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第三章 君の声を、取り戻したい

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(――眠れない)

 ルチアーノの腕の中で、真純は深いため息をついた。彼の横で眠るのは、初めてではない。だから、緊張などではない。もちろん、下半身の事情である。収まるよう念じてみたが、限界まで昂ったそこは、熱を放出しないことには静まってくれそうになかった。

(殿下、早く眠ってくれないかな……)

 なるべく下半身を彼から遠ざけるよう努めながら、真純は思案した。ルチアーノが寝入ったら、浴室にでも駆け込んで始末しよう。そんなことを考えていると、不意にルチアーノが話しかけてきた。

「眠れぬのか」
「あ、はい、まあ……」

 ルチアーノはクスッと笑った。

「これが原因か?」

 ぐいと腰を引き寄せられて、真純は悲鳴を上げていた。硬くなったそこが、ルチアーノの腹部辺りに押し当てられる。あっという間の出来事で、逃げる間も無かった。

「あの、その……」
「せっかく、体を気遣ったというのに。まさか、そなたの方が欲していたとはな。気付かなくて、すまぬ」

 大げさにため息をつかれて、真純はムッとした。こうなったのは、不必要に淫らなキスと、胸への悪戯のせいだ。こちらが欲求不満のような言われ方は、心外である。

「とはいえ、体を休ませた方がいいのは事実であるからな。私も王族として、約束を違えるわけにはいかぬ」

 さも申し訳なさそうに言いながら、ルチアーノは、真純の勃ち上がったそれを、衣越しにツッと撫でた。ビクンと躰を震わせながら、真純はルチアーノの顔を見つめた。

(あくまで、抱きはしないって? じゃあ、どうするつもりなんだよ……)

「けれど、この状態で放置は辛いであろう。さて、どうしたものか」

 言いながらルチアーノは、真純の先端を軽く弾いた。ひっと声を上げて逃れようとしたものの、ルチアーノは真純の腰をがっちりと抱いて、放そうとしない。辛いとわかっているなら触れてくれるな、と真純は内心懇願した。中途半端な刺激を受けて、そこは蜜を垂らしながら放出を待ち望んでいる。

「のう、マスミ。なぜ呪いを解くためにそなたを抱くか、原理は知っているな?」

 唐突に、ルチアーノが言う。真純は、ほぼ涙目で彼を見返した。ルチアーノは微笑を浮かべてはいるが、瞳は笑っていない。整った容貌だけに、不気味な迫力を醸し出していた。

「ま、魔力を、取り込んで……、僕、が、中和を……」

 途切れ途切れの返答になったのは、ルチアーノにそこを弄られ続けているせいだ。だがルチアーノは、まるで何事も起きていないかのように頷いた。

「さよう。さらに正確に言うならば、魔力は、私の体液を通じて取り込ませる。具体的な経路は、ここだ。知っての通り」

 腰を抱いていたルチアーノの手が、真純の双丘を滑り、蕾に触れる。さらなる刺激に、真純は思わずのけぞった。

(知っての通りって言うくらいなら、わざわざ触らなくても……)

「で、殿下……」
「だが、今宵はここを使うわけにはいかぬ。ならば、別の部分を使うのはどうか」

 真純は、きょとんとしてルチアーノを見つめた。

「別の部分?」

 ルチアーノは苦笑した。

「マスミよ。接吻の際は、どこを使うと?」

 真純の性器を扱いていた手を、ルチアーノはようやく離すと、ガウンの胸元に差し入れた。先ほどまで真純の乳首を責め苛んでいた扇を取り出し、その先で真純の唇をちょんちょんとつつく。まさか、と真純は思った。

(口でしろって……?)

 その手の知識に疎い真純でも、さすがにルチアーノの意図は理解できた。真っ赤になった真純を見て、ルチアーノは口の端を上げて笑った。

「そなたの体に負担はかけぬし、名案であろう? もちろん、そなたのこともちゃんと気持ち良くしてやる。案ずるな」

 そう言うとルチアーノは、まるで決定事項であるかのように、さっさとガウンを脱いだ。寝間着一枚になり、ヘッドボードにもたれて座る。真純は、唇を噛んだ。

(体は大丈夫だからそっちで、なんて言ったら、欲求不満を認めたみたいになるよな……)

 腹をくくるか、と真純は思った。この部屋を去るという選択肢はルチアーノに無いようだし、気持ち良くしてくれると約束してくれた。この精を放出するには、それしか無いのだ。

 ルチアーノの脚の間に移動し、おずおずと寝間着をめくる。思い切って下衣に手をかけながら、真純は思った。何だか術中にはまったようだ、と。
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