気高きサブ王子は、ドムの仮面を被る（旧・腹黒宰相の契約コマンド）

19 最後の戦い

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　だが、これで姿を消すのかと思いきや、精霊たちはこう続けた。
『望みはこれだけか？』
『トロハイアのためなら、いくらでも手を貸そうぞ。……例えば』　
　青い光の一つが、すうっと地面に降りて行く。そこは、ヴィクトルのグレアの影響で、大きくひび割れていた。だが、光がそこを照らした瞬間、裂け目は消え失せた。おおお、とどよめきが上がる。
「ですが……、これは、我々の責任。そこまでしていただくわけには参りません」
　すると、クスクスという笑い声が響いた。
『本当に、謙虚な奴よ』
『次期国王だというに』
『遠慮無く、指示を出すがよい』
　そこへ、明るい声が響いた。
「やっぱり兄様は、国王となられる方なのですね！」
　ジョルジュだった。騎士たちが騒然となる。
「ジョルジュ殿下も、精霊の声が聞こえるのか！」
「確かに、国王陛下のお血筋だ！」
　おい、とフェルナンは眉をひそめた。　　
「馬車から出るなと言ったろう」
「でも兄様、せっかく精霊の方々がこう言っておられるのです。お願いしましょうよ。兄様は、ヴィクトル殿に付いていてください。僕が、指示を出します！」
　そしてジョルジュは、青い光たちに向かって語りかけた。
「精霊の皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ですが、トロハイアの修復にご協力いただけませんか？」
「お前、勝手に……！」
　叱りつけようとしたフェルナンだったが、それよりも精霊が答える方が早かった。
『何なりと』
「ありがとうございます。では、木々と土地を元に戻してくださいませ！」　
　ジョルジュは、枝の折れた木々や割れた地面を指して、次々と指示を出す。精霊たちは、彼に従って、あっという間に元通りにしていった。
　その時、ヴィクトルの体がぴくりと動いた気がした。フェルナンは、そっと彼の顔に頬を寄せた。微かに、吐息が聞こえる。心臓に手を当てれば、そこは規則正しく動いていて、フェルナンは思わず泣きそうになった。
（生きている。ヴィクトルは、生きている……！）
　そこへ、足音が聞こえた。顔を上げて、フェルナンは驚いた。イザークだったのだ。
「これまで隠れていて、すみません。馬車の中から、話は聞いていました」
　イザークは、おどおどと言った。
「驚きました……。ラヴァルが実の父とは知りませんでした。ドムを装って国王を目指せとは、母や祖父から言われておりましたが……」
「白々しいですぞ！」
　ベイルが、眉を吊り上げる。だがフェルナンは、彼を制した。
「本当に、知らなかったのか」
　はい、とイザークはうなだれた。
「今でも、信じられません。それで、その……、僕も精霊に語りかけて、よいでしょうか。僕自身、はっきりさせたいのです。自分の出生について……」
「よかろう」
　フェルナンは、即座に頷いていた。
「父上の子という可能性も、ゼロでは無い。その代わり、もし精霊魔術が使えれば、お前もこの場の修復に協力するのだぞ？」