15 / 131
不協和音
しおりを挟む
「英会話? 一体、いつ始めたの? 僕は初耳だけど。英会話は授業料が高いから無理って、前から言っていたじゃないか」
「――最近、安いところを見つけたから」
玲は、言葉少なに答えた。独占欲が強いというのか、倉木には玲の行動をチェックしないと気が済まない一面があった。いつもはそれも愛情の証として心地良く感じていたが、今日は何だか不快感を覚えた。
その後の食事は、互いに口数が少ないものとなった。倉木は後片付けを終えると、風呂へ向かった。彼が入浴している間に、玲はスマホをチェックした。
――来てる!
待ち望んでいた、アレンからのメールだった。とても美味しかった、に始まり、食材や味付けについて克明に感想が述べてある。最後には、こんな一言が付け加えられていた。
『レイの作る和食が気に入ったから、また食べてみたいな。レイも、食べたいメニューがあったら僕にリクエストして』
それを読んだ途端、玲は不思議と、体温が上昇していくのを感じていた。
肉じゃがが成功した、と告げると咲は飛び上がってはしゃいだ。
「倉木さん、喜んでくれた?」
「――ああ」
彼も美味しいと言ってくれたのだから、まんざら嘘では無い。
「良かったじゃん。だから言ったでしょ? 肉じゃががお勧めだって。それに男の人は、肉じゃがに弱いっていうしね」
「レシピ、助かったよ。それで、他にも教えてくれないかな。俺にも作れそうな和食」
「もちろん、いいよ! この前みたいな説明で大丈夫? 何なら、動画に撮って送ろうか?」
「いや、そこまでしてもらわなくても大丈夫だから」
咲の異常な張り切り様に、玲は思わずたじろいだ。
「じゃあ、これ、約束してた英語のCD。それとこっちは、フレーズ集」
玲は咲へのお返しに、フロントで使う英語のフレーズをまとめてやったのだった。咲は、サンキュ、と軽く言って受け取ると、また話題を戻した。
「また、倉木さんの反応を教えてよね。あたし、本当に二人を応援してるんだから!」
うん、と頷きながら、玲は不思議な後ろめたさを感じた。
「――最近、安いところを見つけたから」
玲は、言葉少なに答えた。独占欲が強いというのか、倉木には玲の行動をチェックしないと気が済まない一面があった。いつもはそれも愛情の証として心地良く感じていたが、今日は何だか不快感を覚えた。
その後の食事は、互いに口数が少ないものとなった。倉木は後片付けを終えると、風呂へ向かった。彼が入浴している間に、玲はスマホをチェックした。
――来てる!
待ち望んでいた、アレンからのメールだった。とても美味しかった、に始まり、食材や味付けについて克明に感想が述べてある。最後には、こんな一言が付け加えられていた。
『レイの作る和食が気に入ったから、また食べてみたいな。レイも、食べたいメニューがあったら僕にリクエストして』
それを読んだ途端、玲は不思議と、体温が上昇していくのを感じていた。
肉じゃがが成功した、と告げると咲は飛び上がってはしゃいだ。
「倉木さん、喜んでくれた?」
「――ああ」
彼も美味しいと言ってくれたのだから、まんざら嘘では無い。
「良かったじゃん。だから言ったでしょ? 肉じゃががお勧めだって。それに男の人は、肉じゃがに弱いっていうしね」
「レシピ、助かったよ。それで、他にも教えてくれないかな。俺にも作れそうな和食」
「もちろん、いいよ! この前みたいな説明で大丈夫? 何なら、動画に撮って送ろうか?」
「いや、そこまでしてもらわなくても大丈夫だから」
咲の異常な張り切り様に、玲は思わずたじろいだ。
「じゃあ、これ、約束してた英語のCD。それとこっちは、フレーズ集」
玲は咲へのお返しに、フロントで使う英語のフレーズをまとめてやったのだった。咲は、サンキュ、と軽く言って受け取ると、また話題を戻した。
「また、倉木さんの反応を教えてよね。あたし、本当に二人を応援してるんだから!」
うん、と頷きながら、玲は不思議な後ろめたさを感じた。
0
お気に入りに追加
81
あなたにおすすめの小説
猫をかぶるにも程がある
如月自由
BL
陽キャ大学生の橘千冬には悩みがある。声フェチを拗らせすぎて、女性向けシチュエーションボイスでしか抜けなくなってしまったという悩みが。
千冬はある日、いい声を持つ陰キャ大学生・綱島一樹と知り合い、一夜の過ちをきっかけに付き合い始めることになる。自分が男を好きになれるのか。そう訝っていた千冬だったが、大好きオーラ全開の一樹にほだされ、気付かぬうちにゆっくり心惹かれていく。
しかし、弱気で優しい男に見えた一樹には、実はとんでもない二面性があって――!?
ノンケの陽キャ大学生がバリタチの陰キャ大学生に美味しく頂かれて溺愛される話。または、暗い過去を持つメンヘラクズ男が圧倒的光属性の好青年に救われるまでの話。
ムーンライトノベルズでも公開しております。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー
紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。
立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。
※攻めと女性との絡みが何度かあります。
※展開かなり遅いと思います。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる