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154 サイカは最強 sideマティアス

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ドライト王国から戻って数日。
サイカはアメリア妃と友人になった様で嬉しそうに手紙を送っていた。
俺と結婚してからサイカはレスト帝国の国母として毎日本当によくやってくれている。
自分にも何か出来る事はないかと積極的に政務に加わり、国を支える貴族の夫人、令嬢たちの集まりなんかへも参加してくれている。
努力家で一生懸命。責任感もあり頭も良く、優しく美しい。
俺は何と恵まれた夫だろうかと毎日のように感謝する。
しかし気掛かりなのは夫人や令嬢たちの集まりに参加した後のサイカの表情が疲れている事だ。

『直接的な事を仰りはしませんが、夫人や令嬢たちは遠回しに陛下の見目を馬鹿にしたような発言を妃殿下の前で平気で仰るのです。いえ…あれは態とである可能性が大きいかと。』

『…どんなことをサイカに言っている。』

『はい…。ある令嬢は妃殿下が毎晩陛下の寝室で眠っている事を話に持ち出し、妃殿下は陛下に愛されていますのね、と。しかしその後が問題でした。
令嬢は妃殿下に、“陛下と毎晩一緒に眠るのは大変でしょう”と。』

『…なる程。言葉の意図は“俺と毎晩一緒に眠るなど、自分なら耐えられない”といった所だな。』

『…そのように感じました。
違う集まりでもそのような言葉が夫人や令嬢たちから出てくるのです。
ですので、妃殿下はあのようにお疲れになっているご様子…。』

『…そうか。ふん、俺の目の前で言えばいいものを。
今度俺も一緒に参加してみるか。
ベリス子爵はどうだ?』

『……ベリス子爵でございますか…。』

『何だ。』

『…その…、』

ベリス子爵は嫌味な男だ。
前回の会議では世継ぎについて口を出してきたりもした。
子爵位ではあるが父の代から国を支えている臣下の一人で、嫌味な男ではあるが頭はいい。
ただ、俺の事を馬鹿にしているのは昔から伝わってもいた。
その矛先がサイカに向かないか心配していたのだが…どうやらサイカに向かったらしい。

『子爵が俺を馬鹿にしているのは昔からだ。構わんから申せ。』

『…はい、では…ありのままご報告致します。
陛下の仰る通り、ベリス子爵は陛下に対し無礼な考えをお持ちの様子です。
偶然を装ったように妃殿下に会う事が数回ありました。』

『で?』

『ベリス子爵は妃殿下に対し、“陛下がお相手ではさぞご苦労もおありでしょう”と。それから…“陛下との夫婦生活に満足しているか”とも申しておりました。一臣下として一刻も早い世継ぎの誕生を望んでいる、国の未来を憂いていると体よく申しておりましたが…聞いていて不快でございました。
妃殿下は、よく我慢されたと思います。』

『……そうか。
下がれ。引き続き報告を頼むぞ、ヒルダ。』

『畏まりました。』

サイカの専属侍女、ヒルダから話を聞いて大きな溜め息が出てしまう。
嫌味もそこまでくると大したものだ、と感心すらした。
苦労があるだろうと言った意図も、夫婦生活に満足しているかと聞いた意図も、俺の見目を馬鹿にしているからだろう。
醜い俺と子作りをするのは耐えがたい苦痛だろうと、これまで女の相手を録に経験していない俺では、サイカを抱くのも手間取っているだろうと、そういう意図だ。
昔から俺を馬鹿にし見下し、嫌っているのは知っていたがサイカにまでその矛先を向けるとは。
恐らく自分が国に、俺にとって必要な存在であると思っているからこその行動だろう。
必要であるから多少の無礼な発言は許される。これまでも俺はベリスに対し何らかの処罰すら与えた事もないのだから。そう思っているに違いない。

「確かに、必要と言えば必要なんだが…。」

ベルナンドの件でいくつかの貴族を処罰した。
今ベリス子爵を処罰すればデメリットが大きいのも確かだ。
が、それは現段階であってこれからもそうという訳ではない。
そもベリス子爵は頭はいいが元々能力が高い男ではなく、長年の経験からくるものが大きい。
同じ事似た事を長年行っていれば誰でも出来る事をやっているだけなのだ。

「自分に高い能力が備わっていると勘違いしているのだな。」

ああいう男が権力を持つと録な事がない。
ベリス子爵は器の小さい男だと言ったダロンの言葉を思い出す。
俺がサイカという極上の女を妻にしたから嫉妬をしているのだと。
嫉妬し僻んでもいるから嫌味を言って気を晴らしているのだと。
女という弱い立場のサイカにまで矛先を向けるのだから、ダロンの言う通り確かに器の小さい男だ。

「…対処を考えないとな…。」

サイカを幸せにすると誓ったのだ。
ニホンというサイカの故郷で生きるご両親に、そしてサイカ自身に。
可愛い娘を失ったご両親の悲しみ、喪失感はとてつもなく大きいだろう。
またサイカ自身もそうだ。愛する両親、大切な友人、故郷での生活の何もかもを失ったサイカを俺は必ず幸せにすると自分自身にも誓った。
一つも憂いなく、など無理な話だ。
傷つく事も一切なく、悲しい事も一切なく。
常に平穏に、毎日を笑顔でとはいかないが、愛する女が常を穏やかに、そして小さくとも幸せで満たされ続けるようにとそう願っている。
サイカはとても優しい女だ。
気遣いや心配りが素晴らしい女だ。
けれど俺や皆の事を考える余り遠慮もしてしまう。
例えば先程の話も、俺がヒルダから報告を受けなければサイカからは話さないだろう。
何かあったかと問えば話してくれるが、サイカは楽しい事や嬉しい事、感動した事などは自ら話すものの、嫌な事や不快だった事、悲しかった事は余り自ら話したりしない。
それでも、以前と今を比べればだいぶ話すようになった方なんだが。

「サイカ、最近は何もないか?」

「何も?」

「困った事とか、だな。」

「ううん、大丈夫!特にないですよ?」

「そうか。…何かあればすぐ言うんだぞ?」

「ふふ、ありがとう。」

俺から聞くのは簡単だ。
けれどサイカから発信して欲しい時もある。
サイカが嫌だ、傷付いた、辛い、助けてと言ってくれれば…。
そんな、もどかしく感じながら過ごしていたある日の事だった。

「今日は夫人や令嬢たちを城に招待していたな。」

「はい!今回は私が主催のお茶会ですからね!メニューを考えるのに苦労しました…。」

「問題ないか?」

「ええ、大丈夫!心配しないで!」

笑顔を浮かべるサイカ。
サイカが夫人や令嬢たちを招いて茶会を行うというのは事前にサイカ本人から聞いており、振る舞うお茶やお茶請けに頭を悩ませていたのを知っている。
今日城に招いた夫人や令嬢たちはヒルダの報告にあった者たちでもあり…けれど、サイカの笑顔には一つの陰りもなかった。
いつも通り政務を行うもののサイカの様子が気になり気がそぞろになってしまう。
大丈夫、心配しないでとサイカはそう言ったが…今、嫌な思いをしていないだろうか。
言われているのはサイカ自身の事ではなく俺の容姿についてであるから、サイカは俺に気を使って伝え辛かったのかも知れない。
貴族社会は面倒な事ばかりだ。
集まっている夫人や令嬢たちは王宮で働く臣下たちの妻や娘も居る。
色々な事を考え、サイカは自分が我慢すればと思って夫人や令嬢たちの相手をしているのかも知れない。
そう思うと居ても立ってもいられなかった俺は少し休憩をすると席を立ち、サイカのいる庭園へと向かった。

庭園の一角に一際賑やかな笑い声が響いている。
サイカを中心に両サイド、家の序列順に座っている夫人や令嬢たちの声はよく響いていた。聞き耳を立てずとも簡単に聞こえてくるくらいには。

「フロイト伯爵令嬢のご婚約者はいつ見ても美しい容姿をしていらっしゃいますわよねぇ…!夜会でお見かけするたび、羨ましいと思ってしまいますの…!」

「だけどそれがわたくしの悩みでもありますのよ。周りの女性が放っておきませんから。」

「あら!見つめるくらいよろしいのではなくって?」

夫人や令嬢たちはきゃらきゃらと笑いながら話しているが…純粋に会話を楽しんでいる様には思えない。

「でもライズ卿程ではないわね。」

「ライズ卿は別格だったものねぇ!」

「ルシア様は幸運でしたわね。」

「ええ、陛下のお優しい心遣いに感謝すべきですわ。」

「陛下の子より先にライズ卿の子を授かるだなんて…ねえ。人って見掛けによらないって本当ね。」

「だけどルシア妃…いえ、ルシア様のお気持ちも分かりますわ。
大国の王に小国の王女が嫁ぐのも普通でしたら有り得ませんものね。
陛下に嫁ぐだなんて考えただけで恐れ多いですわ。」

「ああ、申し訳ありません!
妃殿下の前でこのような話題を…!」

瞬間、これまでサイカがどんな言葉を受けてきたかを悟った。
これまでもあのような不快な言葉でサイカを傷付けたのか。
直接的な言葉は無いがそれでも意図がすぐ分かるような言葉の数々でサイカを笑い者にしたのか。
余計な争いを起こさぬよう耐える優しいサイカを尻目に、あのような嫌な笑みを向けていたのか。
夫人や令嬢たちに沸々と怒りが沸いてきたその時、サイカの穏やかな声が聞こえた。

「別に構いませんけど。」

『え…?』

サイカのその声は本当に穏やかな声で、夫人や令嬢たちの言葉など何も気にしていない…そんな気さえした。

「気にならないと言えば嘘になりますけど、でも…陛下がどれだけ私を愛して下さっているか、よく知っていますから。」

『……。』

「どれだけ深く愛してくれているか。
毎日強く実感しているんです。
陛下の愛を実感するたび、私はとても嬉しくて…この人の妻になれて良かったと幸せを噛み締めるんです。」

「あ、あの、妃殿下…」

「従来通りであれば、妃は陛下の訪れを部屋で待つと私もそう習っていました。
だけど陛下は私に、陛下の寝室で眠るよう言いました。
嬉しかった…だって、私も毎日陛下と一緒に眠りたいと思っていたから。」

『……。』

「一日の終わりにはお休みなさい。
一日の始まりにおはようと、大好きな陛下に言いたいと思っていたから。
陛下の言葉は私の願いでもあって、だからとても嬉しくて堪らなかったの。
それに、陛下にとって私は特別なんだってすごく伝わって…それも嬉しくて堪らなかった。」

「で、でも、…妃殿下は、陛下とご一緒で苦労されたりは…。」

「どうして?私、陛下が好きです。大好きです。夫を、マティアスを心から愛してる。
あの人の何もかもが好きなの。容姿だって私は大好き。
あの人に愛されて、私は心から幸せ。」

『……。』

「私は逆にアーノルド子爵夫人は勿体無いことをしたと思います。それからちょっと嫌な言い方かも知れないけれど、夫人がアーノルド子爵を好きになってくれて良かったとさえ思ってる。
陛下の沢山ある魅力的な所を、彼女が知らなくて良かったって。
だって嫉妬しちゃうもの。皆さんも私の気持ちが分かるでしょう?大好きなひとを独り占めしたい気持ち。」

『…え、ええ、』

『よ、よく、分かりますわ…。』

それからはサイカの独断場だった。
恋する乙女のように愛らしく頬を赤らめ、瞳を輝かせながら俺への思いをこれでもかと語るサイカを、夫人や令嬢たちは顔を引きつらせながら聞いている。

『陛下と過ごす時間はあっという間に過ぎてしまうの』

『長く一緒にいられた時はとても嬉しい』

『毎日胸がときめく』

俺の事をとても愛している、そのサイカの気持ちが強く伝わってくるのか、夫人や令嬢たちの引きつった表情は次第に照れたようなものへ変わっていた。
きっとこれまで不快な思いをしていただろう。
嫌な思いをしていただろう。
けれどサイカはただ落ち込み、悲しんでいるばかりの女ではなかった。そのことを思い出した。
愛らしく美しく、可愛く、優しい女だ。
そして弱くて強い女だ、サイカは。
夫人や令嬢たちに伝えている言葉はサイカの本心だ。適当な言葉でも意趣返しの為の言葉でもない。
サイカが俺を心から思い、愛してくれているその感情が伝わる言葉だ。

伝わるから、こんなにも嬉しい。
何よりも愛しい女から俺はこんなにも愛されているのだ。
体中に熱がこもるのが分かる。
鼓動は跳ねるように勢いを増し、上手く呼吸すら出来ない。
今の自分が人に見せられるような表情ではない事が分かる。
口許と目元が勝手に緩み、ニヤついてしまう。
幸せだと叫びたい気持ちを抑えるように口許を手で隠せば自分の顔が思った以上に熱く感じた。

「……全く、これだから堪らない…ますます深みに嵌まっていくではないか。」

望むところだ。
サイカになら一生振り回されても構わない。
高揚しながらその場を後にした。


「陛下、ご報告致します。」

「聞こう。…どうしたヒルダ。いつも変わらない表情が何処か楽しそうなものに見えるぞ。」

「…いえ、そんなことは……いえ、そうですね…改めて妃殿下を…心から敬愛致しましたので。恐らくそういった気持ちが出てしまったのかと。…陛下の前で申し訳御座いません。」

「構わん。それで?今日は妃のことでどんなことがあったのだ?」

「妃殿下は本日も偶然を装ったベリス子爵にお会いしました。」

「またか。で、ベリスはサイカに何と?」

「同じ言葉です。お世継ぎのこと、陛下の容姿のこと。陛下と妃殿下…ご夫婦の事情について色々な事を。」

「…サイカは耐えていたか。」

「………、」

「ヒルダ?」

「コホン。…申し訳御座いません。報告を続けます。
陛下と妃殿下に対し無礼な発言をなさったベリス子爵に対し…妃殿下は、……………」

「!!」

普段表情の変わらないヒルダがまるで笑いを堪えるように。
その報告には俺も笑わずにいられなかった。

『何度もこのような事を妃殿下にお伝えするのは大変心苦しい。ですが私は心配しておるだけなのです。
私だけではありませんぞ。
この国の皆がレスト帝国の100年先の安寧を願っておるのです。
ルシア王女のお気持ちも痛い程分かりましたとも。あの方は陛下と過ごす事を嫌がっておりました。それも陛下の見目では致し方ないこと。そこで妃殿下、私から提案があるのですが『ご心配ありがとう、ベリス子爵。
けれど心配するならどうか、協力して頂きたいの。他の方にもそう伝えて下さいますか?』

『…はい?』

『その、…これは私の我が儘なのですが…暫くはまだ陛下と二人で過ごしたいのです。
陛下との子は勿論欲しい。陛下の子を生みたい。だって愛するひととの子です。生みたいに決まってます。
でも、まだ暫くは二人の時間を過ごしたい。…まだ私だけの陛下、陛下だけの私…その僅かな時間を過ごしたいんです…。』

『………は、』

『…そうですね…。それこそ、もっと陛下と一緒に過ごす時間が多く取れれば…その分、赤ちゃんも早く授かれるかも知れません。心配だと仰るなら陛下と長く一緒に過ごせるように計らってくれませんか?
それが出来ないなら…見守ってくれると嬉しいです。』

そう、とてつもなく美しい笑顔で言い切ったサイカにはベリス子爵の嫌味も出なかったと言う。

「ははははははっ…!!」

「妃殿下の美しい笑顔にベリス子爵は惚けておりました。反論や嫌味を伝えるのも忘れていたようで御座います。
最後に妃殿下が“お願いしますね”と可愛らしく伝えますともう顔を真っ赤にされて……その後の事は分かりかねます。」

「ははははははっ!そうか、あのベリスが黙ったか…!!」

本当にサイカには驚かされる。
ベリスは一体どんな気持ちでサイカの言葉を聞いていたのか。
容姿の事があって俺を見下してきたベリスは余程悔しいに違いない。
男として格下に思っていた俺があの特別美しく愛らしいサイカに特別に思われ愛されている。
サイカから直接言葉を聞いて、さぞ悔しいに違いない。
サイカを公の場で紹介してから恐らくずっと、ベリスのような者たちは俺の一方的な愛情と決めつけていたことだろう。
女は演じる生き物だと昔誰かが言っていた。
サイカは俺を思っている振りをしているだけなのでは、きっとそうだと決めつけていたに違いない。

貴族たちとの付き合いを考え、サイカは不快に思いながらも我慢していただろう。
我慢をせずともサイカのやりたい様に、言いたい様に言ってくれればいい。
何故なら、サイカが怒るのには意味があるからだ。
サイカは理不尽に怒ったりしない。何かがあるから怒る。
意味もなく人を注意したり指摘したりもしない。
そこに意味があるからそうするのだ。
機嫌に左右されたりだとか、気に入らないからだとか、そういった事で誰かに怒りをぶつけたりしない、そういう人間性であると俺は十分過ぎるほど知っている。
その日の夜、まったりとした夫婦の時間を過ごしていると、サイカから話があった。

「あのねマティアス。」

「ん?」

「事後報告になっちゃうんだけど聞いてくれる?」

「構わない。」

サイカはやはり、俺の立場や俺の下で働く貴族たちとの関係性を気にして我慢していた事があったと俺に伝えてくれた。
ベリス子爵の件がそうだ。
夫人たちや令嬢たちは俺の容姿について直接的な言葉で話さず遠回りな言い方だった為、怒るタイミングを伺っていたらしい。

「好きな人の事を悪く言われるのはすごく嫌。それならまだ私自身の悪口を言われた方がいい。
夫人や令嬢たちがボロを出せばすぐ怒ってやるんだから!って思ってたんだけど…。」

「けど?」

「考えたら、やり返すのは怒るのだけじゃないかなって。」

「例えば?」

「私がね、マティアスと一緒にいてすっごく幸せなんです~!って自慢すれば、それはそれでやり返した事にならない?この幸せを皆にも分けてあげたいくらいって!
実際にすごく幸せだもの。」

「ははは!」

「だから次があれば盛大にノロけようって思ってたの。
私がどれだけ幸せか、マティアスを愛しているか、もう聞きたくないっていうくらい話そうと思って。」

「ふ、ははっ!それで?結果はどうだった?」

「達成感でいっぱい!もうスッキリしちゃった!それからは何も言って来なかったです。
ベリス子爵からもね、色々言われてたんだけど。
そんなに世継ぎが必要ならもっとマティアスと過ごせるように時間を下さい的な事を伝えておきました!」

「ははははははっ…!」

「そしたら黙っちゃった。」

「はははは、く、ははっ!…腹が…!」

「そんなに笑う?」

「ははっ、ああ…、…サイカ、」

「はい。」

「よくやった。」

「でしょ?」

夫人や令嬢たち、そしてベリスも何も言えなかったのは当然の反応だろう。
そしてサイカが怒ったり注意したりするよりもより効果的だったに違いない。

俺の妃は最高に愛らしいのは勿論のこと、最強でもあったのだなとそう思わずにはいられなかった。
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