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20 墓前の誓い
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その後は、フェルナンとヴィクトルを中心に、処理は着々と進んで行った。唯一残念だったのは、ラヴァルを生かして証言させられなかったことだ。トロハイアから帰ると同時に、彼は息絶えたのである。全力でグレアを放ったこと、精霊たちから痛めつけられたこと(生き残ったマルソーによれば、全身が焼け付くような熱さに襲われたそうだ)が原因らしい。
そしてマルソーは、マチアス殺害、フェルナン及びヴィクトルの殺害未遂の首謀者として、極刑が言い渡された。トロハイアでのラヴァルの暴露話については、ベイル以下大勢が証言した。加えて、彼の屋敷から見つかった、ラヴァルと計画についてやり取りした手紙が動かぬ証拠となったのだ。
ブリジットもまた、計画への関与が判明し、生涯幽閉されることが決定した。なおこれには、不敬の罪も加味されている。精霊の件が決定打となり、彼女は渋々、イザークは輿入れ前に身ごもったラヴァルの子であると白状したのである。
ブリジットがマルソーの一人娘だったため、彼の爵位や財産は国が剥奪することとなった。取り上げた財産は、これまでマルソーの鉱山で過酷な労働を強いられてきた、鉱夫たちへの補償に充てられる。これは、フェルナンの意見によるものだ。
そして、残るは王位継承問題である。ヴィクトルは一転、王位継承を辞退した。紛糾はしたものの、アンリ三世は、ついにフェルナンを次期国王として承認した。これには、様々な人々の後押しがあった。
真っ先に声を上げたのは、ベイル、カルノーたちだ。彼らは、トロハイアでの出来事について、克明に語った。
『ヴィクトル様が命を落としかけておられる状況でも、フェルナン様は、トロハイアへの敬意と謝罪を優先なさいました』
『ヴィクトル様のことは、次期国王という理由で、命を救うようにと仰ったのですよ』
『終始謙虚なフェルナン殿下に対して、精霊の方々は御自ら手をお貸しくださったのです』
カルノーも、今度は自発的に講話を行って、同様の話を語った。こうして国民の間では、フェルナンを次期国王に、という声が広がり、デモまで勃発した。当初はサブたちが中心だったその運動は、すぐにニュートラルの間にも広がり、ドムの要職者らも無視はできなくなったのだった。
もちろん、ヴィクトルも黙ってはいない。彼は、亡き正妃付きだった侍女から、彼女の遺した日記を入手した。そこに記されていた内容から、フェルナンがドムと偽ったのは、正妃の依頼によるものだったと明らかになった。詐称が私欲によるものでは無かったこと、ナタリーとフェルナンが正妃を庇ったことで、フェルナンの株はますます上がったのであった。
そして、リシャールも協力してくれた。彼は、婚約解消を宣言した上で、アンリ三世にこう告げた。
『こちらから求婚したとはいえ、パートナーのいる方を娶らせようなど、失礼極まりない話ですな。しかし、フェルナン殿下が次の国王となられるなら、レスティリアとも良いお付き合いができそうです……』
決定打となったのは、ジョルジュの証言だった。精霊たちが、フェルナンを次期国王と呼んだと、彼は明言したのだ。こうして頭の固い王族らも、考えを改めざるを得なくなった。ニコルの説得で、ゴーチェがまず賛同したのをきっかけに、皆は次々と、首を縦に振り始めた。そしてついに、王族全員一致で、フェルナンを次期国王に、ヴィクトルはそのパートナー兼宰相を引き続き務める、という結論に至ったのであった。
そしてマルソーは、マチアス殺害、フェルナン及びヴィクトルの殺害未遂の首謀者として、極刑が言い渡された。トロハイアでのラヴァルの暴露話については、ベイル以下大勢が証言した。加えて、彼の屋敷から見つかった、ラヴァルと計画についてやり取りした手紙が動かぬ証拠となったのだ。
ブリジットもまた、計画への関与が判明し、生涯幽閉されることが決定した。なおこれには、不敬の罪も加味されている。精霊の件が決定打となり、彼女は渋々、イザークは輿入れ前に身ごもったラヴァルの子であると白状したのである。
ブリジットがマルソーの一人娘だったため、彼の爵位や財産は国が剥奪することとなった。取り上げた財産は、これまでマルソーの鉱山で過酷な労働を強いられてきた、鉱夫たちへの補償に充てられる。これは、フェルナンの意見によるものだ。
そして、残るは王位継承問題である。ヴィクトルは一転、王位継承を辞退した。紛糾はしたものの、アンリ三世は、ついにフェルナンを次期国王として承認した。これには、様々な人々の後押しがあった。
真っ先に声を上げたのは、ベイル、カルノーたちだ。彼らは、トロハイアでの出来事について、克明に語った。
『ヴィクトル様が命を落としかけておられる状況でも、フェルナン様は、トロハイアへの敬意と謝罪を優先なさいました』
『ヴィクトル様のことは、次期国王という理由で、命を救うようにと仰ったのですよ』
『終始謙虚なフェルナン殿下に対して、精霊の方々は御自ら手をお貸しくださったのです』
カルノーも、今度は自発的に講話を行って、同様の話を語った。こうして国民の間では、フェルナンを次期国王に、という声が広がり、デモまで勃発した。当初はサブたちが中心だったその運動は、すぐにニュートラルの間にも広がり、ドムの要職者らも無視はできなくなったのだった。
もちろん、ヴィクトルも黙ってはいない。彼は、亡き正妃付きだった侍女から、彼女の遺した日記を入手した。そこに記されていた内容から、フェルナンがドムと偽ったのは、正妃の依頼によるものだったと明らかになった。詐称が私欲によるものでは無かったこと、ナタリーとフェルナンが正妃を庇ったことで、フェルナンの株はますます上がったのであった。
そして、リシャールも協力してくれた。彼は、婚約解消を宣言した上で、アンリ三世にこう告げた。
『こちらから求婚したとはいえ、パートナーのいる方を娶らせようなど、失礼極まりない話ですな。しかし、フェルナン殿下が次の国王となられるなら、レスティリアとも良いお付き合いができそうです……』
決定打となったのは、ジョルジュの証言だった。精霊たちが、フェルナンを次期国王と呼んだと、彼は明言したのだ。こうして頭の固い王族らも、考えを改めざるを得なくなった。ニコルの説得で、ゴーチェがまず賛同したのをきっかけに、皆は次々と、首を縦に振り始めた。そしてついに、王族全員一致で、フェルナンを次期国王に、ヴィクトルはそのパートナー兼宰相を引き続き務める、という結論に至ったのであった。
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