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第一章 辺境の村の解体部へようこそ
21話 呪い
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「それでは楽しみにしているぞ。ああ、この肉は頂いておこう。」
森の王は口でブレードベアの死体をくわえ、そのまま「もっもっ」と丸呑みした。
喉のあたりから何かがひしゃげるような音が聞こえてくる。
潰して飲み込んでいるのだろうけど、どんな強度してるんだろう・・・
ブレードベアを腹に納めた森の王は自らが通って来た道を辿るように森へと消えていった。
その場にいた皆が集まってくる
「いやー助かったぜ兄ちゃん。お前のことは忘れねえよ。」
「さすがにアレは俺達でも危なかったしな。尊い犠牲のおかげだ。」
ガイアとマッシュだ。もう一人はどうした。
「2か月だけでも寿命が延びたことを森の王に感謝するがいい」
「獣人族でも森の王を見た者はわずかだ。冥土の土産ができてよかったじゃないか。」
ベインとアッシュも。起きたのか。
「最期まで一緒だよ!看取るのはまかせて!」
アルル・・・皆強大な脅威を前に連帯感が生まれたようだ。
ところで
「お前らさぁ、俺が死ぬ前提なのやめてくれない?」
口々に笑いながら冗談だというが・・・
お前らにとって冗談でも本人には笑い事じゃねぇ。
そういうなにげない一言が相手を傷つけるんだぞ。
イジメ、ダメ、ゼッタイ。
「あんさんのおかげで貴重な素材が手に入ったんや。墓は豪華なの立てたるさかい安心しいや。」
「お・ま・え・も・や・る・ん・だ・よ!オバカの錬金術師!」
スピネルの頭を両手で掴んでぐわんぐわんゆすってやる
「調子でてきたやないかバラシはん。」
乱れた赤毛を手櫛で整えながらスピネルがフフと笑う
緊張が解けたからか、つられて皆も笑い出す。
泣いても笑っても2か月だ。俺も笑って進むしかないな。
「とりあえず今後の事を考えなきゃならなくなったから俺は戻るよ。」
村長とも相談しないとな。
「ウチはちょっと森の王の通り道調べてくるわ。体毛とかあるかもしれん。ガイアちょっと手伝ってんか。」
スピネルと黒い3人組は森へ向かう。
「お嬢は魔法に詳しい。キミの呪いの対処方法もわかるかもしれない。休憩所で見てもらうといい。」
獣人の二人は一緒に出張所に戻るようだ。
ベインは親身になってくれている。さすがイケメンだ。
一方銀髪のアッシュはフンとそっぽを向いている。
しかし・・・と俺がつぶやく
「森の王は何しに来たんだろうね?」
「本当に熊を狩りに来て森から出ちゃっただけなんじゃない?」
アルルの意見はシンプルだが案外そんなものなのかもしれない。
「森の王は・・・」
アッシュだ。
「森の王は何百年と生きているという。それほどの長寿の生き物となると好奇や興味の方が優先されるらしい。知能があればなおさらな。要は退屈しているという事だ。」
その対象が逆鱗剣であり俺であったわけか。筋は通る。
死の宣告を受ける理由には全く、全然、足りないがな。
「だいたい森の王が剣を欲しがるのが謎なんだよなー」
逆鱗剣より強い剣って森の王を殺せる剣って事だ。
そんなのが存在しても森の王の身が危なくなるだけだ。
「オレも欲しいがそれはさておき、考えられる理由の1つはコレクションだがちょっと動機が薄い。2つ目は森の王が自ら使う可能性だな。人に変化する事ができるなら可能だ。」
ベインが考察を口にする。
なるほどなぁ、森の王が変身か。
それは考えてなかった。
「そして3つ目は・・・その剣で殺してほしい相手がいる場合だ。」
「そっか。聖剣を渡して魔王を倒してもらうのと同じだね。」
アルルが同調する。わかりやすい例えをありがとう。
「てことはアレか。俺は未来の聖剣を作らなきゃならないのか。」
ため息交じりに苦笑するしかない。
力不足も甚だしいわ。
話しながら歩いていると出張所に到着する
村の皆が心配そうに取り囲んで大丈夫かい?とか、なんかすごかったねとか声をかけてくれる。基本的に皆いい人達だ。
人の輪の外から村長がやって来たので一部始終を説明する。
「――というわけで呪われてしまったわけです。剣を作らないと2か月で死ぬそうです。」
上着を脱いで刺青を見せる。
どよめいて人の輪が少し広がる。無理もない。
「バラシ・・・あんたどうするの?」
ギルドの受付のミセリが心配そうに聞いてくる。
ミセリが俺の心配をしてくれるのは初めてかもしれない。
「当然死ぬ気はないからな、やれるだけの事はやるつもりだ。
だから、2か月ほどギルドを離れる事になると思う。」
素材の研究と腕のいい鍛冶屋探しはサハテイ村にいては不可能だ。
「あてはあるのかい?」
「今はないですが、スピネルとか獣人族の人達にも聞いてみようと思ってます」
村長はそうかと頷いた。
「話は終わったかな?お嬢が待ってる。行こうバラシ」
人の輪の上からベインが顔を出したので一緒に休憩所のテントに向かう。
「―で、どうですかね。」
ベンチに座ってアッシュの診断を受けているが、銀髪イヌ耳の美しい顔は表情を曇らせたままだ。
アッシュが胸の刺青から白く細い指を離す。
「わからぬ」
わからないんかーい
「と、いうのもな、私が見る限りこれは呪いというより加護に近い。森の王が2か月は死なないと仰っていたのであれば、その力が加護のように見えるのだと思う。」
「その加護も一緒に解除する事はできないんですか?」
「できぬことはないが、全体が見えてない状態で手を出すのは危険だ。例えばこの加護が呪いを中和する効果だった場合、加護を解除したら呪いが発動して即座に死ぬ、なんてこともありうる。」
そうか。連動していたら一部解除しただけではダメという事か。
時限爆弾の解除みたいな話になってきたな。
赤を切るか青を切るかみたいな。
「私見だが・・・」
アッシュは間を置く
「死ぬ気で貢物を作るのが第一、森の王に平身低頭で情を乞うのが第二の手段だな。あとは私より詳しい専門家に診てもらって対策するのが第三になるか。」
ぐぬぬ。森の王め。
正攻法以外認めないというのか。
「ありがとうアッシュさん。参考になりました。
ところで相談がもう一つあるのですが・・・」
俺は獣人の村?町?に腕利きの鍛冶屋、具体的には火魔法持ちで高温炉が使える鍛冶屋がいないか聞いた。いたら力を貸してほしいと。
鍛冶の本場と言えばドワーフの国なのだが、ここからだと行って帰るだけで2か月かかり、納期に間に合わないので対象外だ。
「いない事はないが・・・」
ベインはアッシュと顔を見合わせる
「遠いんですか?それともやはり獣人族の掟の問題ですか?」
「道を知っていればここから3日程度だ、遠くはない。だが人族を里に入れる事は許されていない。」
そうだろう。部外者に場所が知れたら何が起きるかわからない。
「どんな条件でも呑みます。移動は目隠しでもかまいませんし、軟禁状態でもかまいません。金銭なら借りてでもなんとかします。森の王の素材で作った剣を獣人族に差し上げる事もできるでしょう。考えておいて下さい。」
ベインが剣の話にピクっと反応し
お嬢、やはり人助けはするべきですよとアピールしている。
いい方向に話を持って行ってくれるといいのだが。
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「獣人族でも森の王を見た者はわずかだ。冥土の土産ができてよかったじゃないか。」
ベインとアッシュも。起きたのか。
「最期まで一緒だよ!看取るのはまかせて!」
アルル・・・皆強大な脅威を前に連帯感が生まれたようだ。
ところで
「お前らさぁ、俺が死ぬ前提なのやめてくれない?」
口々に笑いながら冗談だというが・・・
お前らにとって冗談でも本人には笑い事じゃねぇ。
そういうなにげない一言が相手を傷つけるんだぞ。
イジメ、ダメ、ゼッタイ。
「あんさんのおかげで貴重な素材が手に入ったんや。墓は豪華なの立てたるさかい安心しいや。」
「お・ま・え・も・や・る・ん・だ・よ!オバカの錬金術師!」
スピネルの頭を両手で掴んでぐわんぐわんゆすってやる
「調子でてきたやないかバラシはん。」
乱れた赤毛を手櫛で整えながらスピネルがフフと笑う
緊張が解けたからか、つられて皆も笑い出す。
泣いても笑っても2か月だ。俺も笑って進むしかないな。
「とりあえず今後の事を考えなきゃならなくなったから俺は戻るよ。」
村長とも相談しないとな。
「ウチはちょっと森の王の通り道調べてくるわ。体毛とかあるかもしれん。ガイアちょっと手伝ってんか。」
スピネルと黒い3人組は森へ向かう。
「お嬢は魔法に詳しい。キミの呪いの対処方法もわかるかもしれない。休憩所で見てもらうといい。」
獣人の二人は一緒に出張所に戻るようだ。
ベインは親身になってくれている。さすがイケメンだ。
一方銀髪のアッシュはフンとそっぽを向いている。
しかし・・・と俺がつぶやく
「森の王は何しに来たんだろうね?」
「本当に熊を狩りに来て森から出ちゃっただけなんじゃない?」
アルルの意見はシンプルだが案外そんなものなのかもしれない。
「森の王は・・・」
アッシュだ。
「森の王は何百年と生きているという。それほどの長寿の生き物となると好奇や興味の方が優先されるらしい。知能があればなおさらな。要は退屈しているという事だ。」
その対象が逆鱗剣であり俺であったわけか。筋は通る。
死の宣告を受ける理由には全く、全然、足りないがな。
「だいたい森の王が剣を欲しがるのが謎なんだよなー」
逆鱗剣より強い剣って森の王を殺せる剣って事だ。
そんなのが存在しても森の王の身が危なくなるだけだ。
「オレも欲しいがそれはさておき、考えられる理由の1つはコレクションだがちょっと動機が薄い。2つ目は森の王が自ら使う可能性だな。人に変化する事ができるなら可能だ。」
ベインが考察を口にする。
なるほどなぁ、森の王が変身か。
それは考えてなかった。
「そして3つ目は・・・その剣で殺してほしい相手がいる場合だ。」
「そっか。聖剣を渡して魔王を倒してもらうのと同じだね。」
アルルが同調する。わかりやすい例えをありがとう。
「てことはアレか。俺は未来の聖剣を作らなきゃならないのか。」
ため息交じりに苦笑するしかない。
力不足も甚だしいわ。
話しながら歩いていると出張所に到着する
村の皆が心配そうに取り囲んで大丈夫かい?とか、なんかすごかったねとか声をかけてくれる。基本的に皆いい人達だ。
人の輪の外から村長がやって来たので一部始終を説明する。
「――というわけで呪われてしまったわけです。剣を作らないと2か月で死ぬそうです。」
上着を脱いで刺青を見せる。
どよめいて人の輪が少し広がる。無理もない。
「バラシ・・・あんたどうするの?」
ギルドの受付のミセリが心配そうに聞いてくる。
ミセリが俺の心配をしてくれるのは初めてかもしれない。
「当然死ぬ気はないからな、やれるだけの事はやるつもりだ。
だから、2か月ほどギルドを離れる事になると思う。」
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「あてはあるのかい?」
「今はないですが、スピネルとか獣人族の人達にも聞いてみようと思ってます」
村長はそうかと頷いた。
「話は終わったかな?お嬢が待ってる。行こうバラシ」
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「―で、どうですかね。」
ベンチに座ってアッシュの診断を受けているが、銀髪イヌ耳の美しい顔は表情を曇らせたままだ。
アッシュが胸の刺青から白く細い指を離す。
「わからぬ」
わからないんかーい
「と、いうのもな、私が見る限りこれは呪いというより加護に近い。森の王が2か月は死なないと仰っていたのであれば、その力が加護のように見えるのだと思う。」
「その加護も一緒に解除する事はできないんですか?」
「できぬことはないが、全体が見えてない状態で手を出すのは危険だ。例えばこの加護が呪いを中和する効果だった場合、加護を解除したら呪いが発動して即座に死ぬ、なんてこともありうる。」
そうか。連動していたら一部解除しただけではダメという事か。
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「私見だが・・・」
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「死ぬ気で貢物を作るのが第一、森の王に平身低頭で情を乞うのが第二の手段だな。あとは私より詳しい専門家に診てもらって対策するのが第三になるか。」
ぐぬぬ。森の王め。
正攻法以外認めないというのか。
「ありがとうアッシュさん。参考になりました。
ところで相談がもう一つあるのですが・・・」
俺は獣人の村?町?に腕利きの鍛冶屋、具体的には火魔法持ちで高温炉が使える鍛冶屋がいないか聞いた。いたら力を貸してほしいと。
鍛冶の本場と言えばドワーフの国なのだが、ここからだと行って帰るだけで2か月かかり、納期に間に合わないので対象外だ。
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そうだろう。部外者に場所が知れたら何が起きるかわからない。
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