異世界でピエロは踊らない

maimai

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233番

第十五話 偉い子トリオ

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(ふぅ。ごちそうさま)

233番がご飯を食べ終わり魔導板で遊んでいると、コニーがアオを233番のベビーベッドに乗せてきた。

(…え?)

「あんた今日は234番と遊んでな」

『ナゼ』

「文字は完全にマスターしたし、今日の特訓は座学にしようと思ってね。私たちが仕事終わるまでの待ち時間、魔導版ってのもいつも通りでつまらないかと思ってね。」

『ナニデ、アソベバ』

「…さぁ」

(えっ)

「じゃ、任せたよ。あんたも234番も大人しいから大丈夫だと思うけど柵外したままだから落ちないように気を付けておくれよ」

(ええ…)

アオと目が合う。面と向かって対面するのは試食会以来なので実に二度目である。

(ど、どうしよう…)

「まーうーー」

(ん?あ、これ?)

アオが魔導版を指している。

(これであそびたいのかな…それじゃぁ…)

233番はぽちぽちと操作し、絵のペアを作っていくゲームを画面に表示した。

(えっと、せつめい…あっ、そもそもできない…)

アオに遊び方を教える術がないという致命的なことに気づく。

(ていうか、せつめいできてもアオくんわかんないじゃん…うーーん)

しばし悩んだ末、実践して察してもらうしか方法は無いと悟り、アオに見せるような角度で実践する。正解と不正解を交えながら魔導版を操作していく。正解の時には両手を上げやったーのポーズを、不正解の時は項垂れて落ち込みを表現した。拙い寸劇を繰り返しながら(つたわれ~)と念じた。

「あ!!うーうー」

しばらく寸劇を繰り返した後、アオが自分もやってみたいのか魔導版に手を差し伸べている。

アオに魔導版を渡すと233番が見せたようにポチポチと絵を合わせていく。

最初は二回に一回は間違えていたのが、徐々に五回に一回、十回に一回と、間違える頻度が減りどんどん上達していった。操作に慣れないのか233番と比べてペースは遅いが確実に仕組みを理解している動きに感動する。

(アオくんすごい…わたしはコニーさんがおしえてくれたからできたけど…あのせつめいでわかるとか…アオくんはてんさいだ…)

若干贔屓目で見ている所はあるが233番は素直にアオの呑み込みの早さに感動していた。

アオが順調にゲームを進めていくのを見守っていると何やら視線を感じた。

外したほうの柵の向かいにあるのはモモのベビーベッドだ。視線はそこから注がれているようだった。

そちらにゆっくりと目を向けると、モモが寝そべりながこちらに痛いほど視線を送っている。

(も、もしかしてモモちゃんまざりたい…?いつもたべたらすぐねてるのに…)

「あ、あーうー」

魔導版はアオに貸していて使えないので、とりあえず通りすがりのセイラを声で呼び止める。

「ん?どうしたんですか233番ちゃん」

「だぅ、」

歩いていた足を止め屈んで233番と目線を合わせてくれるセイラに、モモを指さすことでどうにか意図を伝える。

「232番ちゃんがどうかしましたか?珍しいですねまだ寝てないなんて」

モモのことを言っているのだと伝えることができたことを確認し、次に自身の左隣、アオが座っていないほうのベッドの空席(厳密には席ではないが)をぽんぽんと叩く。

「…?あ、232番ちゃんを隣に連れてきてほしい、ということでしょうか」

魔導版無しでもきちんと意志疎通できたことに安堵しつつ、肯定の旨を伝えるべくコクコクと頷く。

セイラが232番のベッドの方に向かおうと立ち上がっている間にモモは遠心力法でしゅばっと起き上がった。

知ってか知らずか、セイラの目線はまだ233番に、コニーは他の幼児達にご飯を上げるので忙しく、モモの俊敏性を目撃したのはまたもや233番だけだった(今回はアオも魔導版に夢中で見ていない)。

モモを抱きかかえ、233番の隣に座らせてからセイラは仕事に戻った。

(モモちゃんわざと…?ひとにうごいてるところ、みられたくないの?)

モモの顔をまじまじと見ながらそう心の中で問い掛けてみるも当然答えは返ってこず、当の本人は可愛らしく首を傾げるだけだった。

(うっ、かわいい…まぁ、なんでもいっか…)

可愛い隣人二人に挟まれながら、賑やかなご飯時をその日は過ごした。
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