから心配したよ?」

「ここからは自由行動です。皆、天地学園の生徒として恥の無い行動をするように」
「「「はーい」」」
先生がそう言うと、皆散り散りになった。
「まずはどこ行く? 皆行きたい所言ってみて?」
「ゲームセンター」
「音楽美術館」
「市役所」
「酒蔵」
「ゴルフ場と、バッティングセンター」
誰がどこに行きたいと思っているか当ててみよう。
「ちょっと待って! これ修学旅行だから!」

ひとまず近くのファストフード店で休憩。
「風紀委員長ともあろうものが・・・・・・、ファストフード店だなんて・・・・・・! 健康に悪いです!」
「お前それ、全国のファストフード店の店員が黙ってないぞ。それにあんためちゃくちゃハンバーガー食べてるじゃん」
既に風紀委員長の前には四つのハンバーガーの包み殻がある。
「こ、これは・・・・・・! たまたまあったから注文したまでです! 決して食べたかったからというわけではございません!」
たまたまで片付く量じゃない。何だよ十二個って。
「それで、結局どこに行くの? 早くしないと自由行動終わっちゃうわよ」
さゆりはスムージーを頼み、私はセットを注文した。
「ちょっとトイレに行ってくる」
そう言って私は席を立つ。
「実ちゃんが行くなら私も!」
「来るな」

「ふぅ。あいつらには困ったもんだよ・・・・・・」
特にあの二人、体育委員長と風紀委員長。犬猿の仲・・・・・・いや、冥華は結構仲良くしたってるしな。過去に何かあったのか?
「早く戻るか」
手を洗い、トイレのドアに手をかけた。次の瞬間。
「動くな」
「!」
背中に硬いものを押し付けられた。形状からしてこれは・・・・・・
銃だ。
「安心しろ。何もしなければ、こちらも危害を加えない。ただし、抵抗したら・・・・・・」
複数の大人の男が私を取り囲む。成人男性二~三人だったら余裕で相手できるが、さすがに大人数に勝てるほど私は強くない。日菜とか体育委員長なら余裕だろうが。
ここはおとなしく身を引いたほうが得策だろう。
「・・・・・・分かった」
「いい子だ。じゃあこっちに来い」
・・・・・・一つ言わせてもらうけど、ここ女子トイレだからな?

「実ちゃん遅いね~」
「何やってるんだ? あいつトイレで寝てるのか?」
「私、見てきますね」
不安になったのか、風紀委員長は席を立ちトイレへと向かう。
「委員長行ってらっしゃ~い」
「・・・・・・ハンバーガーの追加注文よろしくお願いします」
「りょうかーい」
冥華は風紀委員長に手を振りながらポテトを食べ続ける。

「実さんがいません・・・・・・」
「え!? どこに行っちゃったんだろう?」
プルルルルル
「電話だ。あれ? 知らない番号からだよ?」
冥華のスマホから着信音が鳴る。
「はい、もしもし」
『お前らがこの女の仲間か』
「? そうだけど。君たちは?」
『秋雨実だったか? この女は誘拐した』
「「「「「え!?」」」」」
全員が大声を上げる。その大声に、周りの客も一斉にこちらを振り向く。
「ど、どういうこと!?」
『俺たちが諸君に要求することは三つ。一つ目は、金だ。二つ目は、諸君の乗ってきたバスを我々の物にする。そして三つ目は・・・・・・』
「何?」
五人の周りの空気が重くなる。
『天地学園を我々の支配下に置くことを要求する』
「!?」
「チッ! おい代われ! テメェどういうつもりだ! 何故それを知っているんだ!」
「この女の生徒手帳を少々拝借した。諸君、君たちはなかなかいい場所に通っているようだな。以上、この三つを要求する。この三つが我々のものになるのならば、この女は無事に帰すことを諸君に誓う。そして、警察には通報するな。もちろん諸君の先生方にもだ。通報した瞬間、この女を道連れで我々は死ぬ。ではさらばだ」
通話が切れる。
「クソッ!」
優香は思い切りスマホを振り上げる。
「優香ちゃん落ち着いて! それ私のスマホだから!」
「どうする?」
「どうするもクソもあるか! 実を助けに行くぞ!」
「落ち着きなさい。ここは先生たちに報告したほうがいいかと」
風紀委員長がもっともな意見を言う。
「お前さっきの話聞いてなかったのかよ! 通報したら殺すって言っただろ!」
優香は怒りに任せて机を殴りつけた。
「しかし・・・・・・、我々子供だけでは・・・・・・」
「・・・・・・行こう。助けに」
「日菜さん? 貴方正気なのですか?」
「下手したら殺されるわよ?」
「それでも、私は実ちゃんを助ける。君たちだってそうでしょ? ここにいる私たち、皆、実ちゃんに助けられてきたじゃん! ずっと助けられっぱなしで、何も実ちゃんに恩返しできて無いじゃん! 今度は、私たちが実ちゃんを助ける番だよ!」
「・・・・・・へっ!」
優香は日菜の頭を拳で殴りつける。
「痛い!」
「・・・・・・日菜の癖に、生意気なこと言うじゃねぇか」
「体育委員長、一時休戦です。今は共に生徒を助けましょう」
「・・・・・・いいよ! じゃあ今は友達だね! よろしく、水星ちゃん!」
冥華は微笑みながら風紀委員長に手を差し出す。
「・・・・・・よ、よろしくおねがします」
水星は、赤面しながら冥華と握手を交わした。
「じゃあ、行くよ!」
続く・・・・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

君の隣で奏でたい

朝海いよ
青春
高校1年生の春日美奈は、毎日どこかつまらない日々を送っていた。クラスの表面的な友人関係に馴染みつつも、孤独を感じていたある日、遅刻常習犯らしき女子生徒・松波奏と出会う。 奏は吹奏楽部には所属せず、一人でトランペットを吹く自由な少女だった。学校をサボる彼女を興味本位で追いかけた美奈は、海辺で奏の演奏を目の当たりにし、その圧倒的な輝きに心を奪われる。 自分とは違う、自由でまっすぐな奏に惹かれた美奈は、彼女の勧めでトランペットに触れてみることに。奏との出会いをきっかけに、美奈の退屈だった日常が少しずつ変わり始める。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...