12 / 35
第十二話 私たちのふるさと
しおりを挟む
「冬休みだ~~!」
「叫ぶな」
今日から冬休みだった私たちは、二人そろって実家に帰省していた。今は駅のホーム(東京駅)で新幹線を待っている。
「私たち、同じ東北出身だから途中まで一緒だね♪」
「何で新幹線で・・・・・・二人分の料金高かったんだぞ!」
「ごめんごめん、あとでちゃんとお金返すから」
それは絶対に金を返さない者が言うセリフだ。
「せっかく東京駅に来たんだし、何か買っていけばよかったのに。ご飯も結局コンビニのおにぎりじゃん。レストランあったのに」
「めんどくさいしいつでもこれるだろ。そして何だその荷物は」
私は日菜が背負っている大きなピンク色のリュックサックを指差す。
「親戚にご挨拶するときのお土産」
「お前何故かそういうところだけ律儀だよな」
「あ、新幹線来たよ」
自由席にしたので私たちは隣同士で座る。
「何か不思議な感覚だね。実ちゃんと二人で新幹線に乗るなんて。しかも席も隣同士だもん」
「お前から目を離すと何をするか分からないんだよ・・・・・・」
私は大きなため息を漏らす。せっかくの休みなのに何でこんなに疲れなきゃいけないんだよ・・・・・・
「そういえば何で学園の新幹線じゃないんだ? あれの方が早いような・・・・・・」
「学園の新幹線は学園内の移動専用なの。さすがに全国には行けるようになってないよ。全国に行けちゃったら、外部の人が入ってきちゃうからね」
「へ、へぇ・・・・・・」
学園内を新幹線で移動するって・・・・・・やっぱりとんでもなく広いんだな・・・・・・
「あれ? ご両親は?」
「あの馬鹿共は、私が渡した金で遊ばせてるよ。長期休みまで一緒にいられたらたまったもんじゃないないからね」
「何かごめん・・・・・・」
「いや、気にするな。それよりもう出発するぞ」
電車が動き出す。
「おぉ! 走った走った! 見て実ちゃん!」
「やかましい。お前は何歳児だ」
こいつはいつも幼い子供のようにはしゃぐな・・・・・・ほんとに同じ年の子供か?
「そして寝るんかい」
走行開始から30分。こいつはもう夢の中だ。
「お飲み物とお菓子はいかがですか?」
「おぉ、びっくりした。じゃあ私はコーヒーで。こいつは・・・・・・」
さすがに勝手に決めるのもかわいそうなので、日菜を起こすことにした。
「日菜、車内サービス来たぞ。何食べたい?」
肩を叩き、体を揺さぶりながら質問する。
「えぇ~?・・・・・・えっとね~実ちゃんが食べたい!」
「は?」
一体どんな夢見てんだよ。しかも寝癖もすごいし。
「板チョコ三枚お願いします。それとりんごジュース一つ」
「かしこまりました。990円になります」
車内販売高ぇな。
「ありがとうございました」
「どうも」
今日の教訓、車内販売は高い。
「よし。私も新幹線の旅を満喫するとしよう」
まずはスマホで写真を撮って、ツイッ○ーでつぶやいて・・・・・・
「やることねぇ・・・・・・」
いや、まだスマホゲームがある!
「バッテリー残量ねぇし・・・・・・」
さっきの写真を撮ったのと、ツイッ○ーでつぶやいたのを最後に、スマホの電源がオフになった。
「・・・・・・コーヒー飲むか・・・・・・」
あ、美味い。なかなかやるな。
「寝るか」
このままボーっとしているよりも寝たほうが絶対にいいだろ。最近不眠気味なのと、疲れが溜まって私の体がとんでもないことになってるんだよ。
『まもなく、白石蔵王駅に到着いたします。お乗換えのお客様はご注意ください』
寝ぼけながら起きた私は眼をこすりながら呟く。
「ん・・・・・・? もう山形か・・・・・・」
・・・・・・って日菜起こさないとヤバい!
「日菜、起きろ! 山形に着くぞ!」
「白石蔵王・・・・・・?」
「お前の降りる駅だろうが!」
「駅・・・・・・? あっ! 私すっかり寝てた!」
日菜は荷物を持ち、電車を降りた。
「じゃあ、私はここでお別れだけど、また一週間後ね」
「あぁ。じゃあまたな」
新幹線のドアが閉まり、私たちは手を振り別れた。
『まもなく、大曲に到着いたします』
やれやれ。やっと着いたか・・・・・・腰が痛いよ・・・・・・まぁそれはいつものことだけど。
キャリーケースを上の荷台から下ろし、キャリーケースを転がして電車を後にする。
「確か、ばあちゃんが迎えに来てくれるはずだが・・・・・・」
「みのちゃーん!」
この声は・・・・・・
「あぁ、ばあちゃん」
「みのちゃん久しぶりだね。また一段と大きくなったね~~!」
「そりゃどうも。疲れたから、早速車に乗っていい?」
「あぁ! ごめんね。じゃあ早速ばあちゃんの家に行こうか」
相変わらずやさしいな。家の馬鹿両親と違って。
祖母の車内
「みのちゃんは学校に行ってるの?」
「うん。最近通い始めた」
「あら~、やっと学校に行ってくれるようになったんだね。ばあちゃん、もう心配で心配で・・・・・・友達はできたの?」
「うーん・・・・・・まぁ、友達みたいな感じの人なら・・・・・・」
現在の当の本人。
「へっくし!」
「日菜ねーちゃんどうしたの? 風邪?」
「大丈夫だよ。さ、鬼ごっこの続きやろうか! 今度はお姉ちゃんが相手だぞ~!」
「わー! 逃げろ逃げろ!」
20人の親戚の子供たちと鬼ごっこをしていた。
「ただいまー」
「おっ、実ちゃんお帰り。久々だね」
「伯父さん」
伯父さんはテレビを見ており、祖父は新聞を読んでいた。
「実ちゃん、また大きくなったね。もう伯父さんとっくに越しちゃったかぁ」
・・・・・・毎度毎度思うけど、地元に帰省するたびに「大きくなったね」って言われるの何なの? 法律でもあるの?
「あれ? 弟と義姉さんは?」
「あいつらは置いてきたよ。そんなの聞かなくても分かるでしょ」
毎年一度も親戚めぐりしないんだから。それを言うなら私も同類だけど。
ま、一応電話でご挨拶ぐらいはしてるけどね。
「実ちゃんはいつまでこっちにいれるの?」
「一週間ぐらいかな。それまでにゆっくりと疲れを癒すとするよ」
「あぁ。ゆっくりしてね。ほんといつもいつも弟がごめんね」
「大丈夫だよ」
・・・・・・もうとっくに諦めてるから。期待もしてないし。
「そうそう、少し早いけどお年玉あげるよ。はい」
「ありがとう、伯父さん」
「実ちゃん、晩御飯できたよ」
「うん。今食べるよ」
床に寝転がってゲームをしていた私は起き上がり、台所へ行く。
家ではいつも自分で作って食べていたからな・・・・・・何か他人に作ってもらうって変な感じだな。
「実、夕食の前に来なさい」
「・・・・・・じいちゃん」
祖父に呼び出された。またいつものお小言だろうか。
祖父と私は向き合い、いつもどおりの重い空気が流れる。ちなみに、私は帰省するたびに祖父とこうやって一対一で会話するのだ。
「・・・・・・生活はどうだ」
「大丈夫だよ。一人で全部やっているから」
「そうか。・・・・・・学校はまだ行っていないのか」
「学校は・・・・・・一応行ってるよ」
「・・・・・・そうか。友達は出来たのか?」
「友達もどきなら出来たよ」
再び当の本人
「へっくし!」
「日菜ねーちゃんまたくしゃみ? 風邪でも引いたの~?」
「大丈夫だよ・・・・・・」
(何だろう・・・・・・帰省してからずっとくしゃみしてる気がする・・・・・・)
「日菜ちゃん、うちで取れたさくらんぼ食べるかい?」
「ありがとうございます。うん! 美味しい!」
「日菜ちゃんは何でも美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるねぇ」
「もどきか・・・・・・まぁいいだろう。お前は本当にこっちに来なくていいのか?」
「え?」
「こっちに来れば、ご飯も好きなだけ食べられるし、あの馬鹿共の世話をしなくて済むんだぞ。それに小遣いだってやれるし、たくさん遊べるのだぞ?」
「うーん・・・・・・」
確かに私は、何度もこっちに住みたいと思った。伯父さんの子供になりたかったとも何度も思った。
ばあちゃんはやさしいし、作ってくれるご飯もとっても美味しい。
じいちゃんもかっこいいし、頼りになる人だ。
伯父さんも楽しいし、ずっと一緒に遊びたいと思ってる。
でも、私には大事な人がいる。
「うん。ありがとう、じいちゃん。でも、私はこっちには戻らないよ」
「・・・・・・そうか。本当にいいんだな?」
「うん。私には、大事な人がいるから。そばで見守ってなきゃ危ないし」
「・・・・・・分かった。お前の意思を尊重しよう。ただし、本当にいやになったらいつでもこっちに来いよ。お前にこれ以上つらい思いをさせたくないからな」
「・・・・・・うん」
「それさえ守れば、こっちから言うことはもう無い」
「うん。分かったよ」
「じゃあ晩御飯を食べよう。母さんが待ってるぞ」
「うん」
「お~! いぶりがっこじゃん!」
「お隣さんが分けてくださったんだよ。みのちゃんが帰ってくるのをずっと待ってたんだよ」
「ふーん。明日お隣さんにも挨拶に行くか」
私たち四人は、祖母が作った世界一美味しい料理で腹を満たした。
「ふぁ~・・・・・・寝るか」
私はふと、夜空を見上げた。
「綺麗だ・・・・・・」
・・・・・・ここにずっといたい。でも、私には待っている人がいる。
私は布団にもぐりこみ、とけるように眠りに堕ちた。
「叫ぶな」
今日から冬休みだった私たちは、二人そろって実家に帰省していた。今は駅のホーム(東京駅)で新幹線を待っている。
「私たち、同じ東北出身だから途中まで一緒だね♪」
「何で新幹線で・・・・・・二人分の料金高かったんだぞ!」
「ごめんごめん、あとでちゃんとお金返すから」
それは絶対に金を返さない者が言うセリフだ。
「せっかく東京駅に来たんだし、何か買っていけばよかったのに。ご飯も結局コンビニのおにぎりじゃん。レストランあったのに」
「めんどくさいしいつでもこれるだろ。そして何だその荷物は」
私は日菜が背負っている大きなピンク色のリュックサックを指差す。
「親戚にご挨拶するときのお土産」
「お前何故かそういうところだけ律儀だよな」
「あ、新幹線来たよ」
自由席にしたので私たちは隣同士で座る。
「何か不思議な感覚だね。実ちゃんと二人で新幹線に乗るなんて。しかも席も隣同士だもん」
「お前から目を離すと何をするか分からないんだよ・・・・・・」
私は大きなため息を漏らす。せっかくの休みなのに何でこんなに疲れなきゃいけないんだよ・・・・・・
「そういえば何で学園の新幹線じゃないんだ? あれの方が早いような・・・・・・」
「学園の新幹線は学園内の移動専用なの。さすがに全国には行けるようになってないよ。全国に行けちゃったら、外部の人が入ってきちゃうからね」
「へ、へぇ・・・・・・」
学園内を新幹線で移動するって・・・・・・やっぱりとんでもなく広いんだな・・・・・・
「あれ? ご両親は?」
「あの馬鹿共は、私が渡した金で遊ばせてるよ。長期休みまで一緒にいられたらたまったもんじゃないないからね」
「何かごめん・・・・・・」
「いや、気にするな。それよりもう出発するぞ」
電車が動き出す。
「おぉ! 走った走った! 見て実ちゃん!」
「やかましい。お前は何歳児だ」
こいつはいつも幼い子供のようにはしゃぐな・・・・・・ほんとに同じ年の子供か?
「そして寝るんかい」
走行開始から30分。こいつはもう夢の中だ。
「お飲み物とお菓子はいかがですか?」
「おぉ、びっくりした。じゃあ私はコーヒーで。こいつは・・・・・・」
さすがに勝手に決めるのもかわいそうなので、日菜を起こすことにした。
「日菜、車内サービス来たぞ。何食べたい?」
肩を叩き、体を揺さぶりながら質問する。
「えぇ~?・・・・・・えっとね~実ちゃんが食べたい!」
「は?」
一体どんな夢見てんだよ。しかも寝癖もすごいし。
「板チョコ三枚お願いします。それとりんごジュース一つ」
「かしこまりました。990円になります」
車内販売高ぇな。
「ありがとうございました」
「どうも」
今日の教訓、車内販売は高い。
「よし。私も新幹線の旅を満喫するとしよう」
まずはスマホで写真を撮って、ツイッ○ーでつぶやいて・・・・・・
「やることねぇ・・・・・・」
いや、まだスマホゲームがある!
「バッテリー残量ねぇし・・・・・・」
さっきの写真を撮ったのと、ツイッ○ーでつぶやいたのを最後に、スマホの電源がオフになった。
「・・・・・・コーヒー飲むか・・・・・・」
あ、美味い。なかなかやるな。
「寝るか」
このままボーっとしているよりも寝たほうが絶対にいいだろ。最近不眠気味なのと、疲れが溜まって私の体がとんでもないことになってるんだよ。
『まもなく、白石蔵王駅に到着いたします。お乗換えのお客様はご注意ください』
寝ぼけながら起きた私は眼をこすりながら呟く。
「ん・・・・・・? もう山形か・・・・・・」
・・・・・・って日菜起こさないとヤバい!
「日菜、起きろ! 山形に着くぞ!」
「白石蔵王・・・・・・?」
「お前の降りる駅だろうが!」
「駅・・・・・・? あっ! 私すっかり寝てた!」
日菜は荷物を持ち、電車を降りた。
「じゃあ、私はここでお別れだけど、また一週間後ね」
「あぁ。じゃあまたな」
新幹線のドアが閉まり、私たちは手を振り別れた。
『まもなく、大曲に到着いたします』
やれやれ。やっと着いたか・・・・・・腰が痛いよ・・・・・・まぁそれはいつものことだけど。
キャリーケースを上の荷台から下ろし、キャリーケースを転がして電車を後にする。
「確か、ばあちゃんが迎えに来てくれるはずだが・・・・・・」
「みのちゃーん!」
この声は・・・・・・
「あぁ、ばあちゃん」
「みのちゃん久しぶりだね。また一段と大きくなったね~~!」
「そりゃどうも。疲れたから、早速車に乗っていい?」
「あぁ! ごめんね。じゃあ早速ばあちゃんの家に行こうか」
相変わらずやさしいな。家の馬鹿両親と違って。
祖母の車内
「みのちゃんは学校に行ってるの?」
「うん。最近通い始めた」
「あら~、やっと学校に行ってくれるようになったんだね。ばあちゃん、もう心配で心配で・・・・・・友達はできたの?」
「うーん・・・・・・まぁ、友達みたいな感じの人なら・・・・・・」
現在の当の本人。
「へっくし!」
「日菜ねーちゃんどうしたの? 風邪?」
「大丈夫だよ。さ、鬼ごっこの続きやろうか! 今度はお姉ちゃんが相手だぞ~!」
「わー! 逃げろ逃げろ!」
20人の親戚の子供たちと鬼ごっこをしていた。
「ただいまー」
「おっ、実ちゃんお帰り。久々だね」
「伯父さん」
伯父さんはテレビを見ており、祖父は新聞を読んでいた。
「実ちゃん、また大きくなったね。もう伯父さんとっくに越しちゃったかぁ」
・・・・・・毎度毎度思うけど、地元に帰省するたびに「大きくなったね」って言われるの何なの? 法律でもあるの?
「あれ? 弟と義姉さんは?」
「あいつらは置いてきたよ。そんなの聞かなくても分かるでしょ」
毎年一度も親戚めぐりしないんだから。それを言うなら私も同類だけど。
ま、一応電話でご挨拶ぐらいはしてるけどね。
「実ちゃんはいつまでこっちにいれるの?」
「一週間ぐらいかな。それまでにゆっくりと疲れを癒すとするよ」
「あぁ。ゆっくりしてね。ほんといつもいつも弟がごめんね」
「大丈夫だよ」
・・・・・・もうとっくに諦めてるから。期待もしてないし。
「そうそう、少し早いけどお年玉あげるよ。はい」
「ありがとう、伯父さん」
「実ちゃん、晩御飯できたよ」
「うん。今食べるよ」
床に寝転がってゲームをしていた私は起き上がり、台所へ行く。
家ではいつも自分で作って食べていたからな・・・・・・何か他人に作ってもらうって変な感じだな。
「実、夕食の前に来なさい」
「・・・・・・じいちゃん」
祖父に呼び出された。またいつものお小言だろうか。
祖父と私は向き合い、いつもどおりの重い空気が流れる。ちなみに、私は帰省するたびに祖父とこうやって一対一で会話するのだ。
「・・・・・・生活はどうだ」
「大丈夫だよ。一人で全部やっているから」
「そうか。・・・・・・学校はまだ行っていないのか」
「学校は・・・・・・一応行ってるよ」
「・・・・・・そうか。友達は出来たのか?」
「友達もどきなら出来たよ」
再び当の本人
「へっくし!」
「日菜ねーちゃんまたくしゃみ? 風邪でも引いたの~?」
「大丈夫だよ・・・・・・」
(何だろう・・・・・・帰省してからずっとくしゃみしてる気がする・・・・・・)
「日菜ちゃん、うちで取れたさくらんぼ食べるかい?」
「ありがとうございます。うん! 美味しい!」
「日菜ちゃんは何でも美味しそうに食べてくれるから作りがいがあるねぇ」
「もどきか・・・・・・まぁいいだろう。お前は本当にこっちに来なくていいのか?」
「え?」
「こっちに来れば、ご飯も好きなだけ食べられるし、あの馬鹿共の世話をしなくて済むんだぞ。それに小遣いだってやれるし、たくさん遊べるのだぞ?」
「うーん・・・・・・」
確かに私は、何度もこっちに住みたいと思った。伯父さんの子供になりたかったとも何度も思った。
ばあちゃんはやさしいし、作ってくれるご飯もとっても美味しい。
じいちゃんもかっこいいし、頼りになる人だ。
伯父さんも楽しいし、ずっと一緒に遊びたいと思ってる。
でも、私には大事な人がいる。
「うん。ありがとう、じいちゃん。でも、私はこっちには戻らないよ」
「・・・・・・そうか。本当にいいんだな?」
「うん。私には、大事な人がいるから。そばで見守ってなきゃ危ないし」
「・・・・・・分かった。お前の意思を尊重しよう。ただし、本当にいやになったらいつでもこっちに来いよ。お前にこれ以上つらい思いをさせたくないからな」
「・・・・・・うん」
「それさえ守れば、こっちから言うことはもう無い」
「うん。分かったよ」
「じゃあ晩御飯を食べよう。母さんが待ってるぞ」
「うん」
「お~! いぶりがっこじゃん!」
「お隣さんが分けてくださったんだよ。みのちゃんが帰ってくるのをずっと待ってたんだよ」
「ふーん。明日お隣さんにも挨拶に行くか」
私たち四人は、祖母が作った世界一美味しい料理で腹を満たした。
「ふぁ~・・・・・・寝るか」
私はふと、夜空を見上げた。
「綺麗だ・・・・・・」
・・・・・・ここにずっといたい。でも、私には待っている人がいる。
私は布団にもぐりこみ、とけるように眠りに堕ちた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さくらと遥香(ショートストーリー)
youmery
恋愛
「さくらと遥香」46時間TV編で両想いになり、周りには内緒で付き合い始めたさくちゃんとかっきー。
その後のメインストーリーとはあまり関係してこない、単発で読めるショートストーリー集です。
※さくちゃん目線です。
※さくちゃんとかっきーは周りに内緒で付き合っています。メンバーにも事務所にも秘密にしています。
※メインストーリーの長編「さくらと遥香」を未読でも楽しめますが、46時間TV編だけでも読んでからお読みいただくことをおすすめします。
※ショートストーリーはpixivでもほぼ同内容で公開中です。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。


可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる