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第三章 君の声を、取り戻したい
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それから四日後。ルチアーノ、真純、ジュダ、エレナの四人は、とある宿の小部屋で向かい合っていた。
「本当によいのだな?」
ルチアーノが念を押す。はい、とエレナは勢い良くうなずいた。
「殿下のお顔を拝見できるなんて、楽しみで仕方ありませんわ! この前倒れた娘も、すぐに回復しましたし、きっと平気ですわよ」
ルチアーノは、軽く苦笑した。
「肝の据わった娘であるな」
あの晩から、真純は連続してルチアーノに抱かれた。その後の体の熱さは相変わらずだが、心なしか、程度が和らいできたように感じる。そこで、まだ旅の途中ではあるが、どのくらい呪いが解けたのか検証してみよう、という話になったのだ。ルチアーノの顔を見た人間のこれまでがこれまでだけに、そんな実験をしていいのかと真純は思ったが、意外にもエレナが挙手したのである。
「では、取るぞ?」
もう一度確認してから、ルチアーノが仮面に手をかける。やがて現れた素顔を見て、エレナはきゃあっと悲鳴を上げた。
「何てお美しいんですの!? ……あ、もうダメ……。何だか、くらくら……」
言うなりエレナは、ばたんと倒れ伏してしまった。
「エレナさん!」
真純は、慌てて彼女の元へ駆け寄った。抱き起こせば、白目を剥いていて、真純は焦った。
「ほらやっぱり! 正当な呪文でないと、呪いは解けないんですよ」
赤毛をかきむしりながら、ジュダがぶつぶつ言う。ルチアーノは、じろりと彼を見た。
「そんな議論をする前に、早く手当てをさせぬか」
「……承知しました」
ジュダは廊下に出ると、人を呼んだ。その間に、ルチアーノは素早く仮面を着け直している。やがて、女性使用人数名が、バタバタと飛び込んで来た。
「エレナ、大丈夫?」
「失神しているだけのようですね。私どもで、看病しますわ」
お願いしますと頭を下げて、真純はエレナを彼女たちに託した。女性たちがエレナを連れて出て行くと、ルチアーノは、改めてジュダと真純の方に向き直った。
「さて。以前に比べれば状況が改善したとはいえ、呪いの効力が続いていることは、これでわかった。つまり、我々はやはりフィリッポに頼らねばならぬ。というわけで、作戦会議だ」
フィリッポが住むモーラントには、いよいよ明日到着するのだ。ジュダと真純は、真剣な面持ちになった。するとルチアーノは、意外なことを言い出した。
「今回、私はフィリッポと接触しないつもりだ。ジュダ、マスミ殿。そなたたちには、タッグを組んでもらいたい。二人で、彼に会いに行ってくれるか」
真純とジュダは、思わず顔を見合わせた。ルチアーノが説明する。
「道中で話したとおり、フィリッポは、アルマンティリア王室に反感を抱いている可能性が高い。それゆえ、私が来ているということは、伏せておいた方がよかろう」
「でしたら、私一人でも……」
すかさずジュダは言いかけたが、ルチアーノはかぶりを振った。
「それでは、近衛騎士団が付いて来た説明ができない。そこで、マスミ殿の出番だ。そなたは、この世界の魔術を学ぶため異世界から訪れた者、と称すればよい。そして、フィリッポに近付いてもらうのだ。異世界からの客人に何かあっては大変ゆえ、近衛騎士団が警護に就いている、と言えば、言い訳が成り立つであろう」
まんざら偽りでもあるまい、とルチアーノは口の端を上げた。
「本当によいのだな?」
ルチアーノが念を押す。はい、とエレナは勢い良くうなずいた。
「殿下のお顔を拝見できるなんて、楽しみで仕方ありませんわ! この前倒れた娘も、すぐに回復しましたし、きっと平気ですわよ」
ルチアーノは、軽く苦笑した。
「肝の据わった娘であるな」
あの晩から、真純は連続してルチアーノに抱かれた。その後の体の熱さは相変わらずだが、心なしか、程度が和らいできたように感じる。そこで、まだ旅の途中ではあるが、どのくらい呪いが解けたのか検証してみよう、という話になったのだ。ルチアーノの顔を見た人間のこれまでがこれまでだけに、そんな実験をしていいのかと真純は思ったが、意外にもエレナが挙手したのである。
「では、取るぞ?」
もう一度確認してから、ルチアーノが仮面に手をかける。やがて現れた素顔を見て、エレナはきゃあっと悲鳴を上げた。
「何てお美しいんですの!? ……あ、もうダメ……。何だか、くらくら……」
言うなりエレナは、ばたんと倒れ伏してしまった。
「エレナさん!」
真純は、慌てて彼女の元へ駆け寄った。抱き起こせば、白目を剥いていて、真純は焦った。
「ほらやっぱり! 正当な呪文でないと、呪いは解けないんですよ」
赤毛をかきむしりながら、ジュダがぶつぶつ言う。ルチアーノは、じろりと彼を見た。
「そんな議論をする前に、早く手当てをさせぬか」
「……承知しました」
ジュダは廊下に出ると、人を呼んだ。その間に、ルチアーノは素早く仮面を着け直している。やがて、女性使用人数名が、バタバタと飛び込んで来た。
「エレナ、大丈夫?」
「失神しているだけのようですね。私どもで、看病しますわ」
お願いしますと頭を下げて、真純はエレナを彼女たちに託した。女性たちがエレナを連れて出て行くと、ルチアーノは、改めてジュダと真純の方に向き直った。
「さて。以前に比べれば状況が改善したとはいえ、呪いの効力が続いていることは、これでわかった。つまり、我々はやはりフィリッポに頼らねばならぬ。というわけで、作戦会議だ」
フィリッポが住むモーラントには、いよいよ明日到着するのだ。ジュダと真純は、真剣な面持ちになった。するとルチアーノは、意外なことを言い出した。
「今回、私はフィリッポと接触しないつもりだ。ジュダ、マスミ殿。そなたたちには、タッグを組んでもらいたい。二人で、彼に会いに行ってくれるか」
真純とジュダは、思わず顔を見合わせた。ルチアーノが説明する。
「道中で話したとおり、フィリッポは、アルマンティリア王室に反感を抱いている可能性が高い。それゆえ、私が来ているということは、伏せておいた方がよかろう」
「でしたら、私一人でも……」
すかさずジュダは言いかけたが、ルチアーノはかぶりを振った。
「それでは、近衛騎士団が付いて来た説明ができない。そこで、マスミ殿の出番だ。そなたは、この世界の魔術を学ぶため異世界から訪れた者、と称すればよい。そして、フィリッポに近付いてもらうのだ。異世界からの客人に何かあっては大変ゆえ、近衛騎士団が警護に就いている、と言えば、言い訳が成り立つであろう」
まんざら偽りでもあるまい、とルチアーノは口の端を上げた。
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