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一章 長年の恋が終わった

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 午前の間は、スポーツコーナーで皆で体を動かして過ごした。なんだかんだ女子同士でも交流の時間はあったようで仲良さ気に遊んでる姿を何度か見た。

 それもあったおかげかここに着くまでは硬かった実菜の表情もどこか緩んだように見えたし、ちらほらと笑顔も見ることが出来たので今日はもうこのムードが壊れることはないだろう。

 三時間パックの時間を終えた俺らは、沢山動いたことでいたおなかの鳴きをしずめるためにご飯を売っているエリアに移動し少しだけ遅めの昼食をとることにした。

「うちホットドッグ!」
「私はナポリタンかなぁ」
「駿、二人でもう一品としてたこ焼き買わね?」
「そうだね、それでいいよ」
「じゃあ、私もナポリタンで」

 各自食べたい商品が出揃ったこともあって、商品を買いに行きたいところなんだが……。とりあえず、メンバーを分けて買いに行くことにするか。
 
「じゃあ、三人席で待ってて二人で買いに行くことにしようぜ、お金はとりあえず買う人に渡すってことで」

 俺の意見を否定する人も居なかったこともあってその案で決まる。問題は誰が買いに行くかだけど……。

「俺らで行きますか」
「そうだな、男手の方がいいだろ」
「ありがと!」

 買い出しは男子担当になり女子は席を確保する役目。まあいい分担だろう。
 店員さんにメニューを告げ、少しだけ待ちの時間が出来る。

「なあ、駿……」

 遠めの席に座っている三人に視線をやりながら正樹が呟く。

「どうした?」
「悠里のやつ、大丈夫だったのか?」

 どうやら先ほどの悠里の様子を見ていたからか気になったらしい。俺も逆の立場だったら気になっていただろうしな。

「あいつの感じを見ているととりあえずもう大丈夫なんじゃないかな?」
「そうか……ちなみに何があったのか聞いてもいいか?」

 俺達が悠里たちのほうを見て話しているからか、悠里がこちらに向かってブンブンと手を振る。あの様子を見ている限り本当に大丈夫ではあるのだろう。

「そうだな……簡単に言っちゃえば俺と実菜の話かな?」
「あ~なるほどねそっちか……」
「そっち……?」
「ああ、いやなんでも」

 気にはなったけど、とりあえず置いておくことにした。

「まとめちゃうと、悠里的に四年間も信頼しあってたはずなのにちょっと疑わしいことがあっただけで彼氏を信じないで相手を傷つけるのは友達としては許せないって感極まっちゃって泣き出しちゃったんだ」
「あいつも友達想いでいいやつだからな」
「本当にいい奴だよ」

 いくら友達の恋の事情とはいえあそこまで悲しんでくれるような友達はそうそう居ないだろう。だからこそ貴重な友達だと思うし、そんな友達だからこそ俺も大事にしたいと思える。

「だからこそ、損してるんだけどな……」
「どゆこと?」
「いいやつは損をするってことだよ」
「ん……?」
「まあなんだ、悠里のことをちゃんと見ておいてやるんだぞ」

 こういう話題になるとへらへらしたいつもの態度から真剣な表情に変わる。それ故に正樹のその言葉がなんとなく心に残る。

「それにだ、お前は忘れているのかもしれないが自分が浮気したことになっているって話を忘れるんじゃねえぞ」
「……ああ」

 一体何からそういう話になってしまったのだろうか。
 正樹に言われるまで忘れつつあった出来事だが、まだそのことを解決できていないことは事実だ。だからといったって正直心当たりがなさ過ぎて……。

「心当たりが本当に無いって顔してるな」
「……分かる?」
「何年お前の悩み顔見てきたと思ってるんだよ」
「そういうこと言うから勘違いされるんだぞ」
「うるせえ」

 俺と正樹は仲が良すぎるせいか一時期出来てるんじゃないかと噂された。ちなみにそれによって実菜が狂乱したのはまた別な話。

「これじゃあ忘れるにもよりを戻すにも何も解決していないからな、一回話し合いの場を設けないとな」
「そうだな。心配かけて済まんな」
「俺もすっきりしないままこの話題が終わるのは嫌だからな。円満に終わるにせよまた戻るにせよ誰もが納得する内容じゃなきゃ駄目だぞ」
「ああ」

 これはもう俺と実菜だけの問題とは言えなくなってきているからな。悠里だって美織だってそれぞれが俺らの関係を気にしてくれている。だからこそ、そんな曖昧なままにしておくのはよくない。だからこそ近いうちにこの問題を解決しないといけない。

「それに、俺もそろそろ前に進まないといけないしな」

 この問題がしっかりと解決しない以上俺がどれだけ前向きになったところで進歩とは呼べない。あくまで停滞しているだけで実際はその場で足踏みをしているのに過ぎないのだから……。
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