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しおりを挟むそういえば、もうすぐ俺の19回目の誕生日だ。自分でも忘れていた。
「いいよ、そんな。もう成人してるんだし、パーティーなんて」
「しかし、昨年の成人の祝いもしていないじゃないか。せっかくフレディも元気になったのだから、今年は祝わせてほしいんだ」
元気になった……兄さんの目から見てもそう思うのか。
この世界で貴族は16歳になったら社交界デビュー、18歳で成人を迎えることになっている。
特に成人の祝いは、自宅に大勢貴族を招いて盛大なパーティーをすることが一般的だ。
しかし、俺はどちらもスルーしてきた。引きこもり真っただ中で部屋から出ることすらなかったのに、パーティーなんて無理に決まっている。
昨年は扉の外から兄さんが「おめでとう」と声を掛けてくれたような記憶はある。
でも何も成し遂げられず、何の希望もなく、18年間ただ生きてきただけで祝われる権利はないと思っていた。
押し黙った俺を見て、兄さんが落ち着いた声で言う。
「盛大なパーティーをしようと言っているんじゃないよ。私と兄上、ノーマンやアーニーたちもフレディと一緒に過ごしたいんだ。みんなフレディをお祝いしたいと思っているんだよ」
みんな、かどうかはわからない。特に兄上は。
でも、アーニーたちは俺の引きこもり脱却を手助けしてくれた。ノーマンも泣いて喜んでくれた。
誕生日は親に感謝する日でもあるなんて聞いたことがある。俺に既に両親はいないが、みんなに感謝を伝える良い機会かもしれない。
「わかった」
そう答えると、兄さんの顔がパッと華やいだ。イケメンが更に輝いて見える。
「良かった! フレディの誕生日パーティーを開こう!」
兄さんが扉に向かってそう言うと、アーニーたちが一斉に入ってきた。
ずっと聞いてたのか!?
「フレデリック様! とびっきりのお誕生日会に致しますね。楽しみに待っていてください」
「坊ちゃまの誕生日会……幼き日のことを思い出しますね。私の目の黒いうちにまたお祝いできるなんて、大変に幸せでございます」
今感動するのは気が早すぎるぞノーマン。
俺を置いてけぼりにして、みんな楽しそうにパーティーの相談をし始めている。
考えてみれば、鬱々とした俺とハデなことを好まない兄上が住むこの屋敷で、パーティーなんて何年も開いていない。
今まで苦労掛けた分も、みんなには楽しんでもらいたい。
「フレディ、パーティーにはお友達も呼ぶといい」
お友達?
まったく、兄さんはいつまでも俺を子ども扱いだ。
「俺に友達なんて……」
「最近仲良くしている友達がいるんじゃないのかい?」
言葉に含みを感じる。まさか、ノアのことバレてるのか?
兄さんの青緑の瞳は、なんでもお見通しな気がする。それなら――
「……どんなヤツでも、いい?」
「もちろん。フレディの友達なら、どんな子でも大歓迎だよ」
ノアは果たして友達なんだろうか。
でも兄さんにノアの歌声を聞いてほしいとは思う。
アーニーたちも吟遊詩人を噂していたし、来たら喜ぶかもしれない。
頼んでみるか。
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