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第一章

第22話 ホテル

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 結局、そのままワンダーランドを出てライラック号でホテルに向かうことになった。
 馬車の中でお父さんとサディさんが言い合いを続けてる。

「アルが大人げなく本気出すから騒ぎになっちゃったじゃないか」
「けしかけたのはサディだろ」
「俺はアルがあんまりカッコ悪いから、アリシアちゃんの前で名誉挽回させてあげようと思ったんだよ」

 う……とお父さんが言葉に詰まり、諦めたように肩を落とした。

「アリシア、悪かった。夜のパレード見られなくて」
「ううん。私、お父さんとサディさんのカッコいいところ見られてうれしかった!」
「そうか! それならお父さんも嬉しいぞ!」
「俺のおかげだってこと忘れないでよ?」
「わ、わかってる……」

 サディさんのフォローのおかげでお父さんの面目が保たれました。
 やっぱりサディさんは、お父さんのことよく考えててくれるんだな。


 到着したホテルは、お城のようだった。
 コンシェルジュの人たちがズラリと並んでお出迎えをしてくれ、案内された部屋は所謂スウィートルーム。
 毛足の長い絨毯が敷かれたリビングには大きなソファ、その隣がアイランドキッチン付きのダイニング。ドアの向こうには子供部屋と夫婦の部屋がある。
 夫婦の部屋! これはもちろん、お父さんとサディさんが使うんですよね!?

「すごーい! お父さん、ここ本当にホテル?」
「そうだぞ。アリシアのために用意したんだ。家だと思って寛ぎなさい」
「自分だけの手柄にしないでよ。ここを探したのは俺なんだからね。アルに任せると、とんでもないホテルに決めかねないから」
「どういう意味だよ」

 うさぎの魔法を見るに、お父さんのセンスってとんでもないみたいだからな……。
 でもワンダーランドもこのホテルも、2人からのプレゼントなんだもんね。

「お父さん、サディさん。ありがとうございます!」

 お辞儀をすると、2人が顔を見合わせて笑った。
 サディさんが跪いて私の頭を撫でる。

「こちらこそ、楽しい旅行に誘ってくれてありがとう。アリシアちゃん」

 えへへ、とサディさんに笑いかけるとお父さんの視線を感じた。
「先を越された!」と言いたそうな顔をしてる。別に早い者勝ちじゃないのに。
 悔しい顔を見せたくなかったのか、お父さんが背中を向けた。

「サディ、部屋に荷物を置きに行くぞ」
「もしかして、俺たち夫婦部屋?」
「仕方ないだろ。子供がいるんだから、家族向けの部屋しか取れなかったんだ。我慢しろ」
「別に嫌なんて言ってないけど~?」

 なんて話しながら、お父さんとサディさんが夫婦の部屋に消えていく。
 子供はさっさと寝ますので、今夜はお楽しみください。ふふふ。


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