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17 通じ合えた思い
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「なっ……、何をいきなり……。本気か?」
フェルナンは信じられない思いだったが、ヴィクトルは大真面目だった。
「こうして作らせていただいたのが、何よりの証拠。実は、今日お助けに参るのが遅れたのは、これを店に受け取りに行っていたからなのです。ラヴァルが妙な動きをしているとの情報を得て、すぐに王立学院へ向かったのですが、何分店が遠方でしたもので」
フェルナンは、つくづくとカラーを見つめた。中央には、品の良いサファイアがあしらわれていた。
「いや、しかし……。確かにお前のパートナーになれば、他のドムの支配は受けにくくなる。だが、そんな理由でお前の人生を犠牲にするわけにはいかない」
フェルナンは、激しくかぶりを振った。ナタリーとは添えないにしても、そんな理由で自分のパートナーにするのは、いたたまれなかった。
「お前には、真に愛する人と幸せになって欲しい……」
「私が愛しているのは、あなたです、フェルナン様」
耳を疑った。呆然とするフェルナンの元に、ヴィクトルはにじり寄ると、そっと手を取った。
「あなたが幼少の頃より、ずっと愛おしく思っておりました。同性であること、身分の差、障害は多々ありましたが……。その矢先、あなたはサブだと判明した。ナタリー様から契約パートナーのお話をいただいた時、私はこの機会を逃すものかと思いました。例えかりそめの関係でも、あなたのパートナーでいたい、と」
フェルナンの手を握るヴィクトルの手に、力がこもった。そして、意外なことを言い出すではないか。
「マチアス様は、私の気持ちに気付いておいででした。密かに、応援してくださっていたのです」
「兄上が?」
フェルナンは、目を見張った。
「はい。マチアス様は、サブが胸を張って生きられる国作りを目指しておられました。フェルナン様のこともたいそう気にかけておいでで、ご即位の暁には、サブと明かせるようにと計画されていたのです。私はその折に、こうしてカラーをお贈りする予定でした」
二人の間でそんな話があったとは、知らなかった。フェルナンは、あっけにとられた。
「ところがマチアス様が亡くなられ、あなたが王太子となられたことで、事情は一変しました。当初私が差し出がましいほどに反対したのは、もちろん詐称し続けるあなたのご苦労を慮ったからですが、私欲も正直ございました。王太子となれば、サブだと明かせないばかりか、お妃を迎えになる。それでは、私があなたを独占できないではないですか!」
カッと、顔が熱くなる。握られた手をほどこうとしたが、ヴィクトルはますます力を込めて、放してくれない。
「否定はしておられたが、あなたはお妃となる方を気遣われて、私に別れ話を持ち出されたのでしょう? そのように他人を思いやられる優しさは、あなた様の美徳です。ですが、正直に仰ってくださいませ」
ヴィクトルの琥珀色の瞳が、かつて無いほど真剣に見開かれる。
「あなたのお気持ちが知りたい。私を、どう思っておいでですか」
「ヴィクトル……」
たまらなかった。フェルナンは腕を伸ばすと、ヴィクトルを抱きしめた。広い背中に、精一杯抱きつく。
「お前を愛している。僕にこのカラーを着けて、お前のパートナーにしてくれ」
フェルナンは信じられない思いだったが、ヴィクトルは大真面目だった。
「こうして作らせていただいたのが、何よりの証拠。実は、今日お助けに参るのが遅れたのは、これを店に受け取りに行っていたからなのです。ラヴァルが妙な動きをしているとの情報を得て、すぐに王立学院へ向かったのですが、何分店が遠方でしたもので」
フェルナンは、つくづくとカラーを見つめた。中央には、品の良いサファイアがあしらわれていた。
「いや、しかし……。確かにお前のパートナーになれば、他のドムの支配は受けにくくなる。だが、そんな理由でお前の人生を犠牲にするわけにはいかない」
フェルナンは、激しくかぶりを振った。ナタリーとは添えないにしても、そんな理由で自分のパートナーにするのは、いたたまれなかった。
「お前には、真に愛する人と幸せになって欲しい……」
「私が愛しているのは、あなたです、フェルナン様」
耳を疑った。呆然とするフェルナンの元に、ヴィクトルはにじり寄ると、そっと手を取った。
「あなたが幼少の頃より、ずっと愛おしく思っておりました。同性であること、身分の差、障害は多々ありましたが……。その矢先、あなたはサブだと判明した。ナタリー様から契約パートナーのお話をいただいた時、私はこの機会を逃すものかと思いました。例えかりそめの関係でも、あなたのパートナーでいたい、と」
フェルナンの手を握るヴィクトルの手に、力がこもった。そして、意外なことを言い出すではないか。
「マチアス様は、私の気持ちに気付いておいででした。密かに、応援してくださっていたのです」
「兄上が?」
フェルナンは、目を見張った。
「はい。マチアス様は、サブが胸を張って生きられる国作りを目指しておられました。フェルナン様のこともたいそう気にかけておいでで、ご即位の暁には、サブと明かせるようにと計画されていたのです。私はその折に、こうしてカラーをお贈りする予定でした」
二人の間でそんな話があったとは、知らなかった。フェルナンは、あっけにとられた。
「ところがマチアス様が亡くなられ、あなたが王太子となられたことで、事情は一変しました。当初私が差し出がましいほどに反対したのは、もちろん詐称し続けるあなたのご苦労を慮ったからですが、私欲も正直ございました。王太子となれば、サブだと明かせないばかりか、お妃を迎えになる。それでは、私があなたを独占できないではないですか!」
カッと、顔が熱くなる。握られた手をほどこうとしたが、ヴィクトルはますます力を込めて、放してくれない。
「否定はしておられたが、あなたはお妃となる方を気遣われて、私に別れ話を持ち出されたのでしょう? そのように他人を思いやられる優しさは、あなた様の美徳です。ですが、正直に仰ってくださいませ」
ヴィクトルの琥珀色の瞳が、かつて無いほど真剣に見開かれる。
「あなたのお気持ちが知りたい。私を、どう思っておいでですか」
「ヴィクトル……」
たまらなかった。フェルナンは腕を伸ばすと、ヴィクトルを抱きしめた。広い背中に、精一杯抱きつく。
「お前を愛している。僕にこのカラーを着けて、お前のパートナーにしてくれ」
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