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第二章 呪文探しの旅に出よう!
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その後真純は、エレナに手伝ってもらって、手早く旅支度を済ませた。すると、外で何やら騒々しい気配がした。
(何事だ……?)
不思議に思った真純は、エレナと共に、城の外に出てみた。すると何と、武装した男たちの集団が控えているではないか。おまけに、ジュダと何事か言い争っている。
「あの人たちは?」
真純は、エレナに尋ねた。
「騎士の方々ですわ。おそらくは、近衛騎士団の皆様かと」
真純は、おそるおそる彼らに近づくと、険しい表情のジュダに尋ねてみた。
「あの、何か問題でも?」
だがジュダは、真純を一瞥しただけで、答えようとしない。困惑していると、背後から声が聞こえた。
「皆の者、この度は世話になる」
ルチアーノだった。暖かそうな、黒い毛皮のマントに身を包んでいる。騎士たちは、彼の仮面を見て一瞬息を呑んだものの、うやうやしく礼をした。リーダーと思しき年配の男性が進み出て、ルチアーノの前にひざまずく。
「ルチアーノ殿下。モーラントまでの道中、しっかりとお守りいたします。どうぞ安心なさって、お任せくださいませ」
どうやら彼らは、旅の護衛役らしかった。ルチアーノは、軽くうなずくと、まだ仏頂面のジュダをじろりと見た。
「何を揉めていた? まさか、彼らに失礼な振る舞いをしたのではあるまいな」
「それは……」
ジュダが口ごもる。ルチアーノは軽くため息をつくと、再度騎士たちの方に向き直った。
「失礼した。このジュダは、普段私の護衛を務めているため、今回も自分が担うとばかり思っていたのであろう。ちょっとした行き違いだ。この旅では、そなたらを頼りにしている。よろしく頼むぞ」
それを聞いたジュダは、キッと眉を吊り上げたが、ルチアーノは彼を制した。
「行くぞ。お前とマスミ殿は、私の馬車に同乗せよ」
有無を言わせぬ声音で急かされ、ジュダは渋々といった様子で彼に従ったのだった。
ルチアーノの馬車は、デザインは地味だが、趣ある雰囲気で、作りもしっかりしているのが見て取れた。案の定、乗り込めば、シートは吸い込まれそうなくらいふかふかだ。ルチアーノは、真純とジュダを隣り合って座らせると、自分はその向かいにどっかりと腰かけた。
「お気を付けて、行ってらっしゃいませ!」
ボネーラと、留守番組の使用人たちが、外でうやうやしく頭を下げる。彼らに見送られながら出発すると、早速ジュダがぶつぶつ言い始めた。
「護衛は、私に任せてくださるお約束では? よりによって、ミケーレ二世陛下が遣わされた騎士団などに護衛をさせるだなんて」
あの騎士団は、国王が派遣したのか、と真純は驚いた。一方のルチアーノは、動じる様子も無い。
「そうつむじを曲げるな。私も、最初はお前に任せる予定だった。だが、せっかく国王陛下が、彼らを派遣してくださったのだ。ご厚意を、むげにはできぬだろう」
「ですが……」
「ジュダよ。晴れて呪いが解ければ、私はこのアルマンティリア王国の次期王位継承者となるのだ。もう事情も立場も違うと、お前も心得よ」
きつい声音でたしなめられ、さすがにジュダも黙った。ルチアーノは、軽くため息を吐くと、仮面を外した。プラチナブロンドの髪と黒いマント、そして透き通るような白い肌が、絶妙なバランスを成している。もう何度も見たにもかかわらず、真純は思わず見惚れた。
「ま、物は考えようだ。彼らが護衛役を務めてくれるのだから、そなたは旅を楽しめばよいではないか」
ルチアーノが、グリーンの瞳を細め、からからと笑う。だがジュダは、浮かない表情のままだった。
「しかし……。今回の旅は、難航するようではありませぬか。そう仰られても……」
「そういえば、どうしてなのです?」
真純は、身を乗り出した。
「容易にはいかないかも、と仰ってましたよね?」
「そうなのだ」
ルチアーノは、一転深刻な顔色になった。
「マスミ殿、ジュダ、今のうちに話しておこう。フィリッポという、ベゲットの弟子についてだ」
真純とジュダは、表情を引き締めた。ルチアーノが、静かに続ける。
「彼はおそらく、アルマンティリア王室を恨んでいる。そしてそれは、ボネーラ殿と関係しているのだ」
どういうことだろう、と真純は内心首をひねった。ルチアーノが、チラとジュダを見やる。
「ジュダ。そなたは、ベゲットが宮廷を追われた理由を知っているか」
「いえ」
ジュダが、怪訝そうにかぶりを振る。ルチアーノは、驚いた様子も無くうなずいた。
「そうであろうな。私も、先ほどボネーラ殿から聞くまで知らなかった……。実はベゲットは、人を殺めた罪で宮廷を追われたのだ。殺されたのは、ボネーラ殿の父親だ」
(何事だ……?)
不思議に思った真純は、エレナと共に、城の外に出てみた。すると何と、武装した男たちの集団が控えているではないか。おまけに、ジュダと何事か言い争っている。
「あの人たちは?」
真純は、エレナに尋ねた。
「騎士の方々ですわ。おそらくは、近衛騎士団の皆様かと」
真純は、おそるおそる彼らに近づくと、険しい表情のジュダに尋ねてみた。
「あの、何か問題でも?」
だがジュダは、真純を一瞥しただけで、答えようとしない。困惑していると、背後から声が聞こえた。
「皆の者、この度は世話になる」
ルチアーノだった。暖かそうな、黒い毛皮のマントに身を包んでいる。騎士たちは、彼の仮面を見て一瞬息を呑んだものの、うやうやしく礼をした。リーダーと思しき年配の男性が進み出て、ルチアーノの前にひざまずく。
「ルチアーノ殿下。モーラントまでの道中、しっかりとお守りいたします。どうぞ安心なさって、お任せくださいませ」
どうやら彼らは、旅の護衛役らしかった。ルチアーノは、軽くうなずくと、まだ仏頂面のジュダをじろりと見た。
「何を揉めていた? まさか、彼らに失礼な振る舞いをしたのではあるまいな」
「それは……」
ジュダが口ごもる。ルチアーノは軽くため息をつくと、再度騎士たちの方に向き直った。
「失礼した。このジュダは、普段私の護衛を務めているため、今回も自分が担うとばかり思っていたのであろう。ちょっとした行き違いだ。この旅では、そなたらを頼りにしている。よろしく頼むぞ」
それを聞いたジュダは、キッと眉を吊り上げたが、ルチアーノは彼を制した。
「行くぞ。お前とマスミ殿は、私の馬車に同乗せよ」
有無を言わせぬ声音で急かされ、ジュダは渋々といった様子で彼に従ったのだった。
ルチアーノの馬車は、デザインは地味だが、趣ある雰囲気で、作りもしっかりしているのが見て取れた。案の定、乗り込めば、シートは吸い込まれそうなくらいふかふかだ。ルチアーノは、真純とジュダを隣り合って座らせると、自分はその向かいにどっかりと腰かけた。
「お気を付けて、行ってらっしゃいませ!」
ボネーラと、留守番組の使用人たちが、外でうやうやしく頭を下げる。彼らに見送られながら出発すると、早速ジュダがぶつぶつ言い始めた。
「護衛は、私に任せてくださるお約束では? よりによって、ミケーレ二世陛下が遣わされた騎士団などに護衛をさせるだなんて」
あの騎士団は、国王が派遣したのか、と真純は驚いた。一方のルチアーノは、動じる様子も無い。
「そうつむじを曲げるな。私も、最初はお前に任せる予定だった。だが、せっかく国王陛下が、彼らを派遣してくださったのだ。ご厚意を、むげにはできぬだろう」
「ですが……」
「ジュダよ。晴れて呪いが解ければ、私はこのアルマンティリア王国の次期王位継承者となるのだ。もう事情も立場も違うと、お前も心得よ」
きつい声音でたしなめられ、さすがにジュダも黙った。ルチアーノは、軽くため息を吐くと、仮面を外した。プラチナブロンドの髪と黒いマント、そして透き通るような白い肌が、絶妙なバランスを成している。もう何度も見たにもかかわらず、真純は思わず見惚れた。
「ま、物は考えようだ。彼らが護衛役を務めてくれるのだから、そなたは旅を楽しめばよいではないか」
ルチアーノが、グリーンの瞳を細め、からからと笑う。だがジュダは、浮かない表情のままだった。
「しかし……。今回の旅は、難航するようではありませぬか。そう仰られても……」
「そういえば、どうしてなのです?」
真純は、身を乗り出した。
「容易にはいかないかも、と仰ってましたよね?」
「そうなのだ」
ルチアーノは、一転深刻な顔色になった。
「マスミ殿、ジュダ、今のうちに話しておこう。フィリッポという、ベゲットの弟子についてだ」
真純とジュダは、表情を引き締めた。ルチアーノが、静かに続ける。
「彼はおそらく、アルマンティリア王室を恨んでいる。そしてそれは、ボネーラ殿と関係しているのだ」
どういうことだろう、と真純は内心首をひねった。ルチアーノが、チラとジュダを見やる。
「ジュダ。そなたは、ベゲットが宮廷を追われた理由を知っているか」
「いえ」
ジュダが、怪訝そうにかぶりを振る。ルチアーノは、驚いた様子も無くうなずいた。
「そうであろうな。私も、先ほどボネーラ殿から聞くまで知らなかった……。実はベゲットは、人を殺めた罪で宮廷を追われたのだ。殺されたのは、ボネーラ殿の父親だ」
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