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深みのある青い花が散りばめられた花束。柑橘系のような、それでいて深い香りがする。
うちの勲章に使われている花だ。本来は成人したときや、何かを成し遂げた祝いのときに送られる。
まだこれを受け取る資格は俺にないとは思うが、兄さんの好意を無駄にはできない。
「ありがとう、兄さん」
「この1年はきっとフレディにとって、とても意味のある年になると思うよ」
そうだろうか。でも引きこもりを脱却し、ノアと出会えた段階で今までとは違う人生になってきたとは思う。
「さあ、誕生日の挨拶を。みんなフレディの言葉を待っているよ」
兄さんに促されて、花束を持ったまま皆の前に進み出る。
集まってくれた十数人の使用人たちを見まわした。
これだけの人数の前で喋るなんて初めてかもしれない。偉くなったと錯覚してしまいそうだ。
さっきまでいたノーマンンの姿が見えないが、何か仕事をしているんだろう。こんなときまで大変だ。後で礼を言わなければ。
「今日は俺のためにありがとう。こんな盛大に祝ってくれて、すごく嬉しいよ。俺の誕生日ではあるけど、久しぶりのパーティーだ。みんな存分に楽しんでほしい」
ワッと盛大な拍手が沸き上がる。まさか俺が拍手を受けることになるなんて。
こんな俺のためにもったいなすぎる。胸に染み入るってのは、こういう感覚か。
と、ノーマンが部屋に入ってくるのが見えた。まっすぐ兄さんの傍に行き、何かを耳打ちしている。
兄さんは頷くと、俺に向かって笑いかけた。
「フレディ、お友達が来たようだよ」
お通しして、と兄さんが伝えると、ノーマンは部屋を出て行った。
いよいよノアがやってくる。なんか緊張してきた。
兄さんをチラリと見上げると、どこか楽しそうだ。
ものすごく期待されてる気がする。ハードルが上がってるが、本当にノアを受け入れてくれるだろうか。今になって不安になる。
やっぱり、先に吟遊詩人だと伝えた方がいいかもしれない。
「兄さん、あのさ……」
そのとき、一瞬にして部屋の雰囲気が変わった。
アーニーたちが息を飲み、色めき立つ空気が伝わる。
「本日はお招きいただき、身に余る光栄にございます。レインジア子爵」
うちの勲章に使われている花だ。本来は成人したときや、何かを成し遂げた祝いのときに送られる。
まだこれを受け取る資格は俺にないとは思うが、兄さんの好意を無駄にはできない。
「ありがとう、兄さん」
「この1年はきっとフレディにとって、とても意味のある年になると思うよ」
そうだろうか。でも引きこもりを脱却し、ノアと出会えた段階で今までとは違う人生になってきたとは思う。
「さあ、誕生日の挨拶を。みんなフレディの言葉を待っているよ」
兄さんに促されて、花束を持ったまま皆の前に進み出る。
集まってくれた十数人の使用人たちを見まわした。
これだけの人数の前で喋るなんて初めてかもしれない。偉くなったと錯覚してしまいそうだ。
さっきまでいたノーマンンの姿が見えないが、何か仕事をしているんだろう。こんなときまで大変だ。後で礼を言わなければ。
「今日は俺のためにありがとう。こんな盛大に祝ってくれて、すごく嬉しいよ。俺の誕生日ではあるけど、久しぶりのパーティーだ。みんな存分に楽しんでほしい」
ワッと盛大な拍手が沸き上がる。まさか俺が拍手を受けることになるなんて。
こんな俺のためにもったいなすぎる。胸に染み入るってのは、こういう感覚か。
と、ノーマンが部屋に入ってくるのが見えた。まっすぐ兄さんの傍に行き、何かを耳打ちしている。
兄さんは頷くと、俺に向かって笑いかけた。
「フレディ、お友達が来たようだよ」
お通しして、と兄さんが伝えると、ノーマンは部屋を出て行った。
いよいよノアがやってくる。なんか緊張してきた。
兄さんをチラリと見上げると、どこか楽しそうだ。
ものすごく期待されてる気がする。ハードルが上がってるが、本当にノアを受け入れてくれるだろうか。今になって不安になる。
やっぱり、先に吟遊詩人だと伝えた方がいいかもしれない。
「兄さん、あのさ……」
そのとき、一瞬にして部屋の雰囲気が変わった。
アーニーたちが息を飲み、色めき立つ空気が伝わる。
「本日はお招きいただき、身に余る光栄にございます。レインジア子爵」
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