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第二章
第64話 お料理デビュー
しおりを挟む次の日、案の定お父さんは朝帰りだった。
二日酔いになって、今日は夜まで寝てるだろうな。
朝食はサディさんと目玉焼きを作った。
目玉焼きなら、前世で何度も作ったことがある。でも、今の小さな手で卵を割るのは結構大変だった。
黄身は割れちゃうし、ガスコンロじゃなくてサディさんが魔法で火をつけてくれたから火加減が自分じゃいじれない。あんまり上手くできなかった。
「アリシアちゃん、上手にできたね。初めてなのにすごいよ」
不満げな私をサディさんがたくさん褒めてくれた。確かに7歳が初めてやったのならこれで十分かもしれない。でも私の中身は20歳、前世では毎日料理していたプライドがある。せめて火加減を自分で調節できれば。
「私も火の魔法使えるようになりたい」
「それなら、ナーガが教えてくれるんじゃないかな。アリシアちゃんならすぐ使えるようになるよ。でも危ないから1人のときに使っちゃダメだよ」
そうだ、私魔法修行に来たんだった。
「今日、ナーガさんちに行ってきてもいい?」
「もちろん、一緒に行こうか」
サディさんは崩れて焦げた目玉焼きを「おいしい」と言って食べてくれた。絶対もっとおいしい目玉焼き作れるようになるんだから。
出掛ける前、ダブルベッドで唸ってるお父さんのところへ、サディさんと水を持って行った。
「お父さん、大丈夫?」
「ああ……大丈夫だ。アリシアは優しいな」
「今日の朝ご飯はアリシアちゃんが作ったんだよ。アリシアちゃんの初めて作った目玉焼き、おいしかったな~」
「なっ、アリシアの手料理!? うっ……」
ガバッと起きあがったお父さんが、頭を抱えてまたベッドに沈んだ。
「サディ……ずるいぞ、アリシアの手料理デビューを……」
「酔っぱらって寝込んでるのが悪いんだろ」
「アリシア~、明日はお父さんにも作ってくれるか?」
「うーん……」
せっかくなら上手くなってから食べてほしい。
という意味で渋ったんだけど、お父さんは見るからにショックを受けていた。
「アリシア……お父さんには作ってくれないのか?」
「あ、ううん。そうじゃなくって、上手になったら……」
「酔っぱらいには作ってあげないって。さ、そろそろナーガの家に行こうか。アル、留守番よろしく。気持ち悪くてもベッドに吐くなよ」
可哀想なお父さんを残して、サディさんと一緒に家を出た。
「サディさん、今日ちょっとお父さんにいじわるしてる?」
「えー、そんなことないよ」
とぼけてるサディさんだけど、いつものからかいより少し毒がある気がする。
やっぱりハドリーさんへの嫉妬、お父さんの鈍感のせいかな。
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