私の悠々自適な引きこもり生活は、可愛い女の子によって終わりを迎えてしまいました。

神楽咲久來

文字の大きさ
上 下
16 / 35

第十六話 寄宿学園の日菜

しおりを挟む
「実ちゃん……」
 「何だそんな、家がなくなったみたいな顔して」
 「随分独特なたとえだね……まぁ実際そうなんだけどね……」
 「は?」
 こいつ……何言ってるんだ?
 「家に住めなくなったんだよぉ~!」
 「……と、とりあえず話だけは聞こうか」
 「ありがとう……!」
 
 とりあえず部屋の床にクッションを置いて座らせる。
 「すまんな。相変わらず汚い部屋で」
 いつも通りだが、部屋中に脱ぎ散らかした服、タブレットなどの電子機器が散らかっている。
 「大丈夫だよ、もうあきらめてるから」
 「今すぐ帰れ」
 「ごめんごめん」
 ……事実だから反抗できないのが悔しいな……
 「はぁ……で、どういうことだ?」
 「実はね……」
 
 (ここから昨日の回想シーン)
 時は午後8時
 「ふぅ~。お風呂気持ちよかった」
 「お姉ちゃん、お風呂長いよ」
 「ごめんね。次入っていいよ」
 濡れた髪をタオルで拭きながら、そう話しかける。
 「入ってくるね~」
 「いってらっしゃーい」
 パタン
 
 それから10分後。
 「いや~……この漫画面白いなぁ。今度、実ちゃんにも薦めてあげよっと」
 ピンポーン
 「ん?こんな夜遅くに誰だろ。非常識だなぁ……」
 イラっとしつつ、玄関のドアを開ける。
 「はーい」
 目の前には、20代前半ぐらいのグラマーな綺麗な女性が立っていた。
 「夜分遅くにすみません。私、このアパートの管理人なのですが」
 ゲっ……
 「あなた、そろそろこのアパートの家賃払ってくれませんかね……あなた一体何か月滞納してると思ってるんですか? もう7か月滞納してますよ」
 分かってるのなら聞かないでよ。
 「すみません……お金がなくて……」
 このやり取りももう何か月もやって来た。
 「……もう結構です。1週間以内にこのアパートを立ち退いてもらいます。一週間たってもこのアパートを立ち退かないのなら、こちらも法的処置を取らせていただきますので覚悟しておいてください。まぁ、立ち退くまでの間、電気代、ガス代、水道代だけは情けで許しましょう」
 ……まずいことになった……!
 「いいですね? 1週間以内ですよ?」
 そう強く言うと、管理人の女性は帰っていった。
 「……どうしよう……」
 「お姉ちゃん?」
 「ひゃい! 何でしょうか」
 「いや……凄い顔真っ青だね……」
 「そうかな……?」
 「私もう寝るから、お姉ちゃんも早く寝てね。」
 「はい……」
 
 「というわけなんだ……」
 「だからと言って何で私の家に来たんだ? 金なら出さないぞ?」
 「いやいや……大切な友達にお金出してなんて言えないよ!」
 ……当たり前だけどいいとこあるよなコイツ……
 「じゃあ何で私の家に?」
 「1週間、私たち姉妹をこの家に居候させてください!」
 前言撤回。
 「はぁ」
 「実はあの後、実家に連絡して助けてもらったんだけど……」
 
 電話の内容
 『こんの馬鹿者! 家賃が払えなくなったぁ』
 『ごめんなさい……』 
 
 「すごい剣幕で怒られちゃって……」
 「ていうかその人誰だ?」
 「……聞かないでいただけると助かります」
 「……分かった」
 「で、話し合いの結果、学園の学生寮に住むことになったんだ」
 「でも何で、私の家に来たんだ? 頼んだのなら、すぐに入れるんじゃないのか?」
 「途中からの入居だから、空き室探してるんだ……探すのに1週間かかるらしくて……」
 「それで1週間私の家に泊めてくれと」
 「君のような勘のいいガキは好きだよ」
 それどっかで聞いたことある。あとそこ「好き」じゃなくて「嫌い」だから。
 そして「ガキ」ってどっから目線だコノヤロー。
 「別に私は構わんけど。どうせ、両親もいないし」
 「また居ないの?」
 「あいつら、娘を置いて今度は海外旅行行きやがったよ。まぁいつものことだから慣れてるけど」
 小さい頃から、私を一人でおいて行って旅行に行くなんて日常茶飯事だったからな。娘に飯も作らない、家事はしない、そのくせ世間体ばかりは気にする馬鹿な両親だよ。
 「両親をあいつら呼ばわりって……相当嫌いなんだね……親の事」
 「あんな馬鹿な大人をどうやって親と思えばいいんだ? もう、アイツらから生まれたこと自体が恥に思えてくる」
 「何かごめん……」
 「気にするな。ちゃんと姉さんは家にいるから。で、ちゃんと生活用品は持ってきたのか?なければ買ってくるが……(ネットで)歯ブラシのストックぐらいならあった気が……」
 「急いで家から出てきたから、何も持ってきてないよ……」
 「……仕方ない……早く注文するか……」
 そう言っていつも利用してる通販サイト「JET」の画面を出す。
 「好きなの選んでカートに入れてくれ。この際、少し高くてもかまわん。下着も持ってないんだったら買っとけ。私は寝る。注文する商品が決まったら起こしてくれ。」
 「うん。ありがとうね」
 ベットに移動するのがめんどくさいので、床にクッションを置いて寝っ転がった。
 
 3時間後
 「実ちゃーん……起きてー」
 「ん? 終わったのか?」
 「うん。2人分の生活用品選んだからね」
 「分かった。じゃあ注文しておくから、ゆっくりしててくれ」
注文を確定した。
 「よし。お急ぎ便だから今日中に届くだろ」
 「早いね!」
 「私はブラック会員だからね。どんな時間帯に注文しても必ずその日のうちにと置けてくれるぞ。ちなみにブラック会員は全世界でも100人もいないらしいぞ」
 「それ労働基準法違反じゃないの?さっきの届けてくれるやつ。主に深夜とか」
 「細かいことは気にするな。で、この後どうする?ゲームでもするか? コントローラー予備のやつ5台あるぞ」
 全然使わなかったけど。いや、決して一緒にやるやつがいなかったわけではないからな? 本当だから!
 「うーん……お風呂入っていい?昨日からお風呂入っていないんだ……」
 「図々しいな……いいけど。じゃあお湯張ってくるから待っててくれ」
 「うん。」
 パタン
 「……実ちゃんの部屋……いいにおいする。実ちゃんのにおいだ……!」
 どうして好きな人の部屋ってこんなに落ち着くのだろうか。その人のにおいが漂ってるからだろうか。
 「実ちゃんのベッド……」
 ゴクリ……
 「少しだけ、少しだけならいいよね……?」
 
 「うわーっ凄くいいにおいする!」
 ガチャ
 「すまん、風呂洗ってたから遅くなった……」
 ……
 「お前人のベッドで何やってんの?」
 「いやー……これは……その~……」
 「悪いけど、私そういうのはいいから」
 「そういうのって何」
 「自分の胸に聞いてみろバカ」
 いや、こいつ人のベッドに寝っ転がるってどんだけ失礼なんだよ。
 「お姉ちゃん?」
 「うわっ! びっくりした!」
 振り向くと、ドアの前に幼女が立っていた。
 「虹ちゃん(日奈の妹)、いつから居たんだ?」
 「今回の話の最初から居ましたけど……」
 「すみません……」
 
 午後6時
 「もうこんな時間か。日奈、晩飯何食べたい?」
 「実ちゃんが作ったものなら何でもいいよ」
 「そういうのいいから、早く言え。出前でもいいぞ」
 むしろ出前の方が作る手間が省けていいからな。
 「うーん……じゃあハンバーグ食べたい! 実ちゃんが作ったやつね!」
 「ハンバーグか……まぁ作れるけど。材料あったかなー……」
 一階の冷蔵庫を見に行く。
 
 「ひき肉がないから姉さんに買ってきてもらうわ」
 「ありがとう」

 零(実の姉)
 「ふぅ~! やっとバイト終わった……」
 ギャリギャリギャリギャリ!(ゴリゴリなロックバンドの着信音)
 「はい。……実? どうしたの?」
 『ああ、姉さん? 今から帰るところか?』
 「うん」
 『だったら、ひき肉買ってきてくれないか?金は後で出すから。とりあえずハンバーグ4人分作れるぐらい』
 「分かった。お金はいらないよ」
 『助かる。じゃあ頼んだぞ』
 通話終了
 「……4人分?」
 
 「よし。帰ってきたら作るから」
 「ごめんね。何もかもやらせちゃって……」
 「ただいま~!」
 「え、帰ってくるの早っ!」
 「あれ? 君は……」
 姉さんは日奈を見て首を傾げた。
 「あ、実ちゃんの友達の日奈です」
 「こいつら、いろいろあって1週間家で暮らすことになったから」
 「ふーん。いいよ。どうせ両親もいないんだし」
 物分かりのいい姉で助かった。
 「じゃあ今から晩御飯作るから」
 「あ、私も手伝うよ!」
 「お客さんに手伝わせるなんてできないよー」
 むしろやめてくれ。こいつ料理壊滅的に下手だから。
 「部屋で本でも読んでろ」
 「じゃあ……甘えちゃおうかな」
 うん。本気で甘えてくれ。
 
 1時間経ちました。
 
 完成したので部屋に向かう。
 「ご飯できたぞ」
 「うん。虹、行こ」
 「は~い!」
 「ソースは何がいい?」
 「うーん……私はケチャップかな。虹は?」
 「私は、オイスターソース!」
 「分かった」
 「実ちゃんは?」
 「あぁ、私ソースとかの調味料大っ嫌いだから」
 昔たこ焼き屋とかに行った時も必ずソース抜きで注文してたからな。お好み焼きとかも。
 「そっか。好みは人それぞれだもんね」
 「いいから早く食べるぞ」
 
 食後
 「美味しかった!」
 「それは何より」
 食事は「美味しい美味しい」言って食べてもらった方がうれしいからな。
 「さっさと風呂入って寝るぞ」
 「そうだね。実ちゃん先入っていいよ」
 「私は後で入る」
 「いいの? 1番風呂なんて」
 「客をもてなすのは当たり前だろ」
 「じゃ入ってくるよ」
 
 「よし……やっと寝たな」
 あの後、日奈が全然寝なくて、結局絵本の読み聞かせしてやってようやく寝たのだ。
 「さーてと。ネトゲのイベントやるか」
 私はパソコンの電源ボタンに手を伸ばす。
 「……やっぱ寝るか」
 なぜか今日は寝たくなってしまった。
 日奈の隣に寝っ転がる。
 「……可愛い寝顔してるじゃねえか」
 日奈のほっぺたをムニムニしてみる。とても気持ちいい。
 「寝るか」
 そのまま私の意識は夢の中へ吸い込まれていった……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

君の隣で奏でたい

朝海いよ
青春
高校1年生の春日美奈は、毎日どこかつまらない日々を送っていた。クラスの表面的な友人関係に馴染みつつも、孤独を感じていたある日、遅刻常習犯らしき女子生徒・松波奏と出会う。 奏は吹奏楽部には所属せず、一人でトランペットを吹く自由な少女だった。学校をサボる彼女を興味本位で追いかけた美奈は、海辺で奏の演奏を目の当たりにし、その圧倒的な輝きに心を奪われる。 自分とは違う、自由でまっすぐな奏に惹かれた美奈は、彼女の勧めでトランペットに触れてみることに。奏との出会いをきっかけに、美奈の退屈だった日常が少しずつ変わり始める。

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

ベスティエンⅣ

熒閂
ライト文芸
美少女と強面との美女と野獣っぽい青春恋愛物語。 恋するオトメと武人のプライドの狭間で葛藤するちょっと天然の少女と、モンスターと恐れられるほどの力を持つ強面との、たまにシリアスたまにコメディな学園生活。 名門お嬢様学校に通う少女が、彼氏を追いかけて地元で恐れられる最悪の不良校に入学。 女子生徒数はわずか1%という環境でかなり注目を集めるなか、入学早々に不良をのしてしまったり暴走族にさらわれてしまったり、彼氏の心配をよそに前途多難な学園生活。 不良たちに暴君と恐れられる彼氏に溺愛されながらも、さらに事件に巻き込まれていく。 人間の女に恋をしたモンスターのお話がハッピーエンドだったことはない。 鐵のような両腕を持ち、鋼のような無慈悲さで、鬼と怖れられ獣と罵られ、己のサガを自覚しながらも 恋して焦がれて、愛さずにはいられない。

処理中です...