49 / 56
4 きっとまた会える
1 かくれんぼ
しおりを挟む
「セクウ、この論文どう思う?」
オレは声に出してオレの中のセクウに問いかける。
オレの手の中には、レーナの侍女を務めながらも魔獣研究者としても研究を続けているマオリから渡された今年の論文集がある。
しおりが挟まれているのは「魔獣石から新たな魔獣が生まれる可能性」という論文。
巣をつくり卵を産む魔獣も居る中で一部の巣も卵も見つからないような魔獣はその個体の命が終えた時に残された魔獣石から再び命を誕生させるのではないか。というものだ。
元コドモトビネコだったオレにとっても初耳だ。ま、オレは元は異世界人だから知らなくてもしょうがない。
魔獣石に入り込むことができるセクウならもしかしたら魔獣石からコドモトビネコとして誕生することができるのか?記憶はどうなるんだろう?セクウやマダナの生まれ変わりとして記憶があるのかな?
しばらくセクウの返事を待つけれど、返事がない。
前世の記憶はない。両親と妹がいた。両親も平民だったけど仲良く暮らしていたような気がする。
いつかセクウが言ったようにふとしたきっかけでフルーツバスケットみたいに中身が入れ替わったなら、だれかがあの世界のオレの中に入ってオレをやっているんだろうか?
それで、フルーツバスケットの椅子が一つ足りないならいいじゃん、一緒に座ろうぜ。
この椅子(セクウの身体)悪くないと思うんだけど、なんでセクウは座りたがらないんだろう?
トントントン
ノックの音に思考が遮られる。
「開け」
馴染みのある気配にノックの主も確かめずにドアを開ける。
「セクウ、体調はどう?」
兄上がオレの部屋に来る時の挨拶はいつもこんな言葉だ。今はすっかり丈夫になったけれど、以前はベッドの中から微笑み返すだけって事も多かったから、毎日食事を共にしているにもかかわらず、こんな言葉が出てしまうのだろう
「ええ、御覧の通りですよ。兄上は?」
兄上だって元気になったよね?オレに体調を聞く前にご自身の体調管理をして下さいって生意気な進言をして兄上を不機嫌にしたことだって一度や二度じゃない。
「きわめて元気」
苦笑しながら兄上がボクの頭に手を伸ばす、触れる瞬間にビリっと静電気がきそうで身構えるけど、そんな事は無い。
前に家族がオレに触れる時にはよく静電気のようなものが起きていたけど、あれも魔力が関係していたんだろうなあ。
「ほんとにお前の魔力が安定して嬉しい。おかげでいつでもお前に会えてお前に触れられるからね」
セクウ、魔力不安定な時代には兄上になにか失礼な事したのかな?
「冬が来る前に家族で出かけたいって言ってたけど、流石に遠くは無理みたいだからこの前、セクウが行った魔湖に行こうと思うけどどう思う?」
「いいですね」
兄上の顔が輝いた
「兄弟で出かけるのって夢だったんだ。 ほら お前の虚弱の原因が魔量過多だって言われてから、魔量の多い私はお前に近づくことさえ制限されてたからさ。学生の時なんて兄弟で通っている学友が羨ましくてしょうがなかったよ。もちろん 表には出したりしてないよ」
セクウなら『兄上 王子はいつだって堂々としていてください』くらいのことを言っていたのかな?
「お前と触れ合いたいのは父上や母上だって同じだからさ、魔湖から帰って来た時に
たまたま私が出迎えて寝ているお前を抱っこしてベッドまで連れて行ったことは話してないんだ。」
嬉しそうに、得意げに兄上が笑う。
セクウ、聞いてるか?それとも知っていたか?兄上はブラコンらしいぞ
オレは声に出してオレの中のセクウに問いかける。
オレの手の中には、レーナの侍女を務めながらも魔獣研究者としても研究を続けているマオリから渡された今年の論文集がある。
しおりが挟まれているのは「魔獣石から新たな魔獣が生まれる可能性」という論文。
巣をつくり卵を産む魔獣も居る中で一部の巣も卵も見つからないような魔獣はその個体の命が終えた時に残された魔獣石から再び命を誕生させるのではないか。というものだ。
元コドモトビネコだったオレにとっても初耳だ。ま、オレは元は異世界人だから知らなくてもしょうがない。
魔獣石に入り込むことができるセクウならもしかしたら魔獣石からコドモトビネコとして誕生することができるのか?記憶はどうなるんだろう?セクウやマダナの生まれ変わりとして記憶があるのかな?
しばらくセクウの返事を待つけれど、返事がない。
前世の記憶はない。両親と妹がいた。両親も平民だったけど仲良く暮らしていたような気がする。
いつかセクウが言ったようにふとしたきっかけでフルーツバスケットみたいに中身が入れ替わったなら、だれかがあの世界のオレの中に入ってオレをやっているんだろうか?
それで、フルーツバスケットの椅子が一つ足りないならいいじゃん、一緒に座ろうぜ。
この椅子(セクウの身体)悪くないと思うんだけど、なんでセクウは座りたがらないんだろう?
トントントン
ノックの音に思考が遮られる。
「開け」
馴染みのある気配にノックの主も確かめずにドアを開ける。
「セクウ、体調はどう?」
兄上がオレの部屋に来る時の挨拶はいつもこんな言葉だ。今はすっかり丈夫になったけれど、以前はベッドの中から微笑み返すだけって事も多かったから、毎日食事を共にしているにもかかわらず、こんな言葉が出てしまうのだろう
「ええ、御覧の通りですよ。兄上は?」
兄上だって元気になったよね?オレに体調を聞く前にご自身の体調管理をして下さいって生意気な進言をして兄上を不機嫌にしたことだって一度や二度じゃない。
「きわめて元気」
苦笑しながら兄上がボクの頭に手を伸ばす、触れる瞬間にビリっと静電気がきそうで身構えるけど、そんな事は無い。
前に家族がオレに触れる時にはよく静電気のようなものが起きていたけど、あれも魔力が関係していたんだろうなあ。
「ほんとにお前の魔力が安定して嬉しい。おかげでいつでもお前に会えてお前に触れられるからね」
セクウ、魔力不安定な時代には兄上になにか失礼な事したのかな?
「冬が来る前に家族で出かけたいって言ってたけど、流石に遠くは無理みたいだからこの前、セクウが行った魔湖に行こうと思うけどどう思う?」
「いいですね」
兄上の顔が輝いた
「兄弟で出かけるのって夢だったんだ。 ほら お前の虚弱の原因が魔量過多だって言われてから、魔量の多い私はお前に近づくことさえ制限されてたからさ。学生の時なんて兄弟で通っている学友が羨ましくてしょうがなかったよ。もちろん 表には出したりしてないよ」
セクウなら『兄上 王子はいつだって堂々としていてください』くらいのことを言っていたのかな?
「お前と触れ合いたいのは父上や母上だって同じだからさ、魔湖から帰って来た時に
たまたま私が出迎えて寝ているお前を抱っこしてベッドまで連れて行ったことは話してないんだ。」
嬉しそうに、得意げに兄上が笑う。
セクウ、聞いてるか?それとも知っていたか?兄上はブラコンらしいぞ
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる