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第1章

第13話 商人ギルドへ

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 日が沈む前に商人ギルドに行くために、街中を歩きながら喋る。

「……じゃあ本当に、冒険者ギルドに登録した意味ってあるのかしら?」

 しっかりランクを上げないと関税の免除もされないみたいだし、入った意味がほとんどないように思うわ……私が勘違いをしたばかりに無駄に登録しちゃったかも。

「意味はあるよ。商人ギルドは自分が物を持ってないと売ることが出来ないから、金を稼げない。冒険者ギルドは依頼さえやれば、お金を稼ぐことが出来る」
「なるほど。じゃあどっちも登録したほうがいいのかしら?」
「……実際、魔物さえ狩ってくれば商人ギルドでも素材を売ることが出来るから、商人ギルドだけでも構わない。素材も商人ギルドの方が高く買い取ってくれることが多い」
「……そうなのね」
「それにどっちにも登録すると、会費にお金が倍かかるし」
「……そうよね、当たり前よね」

 やっぱり冒険者ギルドに登録した意味って、あまりないみたいね……。

「とりあえず、登録したものは仕方ないし、上手く活用しよう。冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を受けて達成して、余った素材を商人ギルドで売るのが一番いいと思う」
「……そうね。そうするべきね」

 やっぱりジルがいて、本当に助かってるわ。
 私だけだったら、冒険者ギルドに登録して期待を裏切られて、そのまま商人ギルドには登録しなかったと思う。

 私、この旅で全然役に立たないどころか、足を引っ張ってる感じが否めないわね……。

「ごめんなさいね、ジル。素直にジルの言うことを聞いて、商人ギルドに行けばよかったわね」

 私がため息をつき、下を向きながらジルにそう言うと……私の頭に、何かが優しく置かれた。
 見上げると、ジルが私の頭に手を置いていて、優しく髪を梳くように撫でてきた。

「大丈夫、フラー。フラーがそういう人だって知ってたから」

 その言葉を聞いて、少しムッとしてしまう。

「それって、最初から私が役立たずってわかってたことかしら?」
「違う。フラーが、好奇心旺盛だってこと」

 ジルは私の頭を撫でながら続ける。

「何か気になることがあったら、それを体験してみないと気が晴れない。小さい頃、木の上にあった鳥の巣の雛を見たくて、俺が止めても一人で勝手に登っていって、落ちて怪我したことあったよね」
「そ、そんなことあったかしら?」

 あんまり覚えないけど、確かにそんなことをしたかもしれない。

「落ちて怪我をしたのに、また登って……雛を見て騒いで、また落ちて」
「……その話聞くと、小さい頃の私ってバカみたいね」
「だけどまだ登る勇気もなかった俺には、その姿が眩しく見えた」

 そう言うジルは懐かしそうに、だけどなんだかどこか寂しそうに見えた。

「あの時、俺も一緒に登りたかったから。フラーと一緒に」
「止めてくれてもよかったんじゃない?」
「止めても登ったんだよ、フラーは。今日みたいに」
「うっ……なんだか今も昔も、本当にバカみたいじゃない」
「そう? だけど俺は、今のフラーが昔と変わらないでいて、嬉しいよ」

 さっきよりも笑みを深くしながら撫でてくるジルに、私は恥ずかしくて目線を逸らした。

「……こ、子供扱いしてない?」
「いや、してない。フラーだけだから、俺がこんなことを言うのは」
「っ、それがズルいって言ってるのよ……」
「ズルい? 何が?」
「ぜ、全部よ! というかもう撫でるのもやめなさい!」

 いつまでも頭を撫でられていたので、ペチンとジルの手を軽く叩いた。

「ほら、商人ギルドに早く行きましょう。もう日が暮れちゃうわ」

 そう言って私は顔を見られないように、照れ隠しにジルの先を歩く。

「……そうだね」

 ジルはいつもより優しげな声でそう言って、後からついてくる。

「フラー、一ついい?」
「な、何かしら?」
「商人ギルドの場所、わかってる?」
「……どっちに行けばいいのかしら?」
「うん、まずは多分、回れ右すればいいと思うよ」
「真反対じゃない!」

 ということで、私達は商人ギルドへと向かって登録をしに行った。


 商人ギルドは冒険者ギルドの建物よりも綺麗ではあった。
 そして特に誰かに絡まれることなく、スムーズに登録は終わった。

 登録料を払い、説明を聞く。

 冒険者ギルドと同じく、商人ギルドにもランクがあり、私達は一番下のノーマルランクから。
 その上がブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナと続くらしい。

 冒険者ギルドと似ているから少し覚えやすい。

 商人ギルドに税金として納める額もランクにより変わるけど、これは上がるごとに増えていくようだ。
 だけどランクが上がるごとに関税が完全に免除になったり、いろいろと融通が効くようになるので、上がった方がいいかもしれない。

「どうやってランクは上がるのですか?」
「納めていただく額ですね。極論を言うと、フラーヴィア様達でも今すぐにプラチナランクに上がることも出来ます」
「えっ、そうなのですか?」
「はい。プラチナランクの年会費を納めていただければ、すぐにでも。ですがもちろん額は高いですし、メリットやデメリットもあります。大きな商会の方は、プラチナランクにした方がお得になりますが、お店を持ってない方であればノーマルランクの方がいい、という場合があります」

 いろんな国にお店を持っている商会の人は、品物を運ぶためや交渉のために、いろんな街や国を行き来することが多い。
 だからその場合、ノーマルランクとかだったら多少減税されたとしても、いちいち関税を支払わないといけない。

 それならプラチナランクになっておいて、完全に免除した方がお得というわけだ。

「そうなのですね……ジル、私達はどうする?」
「大きな店を持ってないし、今後持つ予定もないからノーマルでいいと思う」
「そうね、そうしましょう」

 冒険者ギルドも登録してるし、納める税金は高くない方がいいわね。

 ということで私達はノーマルランクの年会費を払い、商人ギルドのギルドカードをもらって外に出た。

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