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一章 長年の恋が終わった
悠里とのひととき
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教室の中にギスギスというか、爆発物を抱えたようなピリピリした空気が流れている。そもそもが……だ。
隅島実菜という女子はクラスの中でもやはり読みづらいという認識がある。そもそも彼氏として何年も一緒にいた俺でさえ彼女の中の地雷のようなものが分かりにくいのに、一年からのクラスメイトにだって読めやしないだろう、しかも今年から一緒になったクラスメイトだって多くいるそうともなれば余計にだろう。
そんな彼女がそわそわしていれば爆発の前兆なんじゃないかと思っても無理はない。今はまだ知れ渡ってはいないが後々俺と彼女の破局のようなものが広まってくればそれも余計に……。
今はまだ昨日の今日ということもあってまだ正樹くらいしか知っていないんじゃないだろうか。
ということもあって今はみんなが空気を読んでいるという感じだ。
教室に入ると仲のいい人たちが俺に目線でメッセージを送ってくるが、すまん! 今の俺には何も出来そうにもない。
目線で申し訳ないと伝えると視線を前に戻した。
自分の席に着き、予鈴までの時間を潰そうと最近買った本を取り出すと、隣の席の悠里が話しかけてくる。
「ねぇねぇ、今日は実菜ちゃんどうしたの? 何か落ち着きなくてそわそわしているけど……」
俺の感じたまんまの印象を彼女も持ったらしい。児玉悠里、それが隣の席の彼女の名前だ。彼女は俺と実菜と一年の時から同じクラスでそれなりに付き合いが長い。それに加えてある程度の仲を保っている。
「それに、なんだか駿の様子もぎこちないなぁ~? いつもなら一目散に実菜ちゃんのご機嫌を取りに行くのに~」
「いや~色々あってな」
読んでいた本を閉じ彼女の方に体を向ける。変なぼろを出さないようにする俺なりの対策だ。今思いついた。
本の読みが進んでいなかったり、どっちつかずな対応をしていればそれこそ不審に思われる。それくらいに鋭いこともあって変にいつも通りな対応をすれば必ずどこかにぼろが出る。ちなみに普段であれば読みながら彼女の対応している。
「へぇ~喧嘩でもしたの?」
「そんなところだな、だから変に近づけないわけだ」
「ふぅん」
キランと瞳が輝いた気がした。それと同時に口角も上がり、何かを感じ取ったかの様子。さすがに鋭すぎな気がしませんかね?
「なにやらゴシップの匂いがする」
「いや、ないから!」
「ほんとにぃ~?」
冷や汗がつぅっと伝う。
丁度その時キンコンと予鈴が鳴り響き、俺と悠里の会話に水を差す。いや、彼女にとっては水を差された形なのかもしれないが俺にとっては命拾いだ。
「ぶぅ」
掴みかけた獲物を逃がすかのような悔しそうな表情を浮かべ、前へ体を向ける。
俺は対照的に「ふぅ」と安堵の息を漏らす。
いつもは嫌な気持ちにさせられる予鈴にこれほどの感謝を覚えた奴はきっとこの世の中にいないんじゃないだろうか。
別に悠里にバレたくなかったというわけではないことはここで弁明しておこう。
この手の話題だし、学校内という比較的狭いコミュニティの中じゃ知れ渡るのも時間の問題だ。ただ、あくまで彼女のいる場で俺が漏らしたとなればようやく治まりかけている実菜の怒りの火に再び油を注ぎかけない。それだけは絶対に避けたい。
そういう俺の中での気持ちがあってあの場はやり過ごしたというのが事の顛末である。
もしあの場で本当のことがバレて悠里が大仰に驚いてもみろ一瞬で俺が原因だと分かってしまう。
なので、変に追及されて人のいる場でバレる前に俺の方から話してみることにする。
「なあ、悠里」
昼休み、普段であれば教室で昼食をとっている俺だが、悠里と会話が出来るように場所を変え食事をとることに決めた。
「ん~? どうした~?」
購買にでも何か買いに行くつもりだったのか、立ち上がるところだった。
「今日さ、一緒に昼でも食べない?」
「いいよ~っていってもいつも席で食べてるけど」
笑いながらそう答える。
「今日は場所を変えようぜ」
「お~? 密会かい? いいぜ乗った!」
本当にノリだけはいいな。むしろこの場ではとても助かる。
俺も腰掛けていた椅子から立ち上がり一緒に教室をでる。その際ちらっと実菜の方を覗き見てみるが一人で寂しげに弁当を食べている。そんな彼女の様子に少しだけ胸がチクりと痛んだ。
「それで、場所を移してまで私と会話したかったことってなぁに?」
どうやら突然の俺のお誘いに何かしらを察してはいるようだ。それなら話は早い。
「朝の話の続きだよ、気になるだろ?」
「その場限りの会話でうやむやになるかなって思ってもいたけどそうでもないんだ」
「ああ。後から知るよりも先に話した方がいいだろ? 友達的に」
やはり本人から話してもらえるのか、それとも後から風の噂で聞くのかじゃ心象に差が出るだろう。しかもこれだけ重要な話なら尚更。
「……ってことは結構おっきな話だね。聞く準備するね。す~っは~っ」
何度か深呼吸をした後どうぞというように俺に手の平を向ける。
「それでは少しだけお付き合いいただこうか」
そんな風に、小説の語りだしのように俺は自分語りを始める。
隅島実菜という女子はクラスの中でもやはり読みづらいという認識がある。そもそも彼氏として何年も一緒にいた俺でさえ彼女の中の地雷のようなものが分かりにくいのに、一年からのクラスメイトにだって読めやしないだろう、しかも今年から一緒になったクラスメイトだって多くいるそうともなれば余計にだろう。
そんな彼女がそわそわしていれば爆発の前兆なんじゃないかと思っても無理はない。今はまだ知れ渡ってはいないが後々俺と彼女の破局のようなものが広まってくればそれも余計に……。
今はまだ昨日の今日ということもあってまだ正樹くらいしか知っていないんじゃないだろうか。
ということもあって今はみんなが空気を読んでいるという感じだ。
教室に入ると仲のいい人たちが俺に目線でメッセージを送ってくるが、すまん! 今の俺には何も出来そうにもない。
目線で申し訳ないと伝えると視線を前に戻した。
自分の席に着き、予鈴までの時間を潰そうと最近買った本を取り出すと、隣の席の悠里が話しかけてくる。
「ねぇねぇ、今日は実菜ちゃんどうしたの? 何か落ち着きなくてそわそわしているけど……」
俺の感じたまんまの印象を彼女も持ったらしい。児玉悠里、それが隣の席の彼女の名前だ。彼女は俺と実菜と一年の時から同じクラスでそれなりに付き合いが長い。それに加えてある程度の仲を保っている。
「それに、なんだか駿の様子もぎこちないなぁ~? いつもなら一目散に実菜ちゃんのご機嫌を取りに行くのに~」
「いや~色々あってな」
読んでいた本を閉じ彼女の方に体を向ける。変なぼろを出さないようにする俺なりの対策だ。今思いついた。
本の読みが進んでいなかったり、どっちつかずな対応をしていればそれこそ不審に思われる。それくらいに鋭いこともあって変にいつも通りな対応をすれば必ずどこかにぼろが出る。ちなみに普段であれば読みながら彼女の対応している。
「へぇ~喧嘩でもしたの?」
「そんなところだな、だから変に近づけないわけだ」
「ふぅん」
キランと瞳が輝いた気がした。それと同時に口角も上がり、何かを感じ取ったかの様子。さすがに鋭すぎな気がしませんかね?
「なにやらゴシップの匂いがする」
「いや、ないから!」
「ほんとにぃ~?」
冷や汗がつぅっと伝う。
丁度その時キンコンと予鈴が鳴り響き、俺と悠里の会話に水を差す。いや、彼女にとっては水を差された形なのかもしれないが俺にとっては命拾いだ。
「ぶぅ」
掴みかけた獲物を逃がすかのような悔しそうな表情を浮かべ、前へ体を向ける。
俺は対照的に「ふぅ」と安堵の息を漏らす。
いつもは嫌な気持ちにさせられる予鈴にこれほどの感謝を覚えた奴はきっとこの世の中にいないんじゃないだろうか。
別に悠里にバレたくなかったというわけではないことはここで弁明しておこう。
この手の話題だし、学校内という比較的狭いコミュニティの中じゃ知れ渡るのも時間の問題だ。ただ、あくまで彼女のいる場で俺が漏らしたとなればようやく治まりかけている実菜の怒りの火に再び油を注ぎかけない。それだけは絶対に避けたい。
そういう俺の中での気持ちがあってあの場はやり過ごしたというのが事の顛末である。
もしあの場で本当のことがバレて悠里が大仰に驚いてもみろ一瞬で俺が原因だと分かってしまう。
なので、変に追及されて人のいる場でバレる前に俺の方から話してみることにする。
「なあ、悠里」
昼休み、普段であれば教室で昼食をとっている俺だが、悠里と会話が出来るように場所を変え食事をとることに決めた。
「ん~? どうした~?」
購買にでも何か買いに行くつもりだったのか、立ち上がるところだった。
「今日さ、一緒に昼でも食べない?」
「いいよ~っていってもいつも席で食べてるけど」
笑いながらそう答える。
「今日は場所を変えようぜ」
「お~? 密会かい? いいぜ乗った!」
本当にノリだけはいいな。むしろこの場ではとても助かる。
俺も腰掛けていた椅子から立ち上がり一緒に教室をでる。その際ちらっと実菜の方を覗き見てみるが一人で寂しげに弁当を食べている。そんな彼女の様子に少しだけ胸がチクりと痛んだ。
「それで、場所を移してまで私と会話したかったことってなぁに?」
どうやら突然の俺のお誘いに何かしらを察してはいるようだ。それなら話は早い。
「朝の話の続きだよ、気になるだろ?」
「その場限りの会話でうやむやになるかなって思ってもいたけどそうでもないんだ」
「ああ。後から知るよりも先に話した方がいいだろ? 友達的に」
やはり本人から話してもらえるのか、それとも後から風の噂で聞くのかじゃ心象に差が出るだろう。しかもこれだけ重要な話なら尚更。
「……ってことは結構おっきな話だね。聞く準備するね。す~っは~っ」
何度か深呼吸をした後どうぞというように俺に手の平を向ける。
「それでは少しだけお付き合いいただこうか」
そんな風に、小説の語りだしのように俺は自分語りを始める。
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