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第十章 異世界召喚された僕、牢獄に入りました
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一瞬、場が静まり返る。やがて、怒声が次々に上がった。
「本当に、ファビオ殿下に毒を盛ったのか!」
「実の孫息子だぞ、恐ろしい……。魔女としか思えぬ!」
一方王妃は、真っ青になりながらもかぶりを振っている。
「嘘よ! 誰かが、ファビオを言いくるめたに違いないわ。三歳児ですもの。騙すなど、たやすいこと……」
「いい加減にしろ!」
一喝したのは、国王だった。王妃を指さし、周囲を見回す。
「もう罪は明白だ。王妃を捕らえよ!」
だが、声を張り上げたその瞬間、国王は胸を押さえた。崩れるように、シーツの上に倒れ込む。
「陛下!?」
「国王陛下! しっかりなさってくださいませ!」
王族たちが、国王を取り囲む。聖女も、薬箱を手に駆け寄ったが、ミケーレ二世はなぜか押し止めた。
「もうよい」
「ですが……」
「私はもう駄目だ。……ルチアーノ、ここへ」
国王の手招きに応じて、ルチアーノが彼の枕元へ進み出る。聖女と王族たちは、さっと場所を空けた。
「ルチアーノ」
ルチアーノの顔を見つめると、国王は笑みを浮かべた。
「その眼帯を、取ってくれぬか」
「しかし……」
ルチアーノはためらったが、国王はこう言った。
「そなたの素顔が見たいのだよ。そなたが産まれた時、私は外遊中だった。そして、我が子との対面を楽しみに戻って来たというのに、それは叶わなかった。顔を見ると、命を落とすからと。産まれてから今まで、私はそなたの、我が子の顔を見たことが無いのだ……。どうか、見せてくれ。死期が迫っているのは、自分でもわかる。具合を悪くしたとしても、今さらだ」
国王の切々とした訴えに、ルチアーノは決意したようだった。
「……では、おそれながら国王陛下にお目にかけます」
ルチアーノが、やおら眼帯を外す。ミケーレ二世は、彼の素顔をしみじみと見つめた。
「何と……。テレザに、そっくりではないか。もっと、近くへ」
ミケーレ二世は、ルチアーノを招き寄せると、その頬を両手で挟んだ。
「死の床で、ようやく息子の顔を見られるとはな……。父上と呼んでくれぬのか? 王宮入りして以来、そなたは私を国王陛下としか呼ばぬ」
ルチアーノが、一瞬黙る。ミケーレ二世は、首をかしげた。
「どうした。やはり私を恨んでいるか? だが、幽閉はやむなく……」
「違います。幽閉処分をお恨み申し上げているわけではございません」
ルチアーノは、きっぱりと答えた。
「あなたを尊敬できないからです」
真純は、ぎょっとした。王族の一人が、とがめるように声をかける。
「王子殿下といえど、無礼すぎますぞ。それも、陛下がこのような時に……」
「本当のことではありませぬか」
ルチアーノは、淡々と語った。
「一国の王でありながら、何一つご自身で決定できない。いかがわしい占いに頼り、その結果、国をめちゃくちゃにした。最大の失敗は、パッソーニの言うなりになって、汚れた川を放置したことです。それが原因で起こった疫病で、どれほどの国民が亡くなったことか!」
「本当に、ファビオ殿下に毒を盛ったのか!」
「実の孫息子だぞ、恐ろしい……。魔女としか思えぬ!」
一方王妃は、真っ青になりながらもかぶりを振っている。
「嘘よ! 誰かが、ファビオを言いくるめたに違いないわ。三歳児ですもの。騙すなど、たやすいこと……」
「いい加減にしろ!」
一喝したのは、国王だった。王妃を指さし、周囲を見回す。
「もう罪は明白だ。王妃を捕らえよ!」
だが、声を張り上げたその瞬間、国王は胸を押さえた。崩れるように、シーツの上に倒れ込む。
「陛下!?」
「国王陛下! しっかりなさってくださいませ!」
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「もうよい」
「ですが……」
「私はもう駄目だ。……ルチアーノ、ここへ」
国王の手招きに応じて、ルチアーノが彼の枕元へ進み出る。聖女と王族たちは、さっと場所を空けた。
「ルチアーノ」
ルチアーノの顔を見つめると、国王は笑みを浮かべた。
「その眼帯を、取ってくれぬか」
「しかし……」
ルチアーノはためらったが、国王はこう言った。
「そなたの素顔が見たいのだよ。そなたが産まれた時、私は外遊中だった。そして、我が子との対面を楽しみに戻って来たというのに、それは叶わなかった。顔を見ると、命を落とすからと。産まれてから今まで、私はそなたの、我が子の顔を見たことが無いのだ……。どうか、見せてくれ。死期が迫っているのは、自分でもわかる。具合を悪くしたとしても、今さらだ」
国王の切々とした訴えに、ルチアーノは決意したようだった。
「……では、おそれながら国王陛下にお目にかけます」
ルチアーノが、やおら眼帯を外す。ミケーレ二世は、彼の素顔をしみじみと見つめた。
「何と……。テレザに、そっくりではないか。もっと、近くへ」
ミケーレ二世は、ルチアーノを招き寄せると、その頬を両手で挟んだ。
「死の床で、ようやく息子の顔を見られるとはな……。父上と呼んでくれぬのか? 王宮入りして以来、そなたは私を国王陛下としか呼ばぬ」
ルチアーノが、一瞬黙る。ミケーレ二世は、首をかしげた。
「どうした。やはり私を恨んでいるか? だが、幽閉はやむなく……」
「違います。幽閉処分をお恨み申し上げているわけではございません」
ルチアーノは、きっぱりと答えた。
「あなたを尊敬できないからです」
真純は、ぎょっとした。王族の一人が、とがめるように声をかける。
「王子殿下といえど、無礼すぎますぞ。それも、陛下がこのような時に……」
「本当のことではありませぬか」
ルチアーノは、淡々と語った。
「一国の王でありながら、何一つご自身で決定できない。いかがわしい占いに頼り、その結果、国をめちゃくちゃにした。最大の失敗は、パッソーニの言うなりになって、汚れた川を放置したことです。それが原因で起こった疫病で、どれほどの国民が亡くなったことか!」
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