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第一章

第48話 停学

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 数日休んでから学校に行ったけど、心配していたようにいじめられることはなかった。
 でも、更にヤバいやつだと思われたのは確実。

 今まで無視されてるだけだったのに、明らかに避けられるようになった。
 私が近づくとみんながサッと距離を取る。廊下を歩けば、海が割れるようにみんなが道を開けた。
 貴族に道を譲らせる庶民、それが私。

 しばらくすれば、みんな忘れてくれるはず。子供なんてそんなものだよね。

 ……と思っていたのに、変なことは起き続けた。
 トントンと肩を叩かれて振り向くと誰もいなかったり、机の上を小人が追いかけっこしてたり、ずっと教室がディスコみたいにレインボーの光が点滅したり、百期夜行のように妖怪みたいなのが教室でパレードを始めたり。

 そのたびに私が叫び出すから、授業は度々中断になった。
 私だって必死で叫ぶのを堪えてる。でも段々と見えるものや聞こえるものが強烈になってきて、お化け屋敷に閉じ込められてる気分。耐えられない。

 とうとう先生から「アリシアさんがいると授業に差し支えますので」と言い渡され、実質停学状態になった。
 今日からしばらく学校を休む。体調は悪くないけど、なんだか力が抜けてベッドから出られなかった。

「あんな学校こっちから願い下げだ! アリシアを問題児扱いするとは!」
「大声出すなよ。アリシアちゃんが寝てられないだろ」

 仕事を終えたサディさんがお見舞いに来てくれた。
 私の停学を言い渡されて怒り心頭のお父さんは、サディさんに任せる。

「医者は疲れかストレスだって言ってたんだろ。貴族の学校なんていろいろ大変なんだよ。ゆっくり休ませてあげればいいじゃないか。少しくらい学校休んだって、勉強に支障はないだろ」
「ああ、アリシアの成績は学年トップだからな。例え遅れたとしても、すぐに挽回できる」

 いつの間に学年トップになったの。お父さん誇張しすぎだって。

「へえ、すごいじゃない。リリアさんに似たんだね」
「どういう意味だよ」
「アルは剣術以外からっきしだろ」
「バカにするな! 読み書きくらいできる!」
「えばるようなことかよ」

 お父さんとサディさんのこのワチャワチャ感。癒される。
 学校に行ってるとこれが見られないからなぁ。
 萌えを補充しないと腐女子は生きていけないのです。

「アリシアちゃん、食欲はある? エッグタルト作ってきたんだ」
「わあ、ありがとう! 食べる食べるー」

 ベッドを出てテーブルを覗き込む。
 サディさんが並べてくれたエッグタルトは、ふんわり黄色の卵にカラメルのような焼き色がついていてすごくおいしそう。

「マドレーヌにお茶を頼んでくる」

 お父さんの声が背中に聞こえた……瞬間、エッグタルトから何かが飛び出てきた!

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