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20 墓前の誓い

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 ジョルジュも一緒だ。入るよう促すと、ナタリーは気を利かせたのか、出て行った。
「少し、お話してもいいですか」
 イザークは、ひどく殊勝な態度だった。
「ああ。今後のことだな?」
 王族の資格を剥奪されたイザークは、名目上は実父・ラヴァルの家を継ぐことになった。とはいえ罪人ラヴァルからは、爵位も財産も没収されている。というわけでイザークは今、平民の立場なのである。
「兄上とヴィクトル様には、本当にご迷惑をおかけしたと思っています。マチアス兄上に至っては、取り返しのつかないことを……。けれど」
 イザークは、真っ直ぐフェルナンを見つめた。
「こんな僕ですが、やり直したいと思っています。正直、ずっとひがんできました。マチアス兄上もフェルナン兄上も優秀なのに、僕だけ何をやっても劣っていて……。ニュートラルだから仕方ないと思っていましたが、今回フェルナン兄上がサブと知って、それは言い訳に過ぎなかったとわかりました。これからは、心を入れ替えるつもりです。……だから、どうかジョルジュと共に、兄上のサポートをさせていただけませんか」
「僕からも、お願いします」
 ジョルジュが、口を添える。祖父も母も処罰された今、彼にとってイザークは、残るわずかな肉親だ。ジョルジュの表情には、必死なものがあった。
「イザーク兄様は、今レスティリアのことを、一生懸命学ばれているんです」
 フェルナンは、思わずヴィクトルと顔を見合わせていた。イザークが自ら勉学に励むなんて、これまででは考えられないことであった。
「イザーク、気持ちはありがたい。だが、今のお前は平民の上、ニュートラル。官職には就けないぞ?」
「どんな仕事でもいいのです!」
 イザークが、勢い込んで答える。すると、ヴィクトルが口を挟んだ。
「最も階級の低い官吏であれば、平民でもニュートラルでも可能性はあります。ですが、試験は難しい上、待遇も悪いですぞ?」
 イザークは、即答した。 
「可能性があるのなら、挑戦します。必ず、試験に合格してみせます!」
「では、頑張れ」
 フェルナンは、微笑んでいた。
「まあ、いずれはそんな壁も無くしたいのだが。ドムしか要職に就けないというこの社会はおかしいと、僕は思っている」
 フェルナンは、しみじみと言った。ラヴァルが最後にマルソーと仲間割れした際、『成り上がりニュートラル』と口走ったことが、ふと思い出される。
「マルソー伯爵が暴走していったのも、ニュートラルという性ゆえに、出世に限界を感じていたことが一因だ。その意味では、彼も哀れと思う」
 イザークとジョルジュは、黙って目を伏せたのだった。
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