76 / 111
第二章
第76話 オタクの夢
しおりを挟む
外に出ると、ナーガさんが木の下でキョロキョロと何かを探し始めた。
「これでいいか」と1本の枝を拾い、手渡される。
「はい」
「ありがとうございます……? って、これ何ですか?」
「枝」
「それはわかってますけど」
「魔法を使う補助の役割になる」
自転車の補助輪のようなものってことか。
というかこれ、もしかして魔法のステッキ!
「魔法の杖ってことですか?」
適当に拾ったただの枝に見えるけど、ここは精霊のいる森。魔力が込められている特別な枝なのかも。
「ただの枝」
ただの枝だった……
「魔法の杖として売られてるモノもあるけど、別に棒状のモノならどんなのでもいいんだ。枝で充分だろう」
「で、できれば魔法の杖がほしいんですけど……」
BLにハマって腐女子として覚醒する前から、私はアニメが大好きだった。
当時は買ってなんて言えなかったけど、本当は欲しかった魔女っ娘アニメのステッキ。ああいうのがあったらいいんだけど。
でも今ならハリー・ポッターみたいな杖とかも憧れるなぁ。
ナーガさんが呆れたようにため息をついた。
「魔法習いたての子供はそういうの欲しがるけど、キミ中身は大人なんだろう? 恥ずかしくないの?」
ぐう……っ
世間から「アニメなんて子供の見るものでしょ?」「オタクキモいw」という目に晒されていたあの頃の古傷が痛む。
私が転生した後、少しは大人のアニメ好きも認められる世の中になったでしょうか。
「ぜ、前世の世界ではそういうの好きな大人もいたんですよ」
「前の世界に魔法はないんじゃなかった?」
「存在はしてないんですけど、物語として人気があったんです」
「なんだ、作り話か」
バッサリ。
ナーガさん、本とか読まないタイプなのかな。って、ナーガさんいつも本に埋もれてるじゃん。
「ナーガさんが読んでる本は、物語じゃないんですか?」
「あれは魔法の資料や文献。作り話なんて読んだって仕方ないだろ」
前世にもいたなぁ、こういう人。
でもこっちのリアリストは、魔法が使えて妖精が見えるんだから不思議な感じ。リアルがファンタジーなんだもんな。
「とにかく、できれば私は魔法の杖がほしいです!」
「……なんでそんなの使いたがるんだ」
「だって、カッコイイじゃないですか」
厨二心が疼くんですよ。と言っても通じないだろうから黙っておくけど。
「杖を使うなんて初心者丸出しだ。カッコイイわけない」
「でも、サウザンリーフの魔法使いさんたちは使ってましたよ」
家族旅行に行ったとき、テーマパークの魔法使いさんたちはまさにTHE・魔法使いって格好で魔法のステッキを持ってた。アトラクションでも貸し出してくれたっけ。
「サウザンリーフは観光地だから見映え重視なんだ。人間たちが思い描く魔法使いを見せてるだけ」
「あれ、観光用だったんですね……。でも私は杖が使いたいです!」
食い下がると、ナーガさんがチッと舌打ちをした。
「僕に街まで買いに行かせるつもりか」
「え、ナーガさんが買ってくれるんですか?」
「師匠から弟子に贈ることが習わしなんだ」
「す、すみません! えっと、それなら枝でもいいです、けど」
「いいよ、別に。アルバートにチクられても面倒だから」
そんなことはしませんけど……
諦めたナーガさんが、枝をぽいっと放り投げた。
なんか手間掛けさせて申し訳ないな。でもやっぱり杖は欲しいんだよね。
とはいえ、明らかにムスッとしてしまったナーガさんが怖い。何か場を和ませないと。
「あの、そういえば、ナーガさんはどうやって魔法を使ってるんですか?」
確か指を鳴らしてたような気がするけど、あれがリアルな魔法の使い方なのかな。
……なんて考えていると、ふわりと身体が浮かんだ!?
「うわわわわっ!? な、なに!?」
「これくらいの魔法なら、念じるだけで使える」
「わ、わかりましたから降ろしてください!」
すぐにドスンと地面に落とされた。思いっきり尻もちついたんですが。
「急に落とさないでくださいよ。ケガしたらどうするんですか」
「アルバートが僕を殺しにくるだろうね」
それはそうだろうな。
「これでいいか」と1本の枝を拾い、手渡される。
「はい」
「ありがとうございます……? って、これ何ですか?」
「枝」
「それはわかってますけど」
「魔法を使う補助の役割になる」
自転車の補助輪のようなものってことか。
というかこれ、もしかして魔法のステッキ!
「魔法の杖ってことですか?」
適当に拾ったただの枝に見えるけど、ここは精霊のいる森。魔力が込められている特別な枝なのかも。
「ただの枝」
ただの枝だった……
「魔法の杖として売られてるモノもあるけど、別に棒状のモノならどんなのでもいいんだ。枝で充分だろう」
「で、できれば魔法の杖がほしいんですけど……」
BLにハマって腐女子として覚醒する前から、私はアニメが大好きだった。
当時は買ってなんて言えなかったけど、本当は欲しかった魔女っ娘アニメのステッキ。ああいうのがあったらいいんだけど。
でも今ならハリー・ポッターみたいな杖とかも憧れるなぁ。
ナーガさんが呆れたようにため息をついた。
「魔法習いたての子供はそういうの欲しがるけど、キミ中身は大人なんだろう? 恥ずかしくないの?」
ぐう……っ
世間から「アニメなんて子供の見るものでしょ?」「オタクキモいw」という目に晒されていたあの頃の古傷が痛む。
私が転生した後、少しは大人のアニメ好きも認められる世の中になったでしょうか。
「ぜ、前世の世界ではそういうの好きな大人もいたんですよ」
「前の世界に魔法はないんじゃなかった?」
「存在はしてないんですけど、物語として人気があったんです」
「なんだ、作り話か」
バッサリ。
ナーガさん、本とか読まないタイプなのかな。って、ナーガさんいつも本に埋もれてるじゃん。
「ナーガさんが読んでる本は、物語じゃないんですか?」
「あれは魔法の資料や文献。作り話なんて読んだって仕方ないだろ」
前世にもいたなぁ、こういう人。
でもこっちのリアリストは、魔法が使えて妖精が見えるんだから不思議な感じ。リアルがファンタジーなんだもんな。
「とにかく、できれば私は魔法の杖がほしいです!」
「……なんでそんなの使いたがるんだ」
「だって、カッコイイじゃないですか」
厨二心が疼くんですよ。と言っても通じないだろうから黙っておくけど。
「杖を使うなんて初心者丸出しだ。カッコイイわけない」
「でも、サウザンリーフの魔法使いさんたちは使ってましたよ」
家族旅行に行ったとき、テーマパークの魔法使いさんたちはまさにTHE・魔法使いって格好で魔法のステッキを持ってた。アトラクションでも貸し出してくれたっけ。
「サウザンリーフは観光地だから見映え重視なんだ。人間たちが思い描く魔法使いを見せてるだけ」
「あれ、観光用だったんですね……。でも私は杖が使いたいです!」
食い下がると、ナーガさんがチッと舌打ちをした。
「僕に街まで買いに行かせるつもりか」
「え、ナーガさんが買ってくれるんですか?」
「師匠から弟子に贈ることが習わしなんだ」
「す、すみません! えっと、それなら枝でもいいです、けど」
「いいよ、別に。アルバートにチクられても面倒だから」
そんなことはしませんけど……
諦めたナーガさんが、枝をぽいっと放り投げた。
なんか手間掛けさせて申し訳ないな。でもやっぱり杖は欲しいんだよね。
とはいえ、明らかにムスッとしてしまったナーガさんが怖い。何か場を和ませないと。
「あの、そういえば、ナーガさんはどうやって魔法を使ってるんですか?」
確か指を鳴らしてたような気がするけど、あれがリアルな魔法の使い方なのかな。
……なんて考えていると、ふわりと身体が浮かんだ!?
「うわわわわっ!? な、なに!?」
「これくらいの魔法なら、念じるだけで使える」
「わ、わかりましたから降ろしてください!」
すぐにドスンと地面に落とされた。思いっきり尻もちついたんですが。
「急に落とさないでくださいよ。ケガしたらどうするんですか」
「アルバートが僕を殺しにくるだろうね」
それはそうだろうな。
4
お気に入りに追加
728
あなたにおすすめの小説
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
聖なる幼女のお仕事、それは…
咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。
村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。
それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。
この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します
如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい
全くもって分からない
転生した私にはその美的感覚が分からないよ
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる