25 / 34
再び週末
しおりを挟む今週はお昼の仕事だったが青木のお陰で愛美は楽しく働けた。
あれから、紡の死に繋がるモノも見る事は無く。
きっとまだあるのだろうという不安はあるが、何かあるならきっと、仏壇の前で線香を上げて拝んだ時に教えてくれるから、大丈夫だ、と日々を過ごした。
今日は約束の週末だから、公園で山野を待つ。
紡がせがんで早く出た為、愛美と紡は待ち合わせの時間より少し早く着いてしまったのだ。
紡は機嫌良く砂場で遊んでいる。
「ママー、きてー……っつ」
砂で上手に山を作って幸恵である愛美を笑顔で呼びながらコッチを見たが、急にその顔が凍りついた。
「ん?どうしたの?紡くん?」
気になって歩み寄ろうとした愛美の足元に紡は駆けてきて抱き着くというよりも、しがみ付いた。
「えっ?どうしたの?大丈夫?具合悪い?」
背中を掌でさすって聞いても何も答えない。
「どうした?寒いのか?紡」
突然、柔軟剤の香りがするほど近くから、男の人の声。
振り返れば、物腰柔らかで目元の涼やかな、如何にも優しそうな男性が背後に立っていた。
「甘えん坊だなぁ、紡は」
声だって、とっても柔らかく優しいのに、なのに、どうして愛美は、いや、松本幸恵の身体は小刻みに震え、全身から冷たい汗を吹き出し、喉は絞められたように苦しく一言も発せられないのだろう。
「ほら、ママ、困ってるだろ。パパが抱っこしてあげるよ」
パパ?って事はこの人が元旦那?
こんなに全身で紡を抱えて逃げ出したいといってこの人を、拒絶しているのに?
手が子供に伸びて来る。
ダメって言ってこの子を抱えて駆け出さないとならないのに、心臓ばかりが煩くて、震えるばかりの身体は最早、捕まってしまったように動かない。
せっかく、この子達だけでも守らなきゃと思ってこの人から逃げ出したのに。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる