異世界で吟遊詩人のパトロンになりました

水都(みなと)

文字の大きさ
上 下
62 / 65

23-2

しおりを挟む
 聞き返す間もなく、唇が重ねられた。

 さっきまでのとは違う。深い口づけだ。俺を求めるように、何度も強く重ねられる。
 どうすればいいのか解らなかったが、男の本能が疼く。

 噛みつくように求めると、俺の背に腕がまわされた。
 俺の口腔にノアの舌が侵入する。受け入れるように舌を絡ませると、もう止まらなくなる。それは、ノアも同じようだった。

「んぅ……」
「ふっ……ノア……」
「フレディ、もっと僕に触れてみたくありませんか?」

 ノアに手を取られ、服の中に誘導される。滑らかな肌を辿って行くと、ツンと尖ったものが引っ掛かる。

「あ……っ」

 艶めかしいその声に、下腹部が熱くなる。

 その肌にもっと触れたくて、両手でノアの胸に触れた。女と違って膨らみはないはずなのに、柔らかくて吸いつくようだ。
 
 触れるたび、ノアが身体をくねらせる。

「フレディ……」

 ノアがまた俺の手を掴み、自分の下腹部へと触れさせた。
 布越しにノアの熱が当たる。その膨らみがありありと感じられた。

「あなたに触れられただけで、僕はこんなにも感じてしまうのですよ」
「ノア……」

 腕を伸ばすと、袖がずり下がった。露わになった手首から、生々しい傷痕が覗いてしまう。
 咄嗟に隠そうとしたが、ノアのしなやかな指先が俺の手を制止する。

「僕と一緒にいたら、もう死にたいなんて思わなくなりますよ」
「知ってたのか……?」
「恋しい方の身体に気づかない程、鈍感な男ではありません」

 死のうと思って、でも思い切れずに中途半端につけた傷。
 それを癒すかのように、ノアが傷痕を舌でなぞる。くすぐったいようなその感覚に、熱い吐息が漏れてしまう。
 柔らかくて温かくて、まるで子猫にでも舐められているようだ。傷跡が、忌々しい記憶と共にノアに浄化されていく。

「ノア。もっと、お前に触れたい……」

 手首に名残惜しそうにキスを落とし、ノアがまた俺の手を取る。
 ノアに導かれるまま、身に纏う服を薄衣を剥がすように脱がせていく。徐々にあらわになるノアの素肌は、まるで絹のように白く滑らかだった。

 淡いピンクの突起を隠すように、銀色の髪のベールが掛かっている。その姿はエロいというよりも、どこか神々しかった。

  ガラス細工のように壊れてしまいそうな、細い腰をそっと撫でた。
「ん……っ」と頬を染めるノアの美しさに、脳がクラッとする。

「触るだけでいいんですか?」

 そう言われて初めて、ノアの柔肌に恐る恐るキスをした。なんとなく甘い気がする。
 痕もつかないような触れるだけのキスに、ノアが笑う。

「じれったくなるほど優しいんですね。あなたの痕を残してくれてもいいのに」
「ノアの肌に痕なんてつけられない」

 美しい新雪を足跡で汚したくない。そんな気持ちに似ている。
 俺のものにしたいけど、キレイなままでいてほしい。

 と、ノアが俺の下腹部に触れてきた。

「――っ!」
「僕の身体で、あなたも興奮してくれたんですね」

 くすりと笑うその仕草だけで、また俺の中心が反応してしまう。

 俺を男にしてくれると言っていた。
 けど、ここから一歩が踏み出せない。ノアを傷つけたくないが、でも上手くやれる自信が……

「今日は、僕に任せてください」

 ノアが俺に抱きついてきた。突然のことにバランスが取れず、ベッドに倒れ込む。
 身体を起こそうとしたが、ノアが俺に馬乗りになっている。そのまま俺のベルトを緩め始めた。

「な……っ」
「どうかそのままで。フレディはただ僕のことだけ見て、考えていてください」
 
 ノアに下着をずらされ、窮屈だったそれが外気に晒される。
 まだ完全に勃ち上がっていないものをノアの両手で包み込まれた。優しく上下に刺激を与えられると、そこがさらに熱を持つ。

「ふふっ、もうこんなにして。1回ヌいておきますか?」
「や、ちょ……待っ」

 同じ男だからか、ノアの手は的確に弱いところを刺激してくる。
 裏筋をくすぐるように撫で上げられ、ぞわぞわと産毛が総毛立つのを感じる。もう触れることすらないと思っていたから、ノアに触られてるという事実だけで、俺の欲望が湧き上がってくる。

 チロリと鈴口を舐められれば、呆気なく果ててしまった。

 頭がぼうっとする。まだ俺の上には白い肌をすべて晒しているノアがいるというのに、妙に冷静になっている。
 これが賢者タイムか。

 そんな俺にノアが挑発的な笑みを向けた。

「次は私のナカに、挿れてみたくはありませんか?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)

exact
BL
11/6〜番外編更新【完結済】 転生してきたのかなーと思いつつも普通に暮らしていた主人公が、本物の主人公と思われる人物と出会い、元の世界に帰りたがっている彼を手伝う事こそ転生の意味だったんだと勝手に確信して地道に頑張る話。元同級生✕主人公(受け)。ゆるーっと話が進みます。全50話。 表紙は1233様からいただきました。

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

ハーバルお兄さん~転生したら、イケおじ辺境伯と魔王の子息を魅了ヒーリングしちゃいました~

沼田桃弥
BL
 三国誠は退職後、ハーバリストとして独立し、充実した日々を過ごしていた。そんなある日、誠は庭の草むしりをしていた時、勢い余って後頭部を強打し、帰らぬ人となる。  それを哀れに思った大地の女神が彼を異世界転生させたが、誤って人間界と魔界の間にある廃村へ転生させてしまい……。 ※濡れ場は★つけています

処理中です...