一年前の忘れ物

花房ジュリー

文字の大きさ
上 下
75 / 131

手詰まり

しおりを挟む
「計画が失敗したことに勘付いたんじゃないか? あの三人の誰かが、隙を見て連絡を取ったのかもしれないし……。仕方ない、いきなり家に乗り込むか?」
 カーターはそう提案したが、アレンは力なく首を振った。
「いや、僕はジュリアンがどこに住んでいるか知らないんだ。向こうがいつも押しかけて来るだけだから……」
「そうか……。電話に出ない、家も分からないんじゃ、手の打ちようが無いな」
 さすがの楽天家のカーターも、ため息をついた。
「明日、留学先の大学に行ってみるか?」
「そんな悠長な。相手は写真を持ってるんだぞ?」
「でも、他に方法が無いだろうが?」
「アレン、カーター、大丈夫だから」
 玲は思わず、会話に割り込んでいた。
「写真のことなら、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。だって、ジュリアンが写真を撮ったのは、それをアレンに見せて、俺とアレンの仲を壊すのが目的だから。アレンに計画がばれた今となっては、もうそんなもの、彼には必要無いはずだよ」
「でも……」
「それに、カーターの言う通り、今できることは無いわけだし」
「――分かった」
 アレンは仕方なさそうに頷いた。
「じゃあ、ひとまずレイを家まで送ればいいか?」
 カーターはそう言ったが、玲は「待って」と彼を止めた。
「アレンの部屋がいい。アレン、今夜泊まっていい?」
 今夜を一人で過ごすのは耐えられなかった。そんな玲の気持ちを、二人は察したようだった。
「もちろんだよ、レイ」
「OK。じゃあ二人をアレンの家まで送るな」
「ありがとう」
 少し安堵した玲は、座席に身体を深く沈めると、車のドアに頭をもたせ掛けた。その時、玲はある物に気が付いた。女性物のバレッタが車の床に落ちていたのだ。
 ――リタは、ショートカットだ。彼女の物じゃ無いはず……。
 それ以前に玲は、そのバレッタを知っていた。普段から身近で見ていたからだ。玲は二人に気づかれないようにそっと手を伸ばすと、バレッタを拾い、ポケットにしまい込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

猫をかぶるにも程がある

如月自由
BL
陽キャ大学生の橘千冬には悩みがある。声フェチを拗らせすぎて、女性向けシチュエーションボイスでしか抜けなくなってしまったという悩みが。 千冬はある日、いい声を持つ陰キャ大学生・綱島一樹と知り合い、一夜の過ちをきっかけに付き合い始めることになる。自分が男を好きになれるのか。そう訝っていた千冬だったが、大好きオーラ全開の一樹にほだされ、気付かぬうちにゆっくり心惹かれていく。 しかし、弱気で優しい男に見えた一樹には、実はとんでもない二面性があって――!? ノンケの陽キャ大学生がバリタチの陰キャ大学生に美味しく頂かれて溺愛される話。または、暗い過去を持つメンヘラクズ男が圧倒的光属性の好青年に救われるまでの話。 ムーンライトノベルズでも公開しております。

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

処理中です...