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15 波乱の晩餐会

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 その三日後。フェルナンは、執務室で手紙を読んでいた。今朝、シャガールから届いたものだ。内容は、ドムのパートナー・ギョームから正式にカラーを受け取って、共に暮らすことになったというものだった。そこまでは喜ばしい思いで読み進めていたフェルナンだったが、次の文章に眉をひそめた。
『実はこれに当たり、マルソー伯爵が、お祝いの晩餐会を開きたいと仰っています。王太子殿下の伯父君の祝い事だから、と。私としては、身内でひっそりと祝いたいと考えていたので、正直気が進みません。しかも、主催者が主催者ですから』
 まったくだ、とフェルナンは腕を組んだ。マルソーが、フェルナンの身内を歓待などするわけが無い。しかもこれまで彼はシャガールのことを、元は貧乏男爵家だっただの、今でもプレイクラブのような場所を仕切っているだの、散々侮蔑してきたのだ。何らかの魂胆があるとしか考えられなかった。
『ところが、です。私が返事をする前に、マルソー伯爵は、この件を言いふらされてしまったのです。すると、私に関する祝い事なら王太子殿下もきっと出席なさるはずと、上流貴族の方々が、大変に盛り上がってしまわれまして。恐らくは、お嬢様方をお妃にという目的でしょうが。断るに断れなくなってしまいました』
 フェルナンは、頭を抱えた。自分の非でも無いのに、シャガールはたいそう恐縮し詫びている。そして、フェルナンの判断をあおぎたいと書いていた。
(罠と見るべきだが。さて、どう断ったものか……)
 フェルナンは、ヴィクトルを呼んだ。程無くして現れた彼に、フェルナンは手紙を見せた。
「マルソー伯爵が、何か企んでいるらしいのだが。良い断りの方便は無いものだろうか」
 ヴィクトルは、すぐに手紙に目を通すと、意外なことを言った。
「断る必要はございませぬ。是非、出席いたしましょう」
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