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一章 長年の恋が終わった

隣の芝生現象

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 隣の芝生は青く見えるという言葉をご存知だろうか?

 多分聞いたことある人のほうが大多数だと思う。今なぜ俺自身がその言葉を使い出したのかについてちょっとした自分語りが必要だろうと思うので補足のごとくここに付け足したい。



 中学生というと小学生から一歩大人の階段を上って、高校生ほど大きくも見えない。だけど小学生ほど幼くないという曖昧な時期だ。

 小学生の頃では考えもしなかったような知識が少しずつ入り始め、男女の大人の階段を上った人もいるし、まだまだ上ろうとする途中の段階の人たちもいる。徐々に大人としての知識を身につけ始めたが故の怖いもの見たさとか大人ぶりたいといったまさに子どものするような行動だろう。

 中学生の段階では基本的に大多数が後者の人たちなのだろうが、それが高校生ともなれば階段を大きく上る人もいる。むしろ中学生の頃と違ってその比率が半分半分、もしくは少しだけ前者寄りになり始めることもあるのではないだろうか。あくまで感覚的にだけど。

 俺もまた高校でそういった経験をした一人だ。ただし前提として中学の頃から計四年くらい付き合っていた彼女という要素が追加される。いつでもそうなれたのだろうがあえて先走ることもなく、順々と階段を上ってきた。

 そんな俺がそういった経験をした後にそんな彼女と別れることになるなんて、その頃の俺には考えもしなかった。


 ――そしてまた、その経験によって得た副産物のようなものも想像だにしなかった。


 結論を述べると、モテた。それはもう……。

 それが冒頭の“隣の芝生は青く見える”という言葉に繋がってくるわけである。
 つまりは、それだけ長く恋人と付き合っていたというのは女子にとってはそれはそれは良いステータスに見えたようだ。もちろんこれは俺本来のスペックを加味せず、あくまでそれ自体の話だ。

 特筆して格好良くみえない男子が、とっかえひっかえに彼女がいるのもまた“隣の芝生現象”の一つだろう。

 つまりこの物語は、そんな“隣の芝生現象”によって今までとはまた違った意味で新たな青春を謳歌することになる俺、加賀美かがみ駿しゅんの物語というわけである。
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