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16 暴かれた真実

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  国王の執務室を訪れると、アンリ三世は深刻な面持ちで二人を出迎えた。
「二人に、折り入って相談があるのだ。……ジョルジュのことだ」
 一体何だろう、とフェルナンは訝った。
「実は、こんな噂が立っておる。この度、イザークがダイナミクスを詐称しておったことで、ジョルジュもまたそうなのではないか、と」
 何と、とフェルナンは眉をひそめた。
「本人もブリジットも否定しておるが、噂はどんどん広がっておる。もちろん、グレアを使わせるなどしてドムだと証明させることは、いくらでもできる。だが、なるべくならそんな手段は避けたい。それで、である」
 国王は、フェルナンとヴィクトルを見比べた。
「二人に意見を聞きたいのだ。そなたらは、例の晩餐会に出席しておったのだろう? ジョルジュの様子を見て、どう思ったか」
「ジョルジュが偽っているようには思いませんが」
 フェルナンは答えた。イザークはともかく、彼はそんな性格では無い。すると、ヴィクトルも頷いた。
「私も、そのように思います。ジョルジュ殿下は、ドムで間違い無いと存じますよ」
 そうか、とアンリ三世がほっとしたような表情を浮かべる。ヴィクトルは、自信たっぷりに続けた。
「なぜなら晩餐会で、ジョルジュ殿下は自ら、兄イザーク殿下がニュートラルだと打ち明けられたからです。もしご兄弟そろってニュートラルならば、わざわざご自分に疑いが及ぶ真似をなさるはずがございません」
「確かに、その通りであるな。ヴィクトル殿、感謝する」
 アンリ三世はすっかり安堵した様子だが、ヴィクトルは眉を寄せた。
「それにしても……。いくら正真正銘ドムであられても、そのような噂が消えないのは困りますな。ジョルジュ殿下も、肩身が狭いのではありませんか」
 おや、とフェルナンは怪訝に思った。ヴィクトルは、何を言い出すのだろうか。
「国王陛下。実は、以前から考えていたことがあるのですが」
 ヴィクトルは、身を乗り出した。
「エルズアの国王には、男児はサブとニュートラルしかいらっしゃいません。頭を悩ませておられるとか」
 エルズアというのはレスティリアの近隣国だが、レスティリア同様、ドムしか王位を継げない慣例なのである。まさか、とフェルナンは思った。
「ヴィクトル、そなた……。もしやあちらの姫君に、ジョルジュを婿入りさせると?」
 アンリ三世も、すぐにヴィクトルの意図を察したようだった。
「ええ。ジョルジュ殿下は第四王子というお立場であられますし、姻戚関係ができれば何かと有利です。交易の突破口にもなるかと」
 このレスティリア王国は、鉱物の輸出で利益を得ているが、エルズアとの貿易だけは難航しているのである。アンリ三世は、思案顔になった。
「ふむ。良き案とは思うが。だがマチアスがあのようなことになり、イザークがニュートラルと判明した今、ジョルジュをよそへやるのは、いささか不安だ。いや、気弱とは承知しておるのだが……」
「フェルナン殿下がいらっしゃるではありませんか」
 ヴィクトルが微笑む。
「殿下のことは、私が全力でお守りし、お支えします。どうぞ、ご案じなさいますな」
  ヴィクトルが、力を込める。先ほど、ジョルジュがドムだと彼が断言した意図が、ようやくわかった。ヴィクトルは、イザークに続いてジョルジュも追い払おうとしているのだ。フェルナンを唯一の王位継承者として、確固たる存在にするために。
(――でも。ジョルジュの意志を、無視するなんて……)
 フェルナンは、気持ちが滅入っていくのを抑えられなかった。
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