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2 アサータ王国へ

3 迷いの森の向こう側で

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「レーナ 身体に気を付けるのよ ちゃんとご飯を食べるのよ 嫌な事があったらすぐに帰ってらっしゃいね」

王妃様は最後まで名残惜しそうに言いながら王様と一緒に王宮へ転移していった。
朝食の席には居ないと不味いって言ってたけど、朝食食べられるのかな?食べなくても居ればいいのかな?

レーナは少し眉を下げて笑いながら転移の煙が消えるまで手を振っていた。
寂しい?大丈夫だよ、僕がついているからね。チリンと鈴を鳴らしながらレーナの足に体をすりつけると レーナは僕を抱き上げて背中に顔をうずめた。

それから ソファーへ座ったかと思うと僕の体のあちこちの匂いを嗅いだり、肉球をプニュプニュしてみたりマオリの健康観察以上に僕の体を触ってきたから恥ずかしくなっちゃった。

健康観察と言えば「転移の影響と変化の影響と確認したい」ってここにきて3回目くらいの健康観察されている時に「時間はかかっても馬がいい」って王様と同じようなことを言いながら辺境伯が帰ってきた。




翌朝には辺境伯夫人と共にアサータに向かって僕たちは旅立った。
迷いの森、と呼ばれている森なのに、道があるようにも見えないのに、馬車は迷うことなく森を抜けた。不思議だよね?秘密は馬車なのか御者なのか それとも森なのか?

「馬車って快適なんですのね」
「そうよ、転移よりよほど快適でしょ?ワタクシが一緒ならばどんな道も快適よオホホホ」

レーナに辺境伯夫人が自慢げに言いながら豪快に笑ったのを僕をレーナのポシェットから目だけだして見ていた。うん、秘密はこのオバサンだね


王城ではなんとオバサンとレーナの為にガーデンパーティが催された。夕暮れ時に庭園に明かりがともされた景色は窓の中から見ても幻想的だった。

そう、僕はお留守番なのだ。
オバサンには僕の事は言っていないから僕を隠して連れていくには僕専用のポシェットに入れていくしかないんだけど、今日のクリーム色のドレスに僕専用ポシェットの紫紺はどうしても合わない。

でも、僕はイイコト考えたんだ。

「ごめんね マダナ」とすまなそうに何度も謝るレーナの前に例の赤いリボンを咥えて持って行って

「マー」

甘えた顔と声でおねだりしたら「気に入ったのね」とレーナは僕の首にリボンを結んでくれた。

「マー」
「いい子にお留守番していてね」
「マー」

僕はいい子に返事をしたけど、猫になってれば庭に出てもいいよね?念のために夕闇が濃くなってから少し開いていた窓に前足を引っ掛けて庭に降りた。

ニャッホー グルルルルルン
影を選びながら庭を散歩する。芝生が足に当たるのが気持ちいい。猫になってるから
一歩の距離が違うね。飛ばなくても結構な距離が移動でき――って ここどこ?

不味い!結構な距離を移動してしまった。レーナの部屋はどこだった?こっちだと思う方向に走ったら、余計にわからなくなってきた。困った もうレーナには会えないのかもしれない。

焦る僕だけど、いいことを思いついた。
木に登ればいいんじゃない?最悪 部屋が判らなくても、ガーデンパーティの場所が判ればレーナはそこにいるよね


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