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第四章 真実

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「やっ……、止めて……、放してください!」
 真凜は必死で暴れたが、体格と体力は雲泥の差だ。神谷が、嘲るように言う。
「嫌がるふりなんかすんなよ……。どうせオメガなんて、相手が誰でもいいんだろ?」
 神谷の手が、ドレスの裾から潜り込んでくる。大声で助けを求めようとした、その時だった。カーテンが、バッと開いた。
「何をしている!」
 そこには麻生が、恐ろしい形相で仁王立ちになっていた。さすがに焦った様子で、神谷が真凜から離れる。麻生は、彼をにらみつけた。
「神谷さん。今まで当デパートの催事にご協力いただき、ありがとうございました。でも、もうお付き合いはこれきりにさせていただきましょう」
「ちょっ……、やだなあ、麻生さん。ほんのジョークですよ」
 神谷が、狡猾そうな笑みを浮かべる。
「彼だって、ノリノリで……」
「警察を呼びましょうか?」
 麻生が、威圧するような声を出す。神谷は一瞬ひるんだ後、「下っ端が、生意気に」と毒づきながら出て行った。入れ替わりに、麻生が入ってくる。
「大丈夫?」
「うん……。ごめんね。気をつけろって、言われてたのに……」
「真凜が謝ることはない」 
 麻生は、深いため息をついた。
「間に合ってよかった。エヴァさんから、真凜とミカさんがここへ行ったって聞いて、急いで追いかけてきたんだ……」
 そこで麻生は、真凜をまじまじと見つめた。
「真凜……。すごく似合ってる」
 真凜は、思わず赤くなった。
「あんまり見ないで。恥ずかしいから」
「いや、本当に可愛いよ。中世のお姫様みたいだ」
 麻生は、スマホを取り出した。
「写真に残したいな。いいだろう?」
「……まあ、いいけど」
 どのみち、記念撮影するつもりだったのだ。うなずくと、麻生は嬉々として真凜の肩を抱いた。
「よし、じゃあ二人で一緒に撮ろう。ちょうどよかった。神谷なんかに撮らせるものか……」
 麻生が、スマホをインカメラに切り替える。ドレス姿の自分と麻生の、並んだ姿が映し出された。
 カシャッ。
 シャッター音が鳴り響いたその瞬間、真凜は不意に眩暈を覚えた。
(――何……?)
 すうっと、意識が遠のいていく。そして真凜の思考は、そこで途絶えた。
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