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第二章
第76話 オタクの夢
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外に出ると、ナーガさんが木の下でキョロキョロと何かを探し始めた。
「これでいいか」と1本の枝を拾い、手渡される。
「はい」
「ありがとうございます……? って、これ何ですか?」
「枝」
「それはわかってますけど」
「魔法を使う補助の役割になる」
自転車の補助輪のようなものってことか。
というかこれ、もしかして魔法のステッキ!
「魔法の杖ってことですか?」
適当に拾ったただの枝に見えるけど、ここは精霊のいる森。魔力が込められている特別な枝なのかも。
「ただの枝」
ただの枝だった……
「魔法の杖として売られてるモノもあるけど、別に棒状のモノならどんなのでもいいんだ。枝で充分だろう」
「で、できれば魔法の杖がほしいんですけど……」
BLにハマって腐女子として覚醒する前から、私はアニメが大好きだった。
当時は買ってなんて言えなかったけど、本当は欲しかった魔女っ娘アニメのステッキ。ああいうのがあったらいいんだけど。
でも今ならハリー・ポッターみたいな杖とかも憧れるなぁ。
ナーガさんが呆れたようにため息をついた。
「魔法習いたての子供はそういうの欲しがるけど、キミ中身は大人なんだろう? 恥ずかしくないの?」
ぐう……っ
世間から「アニメなんて子供の見るものでしょ?」「オタクキモいw」という目に晒されていたあの頃の古傷が痛む。
私が転生した後、少しは大人のアニメ好きも認められる世の中になったでしょうか。
「ぜ、前世の世界ではそういうの好きな大人もいたんですよ」
「前の世界に魔法はないんじゃなかった?」
「存在はしてないんですけど、物語として人気があったんです」
「なんだ、作り話か」
バッサリ。
ナーガさん、本とか読まないタイプなのかな。って、ナーガさんいつも本に埋もれてるじゃん。
「ナーガさんが読んでる本は、物語じゃないんですか?」
「あれは魔法の資料や文献。作り話なんて読んだって仕方ないだろ」
前世にもいたなぁ、こういう人。
でもこっちのリアリストは、魔法が使えて妖精が見えるんだから不思議な感じ。リアルがファンタジーなんだもんな。
「とにかく、できれば私は魔法の杖がほしいです!」
「……なんでそんなの使いたがるんだ」
「だって、カッコイイじゃないですか」
厨二心が疼くんですよ。と言っても通じないだろうから黙っておくけど。
「杖を使うなんて初心者丸出しだ。カッコイイわけない」
「でも、サウザンリーフの魔法使いさんたちは使ってましたよ」
家族旅行に行ったとき、テーマパークの魔法使いさんたちはまさにTHE・魔法使いって格好で魔法のステッキを持ってた。アトラクションでも貸し出してくれたっけ。
「サウザンリーフは観光地だから見映え重視なんだ。人間たちが思い描く魔法使いを見せてるだけ」
「あれ、観光用だったんですね……。でも私は杖が使いたいです!」
食い下がると、ナーガさんがチッと舌打ちをした。
「僕に街まで買いに行かせるつもりか」
「え、ナーガさんが買ってくれるんですか?」
「師匠から弟子に贈ることが習わしなんだ」
「す、すみません! えっと、それなら枝でもいいです、けど」
「いいよ、別に。アルバートにチクられても面倒だから」
そんなことはしませんけど……
諦めたナーガさんが、枝をぽいっと放り投げた。
なんか手間掛けさせて申し訳ないな。でもやっぱり杖は欲しいんだよね。
とはいえ、明らかにムスッとしてしまったナーガさんが怖い。何か場を和ませないと。
「あの、そういえば、ナーガさんはどうやって魔法を使ってるんですか?」
確か指を鳴らしてたような気がするけど、あれがリアルな魔法の使い方なのかな。
……なんて考えていると、ふわりと身体が浮かんだ!?
「うわわわわっ!? な、なに!?」
「これくらいの魔法なら、念じるだけで使える」
「わ、わかりましたから降ろしてください!」
すぐにドスンと地面に落とされた。思いっきり尻もちついたんですが。
「急に落とさないでくださいよ。ケガしたらどうするんですか」
「アルバートが僕を殺しにくるだろうね」
それはそうだろうな。
「これでいいか」と1本の枝を拾い、手渡される。
「はい」
「ありがとうございます……? って、これ何ですか?」
「枝」
「それはわかってますけど」
「魔法を使う補助の役割になる」
自転車の補助輪のようなものってことか。
というかこれ、もしかして魔法のステッキ!
「魔法の杖ってことですか?」
適当に拾ったただの枝に見えるけど、ここは精霊のいる森。魔力が込められている特別な枝なのかも。
「ただの枝」
ただの枝だった……
「魔法の杖として売られてるモノもあるけど、別に棒状のモノならどんなのでもいいんだ。枝で充分だろう」
「で、できれば魔法の杖がほしいんですけど……」
BLにハマって腐女子として覚醒する前から、私はアニメが大好きだった。
当時は買ってなんて言えなかったけど、本当は欲しかった魔女っ娘アニメのステッキ。ああいうのがあったらいいんだけど。
でも今ならハリー・ポッターみたいな杖とかも憧れるなぁ。
ナーガさんが呆れたようにため息をついた。
「魔法習いたての子供はそういうの欲しがるけど、キミ中身は大人なんだろう? 恥ずかしくないの?」
ぐう……っ
世間から「アニメなんて子供の見るものでしょ?」「オタクキモいw」という目に晒されていたあの頃の古傷が痛む。
私が転生した後、少しは大人のアニメ好きも認められる世の中になったでしょうか。
「ぜ、前世の世界ではそういうの好きな大人もいたんですよ」
「前の世界に魔法はないんじゃなかった?」
「存在はしてないんですけど、物語として人気があったんです」
「なんだ、作り話か」
バッサリ。
ナーガさん、本とか読まないタイプなのかな。って、ナーガさんいつも本に埋もれてるじゃん。
「ナーガさんが読んでる本は、物語じゃないんですか?」
「あれは魔法の資料や文献。作り話なんて読んだって仕方ないだろ」
前世にもいたなぁ、こういう人。
でもこっちのリアリストは、魔法が使えて妖精が見えるんだから不思議な感じ。リアルがファンタジーなんだもんな。
「とにかく、できれば私は魔法の杖がほしいです!」
「……なんでそんなの使いたがるんだ」
「だって、カッコイイじゃないですか」
厨二心が疼くんですよ。と言っても通じないだろうから黙っておくけど。
「杖を使うなんて初心者丸出しだ。カッコイイわけない」
「でも、サウザンリーフの魔法使いさんたちは使ってましたよ」
家族旅行に行ったとき、テーマパークの魔法使いさんたちはまさにTHE・魔法使いって格好で魔法のステッキを持ってた。アトラクションでも貸し出してくれたっけ。
「サウザンリーフは観光地だから見映え重視なんだ。人間たちが思い描く魔法使いを見せてるだけ」
「あれ、観光用だったんですね……。でも私は杖が使いたいです!」
食い下がると、ナーガさんがチッと舌打ちをした。
「僕に街まで買いに行かせるつもりか」
「え、ナーガさんが買ってくれるんですか?」
「師匠から弟子に贈ることが習わしなんだ」
「す、すみません! えっと、それなら枝でもいいです、けど」
「いいよ、別に。アルバートにチクられても面倒だから」
そんなことはしませんけど……
諦めたナーガさんが、枝をぽいっと放り投げた。
なんか手間掛けさせて申し訳ないな。でもやっぱり杖は欲しいんだよね。
とはいえ、明らかにムスッとしてしまったナーガさんが怖い。何か場を和ませないと。
「あの、そういえば、ナーガさんはどうやって魔法を使ってるんですか?」
確か指を鳴らしてたような気がするけど、あれがリアルな魔法の使い方なのかな。
……なんて考えていると、ふわりと身体が浮かんだ!?
「うわわわわっ!? な、なに!?」
「これくらいの魔法なら、念じるだけで使える」
「わ、わかりましたから降ろしてください!」
すぐにドスンと地面に落とされた。思いっきり尻もちついたんですが。
「急に落とさないでくださいよ。ケガしたらどうするんですか」
「アルバートが僕を殺しにくるだろうね」
それはそうだろうな。
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