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9 サイカと気弱イケメン

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「あの、お茶でも淹れましょうか?」

「は、はい、…ああ、いえ、すみません、どうか私の事はお気になさらず…!」


お気になさらずと言うが超絶イケメンな貴方様は私のお客様。
お客様を気にしない訳にはいかないので気にせず紅茶を淹れる事にする。
ようこそと挨拶をし顔を上げてから、目の前に立っていたイケメンはずっと緊張した様子で視線をさ迷わせているだけだったので、どうぞお掛けになって下さいとソファーに座るように促した。


「…お砂糖やミルクはいりますか?」

「い、いいえ。」

「ではストレートですね。」

そういえば私は最初に名乗ったけれど、彼の名前はまだ教えてもらっていなかったなとまだまだ緊張した様子のイケメンを見る。
じっと私を見ていたのか、目が合うとあからさまに視線をそらされ……ちょっと悲しい。別に取って食いやしないのに。

「昼間は本当にありがとうございました。
前を見ていなかったのは私の方なのに、親切にして頂いて…。」

「っ、…そんな、…お礼を言われる様な大した事は…」

「いいえ。そんな事ないです。勢いよくぶつかってしまいましたから…きっと転んで擦り傷くらいは作っていたと思うんです。
…あ!…お客様は、何処か怪我はされてないですか?」

「だ、大丈夫です。どこも、怪我はしていません…。」

「よかった。安心しました。」

「………これは…夢……?こんな…女神みたいな女性が…、」

「?」

ぼそぼそと発している小さな声は聞き取れないが何やら考え込んでいる様子の彼を観察してみる。
顔立ちからも雰囲気的にも優しそうな人だ。
筋肉はそれほど無いように見えるが背も高くてスラリとしている。スタイルがいい。
肩まで伸びている銀髪は後ろで一つくくりにされているし、昼間に見た服装のままだけど、よく見ればよれてもなく皺もなくて清潔感もある。全体的に何かすごく品がいいイケメンだ。
でも格好いいけどなんだかおどおどしてて気弱そうだしそしてどう見ても童貞っぽい。失礼だけど彼への印象はそれだった。


「……私の様な………まして女神みたいな………相手されるはず………」

相変わらずぼそぼそ呟いている超絶イケメンなお客様。
そろそろ戻ってきてほしい。そして自己紹介をしてほしい。
丁度紅茶も入ったので二つ分の紅茶をテーブルに置き、私もイケメンの隣に座る。

「!!」

「紅茶をどうぞ?」

「っあ、…あ…りがとう、ございます…。」

「いえ。…その、お客様の事は何とお呼びすればいいですか?」

私の言葉にしまった…!と言わんばかりの表情になるイケメン。何だか可愛いひとだ。一体いくつなのだろう。…見た目的に同い年くらいな感じがしているが。

「…レディの前で大変失礼を…申し訳ありませんでした。
私はヴァレリア・ウォルトと申します。」

「ヴァレリア様ですね。サイカです。その…今日は宜しくお願いします。」

「っ、」

「ヴァレリア様…?」

「も、申し訳ありません…貴女が、…余りにも、美しいので……先程から…失礼な態度ばかり…」

「失礼だなんて…どうか気になさらないで下さい。
…実は私も、緊張しているんです…。」

「え…貴女も…?」

「はい。実は、ヴァレリア様は私にとって二人目のお客様なんですよ。」

「…そうなのですか……え!?」

ぎょっと、これでもかと目を見開くヴァレリア様。
何だかすごく驚かれている。

「え…こんなに美しい女性なのに……私が、…二人目…?本当に…?」

「ついこの間、水揚げが済んだところなので…。」

「…水揚げ……貴女の…?」

「はい。」

「………そう、…ですか……相手は…何て幸運な人だったのだろう…羨ましい限りですね…」


紅茶を飲みつつ二人でソファーに座ったまま。
ゆっくりと時間をかけながら話をしていると少しずつヴァレリア様の緊張が解れていく。
二時間程経った頃には笑顔を見せてくれるようになり、その後も暫く、私たちはお互いの話をし続けた。

「…格差がある世の中では仕方のない事かも知れませんが…歯痒いですね…。
貴女を騙し…娼館へ売らなければならないほど、貧困していたのでしょうか…。」

「…そうだったのかも知れませんね…。」

「ともあれ、貴女が無事で本当によかった…。
この月光館という娼館は他と比べ良心的な所だと思います。
オーナーがいい方だからでしょう。」

「ええ。この月光館にいる皆、オーナーを慕っているんですよ。」

どうして娼婦に?と聞かれたので売られた時の話をすればヴァレリア様は苦しそうな顔で私を気遣ってくれる。
見た目や雰囲気の通りやはり優しい人のようだ。


最低でも大金貨一枚な私の値段。
それを支払えるという事は、ヴァレリア様もまたかなりの資産を持っている人ということになるし、そんな大金を支払ってまで娼婦である私を買うのだから女性に見向きも…寧ろ嫌悪されているということになる。
全くもって私基準のイケメンに優しくない世界だと出そうになる涙を堪えながらヴァレリア様の話を聞いていると始まったお家事情。

ヴァレリア様は高位の爵位を持つ貴族の息子だった。
マティアス様とは対照的にヴァレリア様のご両親は醜いとされる容姿で生まれたヴァレリア様を敬遠するでもなく、厭うでもなく、ちゃんと我が子として愛してくれているらしい。
優しい三人の姉もいて恵まれているのだと言った。

正直に言うと私は貴族というものに余り詳しくはない。
異世界や王族、貴族、騎士、冒険者などを題材にした漫画や小説は好んでよく読んだけれど、爵位を只の設定として読んでいるだけ。私の中で貴族に序列はなく、貴族は貴族なだけだった。
つまり王族=一番身分が凄い人、公爵・侯爵=次に身分が凄い人、伯爵=身分が凄い人…残りも同じくエトセトラ、なのである。

どの爵位がどれだけ凄いか分かっていない私はヴァレリア様のお家紹介を聞いても「ほほう」としか頭の中で思っていない。
だって現代日本で生きてきたのだから貴族の事なんて知らなくて当然じゃないかと開き直ってみる。

ヴァレリア様の父親は宮中伯という身分らしい。
…宮中伯なんて初めて聞いたがどうやら王宮で仕事をしているらしく、何れはヴァレリア様が父親の跡を継ぐ予定なのだそう。
…という事はマティアス様の部下…というか臣下ではないかと気付いたものの、今目の前にヴァレリア様がいるのにマティアス様…他の男の人の話をするのも失礼な気がして止めておいた。

「重責です。尊敬する父のようになれるかどうか…。ただでさえ私は…このように容姿が醜いのに。けれど、父の仕事を手伝うようになって三年も経つのにまだまだ…実際に父の仕事振りを見ると…父の足元にも及んでいない気がしてならないのです…。」

まるで思い詰めた様にそう話すヴァレリア様。
ちょっと…いや、この人はかなり真面目なのではないかと思う。
私も人から真面目だと言われるが恐らくタイプが違う。
私が真面目(偽)であればヴァレリア様は真面目(真)だろう。
真面目(真)は真面目故に自分を追い詰めてしまう人が多く、私のような真面目(偽)は見かけだけ真面目を装っているので頭の中は割りと楽天的な方である。

尊敬している父親を目指しているのはとても素晴らしいが、父親は父親。ヴァレリア様はヴァレリア様。
人にはそれぞれ向き不向きがあるし、能力も違う。
憧れている人、尊敬する人みたいになりたいと努力しても、その人と同じ人にはなれないのだから。

「…ヴァレリア様が目標にする程、素敵なお父様なのですね。」

「はい!…父は優しいだけではなくて見目もよく…仕事も出来る人なのです。
けれど…私は何れ父の跡を継ぐというのに同じように出来ない…。」

「…ヴァレリア様、今から私が話すことは、そういう考え方もあるんだ、程度で聞いて下さい。」

「…?」

「お父様はお父様。ヴァレリア様はヴァレリア様。例え血の繋がった親子でも、似た容姿であろうがそうでなかろうが…全く同じではありません。
お父様はお父様のやり方で優秀になった。
ヴァレリア様はヴァレリア様に合ったやり方、ヴァレリア様のペースでお父様を目指せばいい。」

「……。」

「それに…足元にも及ばない気がしていると言いましたが…それは当然の事だと思います。
だって、それは経験が違うから。
お父様は学んだ後、実践して経験を積まれています。
ヴァレリア様よりも先に生まれ、長く生きて、きっとヴァレリア様が生まれてる前から、生まれて成長するまでもずっと経験を積んできたんです。」

「…経験…」

「お父様のようになるにはまだたったの三年です。ですがヴァレリア様にとっては然れど三年。
その三年の間にヴァレリア様はきっと成長されているはずです。
初めてお父様の手伝いをした時に比べ、どう変化しているか。きっとすぐ思い当たるはずです。
それが、その三年が、ヴァレリア様が得た経験なのですから。」

「……。」

「そうやって、お父様も悩んだのかも知れませんよ?
そしてヴァレリア様と同じように、少しずつ経験を積んで、今があるのかも知れません。
…なんて、偉そうに言ってしまいましたね。」

何も知らないのにごめんなさいと謝れば、ヴァレリア様は力の抜けたような顔で笑う。

「…いいえ。謝らないで下さい。
貴女に言われるまで気付かなかった…もしかしたら父も、私と同じように悩み、苦労していたのかも知れないと…そんな当たり前の事を…。
経験が違う…そう……本当に、そうですね…。
父と同じようにならなければと…そう思っていたのは…きっと私に負い目があるから…。」

ヴァレリア様に引き寄せられ、抱き締められる。
スラリと細い体からどこにそんな力がと驚くくらい、抱き締める力は強かった。

「…私だけが家族の中で醜い。家族は優しくて…そう、厳しいけれど優しくて、自慢の家族なのです。
…けれど、そんな自慢の家族に、私という異質が混じっている気がして…」

「……。」

「…こんな事、家族の誰にも話せるわけがなかった。私を愛してくれているのに、こんな事を思っているなんて、言えるはずないじゃないですか…。」

「…はい。大切だから、話せないんですよね。
嫌われたくなくて、どう思われるかも恐くて。」

「…私は父に、家族に守られていました…。
社交の場にも、傷付くくらいならそんな所、行かなくていいと…でも、そういうわけにもいかないんです。
だけど私が無理して行くのが分かると、家族は盾になって守ってくれる…。
姉たちは誘われたのにダンスもせず、母も、私に悪意が向かないように側にいて…守ってくれたんです。」

「お母様もお姉様たちも、ヴァレリア様が大好きなんですね。」

「ええ…。二十三になる大の男が情けない…でも、そうやって家族に守られてばかりだったから、父の手伝いをするようになってからが辛くて堪らない。私の事はいいんです。醜いのは事実だと分かっていますので…。
でも、私のことで父が、家族が悪く言われてしまう。
だから、だから容姿以外のことで言われないように…笑われないように…、」

ヴァレリア様は小さな子供のように純粋な人だった。
子供の頃から大切に家族に守られ生きてきて、でも、いつまでも子供のままではいられない。
両親は確実にヴァレリア様より先に死んでしまうし、三人の姉たちもヴァレリア様より優先しなくてはならないものが出来るだろう。
そしてヴァレリア様を守ってきた壁に綻びが出来て、今更ながら容赦ない悪意をヴァレリア様は受けている。

「…こんなに、世界が残酷だとは思わなかった。
私が醜いのは分かっていたけれど、…あんなに、嫌悪の目を向けられる程とは思ってなかったんです…。
いつも、いつも私の側に家族がいたから、誰かが、側にいたから…。
あんなに、…まるで価値のないと、生きている資格もないと…そんな、目で…」

詰まりながらも言葉を吐き出し、ヴァレリア様は私にしがみつく。
それまで飲み込み、必死に耐えてきた苦しい胸の内を吐き出すだけ吐き出して漸く落ち着いたヴァレリア様は照れた様子で申し訳ありませんでしたと謝った。

「気にしなくていいんですよ。
ヴァレリア様を知れて、私は嬉しくなりましたから。」

「……本当に、こんな女神みたいな女性がこの世にいるなんて……まだ信じられません…。」

「ヴァレリア様、私は女神なんて崇高なものじゃないですよ。周りと同じ、ただの女です。」

「…そんなこと…ありません。
…貴女は……容姿だけじゃなく、心も、とても…綺麗だ…。
私の知る…家族以外の女性は皆…私を嫌なものを見るかのような目で見てきますから…酷い時は何もしていないのに悲鳴を上げられたり…吐かれる事だって…」

「……あの、一つ…聞いてもいいですか…?」

「…?ええ、何でしょうか。」


私はずっと気になっている質問をする事にした。
ヴァレリア様は話を聞く限り幼少の頃から家族に大切に守られてきた…言わば箱入り息子だ。
まあ、二十三の男だけど。今が二十三だとしたら父親の手伝いを初めたのが二十歳の時で…多分、それまで守られてたに違いない。
そんなヴァレリア様がなぜ花街にいたんだろうと、純粋な疑問だった。
しかも娼館が閉まっている昼間の時間帯に。
女を買う為なら日暮れ時からだ。
その時間からしか娼館は開かないのだから、女を買う為ではないのだろう。
だとしたら、ぽっちゃり娼婦に変身していた私を買った理由も分からず不思議だった。
私が疑問に思っていた事をヴァレリア様に伝えると、改めてヴァレリア様は真面目だなと思う返答が返ってきた。

「慣れようと思ったんです。
…自分が情けなくて、他人からの…一つ一つの言葉や態度に傷付く自分が本当に情けなくて…。
私も男ですから…花街に興味もありました。…でも結局、娼館が開いている時間帯に行く勇気はなくて…。人の多い所も苦手ですし…。」

「…えっと、では…今日いたのも…悪意に慣れようと…?」

「はい。街で姿を晒すより、昼間の花街の方がまだ人通りが少ないだろうと思って…。
花街で姿を晒して…女性にも、同じ性別である男にも嫌な顔をされる。醜いと顔をしかめられ、あんな醜い容姿じゃなくてよかったと笑われる。
もう一年も続けているのに…全然、平気にならないんです。」

「……いえ、…悪意は…慣れるものじゃないですから…。」

「ええ…本当ですね。
今日、貴女の時間を買ったのは…花街を訪れるようになったこの一年で、初めて…普通に接してもらえたから。」

「……。」

「声をかければ悲鳴を上げられ、まるで化け物でも見たかのように怯えられて逃げられる。
少し手が触れただけで罵声を浴びせられて、汚いとまで言われるんです。
…だけど…貴女だけが違った。ぶつかって、転んでしまうと思うと咄嗟に手が出ていました。
だけどきっと、もの凄く嫌な顔をされて、触るなと言われるんだろうなって。」

「…そんな…」

「実際に言われてきたんです。だから貴女もそうだと。でも違った。貴女は私に謝罪してくれたし…ありがとうとお礼まで言ってくれた。
…すごく、驚きました。貴女が高級娼婦だとは着ているもので直ぐ分かったんです。
…貴族令嬢は花街には来ませんしね。」

マティアス様といいヴァレリア様といい…私を泣かせたいのだろうか。
いや、全ては容姿や身分的な差別の酷いこの世界が悪いのだけれど。
私もオークは嫌だけど、それはお付き合いや、キスやセックスをするならの話だ。
普通に手が触れた程度で罵声は浴びせないし、見ただけで悲鳴は上げないし、こいつ気持ち悪い…みたいな顔もしない。
なのでこの世界の女性…いや男も、もう少し寛容になってもいいんじゃないかと切に思う。

「純粋に…ただ、純粋に…もう一度貴女に会いたかっただけなのです。他のひととは違う貴女に、謝って、ありがとうとお礼を言ってくれた貴女に……もう一度会ってみたいと思って…。
でも、…あの時は気付かなくて、…こんな、…こんなに、綺麗な…美しいひとだったなんて、」


きゅううううん。と盛大に胸が鳴った。
可愛い。ヴァレリア様はイケメンなのに凄く可愛いひとだ。
このままヴァレリア様を帰したくない。何もせず終わりたくない。そんなの勿体なさすぎる。
男だから花街に興味もあったとヴァレリア様は確かに言った。
なら勿論人並みに性欲もあるわけでー…。


「…会いたかっただけですか…?
…今…折角一緒にいるのに、…しないの?」

「!?」

「…したく…ない…?」


私は絶世の美女な見た目を最大限に利用した。
ソファーに座ったまま固まるヴァレリア様の膝の上に跨がり首もとに腕を回す。
じっとヴァレリア様を見つめて触れるだけの可愛らしいキスでせっくすしようと誘ってみた。

「…っ、」

効果は絶大。
顔を真っ赤に染めたヴァレリア様の股間はむくむくと正直に反応している。

「…私じゃ…いや?」

「そ、そんなこと…!貴女の、…貴女の方こそ…私みたいな男が貴女に触れて、いいのですか…!?」

「…私、ヴァレリア様なら全然構いません。
優しくて、家族思いで…真面目で、頑張りやさんなヴァレリア様のこと、私…好きですよ。」

「……あ……こんな、……信じられない……貴女みたいな、素敵な女性が、…一晩でも、私を相手に…選んでくれるなんて…夢に決まってます…」

「…夢かどうかは…ヴァレリア様次第ですよ…?
私と…せっくす、したいですか…?」

「…っ……い、」

「いっぱいキスして、ぎゅって抱き締め合いながら…気持ちいいせっくす、したくないですか…?
いっぱい…いろんなせっくす、…したくない……?」

「……、たい、」

「…言って?大丈夫ですから…。」

「たい、……したい、です、…貴女と…サイカとっ、
私は…サイカとセックスがしたい…!貴女を抱きたい…!」

「…ヴァレリア様…嬉しいです…」

「この部屋に入って貴女を見て…なんて美しい人だろうと思いました…話をしてみたら…心まで美しくて…!
必死に、意識しないようにしてたんです!なのに、サイカ…貴女が煽るから…!」

「…ふふ、はい…。」

「…情けなくても、私だって、男なんですよ…」

「ええ。ちゃんと、分かっていますから。」

「…本当に……貴女を抱いても…いいんですね…?」

是と答える代わりにキスをした。
先程ヴァレリア様にした触れるだけの可愛らしいキスではなく、舌を絡ませたキスを。

「…んう、…ちゅ、ちゅ…、ん、」

「ちゅ…は……ぅ、…ちゅ、…サ…イカ、…はっ…私は、幸運な、男だ……貴女が…ちゅ、…貴女みたいな、優しい、美しい…ひとが、…はぁ…ちゅ、んっ…私の……初めての相手、」


そんな気はしていた通り、ヴァレリア様は童貞だった。
真面目で繊細、優しいけど気弱で、イケメンなのに凄く可愛いヴァレリア様。
ここは経験者としてしっかり私がリードせねばなるまい。
と、そう思っていたのだが。





「んあああ…!や、やらぁ…!も、もお、あっ、も、ごりごりいやぁ…!」

「…はぁ…ふふ、…可愛いです……ほんと、可愛くて…やらしい…ここ…ですよね?ん、は…、サイカ、ここが、気持ちいいのですよね…?」


二人目のお客様になってくれた優しくて気弱で可愛い童貞なヴァレリア様が、気弱と可愛さを一体何処に置いてきたんだと言わんばかりの激しいセックスをするひとだったなんて。
そんなの百戦錬磨でも分かるわけがない。
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