上 下
91 / 96
19 最後の戦い

9

しおりを挟む
 体を起こそうとする彼に、フェルナンは焦った。
「ヴィクトル、無理をするな」
「もう大丈夫です」
 言葉通り、ヴィクトルは立ち上がると、しっかりした足取りでリシャールの元へと歩み寄った。
「リシャール陛下には、申し訳ないことをいたしました。確かに、私とフェルナン殿下はパートナーです。悪党どもを捕らえる作戦として、関係を解消していました。これは私の独断で、殿下にも内緒にしていましたが……。ですが、寛大にもお許しをいただけるとのこと、感謝申し上げます。かくなる上は、殿下を幸せにいたします。神と精霊に、お誓い申し上げます」
「信じていますぞ」
 リシャールが頷く。すると、パチパチと拍手が聞こえた。ジョルジュだった。拍手は、ベイルやカルノー、騎士たちの間にも広がっていく。熱い思いで胸がいっぱいになったフェルナンだったが、ふと気付いた。
「待て、精霊の皆様方は?」
 周辺は、いつの間にか元通りになっている。そして、青い光も消えているではないか。すると、ジョルジュがけろりと答えた。
「お帰りいただきましたよ? ヴィクトル殿は助かりましたし、土地も綺麗になりましたから。お祖父様とラヴァルも、十分痛めつけられたみたいですし」
「お前っ。まだお礼を申し上げていないのだぞ、僕は!」
 フェルナンは、目をつり上げた。
「お礼なら、兄様に代わって申し上げておきましたから」
「そういう問題では無い!」
 コンとジョルジュの額を小突けば、その場には温かな笑いが広がったのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

TOKIO

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:8

【BL】貴様の手の甲に誓いの口づけを

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:240

マッチョサキュバス♂はご飯が食べたい

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:232

汀の島

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,363

スパダリ社長の狼くん

BL / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:558

出来損ないの下剋上溺愛日記

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:43

たった五分のお仕事です?

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:663

声を失ったSubはDomの名を呼びたい

BL / 連載中 24h.ポイント:3,764pt お気に入り:905

処理中です...