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19 嫉妬されるサイカ

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「……何人だ。」

「…マティアス様……きゃ!?」


どさりと体勢を変えられベッドに沈む私。
見上げたマティアス様の目はギラギラと鋭く光っていて何だか恐い。
いつも優しいマティアス様。どうしてこんなに恐い目をしているのだろう。それが私には分からなかった。


「サイカ。俺のいない間、何人の男がそなたを買った?」

「…え……えと、…二人…です…けど…」

「チッ。…二人も出たか……それもこんなに早く…誤算だった。」

「…えっと、…マティアス…様…?」

ふるふると無意識に体が震えていた私を見てか、マティアス様はそれまでの鋭さを抑え込みいつもの様子で私に向き合った。

「…恐い思いをさせた。…すまなかった。」

「…い、いえ…」

「サイカは娼婦…致し方ない事だと分かっているのに……嫉妬した。」

「…し…嫉妬…?」

「…サイカ……この痕が何だか分かるか…?」

つう、と私の胸、赤紫に鬱血している部分をなぞるマティアス様に鬱血痕ですよね?と素直に答えるとマティアス様は困った顔をして笑う。

「…サイカはうぶなのか何なのか…分からないな。キスマークを知らないとは。
…サイカ。これは只の鬱血痕ではなく“キスマーク”というものだ。」

「…キスマーク…」

「ああ。…これを付けた奴の意図は分からないが……正直、不愉快でしかない。
…勿論、サイカのせいではないが…。」

ただただ不愉快だ。とマティアス様は鬱血している箇所に口付ける。
ちゅううう、と、それはもう力一杯吸われ痛みに顔をしかめると唇を離したマティアス様はまるで…そう、まるでしてやったという顔をしていた。

「…小賢しい。本当に。どんなつもりで付けたのか…。」

「あっ…」

「…これが嫉妬か……存外…抑えるのが難しい…」


独り言のようにぶつぶつと呟いているマティアス様は私の胸を両手で揉みながら続けて口付けている。
ちゅうう、と吸っては唇を離し、また少しずれた所にちゅうう、と吸い付く。
それはだんだんと、胸だけではなく首や鎖骨、肩やお腹、と全身に広がって、コロンと仰向けからうつ伏せに体勢を変えられると今度は背中に吸い付いた。
擽ったくて少し痛くもあるその行為。一体何をされているのだろう。
マティアス様にされるがままでいると、また仰向けに体勢を変えられ…私の太股の内側に今度は吸い付く。

「…ここも、俺の印を付けておかねば…。」

「え?」

そしてクリトリスにも、ちゅう、と力一杯吸い付いた。

「ひゃあああああ!?」

いきなりの大きな刺激に弓なりに背中が仰け反った。
先程まではそれほどいやらしさを感じなかったマティアス様の行動はここにきてガラリと変わった。
クリトリスに吸い付きながら長い指で膣をかき混ぜられ、まるで何かを掻き出そうとしているようだった。

「…中には残っていないな。」

「まてぃあす、様…?あんっ!?」

「……味も…ああ、サイカの味だ。」

「…な、にぃ…?…や、あんんっ!」

じゅるじゅるとクリトリスや膣の中を吸われ、どんどんいやらしい気持ちになっていく。
マティアス様がまた、少し恐い。まるで私が見えてないような、そんな感じがして寂しい。いやだいやだ。ちゃんと私を見て。いつもみたいにちゃんと。

「…ふう、……ちゃんと、私…見て…、恐いの…まてぃあす様…」

「!」

「…いつも、みたいに……ちゃんと、…愛して…」

ぼろぼろと勝手に出てくる涙が止まらない。どうして泣いているのかも理解出来ない。どうしてこんなに、寂しい気持ちになっているのかも…分からなかった。
譫言のようにちゃんと見て、愛してと繰り返していると優しい口付けが落ちてくる。
頭を撫でられ、涙を拭われ、何度も優しい口付けが。

「…すまなかった。…ちゅ。…サイカを蔑ろにしてしまったな…。
サイカには何の非もないのに。…ちゅ。」

「んん…ちゅ、…ちゅ。……おこらないで…」

「ちゅ……サイカに怒ってなどいない。…悪かった。
……愛している、サイカ。許してくれ。」

「んっ……許し…ます、からっ……続き…したい…」

完全にスイッチが入ってしまった。
マティアス様もいつものマティアス様に戻ったし、と私は安心してしまったのだ。
別に元に戻ったとかではなく、マティアス様が必死に嫉妬心を抑えていたとも知らずに。
あーよかったと安堵していた私は実に間抜けと言える。


「あああーーー!やあ…も、やああ…!こえ、これ、やあああ!
くる、くりゅぅ…また、またきちゃう…!おおきいの、きちゃうっ、も、やら、やら、いくの、こわい、こわいい…!」

「…はっ……駄目だ…まだ、サイカの中を……満たしてないっ…」

「…あっ、…やら、いっぱい、いっぱい、も、はいりゃな…!
も、しきゅのなか、まてぃあすさまの、あかちゃ……いっぱいだかりゃぁ…!」

この日、私はイキすぎるのが恐いということを初めて知った。
お腹の中はマティアス様の精液で満たされ、ぶちゅぶちゅと下品な音を立てながらシーツの上に溢れ落ちる。
ぽこりと子宮があろう部分が膨れ、明らかにマティアス様の大量の子種が入っているのが分かるのに、マティアス様はまだだまだだと自分の子種を注ぎ続けた。
ぼたぼたと膣の中から精液が溢れればその分を補うようにまた出され、その度に自分の中の理性や羞恥心、色んなものが擦りきれていく。

「あっ、あっ、あっ…!しょれ、らめっ…しきゅ、おされて、」

「…はっ…この体勢だと、…サイカの可愛い顔が見れないのが…難点…だなっ…」


マティアス様に背を向けている私の両腕はがっちりと掴まれ、後ろからごつごつと犯されている。
ごんとひと突きされるたび、大きなドンがくる。突かれた腰から脳天へ。どん、どん!と重く大きな快楽がくる。
開きっぱなしの口からだらだらと涎が垂れるけれど、頑張って閉じようとしてもどん!がくると開けていられないのだ。

「ああーーーー…!」

「…っ、サイカの…喘ぎ声…く、…理性がなくなって…随分、可愛い声にっ、…うっ…!」

びゅるりびゅるりともう何度も出しているはずなのに子宮の入り口にかかるマティアス様の精液の勢いは変わらない。
射精されている余韻に浸る間もなく、また律動が始まって、私は人間が出すとは思えない声を上げまくっている。もう悲鳴に近かった。

「あーー!ああっ、あーーーーっ!」

「…ふ、く、…サイカ…、サイカっ…サイカ…!!
俺の、サイカっ…!誰にもやるものか…!」


その言葉を聞いて、ぷつんと何かが切れた気がした。
喜びと悦び。私を支配したがるマティアス様の心が見えた。
それまでの私がいなくなって、只の女に、雌になった私が生まれた。
マティアス様という雄の、従順な雌に。強い雄に支配された雌になった気がした。
本城彩歌が、マティアス様のサイカになった気がしたのだ。
その瞬間、眩い光が目の前を覆い尽くした。


「…あ……?」

「…うあっ…、っ、締ま、…!?」


いいよ。
マティアス様のものになってあげる。
マティアス様の女になってあげる。


「…まてぃあす……」

「…サ…イカ…?」

「…さいか…は、…まてぃあすの、おんな…」

「!!」

「…ぜんぶ……うけとめて……あげる…」

「サイカ……」

「……ぜんぶ…ぶつけて……さいかは、…さいかは、…まてぃあすの、……もの、だから、」


どんな事も受け止めて受け入れてあげる。
サイカは貴方の女。貴方という雄のもの。
理性という理性ではなかった。狂った思考だった。
女としての本能だろうか。私に狂うマティアス様が愛しい。嫌な女だ。嫉妬されて、優越感に浸るなんて。
抑えられない嫉妬心に翻弄されるマティアス様は、怒りを私にぶつけないように、でも抑えられなくて、この行為でそれをぶつけているのだと分かった。
強く、美しく、最上級とも言える雄がただの雌に狂っている。
その事実が私の中の女を喜ばせた。



「…っ、どこの、…どこのどいつが…!俺のサイカに触れた…!!
この、美しい…は、体に…!」

「ああああ!あああ…!!」

「そいつが…、サイカの…っ、この愛らしい顔に…!愛らしい声を…!
は、くっ…気持ちのいい体を……!!」

「あああ、…んああ!まてぃ…まてぃあす…!」

「娼婦なんて、辞めて…っ、…俺の、女になれ…サイカっ…!!
俺の、女にっ、はあ…妻に、…ただ一人の、…正妃にっ…!…愛している…愛している……!誰にも、誰にもそなたを渡したくないっ…!」

「んゃあああーーーーー!」


怒り。嫉妬。独占欲。支配欲。征服欲。
その全てをぶつけるようにマティアス様は激しく私を責め続ける。

「どれだけ、どれだけ…サイカのような、存在を…求めたか…!
皆が、当たり前に見つける存在をっ……一生、俺には、現れないと…、」

「あああ、や、だし、にゃが、…らめ、だし、な、がらっは、…しょえ、よわいぃ…!」

「やっと、やっと俺にも…俺に、サイカが……それ、なのにっ、…好いた…女と、毎日…く、会うのも…叶わない…!
やっと、会えたと思えば…!…あのような…痕を付けられて…!!」

「はあ、はあ…!ま…まてぃあす……まてぃあすうぅ…!」

「…これが、嫉妬せずにいられるか…!」


ぶつけて吐き出し続ける。
色んな思いを、胸の中に次々と沸いているそのどうしようも出来ない感情を、全て私にぶつけていく。
恐いのに嬉しい。狂っていると思うのに悦んでしまう。
狂気じみているのに、愛しい。嬉しい。愛しい。そんな私はきっとおかしい。


「…愛してる…!」

「まてぃ…あす……、まてぃあす、…あいしてる…」

「サイカっ…」

「わたし、なんかに…くるって、…かわい、…うれし……は、…さいかは、…まてぃあすの、もの……あいしてる、」

「っ、ああ…、愛してる…心の底から、サイカ…そなただけを、愛している…!」


マティアス様は私の背中に通した腕でぐっと肩を掴み、体を密着させたまま唇を塞いで腰の動きを早め、ありったけの思いをぶつけるように私の子宮口めがけて精を放つ。
無理矢理子宮をこじ開けようとする強い動きに合わせ私もマティアス様の腰に自分の足を絡めた。
このひとの子なら孕んでもいいと、そう思いながら。


「……それ…すき…」

「…出しながら突くのが?」

「ん……すき…」

「……開発されたか……不愉快極まりないな…」

「んあああ!?」

「…どれがいい?…激しいのか…?それとも……ああ、…ゆっくりも良さそうだな…顔が蕩けている…」

「…ゆ、ゆっくり、も、すきぃ…」

「はは……サイカの膣…俺の子種でどろどろになっているぞ…」

「んん、んはあ…!それ、すき…きもちいい、…しきゅ、こつこつ、いちばん、すきぃ…!」

「…そうみたいだな。…ではずっと…サイカの子宮を突いてやろうな。
…一晩中、朝が来ても…昼がきて夜が来ても…」

「ひとばんじゅう……」

「ああ。幸い、明日も休みを取ってある…。今からはゆっくり愛し合おう…じっくり、時間をかけて。…子作りセックスだな。」

「あん、…あっ……する、こづくり、…まてぃあすと、こづくりせっくす…する…」

「…本当に……どれだけ可愛くなるつもりなんだ…」


それからはゆっくりとじっくりとマティアス様とセックスした。
浅く挿入を繰り返され、もどかしくなった頃に奥を突き上げられ、何度も何度も絶頂を迎えてを繰り返す。
垂れた唾液を気にすることなく喘ぎ、舌を絡ませ互いの唾液を交換する。
日が高くなっても愛し合う行為は続いて、私の頭はもう働きもしない状況になっていた。

こんこん、と何か音が鳴った気がするけれど、私はそれが何の音なのかも理解出来ない。
マティアス様がきょろ、と辺りを探り、シーツを掛ける。
どうしてそんなことをするんだろうとも思わなかった。
あんあんと自分の声が部屋に響いて、マティアス様も動きを止めない中、誰かの話し声が聞こえてくる。


「失礼します…、へ、陛下…お時間が来ましたので…、」

「…金はたっぷり支払う。今日はこのままサイカといさせろ。」

「で、ですが、」

「構わないな?」

「っ、か…畏まりました。迎えに来られている方には…その旨お伝えしておきますので……それでは…引き続きごゆっくりお楽しみ下さい…。」

「ああ。……喜べサイカ。今日はずっと、愛し合えるからな。
沢山子作りしよう…。」

「あ、ん……ん、…まてぃあす…、もっと…、」

「おねだりが上手いなサイカ。…ほら、出してやるからちゃんと…腹の中で受け止めて。」

「…んん…!」


こうして二日間もマティアス様と愛し合った私はその翌日にオーナーから…だけでなく月光館で働く仲間たちにとても心配され、一週間、ベッドから起き上がる事が出来なくなった。主に筋肉痛と腰痛で。
その間、ヴァレリア様やカイル様が来てくれたらしいけれど当然会えるような状態ではなく…ただ私を寝たきりにさせた張本人のマティアス様は日が暮れる頃に会いに来てくれて、セックスは当然せず要介護な私の世話をしてくれたのだが…。


「マティアス様のせいです。全身が怠くて痛くて腰もすごく痛いです。」

「はは、サイカが可愛くて止められなかったな。
…許してくれ。」

「…くぅ……その優しい笑顔がずるい…!」



…まあ何とも…憎らしいほどきらきらした笑顔だったのは言うまでもない。
そして自分の体の至るところに"キスマーク"がついていたのには吃驚した。

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