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40 侯爵領への旅路
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体を揺らす振動。
温かい何かが頬を労るように触れている。
私は夢を見ていた。
『大人しくしろ。俺が、たんと可愛がってやるぞ?』
ふへへ、と嫌な笑みを浮かべる、太った…いや、巨漢。
閉じているのか開いているのかも分からない目はいやらしく垂れ下がって、鼻も伸びている。
重たい体が私の上に乗って、息苦しい。
湿った手で触れられ、気持ち悪い。
『すぐ良くなる。』
ふざけんじゃない!!あんたみたいな男!!
死んでも嫌だっつーの!!
夢の中の私はぼかぼかと男をこてんぱんにしていく。
ぶよぶよとした肉の塊にこれでもかと拳を叩きつけ、痛みに苦しむ男を見てふんぞり返る。
『ざまあみろ!女を舐めるからこうなるのよ!』
「この、女の敵が!!」
そして自分の声で目が覚めた。
「…サイカ?」
「……あれ?」
がたがたと音がしている。その音に合わせて、振動が体に伝わっていた。
「…ふ、……夢を見ていたのか?」
「……マティアス様…?」
「こら。マティアス、だろう?」
「…???」
むくりと、ゆっくり起き上がる。
マティアス様の膝を枕にして私は眠っていたらしく…馬車の中にいる事にも気付いた。
「…え……あれ?……馬車?」
「そうだ。」
「…月光館じゃない……外!?」
「ああ。月光館は移転する事になった。
その間、サイカには別の場所で生活してもらう…そういう話になってな。」
「……別の場所…?」
「ああ。今向かっているのは…帝都から離れた場所にあるクライス侯爵領だ。帝都からだと…二日かかる場所にあるな。
…それより、何処か痛んだりする所はないか?」
「……ええと、はい。……だいじょう……つ、…あれ、膝が…」
「……ああ、左足だな。固定をしてもらっている。暫くは痛むだろうと…医師の見立てだ。完治は一月かかるだろうとも。」
「…あ。…もしかして…あの時に…?」
思い当たる節があった。
何せあの屑野郎はかなり重かったので。ええ。それはもう。
多分、何かの下敷きになるってああいう感覚なんだと思う。
男が勢いよく私に乗り掛かってきた時、一瞬左足が痛んだ覚えがあるので恐らくその時に痛めたのかも知れない。
それから私の両手も包帯が巻かれていた。
「……サイカ。」
隣に座っていたマティアス様が、そっと労るように私を抱き締める。
「…よく、頑張ったな。よくぞ、抵抗してくれた。
恐ろしい思いをしただろう。辛い思いを。
キリムも、娼館の女たちも皆無事だ。安心していい。」
「…マティアス…」
「もう大丈夫だ。もう二度と、サイカをあんな目には合わせない。
あの男には厳しい罰が下るだろう。
そなたを傷付け、悲しませた男だ。そなたを、サイカを泣き寝入りだけはさせない。」
「……そう、ですか…。…私もそうですけど…オーナーも、怪我を負わされたし、リズお姉様は壁に体を打ち付けてました。
皆だって、どれだけ恐い思いをしたか。…でも、罰を受けるなら…。」
「ああ。必ず。…必ず、あの男が仕出かした罰は受けさせる。
必ずだ。」
「…なら、いいです。」
マティアス様に抱き締められ、心から安堵する。
あの時も、この腕の中が心底安心した。
この場所は一番安全だと、そう思えた。
「そなたがこれから暫く住む場所はとても良い所だ。
クライス侯爵領地は自然豊かな場所でな、まあ、その領主は少し厳つい顔と体をしているが…優しい男だ。名をディーノ・クライス。俺の友で、本当はディーノと一緒に向かう予定だったのだが…気を使ってくれたらしい。一足先に帰り、サイカの部屋と必要な物を準備すると言っていた。」
「マティアスの…」
「ディーノは俺の師でもある。勉学のな。
国を治めるに必要な経験をさせてくれた。色々な事を教えてくれた男だ。
年は俺の二十上になる。喋りは上手い方ではなくどちらかと言えば寡黙な方だ。…だが、慣れればよく話すし酔えば面白いくらい話す。」
「良い方なんですね。」
「ああ。きっと、自然豊かな環境の元、心穏やかに過ごせるだろう。
…サイカ。辛ければすぐ伝えてくれ。離れているが必ず駆けつける。
サイカが辛ければこうして抱き締め、眠れなければ共に眠る。
今回の事、そなた自身が大丈夫だと言っても…ふとしたきっかけで塞ぎ込む事もあろう。
そういう時、ちゃんと辛いと言ってほしい。頼ってほしい。
ディーノに俺に会いたいと伝えてくれれば、俺はそなたの元へ駆けつける。」
「…マティアス…。そんな、…マティアスは十分、良くしてくれています。
あの時もマティアスにこうして抱き締められて、どれだけ安心したか。今だってそうです。…すごく、ほっとする。
だけど、マティアスにだって仕事があるでしょう?マティアスの立場にある、大事な仕事が。」
「ああ。勿論、疎かにはしない。約束する。その上で駆けつける。
だからサイカも約束してくれ。
…俺を、そなたが悩み苦しんでいる時に何も出来ない男にしてくれるな。」
「マティアス…ええ。約束します。ありがとう、マティアス…。」
格好いいなと思う。
顔や容姿の事だけでなく、何というか、男としても。
立場があって、大変な仕事もあって。
なのに私を気にかけ、私が苦しんでいたら駆けつけると言ってくれたマティアス様が格好いい。
男気があるというか、男らしいというか。…こういう男と一緒になればきっととても幸せにしてくれるだろう。
「ディーノの屋敷まではあと一日は掛かる。
今日は一旦宿を取って明日の朝出発だ。
旨いものを食べて、今日は共に眠ろう。サイカが恐ろしい夢を見ないよう、一晩中抱き締めておくから。」
じんわりと胸が温かい。好きだなと、そう思う。
それから暫くして、馬車はある町の宿の前で止まった。
足を痛めているので私はマティアス様に抱き抱えられ馬車を降りる。
馬車の入り口から縦、両サイドに護衛をしていた七人騎士が並び………私を凝視していた。
その内一番手前に並んでいた騎士がマティアス様に話しかける。
「陛下。こちらの宿でお休み下さい。部屋は一部屋でとのご命令でしたので、その通りに致しました。
幸い客も数人しかおらず、本日貸し切りにしてもらうよう頼み、相応の金銭も渡しておきました。」
「ああ。……サイカ、この男は俺の護衛と騎士団の団長をしている男でダミアンと言う。ないとは思うが…万が一、俺がサイカの側を離れた場合にはこの男を頼るといい。騎士団最強の男とも言える。」
「…ダミアン様ですね……分かりました。」
「ダミアンと申します。
…サイカ嬢は必ずお守り致します。どうぞご安心下さい。」
「此方こそ、お手数をお掛けしますが…宜しくお願いします。」
私を見て一瞬だけ目を見開いた団長さんはその後何もなかったように微笑んだ。
うん、背の高いぽっちゃりさんだ。団長さんは。
騎士団の団長と言うことは…カイル様の上司だ。団長がとカイル様の話に出てくるあの団長さんか~と思うと何だか凄く…初めましてな感じがしない。そして感動している。
糸目ではあるけど全然いい。日本に普通にいそうな顔だし…それに、あの男とも全然違う。全く恐怖感はない。
団長さんも他の騎士も。
体が大きく太っていようとも、あの屑男とこの人たちは違うんだと実感出来た。少しの間だけど、仲良く出来れば嬉しい。
「では行こう、サイカ。
空腹は感じていないか?喉の渇きは?…軽く食べられるものを用意させよう。」
「お腹は大丈夫です。…少し、喉が渇いているので…お水を頂ければ嬉しいです。
…マティアス、重くないですか?」
「いいや全く。ほら、もっと寄りかかるんだ。気を使わなくていい。
身を任せてくれ。」
「は、はい。…お願いします。」
マティアスに抱えられたまま宿の部屋へ向かう。
宿は結構大きな宿で、部屋も広い部屋だった。
質素な部屋だったけどホテルでよく見るダブルサイズよりもう少し大きめのベッドがぽつんと置かれていた。
『…いやー……マジか。…なんだあの美女…カイルの言う通りマジで女神じゃねーか。美しすぎて直視出来ん。…カイル、よくあの女神と視線を合わせられるな…逆に尊敬するぞ…。』
『だ…団長、お、俺、体震えてます…』
『俺も……な、何なんですあの絶世の美女…本当に、これ、現実ですか…!?』
『…現実ならお迎えが近いのかも…。』
『う、嘘だろ、陛下、…花街によく行ってたの、あの女神に会いに…!?』
『って事は娼婦だよな?…え…?娼婦…?あの絶世の美女が…?あの女神が娼婦??いやいや、…いやいや!』
『陛下…羨ましい!!男として羨まし過ぎる…!!』
『…いや、俺は陛下もだが…カイルも……マジか。いやマジか!!』
マティアス様と私が宿の中へ入った瞬間、護衛をしてくれている騎士たちのこんな会話がなされていた事を私は知らない。
この日はマティアス様と一日、宿の部屋で過ごした。
食事も部屋に持って来てもらい、お風呂はなかったけどシャワーはあった。…シャワーというより、私の身長で胸の高さくらいの位置に付いてあるハンドルを捻ったらその更に上についてある大きめの蛇口から水が落ちてくる…という簡素なものだったけど。
因みに蛇口は上と下に二ヶ所あって、座って洗えるようにもなっていた。
そして当然のようにマティアス様に体を洗われた私。
マティアス様は衣服を着ていて、裸の私はただ椅子に座っているだけだった。
「…足と手の包帯を変える。傷薬と軟膏を塗るから、痛みがあれば言ってくれ。まあ、痛んでもどうする事も出来ないのだが…。」
「ふふ、それくらい我慢出来ますよ。」
「そうか。……この、細く小さな手で、必死に抵抗したのだな…」
私の両手を取り、目を閉じて傷のある部分に口付けるマティアス様。
小さな、本当に小さな掠れた声で“よくやった”とその呟きが聞こえ何だか誇らしい気持ちになる。
そう。頑張ったんだよ、私。あんな男に好きにされたくもなかった。
恐くて、それから気持ち悪さでいっぱいだったけど、頭にも来てた。
こん畜生と…ぼよんとしたボディにはダメージを与えられなかったけど、眉間が急所なのは世界が変わっても同じだった。
それからは眉間、鼻の下、顎と顔の急所を悉く攻め続けた私。…いや、急所とかそんな事考えてたわけじゃなくただ無我夢中だっただけだけど。
そうだよ、そうだ。私は必死に抵抗した。頑張った。…頑張ったんだ。
マティアス様に労られ、込み上げてくる誇らしさ。
それから悔しい気持ち、恐かった思い。
「…よくやった。よく、やってくれた。
後は任せろ。大丈夫だ。必ず、サイカの悔しい気持ちは晴らしてみせる。
…俺を信じろ、サイカ。」
「…あい、…ぐす。…はい、信じます。
私、頑張ったんです。頑張ったんですよ、マティアス…」
「ああ。その通りだ。そなたはよく頑張った。
自分を守ろうとよく、戦ってくれた。
俺はサイカ。そなたが誇らしいぞ。」
「……ふふ、…はいっ…やって、やりました…!」
「ああ、よくやった!
…それと…場違いな事を言ってもいいか…?サイカに口付けをしたいと思ったのだが……薬を塗った手に口付けたから……口の中がかなり苦い。水が欲しい。」
「ぷ、…ふふ、…あはは…!やだ、早く、水飲んで…!」
私、普通に笑えてる。楽しいと思える。
そのことに安心した。それから、私って結構図太いんだなとも思った。
マティアス様と何度もキスして、あやされながらその日は眠って。
何の夢も見なかった。熟睡していた証拠だ。もしかしたら夢は見ていたのかも知れないけど、覚えていないという事は大した夢でもなかったのだろう。
部屋で朝食を取って、私はマティアス様に抱えられ再び馬車へ。
「陛下、サイカ嬢、よくお休みになられましたか?」
「ああ、問題ない。サイカもぐっすりと眠っていたな。」
「はい。大丈夫です!騎士の皆様も休まれましたか?」
「御気遣い有り難う御座います。
我々は大丈夫です。」
「護衛も交代で仮眠を取らせているんだ。それに、この者たちは柔な体ではない。心配せずとも大丈夫だぞサイカ。」
「休めたのなら良かったです。
今日も、宜しくお願いします。」
「はい。お任せ下さい。」
そして再び感じる熱視線…。すごくじっと見られているのも何だか気まずくて…宜しくお願いしますという気持ちを込めてにこりと笑って頭を下げておいた。
『…め…女神…』
「?」
「サイカ、馬車の中に入るぞ。」
少しだけ不機嫌になったマティアス様は急いだように馬車へ乗り込む。
またがたがたと揺られながら、変わる景色を堪能した。
「ディーノ!」
「来たか。そろそろ着くと思って待っていたがタイミングが良かったな。
部屋の準備は整っている。……初めまして。俺はディーノ・クライスと言う。年はかなり上だがマティアスの友だ。
ああ、挨拶はそのままで結構。…体を労って欲しい。」
ディーノと名乗った男性はちょっと…というかかなり厳つい顔をしたイケメンだった。
強面顔のイケメン。体も凄く大きい。太ってるんじゃなく、がたいがいいイケメンなおじ様だった。
うん…素敵だ。
身長もカイル様より少し高い気がする。
180センチは超えているであろうマティアス様に抱えられていても、顔を上にあげないといけないって…どいいう事?
「御気遣い有り難う存じます。そして、この様な状態で申し訳ありません。私はサイカと申します。
…これから、沢山ご迷惑をお掛けしますが…どうぞ宜しくお願いします。」
「迷惑など。…私も、楽しみにしていた。何せこの屋敷は広いのに、使用人しかいないからな。
新たな住人が増えるというのはいい。我が家と思って、遠慮する事なく過ごしてほしい。」
「……。」
「…何だマティアス。俺の顔に何かついているか?」
「…いや。“私”と言うディーノを久々に聞いたから違和感がな…。
…正直変だぞ。その厳つい顔で自分を“私”と呼ぶのは。」
「…お前は生意気だぞ。昔はあんなに可愛い子供だったのに。
何故そんなに生意気になった。」
「成長したと言え。」
「…ふふ。本当に、仲がよろしいのですね!」
『…ふん。』
お互いがそっぽを向いた後、ディーノ様はマティアス様に近付き、私にも聞こえるように小声で話す。
「…マティアス。使用人たちには彼女が娼婦である事を伝えていない。
…それでいいな?」
「ああ。…サイカ、この屋敷ではサイカが娼婦である事を伝えるな。」
「?」
「娼婦という理由でそなたが差別されるのは耐えられん。ここの人間がそのような下らない事をするはずがないとは思うが…万が一の為だ。
だからここでは娼婦である事を隠しておくように。
…そなたは没落した貴族の令嬢だったと予め紹介して貰っている。」
「…マティアスの知り合いともな。
奉公先で辛い目に合ったと…まあ、そう説明もしている。
使用人たちには辛い事を思い出させないように家の事も傷の事も何も聞くなと言っているから、生い立ちなどは聞いてこないだろう。
それは保証する。」
「助かる。…サイカ、この屋敷の使用人たちは心意気のいい人間たちだ。
俺も、避暑に訪れた際はよく世話をしてもらっている。
挨拶が済んだら俺は城に戻らねばならないが…避暑を兼ねて会いに来る。
その時は…ゆっくりと過ごそう。そなたを案内したい場所が沢山ある。」
「楽しみにしています。
でも、私に会う為に無理はしないで。…それは、望んでない。
仕事がたて込んでいる時はそちらを優先して、体が辛い時は休んで、大丈夫な時に会いに来てほしいです。」
「ああ、分かっているとも。
…さ、中へ入ろうサイカ。」
「あ、待って下さい。護衛をしてくれた皆様に、お礼を言わせて。」
マティアス様に抱えられたまま、私は騎士たちに頭を下げる。
彼らはマティアス様を守っていただけかも知れないけど、一応は私も守る対象に含まれていたのだ。
お礼は言わなければならない。
「ダミアン様、それから騎士の皆様。
ここまで、本当に有難う御座いました。
皆様のお陰で、今、無事でいられます。
帰りもお気をつけて…それから、マティ…陛下を、お守り下さい。…あ…申し訳ありません、そんな事は当然でしたね。失礼な事を申しました…。」
「…っ、…礼など。それに、何も失礼な事はありません。
…サイカ嬢の感謝の言葉、有り難く受け取らせて頂きます。
そしてお任せ下さい。陛下の身は、何があろうと必ずお守りしますので。」
「はい。その言葉にとても安心しました。
どうか帰りも気をつけてお帰り下さい。皆様が安全に帝都へ戻れるよう、祈ります。」
「有り難く。
サイカ嬢もどうか、お体をご自愛下さい。
二日、共にする事が出来て光栄でした。」
にっこりと笑う団長さんと騎士たち。
ざ、っと胸に手を当て礼を取るその姿は純粋に格好よかった。
団長さんを好きなカイル様の気持ちが、分かった気がした。
温かい何かが頬を労るように触れている。
私は夢を見ていた。
『大人しくしろ。俺が、たんと可愛がってやるぞ?』
ふへへ、と嫌な笑みを浮かべる、太った…いや、巨漢。
閉じているのか開いているのかも分からない目はいやらしく垂れ下がって、鼻も伸びている。
重たい体が私の上に乗って、息苦しい。
湿った手で触れられ、気持ち悪い。
『すぐ良くなる。』
ふざけんじゃない!!あんたみたいな男!!
死んでも嫌だっつーの!!
夢の中の私はぼかぼかと男をこてんぱんにしていく。
ぶよぶよとした肉の塊にこれでもかと拳を叩きつけ、痛みに苦しむ男を見てふんぞり返る。
『ざまあみろ!女を舐めるからこうなるのよ!』
「この、女の敵が!!」
そして自分の声で目が覚めた。
「…サイカ?」
「……あれ?」
がたがたと音がしている。その音に合わせて、振動が体に伝わっていた。
「…ふ、……夢を見ていたのか?」
「……マティアス様…?」
「こら。マティアス、だろう?」
「…???」
むくりと、ゆっくり起き上がる。
マティアス様の膝を枕にして私は眠っていたらしく…馬車の中にいる事にも気付いた。
「…え……あれ?……馬車?」
「そうだ。」
「…月光館じゃない……外!?」
「ああ。月光館は移転する事になった。
その間、サイカには別の場所で生活してもらう…そういう話になってな。」
「……別の場所…?」
「ああ。今向かっているのは…帝都から離れた場所にあるクライス侯爵領だ。帝都からだと…二日かかる場所にあるな。
…それより、何処か痛んだりする所はないか?」
「……ええと、はい。……だいじょう……つ、…あれ、膝が…」
「……ああ、左足だな。固定をしてもらっている。暫くは痛むだろうと…医師の見立てだ。完治は一月かかるだろうとも。」
「…あ。…もしかして…あの時に…?」
思い当たる節があった。
何せあの屑野郎はかなり重かったので。ええ。それはもう。
多分、何かの下敷きになるってああいう感覚なんだと思う。
男が勢いよく私に乗り掛かってきた時、一瞬左足が痛んだ覚えがあるので恐らくその時に痛めたのかも知れない。
それから私の両手も包帯が巻かれていた。
「……サイカ。」
隣に座っていたマティアス様が、そっと労るように私を抱き締める。
「…よく、頑張ったな。よくぞ、抵抗してくれた。
恐ろしい思いをしただろう。辛い思いを。
キリムも、娼館の女たちも皆無事だ。安心していい。」
「…マティアス…」
「もう大丈夫だ。もう二度と、サイカをあんな目には合わせない。
あの男には厳しい罰が下るだろう。
そなたを傷付け、悲しませた男だ。そなたを、サイカを泣き寝入りだけはさせない。」
「……そう、ですか…。…私もそうですけど…オーナーも、怪我を負わされたし、リズお姉様は壁に体を打ち付けてました。
皆だって、どれだけ恐い思いをしたか。…でも、罰を受けるなら…。」
「ああ。必ず。…必ず、あの男が仕出かした罰は受けさせる。
必ずだ。」
「…なら、いいです。」
マティアス様に抱き締められ、心から安堵する。
あの時も、この腕の中が心底安心した。
この場所は一番安全だと、そう思えた。
「そなたがこれから暫く住む場所はとても良い所だ。
クライス侯爵領地は自然豊かな場所でな、まあ、その領主は少し厳つい顔と体をしているが…優しい男だ。名をディーノ・クライス。俺の友で、本当はディーノと一緒に向かう予定だったのだが…気を使ってくれたらしい。一足先に帰り、サイカの部屋と必要な物を準備すると言っていた。」
「マティアスの…」
「ディーノは俺の師でもある。勉学のな。
国を治めるに必要な経験をさせてくれた。色々な事を教えてくれた男だ。
年は俺の二十上になる。喋りは上手い方ではなくどちらかと言えば寡黙な方だ。…だが、慣れればよく話すし酔えば面白いくらい話す。」
「良い方なんですね。」
「ああ。きっと、自然豊かな環境の元、心穏やかに過ごせるだろう。
…サイカ。辛ければすぐ伝えてくれ。離れているが必ず駆けつける。
サイカが辛ければこうして抱き締め、眠れなければ共に眠る。
今回の事、そなた自身が大丈夫だと言っても…ふとしたきっかけで塞ぎ込む事もあろう。
そういう時、ちゃんと辛いと言ってほしい。頼ってほしい。
ディーノに俺に会いたいと伝えてくれれば、俺はそなたの元へ駆けつける。」
「…マティアス…。そんな、…マティアスは十分、良くしてくれています。
あの時もマティアスにこうして抱き締められて、どれだけ安心したか。今だってそうです。…すごく、ほっとする。
だけど、マティアスにだって仕事があるでしょう?マティアスの立場にある、大事な仕事が。」
「ああ。勿論、疎かにはしない。約束する。その上で駆けつける。
だからサイカも約束してくれ。
…俺を、そなたが悩み苦しんでいる時に何も出来ない男にしてくれるな。」
「マティアス…ええ。約束します。ありがとう、マティアス…。」
格好いいなと思う。
顔や容姿の事だけでなく、何というか、男としても。
立場があって、大変な仕事もあって。
なのに私を気にかけ、私が苦しんでいたら駆けつけると言ってくれたマティアス様が格好いい。
男気があるというか、男らしいというか。…こういう男と一緒になればきっととても幸せにしてくれるだろう。
「ディーノの屋敷まではあと一日は掛かる。
今日は一旦宿を取って明日の朝出発だ。
旨いものを食べて、今日は共に眠ろう。サイカが恐ろしい夢を見ないよう、一晩中抱き締めておくから。」
じんわりと胸が温かい。好きだなと、そう思う。
それから暫くして、馬車はある町の宿の前で止まった。
足を痛めているので私はマティアス様に抱き抱えられ馬車を降りる。
馬車の入り口から縦、両サイドに護衛をしていた七人騎士が並び………私を凝視していた。
その内一番手前に並んでいた騎士がマティアス様に話しかける。
「陛下。こちらの宿でお休み下さい。部屋は一部屋でとのご命令でしたので、その通りに致しました。
幸い客も数人しかおらず、本日貸し切りにしてもらうよう頼み、相応の金銭も渡しておきました。」
「ああ。……サイカ、この男は俺の護衛と騎士団の団長をしている男でダミアンと言う。ないとは思うが…万が一、俺がサイカの側を離れた場合にはこの男を頼るといい。騎士団最強の男とも言える。」
「…ダミアン様ですね……分かりました。」
「ダミアンと申します。
…サイカ嬢は必ずお守り致します。どうぞご安心下さい。」
「此方こそ、お手数をお掛けしますが…宜しくお願いします。」
私を見て一瞬だけ目を見開いた団長さんはその後何もなかったように微笑んだ。
うん、背の高いぽっちゃりさんだ。団長さんは。
騎士団の団長と言うことは…カイル様の上司だ。団長がとカイル様の話に出てくるあの団長さんか~と思うと何だか凄く…初めましてな感じがしない。そして感動している。
糸目ではあるけど全然いい。日本に普通にいそうな顔だし…それに、あの男とも全然違う。全く恐怖感はない。
団長さんも他の騎士も。
体が大きく太っていようとも、あの屑男とこの人たちは違うんだと実感出来た。少しの間だけど、仲良く出来れば嬉しい。
「では行こう、サイカ。
空腹は感じていないか?喉の渇きは?…軽く食べられるものを用意させよう。」
「お腹は大丈夫です。…少し、喉が渇いているので…お水を頂ければ嬉しいです。
…マティアス、重くないですか?」
「いいや全く。ほら、もっと寄りかかるんだ。気を使わなくていい。
身を任せてくれ。」
「は、はい。…お願いします。」
マティアスに抱えられたまま宿の部屋へ向かう。
宿は結構大きな宿で、部屋も広い部屋だった。
質素な部屋だったけどホテルでよく見るダブルサイズよりもう少し大きめのベッドがぽつんと置かれていた。
『…いやー……マジか。…なんだあの美女…カイルの言う通りマジで女神じゃねーか。美しすぎて直視出来ん。…カイル、よくあの女神と視線を合わせられるな…逆に尊敬するぞ…。』
『だ…団長、お、俺、体震えてます…』
『俺も……な、何なんですあの絶世の美女…本当に、これ、現実ですか…!?』
『…現実ならお迎えが近いのかも…。』
『う、嘘だろ、陛下、…花街によく行ってたの、あの女神に会いに…!?』
『って事は娼婦だよな?…え…?娼婦…?あの絶世の美女が…?あの女神が娼婦??いやいや、…いやいや!』
『陛下…羨ましい!!男として羨まし過ぎる…!!』
『…いや、俺は陛下もだが…カイルも……マジか。いやマジか!!』
マティアス様と私が宿の中へ入った瞬間、護衛をしてくれている騎士たちのこんな会話がなされていた事を私は知らない。
この日はマティアス様と一日、宿の部屋で過ごした。
食事も部屋に持って来てもらい、お風呂はなかったけどシャワーはあった。…シャワーというより、私の身長で胸の高さくらいの位置に付いてあるハンドルを捻ったらその更に上についてある大きめの蛇口から水が落ちてくる…という簡素なものだったけど。
因みに蛇口は上と下に二ヶ所あって、座って洗えるようにもなっていた。
そして当然のようにマティアス様に体を洗われた私。
マティアス様は衣服を着ていて、裸の私はただ椅子に座っているだけだった。
「…足と手の包帯を変える。傷薬と軟膏を塗るから、痛みがあれば言ってくれ。まあ、痛んでもどうする事も出来ないのだが…。」
「ふふ、それくらい我慢出来ますよ。」
「そうか。……この、細く小さな手で、必死に抵抗したのだな…」
私の両手を取り、目を閉じて傷のある部分に口付けるマティアス様。
小さな、本当に小さな掠れた声で“よくやった”とその呟きが聞こえ何だか誇らしい気持ちになる。
そう。頑張ったんだよ、私。あんな男に好きにされたくもなかった。
恐くて、それから気持ち悪さでいっぱいだったけど、頭にも来てた。
こん畜生と…ぼよんとしたボディにはダメージを与えられなかったけど、眉間が急所なのは世界が変わっても同じだった。
それからは眉間、鼻の下、顎と顔の急所を悉く攻め続けた私。…いや、急所とかそんな事考えてたわけじゃなくただ無我夢中だっただけだけど。
そうだよ、そうだ。私は必死に抵抗した。頑張った。…頑張ったんだ。
マティアス様に労られ、込み上げてくる誇らしさ。
それから悔しい気持ち、恐かった思い。
「…よくやった。よく、やってくれた。
後は任せろ。大丈夫だ。必ず、サイカの悔しい気持ちは晴らしてみせる。
…俺を信じろ、サイカ。」
「…あい、…ぐす。…はい、信じます。
私、頑張ったんです。頑張ったんですよ、マティアス…」
「ああ。その通りだ。そなたはよく頑張った。
自分を守ろうとよく、戦ってくれた。
俺はサイカ。そなたが誇らしいぞ。」
「……ふふ、…はいっ…やって、やりました…!」
「ああ、よくやった!
…それと…場違いな事を言ってもいいか…?サイカに口付けをしたいと思ったのだが……薬を塗った手に口付けたから……口の中がかなり苦い。水が欲しい。」
「ぷ、…ふふ、…あはは…!やだ、早く、水飲んで…!」
私、普通に笑えてる。楽しいと思える。
そのことに安心した。それから、私って結構図太いんだなとも思った。
マティアス様と何度もキスして、あやされながらその日は眠って。
何の夢も見なかった。熟睡していた証拠だ。もしかしたら夢は見ていたのかも知れないけど、覚えていないという事は大した夢でもなかったのだろう。
部屋で朝食を取って、私はマティアス様に抱えられ再び馬車へ。
「陛下、サイカ嬢、よくお休みになられましたか?」
「ああ、問題ない。サイカもぐっすりと眠っていたな。」
「はい。大丈夫です!騎士の皆様も休まれましたか?」
「御気遣い有り難う御座います。
我々は大丈夫です。」
「護衛も交代で仮眠を取らせているんだ。それに、この者たちは柔な体ではない。心配せずとも大丈夫だぞサイカ。」
「休めたのなら良かったです。
今日も、宜しくお願いします。」
「はい。お任せ下さい。」
そして再び感じる熱視線…。すごくじっと見られているのも何だか気まずくて…宜しくお願いしますという気持ちを込めてにこりと笑って頭を下げておいた。
『…め…女神…』
「?」
「サイカ、馬車の中に入るぞ。」
少しだけ不機嫌になったマティアス様は急いだように馬車へ乗り込む。
またがたがたと揺られながら、変わる景色を堪能した。
「ディーノ!」
「来たか。そろそろ着くと思って待っていたがタイミングが良かったな。
部屋の準備は整っている。……初めまして。俺はディーノ・クライスと言う。年はかなり上だがマティアスの友だ。
ああ、挨拶はそのままで結構。…体を労って欲しい。」
ディーノと名乗った男性はちょっと…というかかなり厳つい顔をしたイケメンだった。
強面顔のイケメン。体も凄く大きい。太ってるんじゃなく、がたいがいいイケメンなおじ様だった。
うん…素敵だ。
身長もカイル様より少し高い気がする。
180センチは超えているであろうマティアス様に抱えられていても、顔を上にあげないといけないって…どいいう事?
「御気遣い有り難う存じます。そして、この様な状態で申し訳ありません。私はサイカと申します。
…これから、沢山ご迷惑をお掛けしますが…どうぞ宜しくお願いします。」
「迷惑など。…私も、楽しみにしていた。何せこの屋敷は広いのに、使用人しかいないからな。
新たな住人が増えるというのはいい。我が家と思って、遠慮する事なく過ごしてほしい。」
「……。」
「…何だマティアス。俺の顔に何かついているか?」
「…いや。“私”と言うディーノを久々に聞いたから違和感がな…。
…正直変だぞ。その厳つい顔で自分を“私”と呼ぶのは。」
「…お前は生意気だぞ。昔はあんなに可愛い子供だったのに。
何故そんなに生意気になった。」
「成長したと言え。」
「…ふふ。本当に、仲がよろしいのですね!」
『…ふん。』
お互いがそっぽを向いた後、ディーノ様はマティアス様に近付き、私にも聞こえるように小声で話す。
「…マティアス。使用人たちには彼女が娼婦である事を伝えていない。
…それでいいな?」
「ああ。…サイカ、この屋敷ではサイカが娼婦である事を伝えるな。」
「?」
「娼婦という理由でそなたが差別されるのは耐えられん。ここの人間がそのような下らない事をするはずがないとは思うが…万が一の為だ。
だからここでは娼婦である事を隠しておくように。
…そなたは没落した貴族の令嬢だったと予め紹介して貰っている。」
「…マティアスの知り合いともな。
奉公先で辛い目に合ったと…まあ、そう説明もしている。
使用人たちには辛い事を思い出させないように家の事も傷の事も何も聞くなと言っているから、生い立ちなどは聞いてこないだろう。
それは保証する。」
「助かる。…サイカ、この屋敷の使用人たちは心意気のいい人間たちだ。
俺も、避暑に訪れた際はよく世話をしてもらっている。
挨拶が済んだら俺は城に戻らねばならないが…避暑を兼ねて会いに来る。
その時は…ゆっくりと過ごそう。そなたを案内したい場所が沢山ある。」
「楽しみにしています。
でも、私に会う為に無理はしないで。…それは、望んでない。
仕事がたて込んでいる時はそちらを優先して、体が辛い時は休んで、大丈夫な時に会いに来てほしいです。」
「ああ、分かっているとも。
…さ、中へ入ろうサイカ。」
「あ、待って下さい。護衛をしてくれた皆様に、お礼を言わせて。」
マティアス様に抱えられたまま、私は騎士たちに頭を下げる。
彼らはマティアス様を守っていただけかも知れないけど、一応は私も守る対象に含まれていたのだ。
お礼は言わなければならない。
「ダミアン様、それから騎士の皆様。
ここまで、本当に有難う御座いました。
皆様のお陰で、今、無事でいられます。
帰りもお気をつけて…それから、マティ…陛下を、お守り下さい。…あ…申し訳ありません、そんな事は当然でしたね。失礼な事を申しました…。」
「…っ、…礼など。それに、何も失礼な事はありません。
…サイカ嬢の感謝の言葉、有り難く受け取らせて頂きます。
そしてお任せ下さい。陛下の身は、何があろうと必ずお守りしますので。」
「はい。その言葉にとても安心しました。
どうか帰りも気をつけてお帰り下さい。皆様が安全に帝都へ戻れるよう、祈ります。」
「有り難く。
サイカ嬢もどうか、お体をご自愛下さい。
二日、共にする事が出来て光栄でした。」
にっこりと笑う団長さんと騎士たち。
ざ、っと胸に手を当て礼を取るその姿は純粋に格好よかった。
団長さんを好きなカイル様の気持ちが、分かった気がした。
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