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116 お泊まり&デート リュカ終
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サイカと出会ってからずっと、僕の人生は嬉しい事ばかりだ。
サイカと出会ってからずっと、僕の人生は幸せな事ばかりだ。
今日もまた実感した。昨日もそうだ。ずっとずっとそうだ。
僕が好きになった女、僕の恋人、僕の婚約者。
そうして少しずつ僕とサイカの関係が変わっても、僕が幸せだという事は変わらない。
いいや、一昨日より昨日、昨日より今日と、僕の幸せは重なり、積もっている。
だけど幸せばかりだと、やっぱり不安にもなるものだ。
「お二人がまた来て下さるのを、村の者一同、心よりお待ちしております。」
僕は僕の罪悪感から。
村の者たちは少しの勘違いから。
僕と村の者たちの間ですれ違いがあった。
まあ、すれ違いでもなく僕にしたら恨まれていても仕方ないと思っていたんだが。
きっかけはいつだってサイカが作る。
些細なきっかけだとしても、それが後々、いつもいい方向へ変わっていくんだ。
本当に得難い女だと思う。
いつもいつも、何でもない日常の中でも、そう思う事が多々ある。
もしもサイカと出会えなければ、今の僕はどうなっていただろうか。
ふとした時にそれを考える事もある。
例えばそれは、“夢を見ているんだ”とそう思っている時に多い。
きっと何も変わらず、あの屋敷で過ごしていただろう。
父や家族たちと決別する事なく、父が死ぬまで僕は、ただやる事だけをやる、そんな人形のように日々過ごしていただろう。
母も狂ったままで、きっともっと酷くなっていっただろう。
そういう“今”もあったのだと思うと、恐ろしくなる。
今は現実だろうか、それとも僕の都合のいい夢なのだろうか。
分からなくなる時がある。僕は決して強くない。弱い人間なんだと理解している。
だから、こんな事を思ってしまうんだ。
幸せじゃなかったから、突然降ってきた幸せに今も、少なからず戸惑っている。
村から屋敷へ戻った僕はすぐにサイカを抱いた。
喜び、戸惑い、色んな感情のままサイカを抱いた。
避妊薬を飲み切ったサイカをベッドに押し倒し、少し乱暴に抱いてしまった。
今ある温かさが夢じゃなく、現実だと実感したくて。
この温かさも喜びも、幸せも、この先も僕の努力次第でずっと続いていくものだと、そう実感したくて。
「は、…サイカ、」
「ん、ん、…う、ん、…だい、じょうぶ、…いるよ、りゅかっ、…わたし、ここに、」
何度出しても終わらない。
何度出しても満足しない。
きっと、離れていた間は酷く不安だったからだ。
サイカの気持ちが離れていないか。ちゃんと僕は、サイカの恋人のままなのか、不安だったからだ。
マティアスだけでいいと思われたらどうすればいい。
マティアスだけで十分だと、サイカの気持ちが変わったら。
だって僕の父がそうだったんだ。
新しい女を妻にして、母には一切目を向けなくなった。
それを近くで見ていたから、僕は恐れている。
父とサイカは違う。そんな事分かっている。だけど、人は簡単に心変わりするから。
僕じゃない誰かの心まで、僕には分からないから。
僕はサイカの心の全てを分からないから、だから不安なんだ。
マティアスがいる。ヴァレリアがいる。カイルがいる。サーファスもクライス侯爵だって、サイカの周りにはいる。
僕一人がいなくたって、何も、サイカにとっては何も、影響はないんじゃないか。
そんな事を思ってしまう僕がいる。
「……りゅか。」
「……。」
「ねぇ、りゅか…。思ってることは、言わないと……伝わらないよ…?
どうして、そんな顔、してるか…言わないと、何も、してあげられない…。
……どうしたら、笑ってくれるかなって、思っても……分からないと、出来ないよ…。」
こんなみっともない不安を、ぶつけてもいいのか。
それだけじゃない。僕はサイカの前で、格好付けていたいんだ。格好いい僕でいたいんだ。強い僕でいたいんだ。
それは僕の自尊心。男の自尊心。好いた女がいる男なら誰でも持っている小さな自尊心。
「教えてリュカ…。今、何が不安…?」
だけど、サイカは簡単に僕の自尊心を崩す。
いつだって格好いい僕でいさせてくれない。
いつだって強い僕でいさせてくれない。
サイカの前じゃ、僕はただの男、ただの一人の人間になる。
恥ずかしくて、悔しくて、でも嬉しくて。
母のような、姉のような、妹のような、でも、恋人としての大きな愛情が伝わるたび、僕はどうしようもなくサイカに甘えたくなる。
愛する女に、心も体も包んで欲しくなるんだ。
「…僕は、お前に必要か…?
僕はお前がいなくなったら、狂う自信がある。
でもお前は、きっとそうじゃないんだ。」
それが嫌だ。僕がいないと生きていけない、…そう、なって欲しい。僕がそうであるように、お前にもそうなって欲しい。
何て我が儘だろう。幸せなのに、十分過ぎる程幸せなのに、まだ求めている。
「…僕がいなくなっても、お前にはマティアスがいる。
ヴァレリアがいる。カイルがいる。恋人じゃないがサーファスがいる。クライス侯爵がいる。
僕がいなくなっても、お前にはまだ愛する誰かがいる…。
お前が僕を見なくなったら、僕はどうやって生きていけばいい…?きっと生きていけないから、僕はその時…死を選ぶだろうさ。」
幸せになりたいとずっと思っていた。
人並みの幸せでいい。当たり前の幸せでいい。些細な幸せでいい。
だけどこの幸せは、僕にとってもの凄く大きなものだった。
得たいと思ったもの以上の幸せが僕の手の中に下りてきて、今度は失う事をずっと恐れている。
どこまでも自分勝手、身勝手だ、僕は。
憂鬱な気持ちのまま沈んでいると、サイカが僕の両頬を強く叩く。
「それ以上は怒りますよ。私だって、怒る時は怒るんですから。リュカがいなくなったら?そうなったら私も、死んでますねきっと。
立ち直る事もあるかも知れません。皆に支えられて。だけどそれはすぐじゃない。絶対。
確かに私にはリュカだけじゃない。」
「……ああ。」
「だけど!リュカがいない人生は考えられない!
リュカがいる、皆がいる。だから私は生きていける!
誰か一人でも欠けたら、きっと私は私でなくなる!
何が不安ですか?他に、何が不安?
前、リュカが私に言いましたよね。私がリュカを捨てたら、関心が無くなったら狂うって。」
「……言った。」
「間近でお義母様を見て来て、今は気持ちがよく分かるって言ってましたよね?」
「…言った。……父に見向きされなくなった母の気持ちが、今ならよく分かると…。
愛する人に、愛されない…苦しみが、母を狂わせた。
僕もきっと、狂うと…。」
「なら私はリュカが不安に思った時にこうして抱き締めて安心させます。
夢じゃないし、今が現実だし、私がリュカをどれだけ愛しているか、不安になるたびに伝えて、私の全部で伝えて、リュカに信じてもらうしかない。」
「…信じてないわけじゃないんだ。」
「分かってます。
誰だって、簡単にトラウマは乗り越えられない。
すぐ乗り越える人だったいれば、ずっと、長い間苦しむ人もいる。
それが些細な事じゃなくて、リュカの心の中で一番占めていた事なら尚更。簡単じゃない。」
「……。」
「でもそれはリュカのせいでもないんです。
リュカが今不安に思っている事は、ずっとリュカが苦しんできた事だから。
今私がこれから先もずっとリュカを愛してるって言ったって、きっとリュカは心から信じる事が出来ない。
だって、ずっと身近で見てきたものがあるから。」
「……。」
「だからこの先もずっと伝えます。
リュカを愛してるって、リュカがいないと、生きていけないって。
そういうのが積み重なって、乗り越えられる事もある。
だからリュカ、リュカは不安になったら言って。今、不安だって、私に伝えて下さい。そうしたら私、リュカを抱き締めます。会った時、会えなかった分抱き締めて、私の気持ちを伝えますから。」
「……約束してくれるか…?」
「約束します。私、ずっとリュカの傍にいたい。
恋人に、奥さんになりたい。
その時その時の気持ちを伝えるって約束します。
後悔したから。もう後悔しないって誓ったもの。お父さんとお母さんに。
二人に伝えられなかった事、沢山あるから。沢山後悔したから。同じ後悔はしない。伝えたい時に伝える、そうして生きていくって決めたから。」
ああ、好きだ。
お前が好きだ。好きだ、好きだ、好きだ。大好きだ。
大好きで、こんなにも愛しい。愛してる。愛している。
僕が好きになった女、僕の恋人、僕の婚約者で未来の妻、僕の、たった一人の女神。
サイカがただの、一人の人間だってちゃんと分かっている。
だけどやっぱり、サイカは僕の女神なんだ。
この世のどこに、僕の全てを理解しようとしてくれる女がいるだろう。
この世のどこに、僕を愛して、僕に心を砕いてくれる他人がいただろう。
どこにもいなかった。
ダッドもルドルフも勿論僕を支えてくれた。
だけどやっぱり、僕の人生丸ごとという訳にはいかない。
仕事の面で支えてくれた、それだけでも有難いと思ったのは嘘じゃない。
家族でさえ、他人だった。母親でさえ、自分を守る事に必死だった。
それが悪い事とは思わない。けれど、ほんの少しでも僕を見てくれていたなら…。
どこにもいない。サイカみたいな女はこの世界のどこにもいない。
サイカは僕の、たった一人の女神だ。
全てを捧げてもいいと思える、女神だ。
「好きだ…。僕はお前が大好きだ。
お前を、心から愛している。
抱いていいかサイカ…今度は、不安をぶつけるんじゃなくて、愛しいと思う気持ちのまま、お前を抱いてもいいか…?」
「うん。……私も、リュカを愛してる。
大好きリュカ。今度はちゃんと…愛してね。」
「ああ……勿論だ。
僕のお前。僕のサイカ。僕の、可愛い女。」
サイカは簡単に沈んだ僕の心を救う。
馬鹿にする事もなく、面倒くさがる事もなく、当たり前のように同じ所まで落りてきて、どうしたのと言って手を取ってくれる。
サイカがいるから僕は強くなる。弱さを押し込めて、強い僕になろうと思える。
サイカがいるから僕は生きる。生きていこうと思える。
僕の人生を豊かにしてくれるのも、いつだってサイカだ。
サイカがいるから、僕は僕の人生を素晴らしいものに、豊かにしたいと強く思えるのだから。
「……ここ、気持ちいいか…?」
「は、ぅ、……きもち、いい…、」
「…そうか、……僕も気持ちいい。
……愛する女に包まれて、喜んでるんだ…。
愛してる女を抱いて、喜んでるんだ…僕も。」
「あ、…っ、ん…!」
「はは、…今、きゅって締まった…。
愛してるって言われるのが好きなんだな。…知ってたけど。」
「…ん、すき……だって、うれし、……だいすきっ…」
「………ああ、もう…!何なんだお前、いつもいつも可愛くして…!」
何度も口付けて、何度も名前を呼んで、何度も愛していると伝える。
サイカも僕の愛に応えるように口付けに応えて、僕の名前を呼んで、好き、大好き、愛してると舌足らずになりながら伝えてくる。
なんて可愛いんだ。僕のサイカ。なんて愛しいんだ。僕のサイカ。
好きになって、恋人になって、愛して、愛して、狂おしい程サイカを愛してしまった僕はもう二度と、以前のような僕には戻れない。
変えたいと思いながらも自分の人生を諦めていた頃の僕には戻りたくもない。
愛を知って、色んな事が僕の中で変わった。
不安や恐れも、これからだって感じるだろう。
けれど今の僕は、サイカと一緒にいる為なら無様になろうとも足掻くんだ。
失えないとみっともなくすがって、しがみつくんだ。
「…いつか、僕の子を孕んでくれ。
一番はマティアスだろう。そうでないといけない。
でも、マティアスの子を生んだら…次は僕だ。」
「…ん、うんっ、…りゅかの、あかちゃん……ほしい…!」
「その時僕は、容赦なくっ…お前を、抱くからっ…。
一晩中、朝も昼も夜も関係ない…!
お前の中を、僕の子種で汚して、孕むまで何度だって抱くっ…!
そうした…夫婦の、当たり前の幸せを、家族のっ…は、…当たり前の幸せも、…僕に、教えてくれ、サイカ…!」
「んっ、…はぁ、…あんんっ…!!
ん、んっ…!うんっ、…うん、…は、…りゅか、…りゅか、りゅか、…すき、…すき、だいすき、…だいすきっ…!」
「ああ、…ああ…!
僕も、好きだ…!お前が好きだ、大好きだっ…!
愛してる、愛してる、僕のサイカ、僕のお前、……は、っ、…出すから、お前の中に、出すからなっ、」
「あ、ああ、ん、んっ、だして、…ぎゅって、…ぎゅってしながら、キス、きすもしながら、だして、…あいしてるって、いいながら、あんっ、ん、だして、りゅか、りゅか…!」
「ん、…ちゅ、………あいしてるっ、…サイカ、あいしてるぞ…!
僕には、おまえだけ、…僕の女は、…このさき、ずっと、はっ、…お前だけだ、サイカ…!それを、よく、覚えておけ…!!」
力の限りサイカの華奢な体を抱き締め、サイカに口付けながら射精の体勢に入る。
サイカの膣の動きを見て、一緒に果てる事が出来るように。
死んでしまいそうな程の快楽が腰から背筋を這い、脳へ響く。
最後に愛する女の中の一番奥を突いて、そのまま両足に力を入れピンと伸ばしながら…僕はサイカの中に子種を出した。
どくんどくんと脈打ちながら、睾丸から竿を通り、サイカの中へと流れていく僕の子種。
気が狂いそうな快楽。このまま死んでしまうかもしれない、それくらいの快楽と多幸感、充実感。
サイカを抱く時はいつもそうだ。とんでもない快楽と多幸感で頭も心も、体も満たされる。
「……ちゅく、………はぁっ、」
「………あ、…ぁ、……りゅ、か、……りゅかぁ、」
唇を離すととろりと涎が糸を引いて垂れる。
蕩けた顔で、幸せそう顔をしているサイカを、僕の恋人を見下げるこの瞬間が好きだ。
理性も語弊力もなくなって、馬鹿みたいに甘えた声で僕の名前を呼ぶこの瞬間が大好きだ。
他の女とのセックスがどうかなんて分からないし知りたいとも思わない。
僕の初めてがサイカで本当に良かったと思う。
僕の初めてはサイカ。
セックスも、恋愛も、そして結婚も。
結婚して子供を生ませるのも、この先ずっとサイカ一人だけだ。
僕の人生は何て幸せなのだろう。
サイカと出会ってからずっと、僕の人生は幸せな事ばかりだ。
今日もまた実感した。昨日もそうだ。ずっとずっとそうだ。
僕が好きになった女、僕の恋人、僕の婚約者。
そうして少しずつ僕とサイカの関係が変わっても、僕が幸せだという事は変わらない。
いいや、一昨日より昨日、昨日より今日と、僕の幸せは重なり、積もっている。
だけど幸せばかりだと、やっぱり不安にもなるものだ。
「お二人がまた来て下さるのを、村の者一同、心よりお待ちしております。」
僕は僕の罪悪感から。
村の者たちは少しの勘違いから。
僕と村の者たちの間ですれ違いがあった。
まあ、すれ違いでもなく僕にしたら恨まれていても仕方ないと思っていたんだが。
きっかけはいつだってサイカが作る。
些細なきっかけだとしても、それが後々、いつもいい方向へ変わっていくんだ。
本当に得難い女だと思う。
いつもいつも、何でもない日常の中でも、そう思う事が多々ある。
もしもサイカと出会えなければ、今の僕はどうなっていただろうか。
ふとした時にそれを考える事もある。
例えばそれは、“夢を見ているんだ”とそう思っている時に多い。
きっと何も変わらず、あの屋敷で過ごしていただろう。
父や家族たちと決別する事なく、父が死ぬまで僕は、ただやる事だけをやる、そんな人形のように日々過ごしていただろう。
母も狂ったままで、きっともっと酷くなっていっただろう。
そういう“今”もあったのだと思うと、恐ろしくなる。
今は現実だろうか、それとも僕の都合のいい夢なのだろうか。
分からなくなる時がある。僕は決して強くない。弱い人間なんだと理解している。
だから、こんな事を思ってしまうんだ。
幸せじゃなかったから、突然降ってきた幸せに今も、少なからず戸惑っている。
村から屋敷へ戻った僕はすぐにサイカを抱いた。
喜び、戸惑い、色んな感情のままサイカを抱いた。
避妊薬を飲み切ったサイカをベッドに押し倒し、少し乱暴に抱いてしまった。
今ある温かさが夢じゃなく、現実だと実感したくて。
この温かさも喜びも、幸せも、この先も僕の努力次第でずっと続いていくものだと、そう実感したくて。
「は、…サイカ、」
「ん、ん、…う、ん、…だい、じょうぶ、…いるよ、りゅかっ、…わたし、ここに、」
何度出しても終わらない。
何度出しても満足しない。
きっと、離れていた間は酷く不安だったからだ。
サイカの気持ちが離れていないか。ちゃんと僕は、サイカの恋人のままなのか、不安だったからだ。
マティアスだけでいいと思われたらどうすればいい。
マティアスだけで十分だと、サイカの気持ちが変わったら。
だって僕の父がそうだったんだ。
新しい女を妻にして、母には一切目を向けなくなった。
それを近くで見ていたから、僕は恐れている。
父とサイカは違う。そんな事分かっている。だけど、人は簡単に心変わりするから。
僕じゃない誰かの心まで、僕には分からないから。
僕はサイカの心の全てを分からないから、だから不安なんだ。
マティアスがいる。ヴァレリアがいる。カイルがいる。サーファスもクライス侯爵だって、サイカの周りにはいる。
僕一人がいなくたって、何も、サイカにとっては何も、影響はないんじゃないか。
そんな事を思ってしまう僕がいる。
「……りゅか。」
「……。」
「ねぇ、りゅか…。思ってることは、言わないと……伝わらないよ…?
どうして、そんな顔、してるか…言わないと、何も、してあげられない…。
……どうしたら、笑ってくれるかなって、思っても……分からないと、出来ないよ…。」
こんなみっともない不安を、ぶつけてもいいのか。
それだけじゃない。僕はサイカの前で、格好付けていたいんだ。格好いい僕でいたいんだ。強い僕でいたいんだ。
それは僕の自尊心。男の自尊心。好いた女がいる男なら誰でも持っている小さな自尊心。
「教えてリュカ…。今、何が不安…?」
だけど、サイカは簡単に僕の自尊心を崩す。
いつだって格好いい僕でいさせてくれない。
いつだって強い僕でいさせてくれない。
サイカの前じゃ、僕はただの男、ただの一人の人間になる。
恥ずかしくて、悔しくて、でも嬉しくて。
母のような、姉のような、妹のような、でも、恋人としての大きな愛情が伝わるたび、僕はどうしようもなくサイカに甘えたくなる。
愛する女に、心も体も包んで欲しくなるんだ。
「…僕は、お前に必要か…?
僕はお前がいなくなったら、狂う自信がある。
でもお前は、きっとそうじゃないんだ。」
それが嫌だ。僕がいないと生きていけない、…そう、なって欲しい。僕がそうであるように、お前にもそうなって欲しい。
何て我が儘だろう。幸せなのに、十分過ぎる程幸せなのに、まだ求めている。
「…僕がいなくなっても、お前にはマティアスがいる。
ヴァレリアがいる。カイルがいる。恋人じゃないがサーファスがいる。クライス侯爵がいる。
僕がいなくなっても、お前にはまだ愛する誰かがいる…。
お前が僕を見なくなったら、僕はどうやって生きていけばいい…?きっと生きていけないから、僕はその時…死を選ぶだろうさ。」
幸せになりたいとずっと思っていた。
人並みの幸せでいい。当たり前の幸せでいい。些細な幸せでいい。
だけどこの幸せは、僕にとってもの凄く大きなものだった。
得たいと思ったもの以上の幸せが僕の手の中に下りてきて、今度は失う事をずっと恐れている。
どこまでも自分勝手、身勝手だ、僕は。
憂鬱な気持ちのまま沈んでいると、サイカが僕の両頬を強く叩く。
「それ以上は怒りますよ。私だって、怒る時は怒るんですから。リュカがいなくなったら?そうなったら私も、死んでますねきっと。
立ち直る事もあるかも知れません。皆に支えられて。だけどそれはすぐじゃない。絶対。
確かに私にはリュカだけじゃない。」
「……ああ。」
「だけど!リュカがいない人生は考えられない!
リュカがいる、皆がいる。だから私は生きていける!
誰か一人でも欠けたら、きっと私は私でなくなる!
何が不安ですか?他に、何が不安?
前、リュカが私に言いましたよね。私がリュカを捨てたら、関心が無くなったら狂うって。」
「……言った。」
「間近でお義母様を見て来て、今は気持ちがよく分かるって言ってましたよね?」
「…言った。……父に見向きされなくなった母の気持ちが、今ならよく分かると…。
愛する人に、愛されない…苦しみが、母を狂わせた。
僕もきっと、狂うと…。」
「なら私はリュカが不安に思った時にこうして抱き締めて安心させます。
夢じゃないし、今が現実だし、私がリュカをどれだけ愛しているか、不安になるたびに伝えて、私の全部で伝えて、リュカに信じてもらうしかない。」
「…信じてないわけじゃないんだ。」
「分かってます。
誰だって、簡単にトラウマは乗り越えられない。
すぐ乗り越える人だったいれば、ずっと、長い間苦しむ人もいる。
それが些細な事じゃなくて、リュカの心の中で一番占めていた事なら尚更。簡単じゃない。」
「……。」
「でもそれはリュカのせいでもないんです。
リュカが今不安に思っている事は、ずっとリュカが苦しんできた事だから。
今私がこれから先もずっとリュカを愛してるって言ったって、きっとリュカは心から信じる事が出来ない。
だって、ずっと身近で見てきたものがあるから。」
「……。」
「だからこの先もずっと伝えます。
リュカを愛してるって、リュカがいないと、生きていけないって。
そういうのが積み重なって、乗り越えられる事もある。
だからリュカ、リュカは不安になったら言って。今、不安だって、私に伝えて下さい。そうしたら私、リュカを抱き締めます。会った時、会えなかった分抱き締めて、私の気持ちを伝えますから。」
「……約束してくれるか…?」
「約束します。私、ずっとリュカの傍にいたい。
恋人に、奥さんになりたい。
その時その時の気持ちを伝えるって約束します。
後悔したから。もう後悔しないって誓ったもの。お父さんとお母さんに。
二人に伝えられなかった事、沢山あるから。沢山後悔したから。同じ後悔はしない。伝えたい時に伝える、そうして生きていくって決めたから。」
ああ、好きだ。
お前が好きだ。好きだ、好きだ、好きだ。大好きだ。
大好きで、こんなにも愛しい。愛してる。愛している。
僕が好きになった女、僕の恋人、僕の婚約者で未来の妻、僕の、たった一人の女神。
サイカがただの、一人の人間だってちゃんと分かっている。
だけどやっぱり、サイカは僕の女神なんだ。
この世のどこに、僕の全てを理解しようとしてくれる女がいるだろう。
この世のどこに、僕を愛して、僕に心を砕いてくれる他人がいただろう。
どこにもいなかった。
ダッドもルドルフも勿論僕を支えてくれた。
だけどやっぱり、僕の人生丸ごとという訳にはいかない。
仕事の面で支えてくれた、それだけでも有難いと思ったのは嘘じゃない。
家族でさえ、他人だった。母親でさえ、自分を守る事に必死だった。
それが悪い事とは思わない。けれど、ほんの少しでも僕を見てくれていたなら…。
どこにもいない。サイカみたいな女はこの世界のどこにもいない。
サイカは僕の、たった一人の女神だ。
全てを捧げてもいいと思える、女神だ。
「好きだ…。僕はお前が大好きだ。
お前を、心から愛している。
抱いていいかサイカ…今度は、不安をぶつけるんじゃなくて、愛しいと思う気持ちのまま、お前を抱いてもいいか…?」
「うん。……私も、リュカを愛してる。
大好きリュカ。今度はちゃんと…愛してね。」
「ああ……勿論だ。
僕のお前。僕のサイカ。僕の、可愛い女。」
サイカは簡単に沈んだ僕の心を救う。
馬鹿にする事もなく、面倒くさがる事もなく、当たり前のように同じ所まで落りてきて、どうしたのと言って手を取ってくれる。
サイカがいるから僕は強くなる。弱さを押し込めて、強い僕になろうと思える。
サイカがいるから僕は生きる。生きていこうと思える。
僕の人生を豊かにしてくれるのも、いつだってサイカだ。
サイカがいるから、僕は僕の人生を素晴らしいものに、豊かにしたいと強く思えるのだから。
「……ここ、気持ちいいか…?」
「は、ぅ、……きもち、いい…、」
「…そうか、……僕も気持ちいい。
……愛する女に包まれて、喜んでるんだ…。
愛してる女を抱いて、喜んでるんだ…僕も。」
「あ、…っ、ん…!」
「はは、…今、きゅって締まった…。
愛してるって言われるのが好きなんだな。…知ってたけど。」
「…ん、すき……だって、うれし、……だいすきっ…」
「………ああ、もう…!何なんだお前、いつもいつも可愛くして…!」
何度も口付けて、何度も名前を呼んで、何度も愛していると伝える。
サイカも僕の愛に応えるように口付けに応えて、僕の名前を呼んで、好き、大好き、愛してると舌足らずになりながら伝えてくる。
なんて可愛いんだ。僕のサイカ。なんて愛しいんだ。僕のサイカ。
好きになって、恋人になって、愛して、愛して、狂おしい程サイカを愛してしまった僕はもう二度と、以前のような僕には戻れない。
変えたいと思いながらも自分の人生を諦めていた頃の僕には戻りたくもない。
愛を知って、色んな事が僕の中で変わった。
不安や恐れも、これからだって感じるだろう。
けれど今の僕は、サイカと一緒にいる為なら無様になろうとも足掻くんだ。
失えないとみっともなくすがって、しがみつくんだ。
「…いつか、僕の子を孕んでくれ。
一番はマティアスだろう。そうでないといけない。
でも、マティアスの子を生んだら…次は僕だ。」
「…ん、うんっ、…りゅかの、あかちゃん……ほしい…!」
「その時僕は、容赦なくっ…お前を、抱くからっ…。
一晩中、朝も昼も夜も関係ない…!
お前の中を、僕の子種で汚して、孕むまで何度だって抱くっ…!
そうした…夫婦の、当たり前の幸せを、家族のっ…は、…当たり前の幸せも、…僕に、教えてくれ、サイカ…!」
「んっ、…はぁ、…あんんっ…!!
ん、んっ…!うんっ、…うん、…は、…りゅか、…りゅか、りゅか、…すき、…すき、だいすき、…だいすきっ…!」
「ああ、…ああ…!
僕も、好きだ…!お前が好きだ、大好きだっ…!
愛してる、愛してる、僕のサイカ、僕のお前、……は、っ、…出すから、お前の中に、出すからなっ、」
「あ、ああ、ん、んっ、だして、…ぎゅって、…ぎゅってしながら、キス、きすもしながら、だして、…あいしてるって、いいながら、あんっ、ん、だして、りゅか、りゅか…!」
「ん、…ちゅ、………あいしてるっ、…サイカ、あいしてるぞ…!
僕には、おまえだけ、…僕の女は、…このさき、ずっと、はっ、…お前だけだ、サイカ…!それを、よく、覚えておけ…!!」
力の限りサイカの華奢な体を抱き締め、サイカに口付けながら射精の体勢に入る。
サイカの膣の動きを見て、一緒に果てる事が出来るように。
死んでしまいそうな程の快楽が腰から背筋を這い、脳へ響く。
最後に愛する女の中の一番奥を突いて、そのまま両足に力を入れピンと伸ばしながら…僕はサイカの中に子種を出した。
どくんどくんと脈打ちながら、睾丸から竿を通り、サイカの中へと流れていく僕の子種。
気が狂いそうな快楽。このまま死んでしまうかもしれない、それくらいの快楽と多幸感、充実感。
サイカを抱く時はいつもそうだ。とんでもない快楽と多幸感で頭も心も、体も満たされる。
「……ちゅく、………はぁっ、」
「………あ、…ぁ、……りゅ、か、……りゅかぁ、」
唇を離すととろりと涎が糸を引いて垂れる。
蕩けた顔で、幸せそう顔をしているサイカを、僕の恋人を見下げるこの瞬間が好きだ。
理性も語弊力もなくなって、馬鹿みたいに甘えた声で僕の名前を呼ぶこの瞬間が大好きだ。
他の女とのセックスがどうかなんて分からないし知りたいとも思わない。
僕の初めてがサイカで本当に良かったと思う。
僕の初めてはサイカ。
セックスも、恋愛も、そして結婚も。
結婚して子供を生ませるのも、この先ずっとサイカ一人だけだ。
僕の人生は何て幸せなのだろう。
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