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17 通じ合えた思い

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  上も下も脱ぎ捨て全裸になると、フェルナンはベッドの上で四つん這いになった。羞恥をこらえて、尻を高く掲げる。見えてもいないのに、ヴィクトルの視線がそこに集中しているのがわかった。
「よろしい。最初に言っておきますが……、どんなに気持ち良くなっても、『イッてはダメですよ』」
 残酷なコマンドと共に、ヒュンという音が耳に飛び込む。尻肉に痺れるような刺激を感じて、フェルナンはうめいた。だが、痛みはさほど感じない。素材が柔らかいせいだろう。
「あんっ! あっ、ああっ……」
  ヴィクトルの鞭が振るわれるうち、尻肉はじんじんと熱を持ち始めた。同時に、快感も湧き上がってくる。股間のものはすっかり反り返り、先端からは蜜があふれて止まらない。
「気持ち良いですか? 『答えなさい』」
 右、左、交互にフェルナンの尻を打ち据えながら、ヴィクトルが問う。荒い息の中、フェルナンはどうにか言葉をつむいだ。
「あンッ! ヴィ、ヴィクトル……。痛い、けど、気持ちいいのっ……」
「ふふ。素直で可愛い子ですね、あなたは。……ほら、あと少しだけ我慢しましょうか」
  ヴィクトルが、フェルナンの剥き出しの背中に、そっとキスを落とす。躰をしならせて、フェルナンは喘いだ。
「あっ……、んっ、んんっ……」
「三、二、一……、さあ、これでおしまいです」
 その言葉と共に、ようやく鞭の音が止む。フェルナンは、シーツの上に崩れ落ちていた。ヴィクトルは、打ち据えた所を労るように、そっと尻を撫でてくれた。
「よく耐えましたね……。いい子だ」
「じゃあ……、イッていい?」
 顔だけを後方へ向けて、フェルナンは尋ねた。ヴィクトルの顔を見ようとするが、焦点が定まらない。
「そうですね。良い子には、ご褒美を差し上げませんと」
  ヴィクトルは、フェルナンの躰を抱き起こすと、ヘッドボードにもたれるように座らせた。自分は、その正面に陣取る。顔に浮かぶのは、残酷な笑みだった。
「イッていいですよ。ただし、『ご自身で』『私に見せるように』」
 カッと、顔が熱くなった。この体勢では、全てが丸見えだ。射精するのを見られたことは何度もあるが、こうして改めて見せるなんて。それも、自慰する様子を。
(でも……。愛するヴィクトルの、コマンドだから)
 それで、彼が喜んでくれるなら。フェルナンは、おずおずと自らのものを握った。こちらを凝視するヴィクトルは、きちんと服を着込んでいる。自分だけが素っ裸で痴態をさらしている状況に、フェルナンは、目もくらむほどの羞恥を覚えた。自然と、控えめな仕草になる。もたもたと手を上下していると、ヴィクトルの眼差しは鋭くなった。
「『いつも、ご自身でしているように』、ですよ?」
 はい、とフェルナンは目を伏せて頷いた。自らを慰める時、フェルナンはいつも胸を愛撫していた。ヴィクトルにされている想像をしながら、だ。見抜かれていたようで、ドキリとする。
 空いた手で乳首を摘まみ、撫でる。同時に性器を擦り立てるうち、やがて限界が近付いて来た。
「あんっ、あっ、ああっ……」
 早く熱を放出したい、その欲望に頭が支配される。もはや恥も外聞も無く、フェルナンは両の手を激しく動かした。とどめとばかりに鈴口を強く弄ったその瞬間、目の前で何かが弾けた。
「――ああっ……――!」
 盛大に白濁を撒き散らして、フェルナンは達していた。思わず前のめりに倒れそうになれば、ヴィクトルは抱き留めてくれた。
「最高に、可愛らしかったですよ……」
 感極まったように呟きながら、ヴィクトルはフェルナンをきつく抱きしめた。フェルナンの手を取り、自らの下肢に押しつける。淫液がトラウザーズの布を汚していくが、ヴィクトルは気にも留めない様子だった。
「可愛らしすぎて、私も限界です」
 確かに布越しでも、そこが猛り狂っているのはわかった。
「このままだと、あなたの中に入るまで、持ちこたえられなさそうなのですよ。ですから、ね」
 ヴィクトルは、フェルナンの顎をとらえると、くいと上向かせた。
「その前に一度、私に奉仕を。『トロハイアでしたことと同じことを、しなさい』」
「わかりました……」
 フェルナンはヴィクトルの下半身にかがみ込むと、下衣を脱がせ始めた。ヴィクトルは、腰を浮かせて協力してくれる。やがて現れた雄は、激しく屹立していたが、二度目のせいか、さほど恐ろしくはなかった。
「前に教えた通りに……、わかりますね?」
 コマンドというよりは、助け船を出すような口調で、ヴィクトルは言った。フェルナンは頷くと、ゆっくりとそれに顔を寄せた。いつもの柑橘系の香りに交じって、雄の匂いがする。フェルナンは、半分ほどを口に含むと、唇を窄めて扱き立てた。頭上からは、満足そうな吐息が降ってきて、フェルナンはほっとした。
「……っ。上手、ですよ……。教えた通りに、できている」
 わしゃわしゃと頭を撫でられれば、一気に心地良い気分になる。フェルナンは、懸命に舌を使った。熱く硬い感触に口内を蹂躙されるうち、フェルナン自身もまた、復活し始めた。蕾は、すでに疼いている。それを察知したらしく、ヴィクトルは笑った。
「ひくついていますよ。やはり淫らな躰だ」
  次の瞬間、フェルナンはドキリとした。尻の狭間に、ヴィクトルの手の感触を感じたのだ。指が、つぷりと侵入してくる。先ほどフェルナン自身が放ったものの助けを借りて、それはあっという間に、敏感な部分に到達した。
「――んんっ! んっ……!」
「暴れないで」
 反射的に口を離し、逃れようとするが、ヴィクトルに頭を押さえられてしまう。強引では無いが、逃げることを許さない力だった。
(こんな……)
 ヴィクトルの雄は、フェルナンの口内で、傍若無人に暴れ回っている。上下からの容赦無い刺激に、フェルナンは目がくらむほどの快感に襲われた。早くも、二度目の絶頂が近づいてくる。
「んっ、ふっ、んんっ……」
「フェルナン様、一緒に……」
 ヴィクトルが、低く呟く。次の瞬間、フェルナンの急所がぐいと押された。
「……!!」
 声も無く、フェルナンは達していた。ほぼ同時に、頭が引き剥がされる。ややあってシーツの上に、白濁が飛び散った。ヴィクトルが出したものだ、と一拍遅れて気付く。
「前回は失敗しましたが……、あなたのお口を汚すわけには参りません」
 見上げれば、ヴィクトルは照れくさそうに笑った。
「汚してくれて、構わなかったのに。ヴィクトルの、飲みたかった」
 フェルナンとしては、素直に告げた言葉だったが、ヴィクトルの顔色は変わった。
「あなたという人は……。そのように私を煽って……」
「煽……? いや、別に……」
 言葉の途中で、フェルナンは腕を取られた。瞬く間に、再び四つん這いの姿勢にさせられる。背後では、ヴィクトルが残りの服を脱ぎ捨てている気配がして、フェルナンはぎょっとした。
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