15 / 15
233番
第十五話 偉い子トリオ
しおりを挟む(ふぅ。ごちそうさま)
233番がご飯を食べ終わり魔導板で遊んでいると、コニーがアオを233番のベビーベッドに乗せてきた。
(…え?)
「あんた今日は234番と遊んでな」
『ナゼ』
「文字は完全にマスターしたし、今日の特訓は座学にしようと思ってね。私たちが仕事終わるまでの待ち時間、魔導版ってのもいつも通りでつまらないかと思ってね。」
『ナニデ、アソベバ』
「…さぁ」
(えっ)
「じゃ、任せたよ。あんたも234番も大人しいから大丈夫だと思うけど柵外したままだから落ちないように気を付けておくれよ」
(ええ…)
アオと目が合う。面と向かって対面するのは試食会以来なので実に二度目である。
(ど、どうしよう…)
「まーうーー」
(ん?あ、これ?)
アオが魔導版を指している。
(これであそびたいのかな…それじゃぁ…)
233番はぽちぽちと操作し、絵のペアを作っていくゲームを画面に表示した。
(えっと、せつめい…あっ、そもそもできない…)
アオに遊び方を教える術がないという致命的なことに気づく。
(ていうか、せつめいできてもアオくんわかんないじゃん…うーーん)
しばし悩んだ末、実践して察してもらうしか方法は無いと悟り、アオに見せるような角度で実践する。正解と不正解を交えながら魔導版を操作していく。正解の時には両手を上げやったーのポーズを、不正解の時は項垂れて落ち込みを表現した。拙い寸劇を繰り返しながら(つたわれ~)と念じた。
「あ!!うーうー」
しばらく寸劇を繰り返した後、アオが自分もやってみたいのか魔導版に手を差し伸べている。
アオに魔導版を渡すと233番が見せたようにポチポチと絵を合わせていく。
最初は二回に一回は間違えていたのが、徐々に五回に一回、十回に一回と、間違える頻度が減りどんどん上達していった。操作に慣れないのか233番と比べてペースは遅いが確実に仕組みを理解している動きに感動する。
(アオくんすごい…わたしはコニーさんがおしえてくれたからできたけど…あのせつめいでわかるとか…アオくんはてんさいだ…)
若干贔屓目で見ている所はあるが233番は素直にアオの呑み込みの早さに感動していた。
アオが順調にゲームを進めていくのを見守っていると何やら視線を感じた。
外したほうの柵の向かいにあるのはモモのベビーベッドだ。視線はそこから注がれているようだった。
そちらにゆっくりと目を向けると、モモが寝そべりながこちらに痛いほど視線を送っている。
(も、もしかしてモモちゃんまざりたい…?いつもたべたらすぐねてるのに…)
「あ、あーうー」
魔導版はアオに貸していて使えないので、とりあえず通りすがりのセイラを声で呼び止める。
「ん?どうしたんですか233番ちゃん」
「だぅ、」
歩いていた足を止め屈んで233番と目線を合わせてくれるセイラに、モモを指さすことでどうにか意図を伝える。
「232番ちゃんがどうかしましたか?珍しいですねまだ寝てないなんて」
モモのことを言っているのだと伝えることができたことを確認し、次に自身の左隣、アオが座っていないほうのベッドの空席(厳密には席ではないが)をぽんぽんと叩く。
「…?あ、232番ちゃんを隣に連れてきてほしい、ということでしょうか」
魔導版無しでもきちんと意志疎通できたことに安堵しつつ、肯定の旨を伝えるべくコクコクと頷く。
セイラが232番のベッドの方に向かおうと立ち上がっている間にモモは遠心力法でしゅばっと起き上がった。
知ってか知らずか、セイラの目線はまだ233番に、コニーは他の幼児達にご飯を上げるので忙しく、モモの俊敏性を目撃したのはまたもや233番だけだった(今回はアオも魔導版に夢中で見ていない)。
モモを抱きかかえ、233番の隣に座らせてからセイラは仕事に戻った。
(モモちゃんわざと…?ひとにうごいてるところ、みられたくないの?)
モモの顔をまじまじと見ながらそう心の中で問い掛けてみるも当然答えは返ってこず、当の本人は可愛らしく首を傾げるだけだった。
(うっ、かわいい…まぁ、なんでもいっか…)
可愛い隣人二人に挟まれながら、賑やかなご飯時をその日は過ごした。
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~
夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。
「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。
だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。
時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。
そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。
全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。
*小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない
カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。
一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。
そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。
ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!!
その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。
自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。
彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう?
ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。
(R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします)
どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり)
チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。
今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。
ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。
力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。
5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)>
5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります!
5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる