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第八章 『忌み子』がもう一人いた
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一同が、絶句する。アントネッラは、ルチアーノの前にひれ伏した。涙ながらに、謝罪する。
「申し訳ありませんでした! 今まで、黙っていて……。そのしばらく後にあの大火災が起きて、私は愕然としたのです。作戦とは、そのことだったのではと……。けれど、私には言えませんでした! ベゲット様を、愛していたんですもの。父にも兄にも、ずっと秘密にしていて……」
「まあ、落ち着きなさい」
ルチアーノは、なだめるようにアントネッラに語りかけた。
「まず第一に、謝罪すべき相手は私ではない。第二に、あなたは恐らく誤解している。焼き討ちの犯人は、他にいるのだ。それゆえ、ベゲット殿の言った『作戦』とは、また別の話だろう」
真純は、内心大きく頷いた。焼き討ちの黒幕は、パッソーニだ。それにベゲットは、禁呪の跳ね返りにより、焼き討ちより前に死亡している。作戦とは恐らく、禁呪を用いることだろう。
(つまり、ベゲットさんに禁呪を使うようもちかけたのは、王妃陛下か!?)
ジュダもフィリッポも、深刻な表情を浮かべている。恐らくは、同じことを考えているのだろう。
「別の話、なのですか?」
アントネッラは、目をぱちくりさせた。
「そういえば、『効果』という表現は不自然に感じましたわね。セアン君を助けるという意味かと思っておりましたけど」
ああ、とルチアーノは頷いた。
「だが、まるっきり無関係では無いだろう。そなたがすぐに打ち明けていれば、事態は違う方向に進んだかもしれぬ……。そなたの行いは、やはり許されるものでは無い」
アントネッラは、頭を垂れた。
「浅はかでございました。ベゲット様を守ることしか、頭に無く……。それに、夜に男性の家を訪れたと父や兄に知れたら、きっと叱責されると思ったのです」
「気持ちはわからなくも無いが、確かに浅はかであるな」
ルチアーノは、冷たく言い捨てた。
「アントネッラ夫人。そなた、ゴトフレードと共に、ここに留まれるか? 思い出したことがあったら、また聞きたいのだ」
「かしこまりました。あれ以上のことが思い出せるかはわかりませんが……」
不安そうにしつつも、アントネッラは頷いた。
「念のためだ。それから確認だが、息子の名はセアン、彼には効果を及ぼさないようにするとベゲット殿が言った、これは間違い無いな?」
「はい。それは断言できます」
アントネッラが、きっぱりと答える。そこで真純は、ハッとした。
(効果ってつまり、禁呪の効果ってことだよな? ベゲットさんは、息子さんにだけには、ルチアーノ殿下にかけた呪いの効果が及ばないようにした……!?)
真純の頭は、恐ろしい速さで回転し始めた。ルチアーノの顔を見ても平気な人間が、たった一人いるではないか。孤児院育ちで、実親は知らないと言う。そして年齢は、二十一歳。焼き討ちの起きた二十一年前に産まれた……。
真純、ルチアーノ、フィリッポ。三人の視線が、ジュダに集まった。
「申し訳ありませんでした! 今まで、黙っていて……。そのしばらく後にあの大火災が起きて、私は愕然としたのです。作戦とは、そのことだったのではと……。けれど、私には言えませんでした! ベゲット様を、愛していたんですもの。父にも兄にも、ずっと秘密にしていて……」
「まあ、落ち着きなさい」
ルチアーノは、なだめるようにアントネッラに語りかけた。
「まず第一に、謝罪すべき相手は私ではない。第二に、あなたは恐らく誤解している。焼き討ちの犯人は、他にいるのだ。それゆえ、ベゲット殿の言った『作戦』とは、また別の話だろう」
真純は、内心大きく頷いた。焼き討ちの黒幕は、パッソーニだ。それにベゲットは、禁呪の跳ね返りにより、焼き討ちより前に死亡している。作戦とは恐らく、禁呪を用いることだろう。
(つまり、ベゲットさんに禁呪を使うようもちかけたのは、王妃陛下か!?)
ジュダもフィリッポも、深刻な表情を浮かべている。恐らくは、同じことを考えているのだろう。
「別の話、なのですか?」
アントネッラは、目をぱちくりさせた。
「そういえば、『効果』という表現は不自然に感じましたわね。セアン君を助けるという意味かと思っておりましたけど」
ああ、とルチアーノは頷いた。
「だが、まるっきり無関係では無いだろう。そなたがすぐに打ち明けていれば、事態は違う方向に進んだかもしれぬ……。そなたの行いは、やはり許されるものでは無い」
アントネッラは、頭を垂れた。
「浅はかでございました。ベゲット様を守ることしか、頭に無く……。それに、夜に男性の家を訪れたと父や兄に知れたら、きっと叱責されると思ったのです」
「気持ちはわからなくも無いが、確かに浅はかであるな」
ルチアーノは、冷たく言い捨てた。
「アントネッラ夫人。そなた、ゴトフレードと共に、ここに留まれるか? 思い出したことがあったら、また聞きたいのだ」
「かしこまりました。あれ以上のことが思い出せるかはわかりませんが……」
不安そうにしつつも、アントネッラは頷いた。
「念のためだ。それから確認だが、息子の名はセアン、彼には効果を及ぼさないようにするとベゲット殿が言った、これは間違い無いな?」
「はい。それは断言できます」
アントネッラが、きっぱりと答える。そこで真純は、ハッとした。
(効果ってつまり、禁呪の効果ってことだよな? ベゲットさんは、息子さんにだけには、ルチアーノ殿下にかけた呪いの効果が及ばないようにした……!?)
真純の頭は、恐ろしい速さで回転し始めた。ルチアーノの顔を見ても平気な人間が、たった一人いるではないか。孤児院育ちで、実親は知らないと言う。そして年齢は、二十一歳。焼き討ちの起きた二十一年前に産まれた……。
真純、ルチアーノ、フィリッポ。三人の視線が、ジュダに集まった。
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