🐈せっかく猫になったのに~病弱な第二王子に身代わりを押し付けられた件

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2 アサータ王国へ

11 昨日の敵は

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レーナのアサータ王立学園の第一日目、僕は学園のセクウの部屋で留守番をしていた。テラスではセクウの”使い魔”(って言い方かっこいいよね?僕もレーナの使い魔って言われたい)の山鳩がなにかをついばんだり、水を飲んだりしながら僕を見張っている。
あーあ、信用ないなあ、もう勝手に出て行ったり、迷子になったりはしないのにね


「学院内では皆平等と謳っていますが他国の子爵令嬢というのも微妙な立場ですから、なるべくボクが付き添いましょう」
「ボクが登校する月曜日と、金曜日の下校時は王家の馬車でご一緒しましょう」
「ボクの登校時にはマダナは学園内の僕の部屋にいて、いつでも会えるようにしましょう」

などなどのセクウからの提案にマオリがいちいち満面の笑みで大きく頷くのに、レーナは「申し訳ない」「そこまでしていただかなくても」と小さな声で言って遠慮しようとしていたけれど、

「レーナ様のご両親もご親戚であるモリーノ辺境伯ご夫妻もセクウ様からのお申し出に安心されることと思います」

マオリのこの一言に迷っていたレーナもセクウの申し出を断るのはあきらめたみたいで、今日は王家の馬車でセクウと一緒に登校してきた。

「本来ならエスコートしたいところですが何分、体が弱いので護衛に頼みますね」

セクウは眉をよせて言うけれど、杖ついて歩いているようなお前にエスコートできるとはだれも思ってないから安心していいぞ。

馬車の乗降場所で王家の馬車からセクウが下りるとその場がザワリとしたけど、レーナが下りるとさらに騒めいた。おかげで僕が入ったかごを下げたマオリはほとんど目立たなかった。

僕の留守番中に、何回かドアがノックされたけれど誰かが入ってくることはなかったから僕はセクウの部屋の中を思う存分探検する。

壁一面の本棚にはなんだかたくさんの本が並んでいたけれど相変わらず僕には字が読めない。もう片方の壁際にはクッションが乗ったカウチソファがある。ソファもクッションも気持ちよさそう。どれどれ、寝心地を確認してやろう。

王宮のセクウのベッドの半分くらいの大きさだけどすっごくふかふかで気持ちがいい。特にクッションなんてボッフンボッフンで最高の座り心地だ、これなら寝心地だって最高に違いないよ。ほらね、丸くなっただけで自然に目が閉じちゃうもの……


ノックの音がしてドアが開いた。
セクウ?じゃない、自分の部屋に入るのにノックはしないよね

「お呼びですか?」

呼んでないし、昼寝の邪魔するなよ! 薄目を開けて入口を確認すると、入ってきたのは制服を着た男子生徒、セクウも居ないのに堂々と入ってきた。セクウのデスクの上に置いてある書類に手を伸ばした時、バサバサと羽音がしてテラスの山鳩が飛び立った。男子生徒はギクリとしたようだけど「鳥か」と呟いて再び書類に手を伸ばす。

僕はどうしよう?セクウは今レーナの味方だから僕はセクウの味方をすべきだよね?
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