上 下
30 / 96
8 至福の時

5

しおりを挟む
「あっ、ヴィ、ヴィクトル、あっ、止めっ……」
 弱々しく抗議してみるものの、喘ぎ交じりに言ったのでは、効果も何もあったものではない。案の定、ヴィクトルは意にも介さず、チェーンを巻き付け終えた。そして、さらなる指示を出すではないか。
「上半身が寂しいでしょう? 『自分で乳首を弄りなさい』」
「――! でも……」
 手を放したのでは、体を支えられないし、先ほどのコマンドと矛盾する。すると、ヴィクトルが囁いた。
「大丈夫ですよ。こうして、支えていてあげますから」
 言いながらヴィクトルは、フェルナンの腹部に腕を回した。フェルナンは、恐る恐る浴槽から手を放すと、自らの胸に持って行った。ほぼヴィクトルに抱き留められるような体勢で、乳首を撫で始める。
「はンッ! あっ、はあぁっ……!」
 新たな刺激に、耐えきれず嬌声が漏れる。すると、さらなるコマンドが発せられた。
「『指で挟み付けるようにして、きつく弄りなさい』」
 そう言うとヴィクトルは、フェルナンの蕾から指を引き抜いた。ややあって、背中に温かい感触がする。タオルをかけてくれたのだとわかり、フェルナンの胸はじわりと熱くなった。
 とはいえ、責め方に容赦は無い。再び挿し込まれた指は、傍若無人にフェルナンの内部を掻き回している。もはや何本挿入されているのかもわからなかった。
「あっ、ああっ、んっ……」
「そう、上手です。『揉んだりこねたりしてみなさい』」
「は、い……」
 言いつけに従って、素直に乳首を愛撫する。膨らみきった性器はもう限界に達しつつあり、先端から蜜を垂らしている。放出できない苦しみに、フェルナンは喘いだ。
「苦しいですか?」
 フェルナンの首筋にふっと息を吐きかけながら、ヴィクトルが問う。フェルナンは、こくこくと首を振った。
「じゃあ、おねだりしてご覧なさい」
「あっ、ヴィクトル……。お願い、イカせて、ください……」
 全身から湧き上がる快感に耐えながらも、フェルナンはかろうじて言葉をつむいだ。
「よろしいでしょう。よく言えました」
 次の瞬間、フェルナンを責め苛んでいた指が引き抜かれる。そして、性器を縛めていたチェーンが解かれた。 
「ふぁっ。あっ、ああっ――……!!」
 大量の白濁が、放出されていく。全身をけいれんさせるフェルナンを、ヴィクトルはしっかりと抱きしめてくれた。
「あ……、はぁっ……」
 長い射精の余韻で、なかなか息が整わない。朦朧とし始めたフェルナンだったが、不意に、低い囁きが飛び込んできた。
「フェルナン様。こんな可愛らしいお姿、私以外の人間に見せてはダメですよ……」
(――え?)
 聞き違えたかと思った。どういう意味だ。自分たちは、あくまで契約パートナーだというのに。それともドムの本能で、深い意味も無く口にしたのだろうか。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

TOKIO

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:8

【BL】貴様の手の甲に誓いの口づけを

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:240

マッチョサキュバス♂はご飯が食べたい

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:232

汀の島

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,363

スパダリ社長の狼くん

BL / 完結 24h.ポイント:234pt お気に入り:558

出来損ないの下剋上溺愛日記

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:43

たった五分のお仕事です?

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:663

声を失ったSubはDomの名を呼びたい

BL / 連載中 24h.ポイント:3,629pt お気に入り:905

処理中です...