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2 男娼デビュー
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番、という言葉に純はドキリとした。
「いえ、まさか。……すごい頻度で来店されているから、よほどお金持ちなのかな、と思っただけですよ。……それに先代の『一願さん』は、誰の番にもなりませんでした。いろいろな人の願いを叶えることに、一生を捧げたんです。僕も、同じように生きたいです」
とはいえ、勇と純の間には決定的な違いがある。勇は華やかで美しく、当時は番の概念はなかったものの、独占したがる男は後を絶たなかったそうだ。対して自分は、貧相で魅力に乏しい。番おうなどという奇特なアルファが現れることは、まずないだろう……。
信じたかどうかはわからないが、椎葉はひとまず、そうか、と頷いた。
「ま、金持ちなのは確かだな。それに、育ちの良さそうな匂いもする。会社員というのは嘘で、案外どこかの御曹司かもな」
椎葉はそんな軽口を叩いた。
「俺も、あの石野という男のことは気になっているんだ。身元調査をしようかと思っている。というのは、ミヤビを身請けさせてやろうかと思ってな」
「身請け?」
純はドキリとした。
「ああ。ミヤビは、不幸な生い立ちでな。売春が合法化されてすぐ、十九でこの世界に飛び込んだ。そろそろ解放してやってもいいんじゃないか、と思ってな。そんなに入れ込んでいる客なら、大事にしてもらえるだろう」
純は黙り込んだ。椎葉の言うことは、もっともだ。だが、石野がミヤビを身請けする、二人が番になると考えただけで、胸が張り裂けそうだった。
「いえ、まさか。……すごい頻度で来店されているから、よほどお金持ちなのかな、と思っただけですよ。……それに先代の『一願さん』は、誰の番にもなりませんでした。いろいろな人の願いを叶えることに、一生を捧げたんです。僕も、同じように生きたいです」
とはいえ、勇と純の間には決定的な違いがある。勇は華やかで美しく、当時は番の概念はなかったものの、独占したがる男は後を絶たなかったそうだ。対して自分は、貧相で魅力に乏しい。番おうなどという奇特なアルファが現れることは、まずないだろう……。
信じたかどうかはわからないが、椎葉はひとまず、そうか、と頷いた。
「ま、金持ちなのは確かだな。それに、育ちの良さそうな匂いもする。会社員というのは嘘で、案外どこかの御曹司かもな」
椎葉はそんな軽口を叩いた。
「俺も、あの石野という男のことは気になっているんだ。身元調査をしようかと思っている。というのは、ミヤビを身請けさせてやろうかと思ってな」
「身請け?」
純はドキリとした。
「ああ。ミヤビは、不幸な生い立ちでな。売春が合法化されてすぐ、十九でこの世界に飛び込んだ。そろそろ解放してやってもいいんじゃないか、と思ってな。そんなに入れ込んでいる客なら、大事にしてもらえるだろう」
純は黙り込んだ。椎葉の言うことは、もっともだ。だが、石野がミヤビを身請けする、二人が番になると考えただけで、胸が張り裂けそうだった。
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