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3 身代わり生活

5 初めてのピクニック

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翌週末にオレたちは魔湖へ向かった。

「セクウ殿下をよく図書館でお見かけすると評判ですわよ」
「よく ご存じですね」
「その髪色は、目立ちますもの」

相変わらずオレの髪色は2色に分かれている。ピンクやグリーンの髪色まであるこの国でも2色、というのは見たことがない。
この髪色になってから公の場に出たことはないけれど、こんなに目立つ髪色で魔力の流れもよくなって元気になった事は兄上にとって幸いな事だろうか?

「わたくし、何かお気に触るようなことを言いましたか?」
「いえ、オレが勝手に気にしているだけです、オレの存在は第一王子や国にとって幸いであり続けることが出来るだろうかと?」

レーナの心配気な眼差しにガラにもなく素直になる。レーナも隠された姫君であるからオレの気持ちを分かってくれるのではと甘えているのかもしれない。

「それは、セクウ殿下ご自身がどうありたいか、ではないですか?」

少し考えてからレーナは俺の目をまっすぐに見た。まっすぐすぎるレーナの目に恥ずかしくなって目をそらしたのは、もともとのセクウなのか、それとも身代わりのオレなのか?

そらした目の先の景色は、王都からさほど離れていないのに田園が広がっている。

「わあ」

オレにとって初めて見る風景に思わず声を上げて窓にへばり付いてしまい、つられるように窓の外を見たレーナも同じように窓にへばり付いた。

王族のお出かけにしては簡素だが、それでもオレたちの馬車の他に荷物を載せた馬車と騎乗の護衛が数人付いているから、ちょっとした行列になっている。子供が口を開けてこちらを見上げる様子がかわいくて手を振ると振り返してくるのがまた可愛いなあ。

魔湖のほとりにタープを張って、まずは休憩。近いとはいえ、身体がバキバキになっている。

オレの変貌ぶりを初めてみる護衛や使用人は、タープから程よい距離の木陰に陣取っているからタープにはオレとレーナとマオリの3人だ

「ふあー」とシートの上に寝転がって伸びをする。身体が伸びて気持ち良いけど
セクウなら絶対にこんなことしなさそうだなあ。

「レーナも寝転ぶ?気持ちいいよ?」

ほら、よくベッドの上で寝転んだ話したりふざけたりしたよね?と心の中で言いながらお誘いしたいけど、レーナにもマオリにもあきれたような視線を向けられた。こんなに気持ちいいのに~

あー本当に気持ちいい。もっと、もっと撫でて。頭を撫でてくれる手に頭を擦りつけようとして「ねえ!そのくらいでやめて!!」とセクウに叱られて目を開ける。

パチリ 

レーナと目が合った。「うおおおおおおおお」心の中でだけ叫んで、口からは声がでないように口を両手で抑えて、起き上がり、そのままお尻で後ろに下がる。
あー 人間って飛べないから不便!

レーナの方はそのままの位置で固まっているし、その後ろではマオリがジトリとした目でレーナを見ている。

「申し訳ありません。セクウ殿下の髪色があまりにマダナ様と似ていらしたので、魔量も確認したいと思いました。しかしながら侍女のわたしではあまりに失礼かと存じまして、レーナ様にお願いいたしました」

マオリが頭を軽く下げて状況を説明する。レーナがオレの頭を撫でてくれたという事実だけで十分幸せで、顔が熱くなる。
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