孤独になった俺は女教師とその妹と暮らすことになった

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苺にクッキー、有梨華先生にはクッキーを

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 俺は羽田先生の胸ぐらを掴みに睨み合っていた。

「星月っ!君は随分と調子に乗るようになったな。まぁいいさ。覚えていろ。お前に地獄を見せてやる。俺が味わった地獄以上になっ!」

 羽田先生は俺の手を勢いよく振り乱れたネクタイを直してそのまま俺とは逆方向に去って行った。
 俺は地面に落ちたクッキーの袋を拾い上げた。
 袋の表面には羽田先生の靴の跡が残っていた。
「苺。ごめんな。」

 俺は袋を持ち屋上へと向かった。
 屋上には既に苺がいて空を見上げていた。俺が近づくと目線が空から俺に移った。
「あっ、太陽遅かったね。何かあったの?」

「ごめん。苺。苺に渡すつもりだったクッキーが粉々になって。」
 俺は袋を苺に見せた。
 羽田先生に踏まれたという理由は言いたくなかった。元はといえば羽田先生から簡単に奪われた俺にも責任がある。
 俺はもっと強ければ羽田先生に絡まれることもないと思う。

「それクッキーだよね...もしかして私の為にわざわざ買って持って来てくれたの?」

「ああ。いつも色々してくれてるし。」

「太陽が...私に...嬉しいなぁ...」
 苺はクシャとなった袋を開けてクッキーのカケラを手に取りニコッとすると口へ運びゆっくりと噛んでいた。
 俺はそれを黙って見ていた。

「うん....美味しいよ。やっぱり形は変わっても味は変わらないね。」

「太陽も食べてみたら?」

 苺は俺にクッキーのカケラを渡す。俺はそれを受け取り口へ運びゆっくりと噛み締めた。
「うん。美味しい。」

「太陽ありがとね。すごく美味しいクッキーを私にくれて。」

「喜んでくれて良かった。」
俺はクッキーが思った以上に美味しかったので有梨華先生と紗奈蘭さんにもあげようと思い帰りにまた買うことにした。



 放課後になり部活が休みということで俺はクッキーを買ってすぐに家に帰った。
「ただいまっ!」

「おかえり太陽」
 紗奈蘭さんはピンク色のエプロンを着けて料理をしている最中だった。
俺は夕食後にサプライズで渡そうと思った。

 着替えを済ませて和室に行き宿題をしていると有梨華先生が帰ってきた。
そして夕食の時間になり紗奈蘭さん特製のクリームシチューを食べた。
 こんなに美味しいシチューは初めてだった。
夕食を食べ終えるとクッキーの時間だ。

「夕食も終わったし私たちは片付けしようかなーー。」

「あの2人とも待ってください。俺からプレゼントです。」
 机の下からクッキーの袋を取り出して机の上に置いた。

「それクッキー?」
首を傾げる紗奈蘭さん

「はい。美味しいクッキーです。いつも2人には色々していただいているので俺からの感謝です。」

「美味しいそ~。今食べてもいいよね?」

「はいっ。」

 有梨華は飛びついたように座布団に座る。
 そして2人はクッキーをむしゃむしゃと食べた。
 紗奈蘭さんも顔から笑みがこぼれていた。
 俺はそんな2人を見て嬉しい気持ちになった。

「いつもありがとうございます。」

「こちらこそありがとう。太陽くんの優しさが私も嬉しいよ。」

 俺はこの生活がずっと続けばいいなと思っていた。
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