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第一章 出会い
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「そりゃ、あなたを食事に連れ出すためですよ」
麻生が、爽やかに微笑む。
「ですから、それは……」
「働き出したら忙しくなるんですよね? さっき、エヴァさんから連絡をもらいました。いい人を紹介してくれてメルシィ、とね。ついでに聞きましたよ。シフトに入るのは来週からなんでしょう? ということは、今日ならまだお時間がありますよね?」
言質は取ったとばかりに、麻生が得意げな笑みを浮かべる。真凜は、必死で言い訳を探した。
「でも、麻生さんのお仕事は……?」
「幸運なことに、今日は有休を取っています」
「……」
昨日同様かっちりとジャケットを着こなしているので、わからなかった。ただ昨日よりは、多少ラフか。グレーの色が、色白でキリッとした彼の顔立ちに、よく合っている。
「さ、行きましょう。今から向かえば、ちょうど昼時です」
麻生は真凜を促した。
「服装もスーツだし、ちょうどよかった……。それに、ただ食事するだけじゃなく、あなたに有意義な情報もお伝えしますよ? たとえば、エヴァさんの操縦法。なかなか難しい人ですからね」
真凜の完敗だった。
ともに電車で移動すること約三十分、そのフレンチ店は、ひっそりとした隠れ家的な場所にあった。店頭には、見事な桜が咲き誇っている。
「綺麗……」
真凜は、思わず口にしていた。
「桜がお好きですか?」
「花は、何でも好きです。でも、一番好きなのは薔薇かな」
言ってから、真凜は気恥ずかしくなった。だが麻生は、納得したようにうなずいた。
「ああ、真凜さんにぴったりですね。優雅で、高貴なイメージですから」
彼は、スムースにドアを開けてくれる。どうぞと促され、一歩足を踏み入れた真凜は息をのんだ。そこには、まさしく中世ヨーロッパの光景が広がっていたのだ。高い天井にはシャンデリアが吊され、エレガントなアンティークの装飾がそこここに施されている。
「素敵ですね」
「気に入っていただけたなら、よかった」
麻生が、満足そうに微笑む。そこへ、店の人間が姿を現した。
「麻生様、いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
案内されたのは、これまた趣のある個室だった。椅子やテーブルも、ヴィンテージ風だ。エスコートされ着席しながら、真凜はふと疑問を抱いた。
「予約を取るの、難しかったんじゃないですか?」
「仕事柄顔は利きますから、そうでもありませんよ」
麻生が穏やかに答える。彼が言うと、不思議と嫌味な感じはなかった。
「でも……。僕がお誘いを断ったら、どうするつもりだったんです?」
真凜が付いて来るという保証はない。キャンセルなど、もったいない話ではないか。だが麻生は、けろりと答えた。
「それならそれで、仕方ありません。わずかでもあなたとお食事できる可能性があるなら、それに賭けたかったんです」
真っ直ぐ目を見つめて告げられ、真凜は思わず顔を赤らめた。
(ていうか、個室でフレンチとか、デートみたいだよな……)
麻生が、爽やかに微笑む。
「ですから、それは……」
「働き出したら忙しくなるんですよね? さっき、エヴァさんから連絡をもらいました。いい人を紹介してくれてメルシィ、とね。ついでに聞きましたよ。シフトに入るのは来週からなんでしょう? ということは、今日ならまだお時間がありますよね?」
言質は取ったとばかりに、麻生が得意げな笑みを浮かべる。真凜は、必死で言い訳を探した。
「でも、麻生さんのお仕事は……?」
「幸運なことに、今日は有休を取っています」
「……」
昨日同様かっちりとジャケットを着こなしているので、わからなかった。ただ昨日よりは、多少ラフか。グレーの色が、色白でキリッとした彼の顔立ちに、よく合っている。
「さ、行きましょう。今から向かえば、ちょうど昼時です」
麻生は真凜を促した。
「服装もスーツだし、ちょうどよかった……。それに、ただ食事するだけじゃなく、あなたに有意義な情報もお伝えしますよ? たとえば、エヴァさんの操縦法。なかなか難しい人ですからね」
真凜の完敗だった。
ともに電車で移動すること約三十分、そのフレンチ店は、ひっそりとした隠れ家的な場所にあった。店頭には、見事な桜が咲き誇っている。
「綺麗……」
真凜は、思わず口にしていた。
「桜がお好きですか?」
「花は、何でも好きです。でも、一番好きなのは薔薇かな」
言ってから、真凜は気恥ずかしくなった。だが麻生は、納得したようにうなずいた。
「ああ、真凜さんにぴったりですね。優雅で、高貴なイメージですから」
彼は、スムースにドアを開けてくれる。どうぞと促され、一歩足を踏み入れた真凜は息をのんだ。そこには、まさしく中世ヨーロッパの光景が広がっていたのだ。高い天井にはシャンデリアが吊され、エレガントなアンティークの装飾がそこここに施されている。
「素敵ですね」
「気に入っていただけたなら、よかった」
麻生が、満足そうに微笑む。そこへ、店の人間が姿を現した。
「麻生様、いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
案内されたのは、これまた趣のある個室だった。椅子やテーブルも、ヴィンテージ風だ。エスコートされ着席しながら、真凜はふと疑問を抱いた。
「予約を取るの、難しかったんじゃないですか?」
「仕事柄顔は利きますから、そうでもありませんよ」
麻生が穏やかに答える。彼が言うと、不思議と嫌味な感じはなかった。
「でも……。僕がお誘いを断ったら、どうするつもりだったんです?」
真凜が付いて来るという保証はない。キャンセルなど、もったいない話ではないか。だが麻生は、けろりと答えた。
「それならそれで、仕方ありません。わずかでもあなたとお食事できる可能性があるなら、それに賭けたかったんです」
真っ直ぐ目を見つめて告げられ、真凜は思わず顔を赤らめた。
(ていうか、個室でフレンチとか、デートみたいだよな……)
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